農園日誌Ⅱー「活きること」PART30

2019.8.22(木曜日)晴れ後曇り、最高温度35度、最低温度27度

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      「有機野菜とは何?」「新たな市場を求めて」講習会開催

2019.8.21(水)佐伯文化会館にて、有機農産物の商品化、有機の里作りなどについての講習会を開催。
農園主を招聘したのは、「佐伯認定農業者の会」でしたが、そのバックには佐伯市
付いておりました。

佐伯市は、南郡6カ町村が合併し、養殖・水産加工の漁村と露天原木椎茸栽培などを行っている広域の山間地域から成り立っており、観光も、農業・漁業(水産加工)も振るわず、次なる地域経営資源を模索している。
日本中どこにでも見られる過疎が進行している典型的な地域である。

佐伯市長が宮崎の綾町のような有機の里にしたいとの思いから、今回の講習会がスタートしたようだ。
60名あまりの方々がお集まりいただいたが、農業者の方の多くは、これもまた、
唯我独尊、わが道を行くことが多い。
どうしても纏まりが無く、このままでは掛け声だけに終わってしまう。
講演の当初は、その気風が会場を覆い、どこか「聞いといて遣ろう」の雰囲気から始まった。
有機JASの話から始まり、高窒素栽培の問題点、抗生物質や薬品の多く含まれている配合飼料で肥育されている家畜の糞による土壌汚染へと進み、佳境の草木堆肥による低窒素栽培及び完熟野菜の話まで進んだ頃、ようやく、皆さんは聞く姿勢に変わって来始めた。
なにしろ、与えられた時間はわずか1時間半。これでは、障りの話で終わってしまう。

次に、話題を一気に変えて、農業経営に不可欠なマーケティングの方向へ舵を切る
みんなには見慣れないマーケティングマップ(消費者層の細分化)の説明に移ると
流石に興味が湧いてきたのか、全員が集中し始める。
なかには付いてこれず、あくびをする方もいましたが・・・

商品開発から差別化戦略、市場創造へと一気に飛び、消費者とのコミュニケーション戦略や戦術まで話を進め、ついには時間切れとなった。
多くの農業者はまるで怖いものをみるような、違った人種に接したような顔に変わっていた。
唯、質問の時間に移ると、農園主はいつの間にか先生に格上げされていたようだ。

この会での大きな収穫は、実は、以前にも当農園で行ったセミナーに参加して頂いていた40~50代の女性層の目が次第に光を帯びてきたようにキラキラと輝いてきたことであった。今すぐにでもやりたいとの思いが伝わってきた。

その後の懇親会に佐伯市長も出席し、「やあやーご苦労様でした」とのこと。
どこにでも居る市長の顔でした。
二時間の懇親会で、一時間半市長と対座し、その思いは十分に聞いた。
最後にこのように申し上げた。
「官公庁は、いつでも、ことが進行している最中、最後は必ず梯子を外します」
「今まで、7カ市町村の首長さんと地域再生のお話をさせて頂きましたが、いつもそれでした」
「貴方は、何年間市長を続けるおつもりですか?」と聞くと、「ことが成るまで、10年間は続けるつもりです」との回答を得られた。
その顔は市長の顔から、「社長の顔」に変わっていた。


「活きること」PART30

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                      農園直売所

2019.8.7  農園直売所開催と商品開発
 
 農業者が自立していくためには、農協を初めとした流通に依存した量産型・規格型農業では無く、農産物の品質を高め、少量多品種栽培により、消費者への直接販売を基本とした農業を確立していこうと始めた自然循環型農業であった。
高品質野菜販売を行うためには、大分市場は余りにも弱く、そして幼い。
最初は知人縁故を頼り、個別に宅配を行ってきたが、やがて、県外、特に関東市場にインターネット販売を行えるようになってからは、大都市を中心としたネット通販を主力に行ってきた。
唯、品質に頼った口コミによるネット販売の限界も密かに感じてはいた。
特に、農園の研修生も増え、圃場も拡がりを見せ始めた中では、どうしても地元の大分市場への展開は必要と感じていた。
丁度、その頃、「宅配料金の大幅な引き上げ」と「インターネットが使えない」時期が重なる外部環境の急変により、農園は顧客数のジリ貧、売上総額の減少の危機に陥っていた。
さらには、農園主も歳を重ね、体力の限界が見えて来ており、同時に、若い農業後継者への引き継ぎの時期でもあった。
但し、農業の自立とは、農業生産だけでは無く、農業経営も出来なければならない。
農園主は、このような状況の中、若い農人達に自立を促すために、しばらくは動くまいと決意していた。
ほぼ一年間農園主は動かず、手も打たなかった。
7~8年前から次の時代を担うであろう若い農人達を育ててきた。みな、他の農園に行ったら立派にやっていけるだけの能力は持ち、それなりに頑張っており、一人前なのかもしれない。
但し、いつまでも農園主が生産管理を行い、事業の方向性を示し、次に何をやれば良いかを示唆し続けることはできない。
目まぐるしく変化する気候に対応し、野菜を切らせず、生産し続け、また、他の流通には頼らず、自力で販路を確保し、みなで自立していくためには、何かが足らない。
 
それは、おそらくは、主体性の欠如であり、事業を背負おうとする気迫の弱さであり、臨機応変の危機対応能力の経験の無さであろう。単に事業推進の経験が無いだけではないと感じている。
彼らに一番足らないものは、克己心であり、反骨心ではなかろうか。
農園主はそれ故、対策を敢えて示さず、唯、待ち続けてきた。それは私にとって忍耐の塊でもあった。
私は、時代が違うと言われても、常に放置され、叩かれ続け、それでも、一人で悩み考え、途を切り開き闘ってきた世代の一人である。
この厳しい状況をスタッフ自らの力で乗り越え、この危機が彼らの成長を促してくれることを願うしか無い。皆で知恵を絞って、行動を起こし、もっと頑張れと言いたい。彼らの目の奥にその光が灯されることを祈る。

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とは言っても、彼らにこの難局に立ち向かえるだけの知恵も経験も即応力もない。
2019年初春、先ず指示したことは、農園直売所を開くことであった。
大分市全域にマーケットを求めるのであれば、本来は、日曜日オープンであったが、その準備も経験も出来ておらず、主婦である女性スタッフからは、土日は休みたいとの意向が出され、取り敢えず、近隣の消費者をターゲットにした水曜日開催とした。
チラシを配り、団地の公民館に告知広告を貼ってもらい、口コミを誘発した。
土日でないために、熟年主婦層の10数人の常連客ができたが、やはり、共働きの多い若い主婦層は取り込めず、拡がりは弱かった。
団地新聞に掲示し、告知広告を出したり、住宅及びリフォームの「ベツダイ」のキッチン展示場で料理体験会を定期開催したりの活動を行ってはいるが、その効果は薄い。
 
若いスタッフ達が主体となって、インスタグラムやフェイスブックへの投稿も行うようにした。
さらに、幾つかのネット市場への出店をやってみるのも良いだろう。
それなりの告知には役立っているが、大きな拡がりはまだまだ望めない。
 
次には、日曜日農園マルシェの開催を示唆した。今度はスタッフも納得したようだ。
健全で品質の高いややプレミュアムな価格の野菜に対する関心度が今一である大分市場では、野菜だけを目的にした購買活動は弱い。そこで、農園マルシェに手作りのおやつや中間食などの商品群を置くことによって、訪れるお客様を楽しませることにしようと考えた。
アレルギーにも対応できる自然栽培の農園で生産した穀類を使った加工品の商品開発を指示した。
 
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・野菜万頭
自然栽培で育てた古代もち麦と小麦のブレンド粉を皮にした野菜万頭はすでに多くの方からの支持を得ている。野菜の具も美味しいが、何より麦の味香りが噛むほどに伝わってくる。

・コロッケ
 じゃがいも・玉葱は豊富に揃う。玉葱・ニンニクを大量に炒め、豚肉を加えたじゃがいもコロッケ。
衣は自然栽培で育てた麦のブレンド粉でパンを焼き、パン粉を作る。これで小麦アレルギーの子供さん
も食べられるむかし懐かしいコロッケができる。リーズナブルな価格にしようとしている。

・ビスケット・ドーナツ・パウンドケーキなどの菓子類
 ブレンド粉に大豆粉を混ぜ、とうもろこし粉でサクサク感をアクセントにする。
 全て農園の粉で焼いたビスケットとなる。自然栽培で育てた粉は甘みが強
 く、砂糖はわずかにする。

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・弥富パン
 半全粒粉の小麦に全粒粉の古代もち麦で焼いたパン。ハイグルテン小麦粉
 は使用しておらず、アレルギーなどの現代病にも対応できる。従来のパン
 とは異なり、ずっしりとお腹に溜まり、食事パンとして考えた。

 ブレンド小麦粉と自家焙煎した大豆粉を使用した噛み応えのあるやせうま
 となる。

・石垣餅
 ブレンド小麦粉にさつまいもを練り込み蒸かしたおやつ

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ブレンド粉のお焼き(流し焼き)体験会
 クレープ状にして焼いた台に、あんこ・黒砂糖・黄な粉・野菜・ハム・
 チーズ・果物などをトッピングして家族で楽しむおやつ作りを体験。
 
以上に加えて、麦ご飯セット、麦茶、ブレンド小麦粉、蒸し大豆などの加工品を揃える。
 
おやつ、中間食、野菜、穀類、製粉、発酵漬物、醸造味噌などの商品ラインを拡充し、その原料全てを、
自然栽培を行っているグループ内で賄う。当農園で販売する全ての商品が自然栽培による商品群に揃えることによって、健全性を確保し、おそらくは、日本中、何処にも無い農園マルシェとなる。
何より訪れる消費者に、むかし健康であった時代の食生活を体感してもらい、「安心して食べられる」・「楽しんで買える」・「学べる」と言う農園コンセプトを作ろうとした。