農園日誌Ⅱー「活きること」PART27

2019.7.24(水曜日)曇り、最高温度31度、最低温度20度

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                雑草に覆われつつある穀類畑

 由布市挟間町古市の圃場(旧田圃)約4反も草木堆肥を撒き続けて5年目を迎えている。土はようやく団粒化し始めているものの、何しろ旧田んぼのため、常に雨の事を気にしなければならない。特に大豆を蒔く時季は、7月の梅雨時期と重なる。

この穀類畑は、除草剤を使わない。最も全ての圃場もそうであるが、このように広い面積の場合、どうしてもある程度粗放的な農業にならざるを得ない。
そうすると、いつも課題は草対策となる。簡単に「除草剤を撒いていないんだね」とは言って欲しくはない。
おそらくは、除草剤を使っていない穀類畑は世界でも無いのではないかと思ってしまうほど、大変な労苦を強いられる。

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 昨日、男子全員で約1反半の大豆畑の草刈りを行った、5人で半日を要した。
畝間を草刈り機で草を刈り取るのだが、犠牲者をなるべく少なくするために、慎重に草刈り機を畝間に入れる作業のため、兎に角時間が掛かる。
通常はいきなり畝間に管理機を入れるのだが、しつこく振る梅雨の雨のため、埋まり込んで使えない。そのため、先ずは草刈り機ということになってしまう。
残すところ、あと、4.5反もある。気が遠くなる作業を続けねばならない。

これが穀類の自然栽培なのです。


「活きること」PART27

2018.12.11   穀類の商品開発-PART
 
 大豆の収穫も終わり、小麦・裸麦・古代小麦などの麦類と合わせて穀類は一応出揃った。
とうもろこしは残念ながら芯喰い虫(我の幼虫)にやられ、今年度の収穫は5キロも無かった。残念ながら、トウモロコシの栽培は、必ず浸透性農薬が必要なようだ。
スタッフが言った。それなら、トウモロコシ栽培は残念すべきですと・・・
つまりは、今後とも浸透性農薬を使うことは無いということです。

※浸透性農薬
 ネオニコチノイドなどの分解しない農薬であり、野菜に浸透していき、それを食べた害虫が死ぬ、と言った農薬の事を総称して浸透性農薬と言う。
現在、日本で使われている農薬の推定70%を占めている。

穀類の実験栽培も、穀類の圃場の土育ても一段落し、来年度からは、本格的な量産体制に入ろうとしていた。今年度終わり頃からは、それを見据えた穀類の商品開発を進めようとしていた。

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何故今、穀類なのかと言うと、
お米は日本人の主食である。唯、近年は三度の食事にお米を食する家庭は減ってきており、パスタや麺類そしてパンを食べる習慣がより強くなってくる。その原料はいずれも麦である。
そうなると、野菜に合わせて食べる食事は穀類及びその加工品へと必然的にシフトしていくことになる
また、近年、三度の食事が必ず食べられているかというと、疑問が出る。
そこで考えられる食事は、代用食、若しくは中間食、さらにはおやつ感覚の食事と言うことになる。
 
それらの食生活の変化に対応して、「如何に健康で健全な食」を、消費者に提供できるかをむかし野菜の邑では考えようとしている。但、野菜を10数年作り続けて、いつも何かが足りないと感じていた。
日本人の主食であるお米は、仲間である平野さんが徹底した自然農米をすでに生産しており、むかし野菜でも販売していた。
日本人の昔からの食生活の中に、お米ほど多くは無いが、むかしのお百姓さんは、米は年貢として五公五民として取り立てられていた。そのため、生きるために、喰うために、麦・稗・粟などを畑で栽培して米と混ぜたり、団子や餅にして食べていた。その多くは、全粒、若しくは全粒粉で食べられていた。なるほど、むかしの農家は健康な食生活をしていたのでは無いか?と考えた。
白米は脱穀すると、麦は製麦してしまうと、ビタミン類やミネラル類がかなりな部分消失してしまう。
始めて植えた麦の穂が黄金色に染まる麦畑を眺めていると、何故か涙が出ていた。
これが大地の中で生かされていると言う事か?生命の営みを感じてしまう。
 
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以前から、完全無添加な加工品であり、醗酵食品である「醸造味噌・乳酸発酵の漬物」は随分と製造してきた実績がある。
今回は、草木堆肥で育てた圃場で、除草剤や農薬を使用せず、自然栽培の穀類を育て、その原料のみを使った新たな商品開発を行おうと考えていた。
大量流通市場の急速な伸展に伴い、食の簡便化・効率化・規格化が進み過ぎて、現在人は、本当に美味しい、あるいは、栄養価の摂れる食べ方を見失いつつあるのではないか?
そこで、考えた開発のヒントは、「古きを尋ねよ」であった。

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○むかしから農家では、麦を焙煎してヤカンで沸かして一晩寝かせて麦茶を作っていた、なかでも美味しいのが、裸麦の麦茶であった。滋養豊かな麦の味香りと旨みをじっくりと引き出す事が出来る。

「麦茶」―原料裸麦
この原料の多くは、六条大麦などの大麦である。市販の麦茶はペットボトルで販売されているものも多いが、かなり焦がして砕きパックに入れて簡単に水出しできるように設定されているものも多い。
当農園では、むかしながらの風味のある麦茶の作り方にこだわった。
やかん、若しくは鍋で焙煎した麦を煮出し、一晩寝かせてじっくりと麦の味香りを引き出す方法を選択した。スタッフ達で飲んでみた。苦味ではなく、鼻にいきなり、焙煎した麦の香りが飛び込んできた。
さらにふくよかな甘い味や香りがその後を追ってきた。「旨い!」と感じた。
これなら、冷たく冷やして飲む夏場だけでは無く、秋冬も暖かい麦茶が美味しく味わえる。
やかんに残された麦も捨てるのはもったいなく、口に含んでみた。薄く塩を振ったら「麦のリゾット」であった。
 
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○草木堆肥で数年以上、土を育てた圃場でできる裸麦と日本固有の交配させていない古代麦(一粒餅麦)を一定の割合で混ぜたら味香り豊かな麦ご飯が炊けるのでは無いかと考えた。
 この古代麦は、品種改良されていない餅麦の系統で、ご飯に混ぜる雑穀として食べられていた。
 
「麦ご飯セット」―原料、半精麦した裸麦と全粒の古代麦
最初に取り組んだのは、古代麦はその強い味香りと粘りの特性を活かすため全粒は決めていたが、食べやすくするため裸麦をどの程度精麦すべきか?どの比率でブレンドするかと言うことであった。
ご飯と一緒に炊いてみて驚いた。今まで食べていたご飯と違っていた。
ご飯に旨みが強く感じられ、何より驚いたのが、その香りであった。子供の頃に健康に良いからと言われて食べさせられた麦ご飯とは全くの別物であった。暖かいときと比べて冷めたときも麦の嫌な臭いはせず、むしろ冷えた時の方がより味香りが強いような気がする。
歯にさわるやや硬めの古代麦のプチプチ感も面白く、アクセントになっている。
 
市場では、五穀米や雑穀米などの、ご飯に加えるブレンドされた雑穀が健康に良いなどと言われ、出回っている。唯、味も香りも乏しく何より旨みが無い。
これはおそらくは、ミネラル不足や化学肥料施肥(勿論除草剤もそれに加わると思われる)による弊害であり、何より、土を育てていないことがこの味香りの決定的な差として現れている。
 
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○日本での小麦は、高温多湿と四季のある気候風土では、そのほとんどが中力小麦である。
 グルテン(タンパク質)の含有が少なく、パン等には不向きであり、粘りがある特性は、うどん・団子などに適しており、ほおとう・流し焼き(クレープのようなもの)・石垣餅(さつまいもを練り込み蒸して作る)・やせうま(湯がいて黄な粉と絡めて食べる)などの食文化があった。
ちなみに、麦をハイグルテン(高タンパク)に持って行くには、化学肥料などの強い高窒素肥料を施せば、ある程度のグルテン使用の小麦は出来る。唯、当農園は高窒素栽培は理念に反しており、土作りに数年を掛ける途を選択している。
 そんな食文化は次第に廃れ、今では、日本の小麦(中力粉)を生産する農家も減り、道の駅等で、地粉としてささやかに売られているだけである。
兎も角、小麦は製粉し、料理のレシピを付けて、古くて新たな食文化を作り
出すしか無いと考え、商品開発を進めようとした。
 
「小麦粉」―半分精麦した中力粉 & 古代麦の全粒粉のブレンド
小麦粉は、そのグルテン含有量によって薄力粉・中力粉・強力粉に分かれる。日本では、このうち中力粉が栽培されている。他は日本の気候風土に合い難いからです。
一般的には、薄力粉はクッキーなどに、強力粉はパンに、中力粉は麺類へ使われる。最もパンなどは、強力粉だけでは難しく、他の小麦粉をブレンドして使われている。
麦には食物繊維・ビタミン・ミネラルが多く含まれており、健康食品と言われているが、その多くの栄養素は製麦する前の皮や胚芽のほうにあり、白くなった胚乳には極端に減ってしまう。
栄養素を逃がすまいとして、全て全粒粉にすると、ごわごわとし、重たい感じになり、食べ難くなる。
粉にする場合に、この比率をどうするかの結論を出さねばならなかった。

イメージ 8               向かって左が「弥富餅麦」

弥富餅麦は、欧州のスペルト小麦とは異なり、純粋に日本の古代小麦である。
おそらくは、日本固有の原生種と思われる。
この全粒粉を日本の中力小麦の粉とブレンドしたものが、当農園の小麦粉。
栽培する契機となったのが、お客様からの要望「小麦アレルギーを持つ子供さんの悲しい顔」でした。