農園日誌ー春夏の準備

30.1.31(水曜日)曇り、最高温度6度、最低温度ー2度

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                ビニールトンネルを剥ぐ

 日一日と日が長くなり、春の兆しは時折覗くもののこの冬は収まる処を知らず、
二月になろうかというに、益々寒さが厳しくなっていく。
トンネルの中で越冬している野菜達は、氷点下に下がる夜から朝にかけて凍てつ
き、日が昇ると徐々に解凍されていき、生返る。その繰り返しをするうちに、一つ欠け、二つ欠け、生存をかけて生きる営みをしている。
不思議なもので、ゆったりと植え込まれた野菜は、孤立し、その自然の試練に耐えきらず、溶けていく。逆に密集した野菜は互いの体温で守り合い、生き残ることが多い。但、気温が上がり過ぎる日が続くと、蒸れて共に倒れていく。

この難しさが厳冬期の野菜栽培である。
表題の写真。何故、冬なのにトンネルを剥ぐのか?
その答えは長い経験に寄らなければ分からない。
幼く成長期の野菜は蒸れて溶けることは少ない。但し、寒さにより生長していないように見えても大人になっているものもある。
そのような成長した野菜は全てとは言わないが、むしろ、寒に当ててあげた方が溶けることは少ない。逆にまだ成長期の野菜は氷点下及び霜に当たると白くなり、やがて命を落とすことになる。
写真のほうれん草と人参はすでに成長を終えており、あえて、寒に当ててやることによって、茎や葉っぱが寒さに耐えていくために、糖分を蓄え、葉物は肉厚になろうとするし、人参は根に養分を蓄えようとする。

これが生命の営みである。特に露地栽培の場合は、この野菜の営みを深く知らなければやっていけない。およそ最低でも10年を要する。
このことが農業後継者が育たない所以であり、露地栽培農業の難しさである。

春夏野菜の育苗
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春野菜(キャベツ・レタス・ブロッコリー等)  夏野菜(茄子・トマト・ピーマン系)

同じ時期に種を蒔いたが、春野菜は双葉から本葉がすでに出ようとしている。
右の夏野菜はやはりというか、未だ一つ二つしか発芽していない。(葉のように見えるのは雑草です)

奇異に感じられる方もいるかもしれません。
皆様は春野菜は春に、夏野菜は夏に育てるものとお思いでしょうが、春夏野菜ともに、極寒の冬に育苗しているのです。
まさに自然の摂理に逆らって苗を育てないことには、4~5月の春野菜、7~10月の夏野菜とも、消費者の口には届かないのです。
季節に逆らって発芽させ、苗を育てるには、それなりの工夫と経験が必要になる。


余談ですが、現在、ほぼ隔週にて、海産物を皆様にお届けしています。
ー干物(実際には開きですが)と海藻を同時にお届けしておりますー
今日、皆が出荷作業をしており、農園主は草取り作業をしておりますと(寒いです)、
女性スタッフから電話があり、毎週配送の方には、干物だけを送って良いか?との
連絡が入る。
「一回の金額が嵩むから・・」とのこと。
毎週の方には二回に一回しか海産物を送っていない。翌週に送ろうと一緒ではないか、と思うが、どうやら主婦目線では違うらしい。
男は合理的に物事を捉えて行動するが、女性は目の前を考えて行動する。
皆様は如何お思いか・・・
かわいいと言うか可笑しいと言うか、このようにして世の中は平和に回っているようだ。


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極寒に種を蒔いたサラダセットの畝。

自然条件が厳しいため、あちこちで歯抜け状態となっている。日が昇り、暖かい一日、昼間の一時、トンネルを剥ぎ、夕方はまた降ろす。
ハウス栽培であれば、このようなリスクも負わず、苦労もせずとも良いのだが、ハウス野菜と露地野菜では美味しさに大きな差がでるため、このような手間とリスクをかけての日常の農園である。

むかし野菜グループでは、中山間地の多い地域の浮揚を期して、高品質の野菜等を商品化し、基本的には巨大流通を経ずして、消費者に直接、安心して食べらえる
また、生産者の地位の向上を考えて、野菜を生産するグループを作ろうとしている。その試みは、国・県・市町村には理解してももらえず、孤軍奮闘しているというのが実態です。
そうした取り組みに参加してくる若者が居ないのが目下の大きな課題となっている。
国等の施策は無視しても良いのだが、未来を背負おうとする若者が居ないのか、
このことが、農園所の心を曇らせる。
但、この試みを理解しようとしておられる消費者の方々が400数十名おられることがただ一つの救いです。