農園日誌Ⅱー「活きること」ーPART28

2019.8.7.(水曜日)曇り、最高温度34度、最低温度25度

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台風一過、胡瓜などの棚が倒壊しており、今日は出荷日にも拘わらず、復旧作業に追われた。
唯、台風によりもたらされるのは被害だけでは無く、酷暑による乾燥した大地は、
充分に潤っていた。まだ幼い人参も葱も息を吹き返している。早速に除草をしたやった。

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これは九条葱。確か、6月下旬頃に定植したと思うのだが、以降、雨が降らず、カラカラに乾燥したため、一向に育っていなかった。
左奥に見えているのは、完全に消えかかっていた茄子の畝。これも水を好む野菜であり、この雨は救いの神であった。早速に除草と誘引作業を行った。
見れば、健気にも茄子が実を付け始めているではないか。
どうやら、夏の茄子はダメであったが、秋茄子には間に合いそう。


「活きること」 PART28

2019.2.18 彩り豊かな冬野菜達
 
去年、10年ぶりに秋らしい秋を迎え、お陰で野菜は順調に育ってくれた。
そのため、続く冬野菜、そして春野菜と出来映えも良く、生産量も増えた。
こんなに苦労せずに野菜が育つのも久しぶりで、なんだか拍子抜けするような豊潤な季節となった。
今まで、長らく野菜不足が恒常的に続いていたが、今度は一転して野菜が余り気味になっていった。
折角自然に恵まれたのだからと、こう言う時は、価格は据え置いて、量は1.3倍~1.5倍にして皆様にお届けするようにしている。

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この頃、実は農園では、大きな曲がり角に直面していた。
去年の秋口から、宅配業者が送料の一斉値上げに踏み切っていた。応じなければ宅配取引を切られても良いとの問答無用の対応であった。値上げ幅は、2倍と言う極端な引き上げを宅配業者全体で押し切ってきた。人件費高騰と働く人の確保が難しいとの理由であった。
その要因の多くは、大手通販会社であるアマゾンの存在にあった。格安で、あるいは、送料無料での配送サービスを強行してきており、それを受けてきたヤマトやサガワの体質に問題があったとみている。
そのしわ寄せが通常の物流に来たことが大きな要因であった。
ある程度正常な運賃体系にしておけばここまではひどくならなかったであろう。強者が弱者を飲み込んでも構わないと言った論理があるように思える。消費者もそれに迎合していったため、結果として、日本の物流費を必要以上に高騰させ、逆に日本の経済を、消費者を縛っていき、野菜に留まらず、全ての商品の価格が上昇に転じていく。
 
宅配業者二者との交渉の中で、何とか1.8倍程度の値上げに止め、急速に上がった送料の一部を、むかし野菜の邑や生産者にて負担することにした。
結果として、お客様には従来の1.5倍程度の引き上げに留めた。
 
但、この送料値上げは、当然お客様の消費マインドを直撃し、先ずはテレビ放映で新たに加わった200余名の新規のお客様から、徐々に定期購入者から脱落していった。
ショックだったのは、一年以上も取り続けて頂いていたお客様からの脱落組が出始めたことであった。
その理由をお聞きしてみると、「体が美味しいと言っているのも食べ続けることの楽しさもあるのですが、家計がそれを許してくれないのです」と。
「むかし野菜の価値をご理解して頂ける方に出会えたのに、残念です。また。取れるようになりましたら、よろしくお願いいたします。皆様のご健康をお祈りしております」と言わざるを得ない。

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農園主は思うのです。
「除草剤も使わず、化学物質を圃場に持ち込まず、手間と労力を掛けて草木堆肥によって何年も掛けて育てた土壌から生まれてくる美味しくて健全な野菜は、人の体を再生させ、健康体に近づく」
高い送料を掛けて送られてくるやや割高な農産物及びその加工品は、決して贅沢では無いのです。
有機農産物も含めてあらゆる食品に含まれている抗生物質ホルモン剤及び化学物質や添加物に囲まれた現代の食生活は、健康はお金では買えないし、自分で守るしか無いのです。
消費者の気持ちも分からないでは無いが、要はその方の価値観の持ち方ではないでしょうか。
とは言っても、家計が苦しいと言われる全国の消費者にご無理を強いるわけにも行かない。
健全な野菜や食作りに取り組んでおられる少しプレミュアムな価格の全国の生産農園は、一様に、苦境に立たされることになっております。
 
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手塩に掛けた3,000坪(一町歩)の畑には、今日も元気な野菜達が育っており、汗を流して働く6人の若者達がいる。
ようやく土作りが進んできた田圃から穀類畑に転換した3,000坪の畑には貴重な脱除草剤・脱農薬、草木堆肥で育った麦・古代麦・大豆・とうもろこしが育っている。
農園主としては、この理不尽な社会・経済の変化とそれに伴って、寛容さを無くしつつある消費者層に何とか対応策を講じなければならない。
新たな販売チャネルの構築に向かおうとしている。