農園日誌Ⅱー「活きること」ーPART27

2019.7.31(水曜日)晴れ、最高温度33度、最低温度26度

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                お休みに入った露地トマト

 7月末、あれだけ成り続けていたトマトがお休みに入ってしまった。
露地トマトは6月末頃から8月中旬まで、第一次の最盛期を迎える。
ところが、今年は6月中旬頃から7月末まで鈴なりになってきたため、突然にぱったりとトマトが止まってしまった。

梅雨明けと共にいきなりの酷暑の季節、乾季に入ったようで、こうなると流石に実を付けることは難しいようだ。
これからは剪定誘引作業を行い続ければ、9月初旬頃から10月一杯まで量は減っても実を付けてくれることを期待している。雨が待ち遠しい。

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これは、早稲の黒大豆。農園では、この時季、黒大豆の枝豆を育てる。
8月中旬頃から出荷が始まる。枝豆と言うと皆様は夏と思っておられるようだが、
実は、この時季、旬を迎える大豆はあまり美味しくないのです。

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これも黒大豆、晩生の大納言と言います。
くそ暑い夏の7月中旬頃種を蒔き、10月初旬頃から黒大豆の枝豆の出荷が始まり
11月初旬頃、やや柔らかく長めの豆に成長する。この時季のものを私はビーンズと言っており、サラダ・パスタ・炒め物・豆ごはんに使います。
11月末頃、丸い黒大豆となります。一つの大豆で三回楽しめることになります。
この大納言の黒大豆は珍味であり、農園の人気メニューの一つです。


「活きること」-PART27
穀類の商品開発-PART2―自然栽培による穀類を使った健全な食品開発
 
麦と同じように重要な穀類である大豆の自然栽培は、目まぐるしく変化する最近の気候では、生産が安定していない。
その種を蒔く時季が、梅雨時期と重なり、麦の収穫が終わる5月~6月初旬頃は雨も多く、草木堆肥を軽トラックで畑に撒く際、埋まり込んでしまったり、耕す際にも雨が重なり、思うように種蒔きが進まないことがある。
それがうまくいったとしても、種を蒔く時季に逆にいきなり乾期が襲ってきたりして、種が発芽しなかったり、育たなかったりするリスクもある。
さらには、この夏の時季は夏草が著しく旺盛な季節であり、除草剤を使わないため、大豆が草に負けて、しまうこともある。
このため、管理機(除草)で畝下の土を堀り揚げ、草の上に土掛けを施したり、草刈り機で草を払ったりせねばならないが、収量は大きく減じる事も多い。
このようにして、ようやく採れた大豆は慣行栽培(除草剤使用)の多くても2/3程度の収量にしかならない。
 
 このように苦労して採れた貴重な自然栽培の大豆は、トウミに掛けて殻を飛ばし、色彩選別機に掛けて、大まかに選別し、さらに目視による手の選別作業を行って、ようやく大豆となる。
まさしく、大豆となるまでの工程は手作業の連続である。
広大な農地で大型機械を使って大量生産を行う粗放農業の大豆とは、そもそも生産コストが比べ物にならない。これが日本の狭い農地を使った高集約型穀類生産の実態です。

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除草剤も使わず、農薬も使わず、化学肥料も使わない草木堆肥による自然栽培の穀類とは、その作業にどれだけの労力とリスクを掛けているのかを、果たしてどれだけの消費者が知っていることだろう。
その努力に対して支払う正当な価値(代金)をどれだけの人が認めてくれるのだろう。
日本の多くの農業者が穀類生産から撤退していったのはその理由からです。

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〇このようにして採れた貴重な大豆を農園では、主に味噌作りに使っているが、大豆そのものの美味しさを表現した商品開発を目指した。
 
「味噌」-原料;大豆、自然農米、天然塩のみ
農園の竈にて、お米を蒸し、3日掛かりで米麹を作る。
大豆を竈で蒸して、薬指と親指で潰れる程度に蒸し上げる。
蒸した大豆をミルで潰し、天然塩と米麹と大豆を合わせて味噌玉を作り、甕に押し付けるようにして漬け込む。重石を載せ、表面に虫除けや除菌のため塩を置く。およそ8~12か月間、熟成醗酵させて無添加醸造味噌が出来上がる。
 
この醸造味噌は、その原料からして化学物質や薬品は一切使われておらず、その意味でも、全国のどこにも存在しない味噌だと考えている。農園の加工品の中では、人気NO1です。
大手工場で製造されている味噌のほとんどは、短期間で製造できる化学合成味噌であり、このような本醸造の味噌は地域の小さな蔵元でしか存在していない。
 
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「黄な粉」
自家焙煎を行い、2~3段階でやや粗めに粉に引く。
黄な粉と言うより、大豆粉と言ったほうが正しいようです。少し甘味があり、何より香ばしい大豆の香りが漂う。
この黄な粉は、グループの田北さんが冬から初春頃に製造するお餅と一緒に食べてもらっていたが、農園で小麦作りが進み、今では、大分名物の「やせうま」を各ご家庭で、おやつとして作ってもらえるように、レシピを添えて皆様にお届けしている。
 
「蒸し大豆」
蒸し大豆は、味噌を作る際に、大豆をみなで食べている時、この美味しさをお客様に伝えられないかと考えて、味を付けていない蒸し大豆を商品とした。煮出すのとは異なり、栄養価も失わない。
一般の家庭では、中々、煮豆を作らない。水煮は缶詰で売られているが、あまり美味しいものではない。
まして、大豆を蒸すことはおそらくないであろう。
蒸し大豆は実に栄養価の高い植物たんぱく質であり、お砂糖を加えたり、そのまま煮豆にしたり、料理のトッピングに使ったり、みそ汁に入れたり、スープの浮き身にしたりと様々なバリエーションがある。
 
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            農園体験会の一場面

子供たちが自分たちで粉を捏ね、お湯にくぐらせ、ヤセウマを作っている。

〇小麦粉を使った商品開発 及び お客様に向けたレシピ開発
小麦粉、特に古代麦とのブレンド粉が、ある程度、量が確保できるようになり、本格的な小麦粉を使った料理のレシピ開発を進め、商品開発のバリエーションが広げられることになった。
思い描いたものは、パン・クッキー・ドーナツであり、農園主が子供の頃、食べていた様々なおやつであり、万頭であり、ガレットであり、クレープである。
この小麦粉の特徴は、何と言っても麦本来の味香りが出ており、グルテンは少ないが、古代餅麦の特徴が出ており、粘りがある。早速に様々な商品開発に挑むが、それぞれに、水の分量に難しさが出た。
 
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兎に角、重量感があり、存在感ありで、何より具も美味しいが皮の美味しさが際立つ。

「野菜万頭」
具は数種の旬菜に少量の豚肉。隠し味に乳酸発酵した古漬で旨味を添えて。皮は古代麦ブレンド粉。
最初に野菜の旨味が現れ、すぐに麦の香りが口いっぱいに広がる。全粒粉使用によりビタミン類豊富で食物繊維に溢れているため、ずっしりとお腹に溜まり、小さいが2ケも食すれば満足感を得られる。
小・中学生が一度に5~6ケ平らげてしまうのには驚かせられた。
 
「スコーン・クッキー」
スコーンは喉に閊えて、水無しでは食べ難いので私は嫌いでした。ところが、このブレンド粉で焼いたものは、そのまま食べられた。この古代麦は餅麦であり、もちもち感があるためではないか。
いずれもやはり腹持ちが良い。手作りジャムなどを添えて、これは大人達にも好評であった。
 
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これも体験会での一齣。子供たちが焼いたクレープ。形は悪いが、美味しかったのでしょう。次々と口に放り込む。残ったものは、今度はお母さんたちがきれいに始末してくれました。大人も美味しいのですね。

ブレンド小麦粉のクレープ」
私が子供の頃、隣のお母さんが焼いてくれた「流し焼き」が定番のおやつで、皆で遊んでいると、
「できたよ!」と言う声に、寄り集まって食べていた。その香ばしくて美味しかったことを、いまでも覚えている。
料理体験会の際、薄く焼いたクレープに黒砂糖を入れて、中に黄な粉を挟んで、くるくるっと巻いて食べた。あまりにも食べ過ぎて子供たちは昼御飯が進まなかった。お皿に30ケほど残っていた。
10人ほどのお母さんたちが折角の料理なので、皆さん腹いっぱい食べたはずなのに、終わってみたら、そのお皿には一つも残っていなかった。
このクレープはシンプルなだけに様々なバリエーションが作れる。あんこ・果物・ジャムなど・・
チーズ・ハム・卵や野菜を置いてオーブンで焼く包み焼(ガレット)もできる。
 
小麦を捏ねて伸ばし、湯がいて、黄な粉(砂糖・少量の塩を加える)をまぶして食べる。
歯ごたえがあり、もちもちとした食感があり、子供たちはみんな大好きです。これはだんご汁と並んで大分の郷土のおやつです。
 
「石垣餅」
さつまいもの時期になると、農園では必ず出てくるのがこの石垣餅です。
芋をサイコロ状に切って、小麦粉と混ぜて捏ねる。それを丸めて蒸し器に掛ける。
 
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パンらしきものとなりました。中力小麦と古代餅麦のブレンド粉ですから、グルテンが少なく、余り膨らみません。ところが、何も味付けしなくともそれだけで麦の香りと味の深さで食べてしまいます。パンとは、麦からできているのだな!と改めて実感する。

「パン」
強力粉が70%程度は入っていないと、パンとは呼べないのかもしれないが、中力粉麦と全粒粉古代麦の製粉で焼くと、外はカリっと、中はもちもちのパンができる。麦の味と香ばしい香りがする。
小麦アレルギーの子供さんにも使えると考えて、作ったもの。何人かのアレルギーをお持ちの子供さんに食してもらったが、アレルギー症状の発症は出なかった。
  
以上のうち、野菜万頭とパンは水加減の調整などが難しく、かつ、手間もかかるため、むかし野菜の邑で商品開発を行い、お客様へお出しすることに決まった。
その他は、レシピを付けてブレンド小麦を販売することにしている。

苦労して育てた自然栽培の穀類の味は農園主の予想をはるかに上回り、実に味わい深いものになりました。