農園日誌ー地域産業の育成とナチュラルマーケットの拡大

29.11.8(水曜日)雨後曇り、最高温度19度、最低温度13度

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              玉葱の植え付けが始まる(8番の畑)

 今年も玉葱シーズンが始まった。この畑におよそ24,000本、極早生品種を
植え込む。ついでに越冬大根も三畝居候させる。
総勢6人での植え込み作業。朝から堆肥を畑全面に降り、畝立て後、植え込み。
赤玉葱も含めると、今季は、45,000本、植え込みとなる。
11月に植え込み、収穫は4月~5月にかけて。その間、除草作業が大変に労力が
かかる。当農園では、雑草防止・保温のための黒マルチはしない。
産業廃棄物の山ができることと、外気とのやりとりが無くなり、大きくなっても美味しくならないからです。やはり、自然の中での呼吸が必要なのでしょう。
45,000本植え込んでもおそらく、持って9月頃まで。500人に出荷していると
すぐに底をつくことになる。新たな圃場が欲しいが、土作りに3年以上を要するため
すぐにとはいかない。


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ようやくキャベツ・赤キャベツ・白菜の植え込みができた。
遅れること1ヶ月半。キャベツは何とか結球してくれるだろうが、白菜は間に合わないだろう。当農園定番の巻かない白菜となる。それでもここはプラチナ級の二番の圃場
美味しいことは間違いない。
キャベツは700個定植したが、一回りで無くなってしまう。次のキャベツは育苗トレイの中で、ポット揚げを待っている状態。今年の冬が緩やかなものであって欲しい。
出荷する野菜が無いことは、実に苦しい。
上の写真は同じ場所。植え込んだら水遣りをして、即、パオパオ(織布)をかけた。
保温と虫対策を兼ねる。


地域産業の育成とナチュラルマーケットの拡大

2.変化を迫られる農業分野における事業ドメイン(領域)

 農業生産者は長い間、国の農業保護政策に守られ、かつ、その下部構造を支えてきた農協組織の中で競争の少ない(その意味では停滞した)ひとつの農業の生産体系ができあがってきました。そうした環境の中では、農業生産者は消費者市場の変化やマーケティングを意識することもなく、事業領域や事業理念を模索し続ける必要もなかったと思われます。しかしながら、国際的に情報化が加速していく中、競争力の乏しい日本の農業が国際競争の渦中にさらされ、日本人の生活スタイルも洋風化が定着し、食生活に米離れが進み、稲作を中心とした国の農業政策が破綻しつつある状況では(既存の農協組織では維持が難しい状況)、日本の農業生産や流通は新たな事業ドメイン(存在領域)と事業コンセプト(理念)を模索せざるをえない時代に入ってきております。

それは同時に農業を生活基盤とした多くの地方の活性化や地域産業の育成の課題でもあります。
 
(1)農業分野における市場環境及び市場価値感の変化

①農業政策の方針転換
 あらゆる商品において国際的競争が激化し、農産物分野での輸入自由化を迫られるなど、既存農業はすでに市場競争力を無くしつつあります。
日本の食料自給率は40%台と落ち込み、穀類だけに限定すると30%台と年々低下している。これは日本の米の自給率が100%を超えていることを考え合わせると、日本人の食生活に米離れが進み、主食がパン・麺類その他に移っていることを表している。
主要先進国穀物自給率の推移を見ると、フランス・カナダの200%のほかにアメリ
・イギリス・ドイツなどいずれも120%を超えており、それも自給率は年々微増している。日本ほど生産と消費バランスの悪い国は他には例がない。日本の産業構成及び農業政策の失敗が浮き彫りとなっている。
 
 これらの状況ではさすがに国も何らかの積極的な農業政策実行を迫られており、農業者一律保護から指定保護へ、稲作から雑穀その他への指定作物奨励へと変化しております。
従来型の既存農家の保護政策だけでは農業の構造改善ができないことは周知の事実となっております。
 
その意味では,戦後の高度産業育成政策の中で放置されてきた農業という事業領域へ新しい風が吹きやすい市場環境になりつつあります。
 
 「販売への支援なし」、農産物の転換を果たしても、流通面の指導・支援
  がない。
 「金融調達」は農協系金融のみ、事業としての市場認知度が少ない。
 
②消費者の生活スタイルの変化と食生活の多様化
 生活習慣に洋風化が定着し、食生活にも大きな変化が生まれている。主食が米からパン・パスタ・麺類等へ移っていることや、情報化の急速な進展で海外の食品が日本に多数、流入しており、そのために、副食(おかず)が充実し、米の消費が約30年間で半減している。このことは、日本の農業が米中心の農業体系から脱却して、需要が大きくなってきた副食などの多様化した農産物生産の体系へ向かわざるを得ないことを現している。
 
横並び的農業からの脱却
 「消費行動の多様化」は農業の自立を促している。


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左は草の上に、放牧牛の牛糞を重ね、その上に木や葉っぱの破砕屑を置き、
ラクターで混ぜ込み、タイヤショベルで積み上げる、草木堆肥作りの風景です。
右はその堆肥が約1ヶ月半経過した堆肥です。
月に2~3回堆肥を作り続けている。


③食品の消費欲求の高次元化と量から質への価値観転換の動き
 国民的生活レベルが上がっていけば、国民の欲求レベルは食べることなどの「生理的な欲求」や住むことなどの「安全性の欲求」から、次第に、より高度な欲求である個性の実現や自己の生活スタイルを作ることなどの「自己実現の欲求」が高くなってくる。
例えば、食生活において人並みのものを食べたいという欲求から、よりおいしくて、安全で健康的な食品を食べたいという欲求へ変化しております。
バブル崩壊前後から消費者の価値観に変化が目立ちはじめ、衣食住のうち、特に食品分野において、大都市部に住む消費者を中心にして安全かつ健康・良質な食品に対する関心が強まっております。これは欲求の高度化現象であり、時代の消費欲求というべきものです。
 最近の消費者へのアンケート調査によると、安全な食品への関心度は高く、「農薬や抗生物質等の残留問題」に関心があると回答した人は90%を超しており、消費者の61%が有機農産物を購入したことがあると答えており、そのうち、84%の人が以前に比べて購入量が増えていると回答しております。
さらに輸入原材料については90%以上の人が「不安がある」と答えております。
 
20代後半からは世代に関係なく、輸入原材料・農畜産物の生産過程・製造加工工程・流通過程の順に食品の安全性に対する不安を感じており、やはり生産製造過程への漠然とした「不安とあきらめ」の消費者意識が見られます。

[日本の農業の存在領域]・[日本の農業の存在価値]
 「海外の輸入原材料」について多くの消費者が不安視している。
 「安全・健康・良質志向」は環境問題とともに、「時代の消費欲求」とな
  りつつある。
 「専門的知識の乏しい消費者」には食料品に対する啓蒙活動の場が必要。
 
④食品産業界の動向
 農林水産省のアンケート調査によると、食品流通加工業者の17.2%は今後「輸入品」の比率を高めたいと回答しており、その理由として、価格が安い、供給・価格が安定していることを挙げております。
他方では、今後「国産品」の比率を高めたいと回答している業者も16%おり、その理由として、国産品の方が安全であり、新鮮かつ品質が良いことを挙げております。
このことは消費が多極化していることの現れであり、今後の日本の農業の在り方を示しているとも思われます。
以上のように食品業界からは国内農産物の品質・価格・量の安定と生産供給体制の整備を期待されており、食品流通加工業者のうち、9%は既に国内農業生産者と提携をしており、29,6%は今後提携していく必要性を感じているとの回答があります。
いずれにしても、安全良質な食品に対するマーケット整備への社会的コンセンサスは取れつつあり、それらに対する事業領域は拡大の方向にあることは間違いないようです。
 
[農産物の市場経由率の低下]
 「流通構造の変化」は生産者と消費者の距離を縮める方向にある。
 「消費者の安全な食料品への欲求」「食品流通加工業者の商品価値」
  徐々に変えようとしている。
 
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これは前回ご紹介した高橋水産ではなく、同地区の海産物生産者のものです。
場に立ち寄って買い付けてきた。美味しそうなのですが、(実際には美味しかった)私が考えていた干物とは違う。
やはり、柔らかく水分は多い。冷蔵とは書いてあったのですが、むかし食べていた「とうじんぼし」とは明らかに異なります。
こうなると、どうしても保存料・酸化防止剤などの薬品に漬けねばならなくなる。
今後は時間をかけて探し、むかし野菜の邑の商品コンセプトに見合った商品になるように一緒に商品開発(むかしはそんな必要が無かったのですが)をしなければならないようです。


⑤情報化の進展
 パソコンの普及は一家に1台、一人に1台と言われるほど進んでおります。インターネット通信は様々な商品情報を事業者だけではなく、個人レベルまで瞬時に伝えることができるようになり、商品や専門的情報がまたたくまに家庭の間で飛び交うまでに進んできております。このことは農産物生産にこだわりを持つ生産者が直接、消費者にその生産方法から商品情報を伝えることができるようになったと言えます。
従来から農産物は複雑な流通過程を経て消費者に販売されているためこのような生産者の声は消費者に伝えることが難しい環境にありましたが、「情報革命とも言えるインターネットの普及」「農業という事業に個性や商品開発を要求」しており、「直接販売への道」が開かれつつあることを意味しております。
 
これらの変化から、日本の農業は従来型の大量・均一生産志向だけではなく品質・生産方法などに個性が要求される時代に向かっており、情報革命により,産地直結型の新しい流通形態(簡素化した流通形態)や消費者との直接流通への道が開かれつつあり、農業の自立への可能性が生まれる環境にあります。
以上、マーケットからは農業という変化を促す風が吹いてはおりますが、現実には「様々な障壁」があり、以下ではどのような対応を行ったら良いのか、具体的に検証してみます。
 
コメント
10数年前に書いたコラムでしたが、今読み返してみて、改めて思ったことは、日本の農業は、あるいは地域は確実に崩壊し始めていることです。
新しい芽吹きは出始めてはいるのですが、国の農業政策の無為無策、あるいは、中央志向や地域切り捨ての政策は、地域の老齢化により崩壊速度が加速しております。
そして、むかし野菜グループを立ち上げて頑張ってはいるのですが、何分にも小さなものですから、このグループも体制に飲み込まれないように踏ん張っているに過ぎません。
これからは、野菜だけに止まらず、穀類、加工品へと広げ、地域の海産物や果物等の生産者と手を繋ぐ試みを始めております。
但、「健全で栄養価に富み、美味しく良質なリーズナブルな食」を目指しているだけに、そんなコンセプトを持つ生産者も多くはありません。
多忙な時間を割いて、そんな仲間達を探していく自らの精神力と体力が続くことを祈るのみです。