農園日誌Ⅱー「生きること」ーPARTⅩ農園セミナー開催

31.3.20(水曜日)曇り後晴れ、最高温度17度、最低温度4度

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   冬の間に仕込んでいた夏野菜を踏み込み堆肥の温床ベットで育てる

この夏野菜達は4月初旬頃植え込みではあるが、遅霜の心配もあり、
例年4月10日頃に定植する。どの野菜を早く出荷し、畝を空けて夏野菜定植に備えておくか、毎年頭を痛めている。


「生きること」PARTⅩ
2012年1月29日―美味しい野菜作りの農業セミナー開催

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地域活性化政策と称して、国の補助金により全国自治体にて、様々なセミナーが開かれた。
由布市では、その一つとして、私に依頼があり、「美味しい野菜作り」をテーマとした農園セミナーを開いた。この機会に、かねてより考えていた
地元の農業者を糾合させようともくろんだ。
講義は、化学肥料を使った慣行栽培・畜糞を使った有機栽培・無肥料無農薬の自然栽培、そして、昔ながらの草木を使った自然循環農法を比較しながら進めた。

テーマは、
    中山間地の少ない土地を活かした高回転・密集栽培など、高集約農業のこと、
    持続可能な農業として微生物の力を借りてどのようにして土を育てるか、
    畜糞に含まれる(配合飼料に含まれている)大量な抗生物質や薬品のこと、
    高窒素栽培(慣行栽培や畜糞有機栽培)による有害な硝酸態窒素(毒素)のこと、
    野菜が美味しく育つメカニズム(生理現象)のこと、
    低窒素栽培によってのみ、実現する糖質・ビタミンなどが多く含まれた
  完熟野菜のこと、
    孤立化する一人農業ではなく相互扶助できるグループ営農のこと、
    地域ぐるみで有機野菜による差別化農産物を使った加工品製造のこと、
    マーケティング手法による商品開発と販売のこと、

など多岐に亘った。そのため、テーマごとに7回も開き、人気セミナーとなっていった。
 
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約二時間にも及ぶセミナーの後、むかし野菜による女性スタッフ手作りの農園ランチを振舞った。皆、その味香りの濃さと食感の良さに満足した模様で、スタッフ達の食べる分は残らなかった。
昼食後、座談会に移り、様々な質問が出されたが、ある人から、害虫対策の質問が出た。
 
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私はこのように答えた。

有機野菜とは、消費者の皆様も無農薬野菜と勘違いしているのです。自然界の生態系は微生物・放線菌・小虫・小動物と猪・鹿などの動物で自然循環の仕組みが形成されております。
野菜にとって、共生してくれる微生物や放線菌もおれば、青枯病を起こす有害菌もおります。
土作りが進んでいくと、土壌の中に豊かな自然循環型の微生物層が出来ていきます。野山の土ですね。
そうなると、青枯れ病などの病気は次第に減少していき、5~7年もすると、出なくなります。
どれだけ科学が進んでも、未だに人の体が本来持っている自然治癒能力などのメカニックすら解明されておりません。
まして、自然界に存在する微生物・放線菌・小虫などが織りなす生命のドラマは、ある時は食い合い・競い合い・助け合う自然循環の秩序は神のみぞ知る世界であり、到底、人智の及ぶところではない。

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     椎茸栽培のため、くぬぎの原木を切り出しているところ

約一年寝かして、二年目に椎茸の駒打ちをし、さらに一年寝かして、圃場に立てる。ようやく菌が回り椎茸が芽吹く。これが露天原木椎茸の生産です。
現在市場に出回っている椎茸は菌床椎茸が多く、原木椎茸と表示があるものでも、暖かい
ハウスで水遣りなどをしながら育てている方が多いのが現実です。最近干し椎茸が使われなくなってきており、それならばということで、この味香りが高く高品質な露店原木椎茸を生椎茸として出荷してはどうか、との提案を行い、むかし野菜の邑から全国へ野菜と一緒にお届けしている。

但、やっかいなのが害虫ですね。
自然農などを主張される一部の方々から、ひどい話になると有機農業をされている人までもが、「この農法を遣っていると虫が出なくなります」と言った奇妙な話が伝わってきます。
そうなると、その畑だけ、虫が避けていくことになります。皆様は信じられますか?自然界には虫は居るのです。宗教がかった話には惑わされないでください。
自然農とは、畜糞多投の有機農業に警鐘を鳴らした福岡氏から始まっております。そもそもが、彼は自給自足の野菜作りを勧めていたもので、販売目的ではなく、家庭菜園なのです。
ある厳格な自然農を行っている農業者の話ですが、「もし、その圃場に大量に害虫が発生したらどうしますか?」と聞くと、彼はこう答えた。「放棄して他の圃場に移ります」と。
彼は自然農の農産物販売だけでは、生活ができないため、養鶏場に働きに出ております。また、彼は膨大な山地を有しており、引っ越しはいつでも可能だったそうです。
持続可能な農業とは、畑を汚さない自然循環農業のことだけではなく、そこで暮らす農業者も持続的に生活が成り立たねばなりません。
 
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    害虫により無残にも葉っぱが喰われ、茎だけになっている蕪

 農業を始めた頃は、まだ規模も小さく、忌避剤や虫取りで何とか凌いでいたが、規模も拡大し始めた頃、育苗ハウス内で白菜の種を蒔いても芯に目に見えない位小さな虫が付き、気が付くと幼苗は穴だらけになっていた。
直播に切り替えてみたが、芽が出て喜んでいたのも束の間、一日で、みな、消えていた。
異常な害虫の発生に成す術もなく、茫然と立ちすくむ。
それから、幼苗段階において、農薬使用のテストに入るきっかけとなった。

私の経験談をお話しします。数年前までは、虫取りをしながら農薬も使わず忌避剤だけで我慢していると、野菜の成長のほうが早くて、穴だらけでしたが、何とか出荷が可能な状態でした。
しかしながら、5~6年前頃から、発芽したばかりの芽が一夜にして全て食い尽くされたり、定植したばかりの幼苗が壊滅状態になったりと、温暖化により害虫の異常発生が続いております。
木酢液・唐辛子・にんにくなどで作った忌避剤を使っても、隣の畝に集団で移動してしまうだけです。
あるお客様から、佐藤さんの処は、白菜・キャベツはないのですか?と質問された。ごもっともです。
その後、様々な農薬を探し、テストしてみました。
野山の自然の中では、そもそもが害虫と言うものはなく、自然界の秩序で落ち着くところに落ち着いていきますが、人間が入った田畑となると、模様は全く変ってきます。それが野菜にとっての害虫です。
その対策をしない限りは、野菜にとって、人間にとって、甚だ好ましくない結果となってしまいます。
 
 その中で分かったことがあります。効力が強い農薬(人間にとって劇薬)ほど、分解(無力化)が早く、効力は弱いが効き目が長く続く農薬ほど、
分解が遅いということです。後者のほうがむしろ危険です。
慣行農業では一週間に最低一回この農薬を使用しております。分解が遅い
農薬が野菜に、土壌に残っていきます。所謂、残留農薬問題です。
 
人にとって、危険な農薬(劇薬)は、分解が早くなるように設計されております。そうしないと、虫より早く人間が死んでしまいます。
分解(無機質化)には、光合成分解・水溶性分解・微生物分解・自然分解などがあります。
つまりは、どうしても農薬を使わなければならない状態になった際、人が食べる野菜にとって農薬を残留させないためには、効力の強い農薬を適宜に使うしかありません。(瞬殺する農薬を選ぶこと)

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幼い間、皆様は、子供たちだけで外に置いておくことができますか?
勝手に育てと言えますか?
野菜達もそうです。幼い時期は自らが身を守ることもできません。成人してからは、野菜達は、ちゃんと害虫から実を守る術を持っているのです。
味香りの濃さがそれです。害虫はその野菜の濃い香りを嫌います。
但、幼い時期は、その匂いや味が極めて薄いのです。
そのため、幼苗時期は、人が守ってやらねば大人には育ちません。
この白菜も幼苗時期は農薬を使って虫から守ってやり、何とか中学生にまで育ちました。
ちなみに、化学肥料による慣行農業(畜糞多投の有機野菜も同じです)の場合、野菜は味香りが極めて薄く、害虫の大好物になります。


その実験はこうです。
劇薬指定を受けているある農薬をブロッコリーの半面側に散布しました。次の日の朝、その畝に行ってみると、すこぶる元気に虫達が音を立てて葉っぱを齧っておりました。
確かに害虫の死骸は残っているのに、なぜか虫は元気?
これは、その劇薬が半日で分解されてしまったため、反対側の虫が農薬散布側に移動しても、農薬の効果は無くなっていたためです。

と言うことで、発芽段階で一回、幼苗段階で一回、幼い段階さえ守ってやれば、成長(出荷)段階では、よほどの事が無ければ使わなくて済みます。
但し、現在国が奨励している浸透性農薬(野菜に染み込みそれを食べた虫が死ぬ)やサリン系農薬は絶対に使わないことです。土中消毒と称している農薬もほとんどがその浸透性農薬です。
ちなみに有機JAS奨励の自然由来の硫黄系農薬やバクテリア兵器(虫の生殖機能を犯す)は、自然の生態系を破壊することに繋がり、決して使ってはいけません。近年自然界のミツバチが居なくなったのはそれらの危険な農薬が大きく影響しているようですね。

 最後に、有機JAS認定を受けられた野菜も自然界の強烈な試練は受けます。その点はこれ以上申し上げるのはご遠慮しておきます。一所懸命に頑張っている有機農業者もたくさん居られますので。
要するに、有機無農薬と言う概念は自然界ではないのです。それを強要するようなマスメディアや消費者団体に申し上げたい。その強要が(反論できない)有機農家を苦しめていることを・・・
 
皆さん、その話を聞いて、一様にほっとした顔をしていた。世間では、有機無農薬野菜などを顕現されて言われており、農薬は悪であり、有機野菜や自然野菜には農薬は使っていないと思わされていた。
実際に家庭菜園レベルで野菜を作ってみても、一夜にして新芽が喰われていたり、キャベツなどはすだれ状になってしまい、食べるところも無くなってしまうと言う現実を目のあたりにしてきた。
その結果、私から農薬の適切な使い方を聞き、土壌を汚す農薬や残留しない農薬の話が、私と彼らとの距離を一気に縮め、逆に、彼らを一様にほっとさせたようで、それから、座談会は熱気を帯びていった。


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皆様、「こんな話はどこに(有機農業の説明会など)行っても聞けなかったし、今日は楽しかったね」と言いながら帰られた。結果は、残念ながら、空振りに終わってしまった。
受講者の大半が、家庭菜園程度は行っているものの、消費者であったからでした。
一部には、農業者の方もおられましたが、草木堆肥作りは、あまりにもハードルが高く、さらには、グループ営農の大切さも彼らには染みていかなかったようでした。
この時点では、既存の農業者はすでに高齢に達しており、やる気さえ失せてしまっていたようです。