農園日誌ー年末を迎えて

29.12.20(晴)最高温度10度、最低温度2度

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                   トンネルの中の白菜

 白菜は、8~9月に種を蒔き、遅くとも10月初旬には定植し、11月の秋の気候で
成長し、12月初旬頃には出荷となる。
これは今までの気候でのこと。
今年のように晩夏から初秋にかけて雨が多く、日照不足となり、土が塊り、空気が土中に入らず、追い打ちをかけるように虫が大量発生する。種を何回蒔いても、まともに成長しない。
11月の終わりころ、ようやく、虫害も減り、気候が落ち着いてきて、種も発芽し、順調に生育し始めたころには、いきなりの厳しい寒気を伴う冬がやってきた。
野菜が成長する秋が無く、夏から一足飛びに冬がやってくるようなものだ。
露地栽培・低窒素栽培(自然循環農法)にとって、今年のような季節は、厳しいものとなった。

このような気候の変動が今後も続くと思われ、様々な工夫と気候の読みあいが必要となり、気が休まる暇もない。
今までの数年間を振り返ってみると、この繰り返しであったような気がする。

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ビニールトンネル用の
竹の支柱を作っているところ。

竹を割き、鋭利な角は
鉈で削ぎ、ビニールが裂けないようにしている。
そのため、、一時間で慣れたものでも30本程度しか作れない。
一冬に500本以上が必要となる。


イメージ 3来春に出荷用の人参と芽キャベツ以外は、全てトンネルに覆いつくされた二番の畑。

冒頭の白菜もここに植わっている。
おそらくは巻かないと
思われる。
それ以外にもここでは葉野菜セロリ・キャベツなどが育っている。



 このような厳しい気候変動の下で、文句も言わず、むかし野菜を待ってくれている
お客様にどうしたら答えられるのか?
さらに追い打ちをかけるように運送業界の慢性的人手不足の影響で、各社一斉に有無を言わさず運送料金の値上げの通告があった。

 農園主としては、かねてより、考えていた非常の手段を選択した。
海産物の混載発送である。
大分は豊かな漁場に恵まれ、海産物(干物・海藻・蝦)が豊富にある。
野菜が尽きてしまう11月中旬に間に合わせるように、薬品まみれになっていない海産物を銀行及び県の情報を集め、探し始めた。
と同時に、並行して、お客様へ海産物混載発送の是非を問うインタビューを試みた。
これには農園スタッフ一同の反発がかなり激しく、さらには、海産物加工場に農園主の考えているような健全なものが無い。
ようやく三社との交渉に辿り着き、今後の商品開発に協力してくれるとの合意を得た。
11月に中旬頃から、合意を得た消費者のみ、海産物発送を行うことになり、何とか間に合った。農園始まって以来の11月からの休園は何とか免れた。

現在のところ、海産物混載発送の合意を得られたお客様の反応は良く、美味しいですとのご回答にほっとしている。
高い送料を払っても、食生活に必ず必要な食材(今回は海産物)であれば、野菜及び農産物加工品だけではなく、食べていただけると考えていた。
これで何とか費用合理性が保たれる。

中国の古典にこんな一節がある。

 「両りを説く」

理念を追求していくと、必ず行き詰まる。
道理を説いても人はそれだけでは動かない。
そこには「利」が無ければならない。
「利」だけでは、世の中、せちがらくなり、利を突きつけられれば必ず大きな利に動かされることになる。
そこには人としての「ことわり=理」がなければならない。

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来春に向けて11月に種を蒔いた野菜達が何とか成長し始めている。
1月8日からの初出荷には、人参・大根・葉野菜・サラダ類などが間に合ってくれると
信じております。

経営判断には、常にこの「両り」が必要となる。
経営を間違えると、社員だけではなく、お客様の期待も裏切ることになる。
そこには、経営者の孤独が待っている。
例え、全スタッフの強い反発があったとしても、お客様の批判があったとしても、
経営には結果しかない。
経営とは、その孤独に耐えられる人でなければならない。
昨今の大企業や政治家及び官公庁の様子をみると、果たして、孤独に耐えているのか疑問が出てくる。

来年が良い年であってもらいたい。むかし野菜に関わっている方々の幸せを祈るしかない。