農園日誌ー地域産業の育成とナチュラルマーケットの拡大

29.10.18(水曜日)終日雨、最高温度19度、最低温度18度

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                大根の種を4畝蒔いたものの

 9月下旬頃に大根をはじめ、アブラナ科の野菜(蕪・葉野菜・サラダセット等)は皆、
代表的な秋野菜ではあるが、10月は曇天時折小雨若しくは雨の日が続き、ほとんど
成長を見ない。
地球温暖化とは必ずしも暖かくなっているばかりではなく、極端な気候変動を伴う。
季節外れの暖気や寒気、異常なほどの長雨、または集中豪雨、極端な乾期などを
繰り返す。
このため、永年続いている農業の季節感(種蒔きや収穫時期など)が狂ってしまう。
それは特に露地栽培を基本とした有機農業には辛い。
当農園(むかし野菜グループ)にとっては、端境期を無くし、年間を通してお客様に
野菜を配送し続ける形態が壊されてしまう。
楽しみに待って頂いているお客様の元に季節野菜が届けられない。それは、皆様が想像している以上に心が痛むことです。

 先週、大分県のブランド推進課と振興局を訪ねた。
その趣旨は、
①運送会社各社が人手不足のため、運賃の値上げを要請してきたこと。

 全国のお客様の負担が増え、それなら、送料に見合う荷の内容にしたほうが良い
のでは!と言うことで、大分県の物産、特に海産物の加工品や山の幸を!と考えたこと。

②農園主が有機農業を始めた目的は、優良な農産物及びその加工品により、疲弊
 が進む地域の活性化が果たせるのでは?ということであったこと。

 大分県のアンテナショップ坐来(東京の銀座で和風飲食店を営む)の創業当時から
農園主は野菜の提供だけでは無く、深くその立ち上げに関与してきており、大分県の埋もれた良品を産物として、主に関東に送ろうとしてきた。
そのため、件のブランド推進課とは長い交流があった。但し、坐来は未だに飲食店の枠を超えておらず、県の当初の目的はしりすぼみ状態となっている。

③むかし野菜の邑グループのお客様(定期購入)が500名に迫ろうとしていること。

 これはスーパーで例えると5,000人の不特定顧客を抱えている計算になる。
そうなると、このグループでも農産物だけではなく、大分県の新たな物産を掘り起こすことも可能となりつつある。これこそ、農園主が思い描いてきた姿に近い。

④当農園の取引先である東京のマルシェに出店している会社との取引があり、そこ
 で中心となって活動してきた社員に独立の気運があること。

 彼は野菜であれば、有機JAS規程にこだわらず、良質な農産物を販売したいとの思いが強く、有為な若者でもある。自分の思いを今の会社では果たせないとの意思が強く、悩んでいた。
彼に提案したのは、むかし野菜グループが支援するから、リヤカー販売(軽トラック)
をしてみないかと言うこと。
都市部では大型ショッピングセンターの時代となり、小さなスーパーは撤退を余儀なくされており、大団地や住宅街に買い物難民が溢れているといった現象が起きている。

以上のことから、その模索に入っている。
とは言っても、当グループを信頼している仲間たちは決して裏切れない。
やるからには、日常的な食生活に健全で潤いのある食卓を提案できなければ意味がない。長い闘いとなりそうだ。

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一本葱;                     九条ネギ;関東の方では値が高いそうだ
下仁田葱と九条ネギの掛け合わせ     一本から二三本に分訣するのが特徴
根深葱とも言う。
何回も土寄せを行い、白根を大きくする。

葱は種まきから定植を経て8~10か月かけて成長する。その間、様々な気候の変動に耐えて、生き残ったものがようやく出荷を迎える。


地域産業育成とナチュラルマーケットの拡大
  
Ⅱ「農業という事業領域」の変化
 戦後の食料難の時代から農政によって手厚い保護を受けていた「農業」は市場原理が働きにくい領域であっただけに、逆に「農業という事業領域」が未発育となっている。
本編はその農業というマーケットを事業領域という視点で捉えてみたいと考えます。
 
1.事業ドメイン(経済的存在領域)と事業コンセプト(社会的存在価値)
 事業者は自己を取り巻く社会的・経済的環境の中で、様々に変化していくマーケットニーズに対して「自己の存続する事業領域を確保し続けること」が宿命づけられております。
又、そのためには、「自己が提供する商品やサービス」が消費者市場にとって、どのように必要とされ、どのような価値があるのか、さらにどのような事業理念を持っているのかなどの「自己の存在価値を示し続けること」が必要となります。
前者を事業ドメイン(経済的存在領域)、後者を事業コンセプト(社会的存在価値)と呼びます。

 例えば技術革新により、算盤が電卓に、レコードがCDプレーヤーに、ワープロがパソコンに取って代わられたりすることは事業ドメインを失った例であり、キャノンが「競争の激化」したカメラ分野の売上比率を10%に減じ、複写機やコンピューター機器の分野にシフトするなどは企業の生き残りをかけた「自己の存在領域」を他に求めた成功事例です。
又、電気・モーター類で「技術の日立」と言われた系列事業体が市場の変化への対応の遅れからメイン事業や生産システムの見なおしや系列整理を迫られた例なども見られます。
 かって、既存の小規模専門店やメーカー主導の専門店などのマーケットに対して、「低価格・利便性・大量多品種な品揃え」という事業コンセプトにより小売流通市場を席捲したダイエーをはじめ、多くのスーパーマーケットや大型複合店舗も、「専門的多品種商品・大量販売・超低価格」戦略などを掲げたカテゴリーキラー「生活習慣の変化や利便性」に着目したコンビニストアーにその「存在領域」を脅かされ始めております。
あれほど商品が安くて豊富な品揃えがあったはずのスーパーにそれほどの安値感も感じず、多くの商品に新鮮さや驚きも感じなくなっております。
これは「スーパーあるいは大型複合店舗の事業コンセプト」が競争激化などによる企業の効率化志向(商品の同質化)や規模の拡大による組織疲労(サービスの低下)などにより、消費者市場のニーズと乖離し始め、顧客志向の「事業コンセプト」が不明確になってきたことにもその原因があるように思われます。
スーパー業界には再度、消費者市場の細分化を行い市場密着化を図り「事業コンセプトの見直し」と、それができる事業体及び組織の再構築に向かう努力が要求されております。
 
 このように、現在は、大手企業といえども市場環境の変化により「存在領域の変更」「事業コンセプトの修正」を迫られており、変革の時代に突入したと言えます。
大手企業といえどもこの事業の存在領域を誤るといとも簡単に傾いてしまいます。

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                      高菜の古漬け

 漬物はむかしはどこの農家でも幾通りかのものはあった。
その農家独自の漬け方があり、味も微妙に異なっていた。
それでも、共通していることは、塩漬けをし、乳酸発酵を促し、手間のかかる職人技の貴重な保存食であったことです。
その文化は代々その家の嫁に受け継がれ、営々と続いていた。
ところが最近では、よほどの農家でもなければ、漬物を作らなくなっている。
日本古来の重要な乳酸菌発酵食品(腸内細菌を活性化させる)が途絶えようとしている。
むかし野菜の邑では、その貴重な食文化や熟練の職人技を残したいと願っている。
そのため、農産物加工事業として個人ではなく、会社で受け継がせようとしている。
現在そのような職人技を残す地域の産業が生き残る領域を、つまりは事業ドメイン
再生することが、地域の活性化に繋がっていくと信じております。


(1)事業ドメイン(存在領域)
事業を継続していくためには変化し続けるマーケットを常に細分化し、どの市場層をターゲットとしていくのかを設定し、そのターゲット市場に需要満足が得られる「商品」や「サービス」を模索し続けることが必要です。
自己の存在可能な事業領域の確保 
 
 これらの「事業ドメイン(存在領域)」に影響を与えるものは技術革新・情報化の進展・市場の競争激化・国の規制変更などによる「市場環境や構造の変化」と成熟社会における消費者の欲求の高度化と欲求の多様化などの「消費者市場の価値観の変化」であります。
これらを「社会的価値観の変化」と呼びます。
 
それらの変化を予測して、計量化し、「自己の存在領域」を模索し続けることが市場細分化(マーケティング)作業と言えます。
特に、現在のように社会経済が成熟期を脱し、産業界全体が新たな社会的価値観を模索しなければならない「経済基盤の転換期」には重要な作業となります。
 
コメント
難しい言葉が並びますね。
皆様は野菜を含めた農産物をどこで購入されておりますか?
おそらくは、生鮮品なら間違いなく最寄りのスーパーに買い物に行かれているはずです。
最近はコンビニでも野菜を取り扱うケースが出てはおりますが、コンビニは経済的には非効率ですから、日常の家計を預かる主婦なら、スーパーに行かれているはずです。
そこで、それらの野菜に疑問を感じ始めた方は、別のルートを探し始めます。
例えば、食に対してより安心安全と思われる生協やオイシックスなどの有機野菜専門の通販などです。
しばらく食べてみてどうも違うと気がついた方は、最寄りの有機野菜や自然農野菜の専門店を探します。その間にその方は、随分と農産物について学習し、知識を身につけていきます。
そこでも何かが違うと感じられた方が、有機及び自然循環を目指している私どものような農園に行き着きます。それまでには長い道のりがあります。
 
つまりは、何が本物かは別にして、本物の野菜に出会う機会はそう多くは無いのです。
そこの野菜に出会った方々、当農園であれば、現在全国に500名弱、定期購入のお客様がおられます。
私たちの農園のお客様達は既存流通の商品価値に疑問を持たれた方々の集まり(仲間達)です。それが当農園の存在領域と言うことになります。
むかし野菜の邑グループは随分と小さな事業領域で働いているのです。

 そこでは、全国にもあまり例を見ない草・葉っぱなどによる草木堆肥のみを元肥としており、化学物質の抑えが効かない肥料は使っておりません。専ら土を育て、微生物や放線菌による自然循環農法を行っており、規格や見栄えをむしろ軽視し、愚直に美味しさ=栄養価のある野菜及び穀類などの農産物を育てております。
さらには、農業特有の端境期(野菜の切れ間)を無くし、年間100種類以上の野菜果物及び穀類とその加工品を作っております。当グループだけでほとんどの食卓をカバーできるアイテムを揃えようとしております。
その意味では、特有の事業領域となります。そこに存在価値を求めている訳です。
それ故に、同じ価値観を共有する消費者との出会いを大切にしております。

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          豊かな農村の風景を残していきたいものですね。