農園日誌ー地域産業の育成とナチュラルマーケットの拡大

29.10.4(水曜日)晴れ、最高温度26度、最低温度20度

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                      秋野菜の育苗

 例年8月の末頃から秋野菜の育苗を行っているが、最近は、温度が高止まりし、
湿気も多く、何より日照不足のため、満足に育苗ができない状態が続いている。
9月末頃からようやく発芽状況・生育状況が安定し始める。
そのため、どうしても秋野菜の入りが遅くなり、秋野菜と言うより、冬野菜となってしまうことの方が多い。
今年のように日照不足と台風及び豪雨が続いた年は、夏野菜が早く終わってしまい秋野菜の成長も遅れるという最悪の状態となり、定期購入のお客様へ発送する野菜の確保に頭を悩ませる。

当農園(むかし野菜グループ)のように消費者直の販売しか行っていない処は、
「野菜が途切れる」ということはできない。農業に特有の端境期でも何とか繋いでいかねばならない。最もそんな農園は全国にも無いのだが・・・改めて消費者直販しかしない農業の難しさを覚える。
それでも「いつも楽しみにしているんですよ」という言葉をかけられ、「頑張らねば」と
疲れた体に鞭を打つ。これは農園スタッフ全員の思いだと信じている。
毎日、夕方、見えなくなるまで働く力となっている。

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今年は紫蘇の実を収穫した。同時にトウガラシの葉っぱも・・・
毎年思っていたことだが、忙しさにかまけてできなかった紫蘇の実の収穫作業。
紫蘇の実ととうがらしの葉っぱを湯通しして灰汁を抜く。これを自家製の味噌に漬け込む。
私が小さいとき、母親が作ってくれていた。紫蘇の味噌漬け。
口の中でぷちぷちとはじけ、味噌の甘辛い香りでご飯のお供に最高でした。
これを何とか頑張って取ってくれている消費者(仲間達)に届けたいと今年は奮起しました。500人近くのお客様へ届けようと思えば、その量も半端ではなく、とにかく収穫に手間がかかります。皆様にお届けできる量が確保できれば良いのですが・・


地域産業の育成とナチュラルマーケットの拡がり

(2)日米の食料品小売価格比較と流通段階別経費構成比 
 以下では、下記表、日米の流通段階別価格比較により具体的な日米食料品の内外価格差と生産者→中間流通業者→小売店「流通段階別経費構成比」を検証しながら、どのようにして農産物の小売価格が決まっていくのか「マーケットの現状」を見てみます。

食料品小売価格差の検証
 別表「日米の食料品価格」を比較してみますと、以下のように2倍から3倍の価格差がついております。大規模生産に適したもの(肉類・穀類)は5倍以上と大きな価格差が出ており、特に穀類の価格差については相当な品質での差を付けるかなどの国家的政策を取らなければ対抗できない状態にあると思われます。(後に詳述)
さらに、近時は後進開発国からの安価な農産物が季節に拘わりなく大量に輸入されております。
 
○生鮮食品(トマト・りんごなど)   価格差    2.5倍以上
○肉類・穀類            価格差   5倍以上 
○加工食品                         価格差    2倍前後
 
流通段階別価格構成比の検証
 農産物の内外価格差を流通段階別に捉えてみますと、価格の構成比は米国と類似しており、生産者価格だけでなく中間流通費や小売マージンも同じ比率で高くなっております。
農産物の内外価格差は高い生産コストだけが原因でなく、流通コストにもその要因があることになります。以下にその要因と課題点を簡単に検証してみます。
 
①生産者価格
 日本の農業は稲作中心の小規模な生産形態のままであり、多様な農産物の産地が育たず、そのために、生産量や質に安定性を欠き、そこからの供給では流通効率が悪く小売や食品加工業者等への直接流通が難しいことです。そのため、日本の農産物は「農協・経済連」や「国内産を主体に扱う市場・中卸しなどの中間流通業者」に頼らざるをえないのが現状です。
さらに、先に説明した農産物生産コストの他、選別・包装・発送コストが別にかかり、それらの総額が生産者価格となります。現状の流通経路を通る場合、流通(農協・市場・卸・仲買・小売り)に便利なように、かなり「厳格な等級と規格品」が要求されます。これら「出荷経費」が生産者コストを押し上げており、結果として、生産者の手取りを少なくしております。

日本の農業は「生産規模が小さく」「質量ともに安定せず」「農作物に産地形成が進まず」「流通効率が悪い」ことが生産者価格を高くする大きな要因となっている。
流通の「厳格な等級・規格」が生産者に「選別・梱包等、高い出荷経費」を要求する。

②中間流通経費(農協・市場・卸等)
 卸売業者には季節にかかわりなく商社等を経由して多品種かつ安価な海外の農産物が集まります。大型小売店は激しい市場競争に勝ち残るため、安価で大量の海外農産物を扱う卸売業者からの直接仕入が主体となります。
その一方、国内農産物の約80%の野菜や60%の果物は農協経済連・市場・仲買・卸しなどの様々な中間流通業者を経て、小売店へ入荷します。そのために日本の農産物には海外産と比較して「多くの中間流通マージン」がかかってきます。
 次に課題となるのが「日本のインフラ未整備」あるいは「非効率な物流システム」などによる「高い物流コスト」です。例えば、海外からの輸入品は「日本までの長距離物流コスト」と「国内での短距離物流コスト」がほぼ同額若しくは国内の方が高くなることは良く知られております。
日本の農産物はこのように多くの流通過程を経ているために、生産から小売までの各流通段階の全てに、「日本の高い物流コスト」の影響を受けます。    
 従って、日本の農産物には「様々な中間マージン」と「高い物流コスト」がかかり、
 米国と比べて3倍以上の中間流通経費を要することになります。
 
国内産の農産物は生産規模が小さく、質量にバラツキがあり、流通にコストがかかる。
日本の高い物流コストと複雑な流通形態が米国の3倍以上の中間流通経費を生む。

③小売りマージン(スーパー・八百屋・百貨店等)
 小売り店舗での課題は常に一定の品質・一定量の商品を安定的に揃えておかねばならず、従来型の市場や卸しなどの流通が不可欠であり、いかに質の高い商品であっても質量ともに不安定な小規模生産者からの直接仕入は難しいのが現状です。
特に大型小売店の扱う商品の命題は「多数のお客の消費ニーズに合わせて品揃えを行う」ことが基本にあり、商品回転率を重視」します。従って、「逐一説明をしないと売れないような商品は棚から消去」されていきます。
「見た目で区別できない品質重視の農産物などは売れるまでに時間を要する」傾向にあり、これらの商品は小売では定着化しにくいものです。
それらの理由にて、小売店は生産者が品質重視で作った商品より見栄えが良く安価な商品が大量に揃えられる中間流通業者を通した仕入れを行うようになります。
 このように、経済が成熟し、都市化が進み、商品が大量に都市に集まる大量消費(流通)経済になってからは、大型流通では、次第に商品が同質化していき、品質・品種などで農産物の個性が失われて行く傾向にあります。
そのため、多くの商品がそうであるように、「農産物の商品価値が流通によって決定されるという構造」になります。
売店の大型化により農産物に「均一・大量・安価」な商品性が求められている。
店頭に並ぶ農産物商品に個性が失われ、安売り競争が激化していきます。
価格の低落化はアメリカ・オーストラリア・中国等の海外農産物の輸入拡大へつながる。

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パプリカの中で、一番甘味が強いと言われているセニョリータ(ミニパプリカ)です。育苗ハウス内の余りスペースを使って、わずかですが育っております。パプリカは腐りやすく、露地栽培は難しい野菜です。
そのため、当農園は露地栽培を補完するため、わずかではありますが、育苗ハウスで少量生産しております。
 
④消費者
 市場調査によると実に90%以上の消費者は農産物商品に品質や安全性を求めており、それらを気にしながら買い物をしているとの回答がありますが、実際には消費者は農産物商品に専門的知識が乏しく、特に農産物の商品価値や安全性などを見分けることが難しく、見栄えの良さ・鮮度・価格・手軽さを基準にして買い物を行っているようです。
そのため消費者が農産物に安全性や品質を望んでいるとしても、どうしても価格や見栄えあるいは産地ブランドや表示による商品選択に走りがちになり、結果としては、消費者にとって安全で品質の良い農産物(価格がやや高い)は敬遠されるようになります。
 
消費者は専門的知識が乏しく、農産物の質や生産方法など知る機会が少ない。
消費者に品質等ナチュラル志向が強まってはいるが、消費行動は見栄えや価格重視となる。
そのため、結果として安価な海外の農産物が市場では中心になってくる。
 
以上のように、農産物の内外価格差の問題やマーケットの現状については、生産者・中間流通・小売・消費者それぞれの段階において課題が多く、「農産物マーケットの流通構造」が一つの大きな要因となっているようです。
 
現状のマーケットは生産者の「農産物へのこだわり」や消費者の「安全性や品質への欲求」とは異なり「流通」の商品ニーズが商品価値を決定する結果となります。
 
コメント
如何でしたか?当農園が肥料や農薬を使わない代わりに(自然農ですから)草木堆肥作りや手作業などの労力がかかり、実際の生産コストは慣行農業よりはるかに手がかかる高コストにはなります。
但、生産者からの直取引のために、流通コストは運賃のみですから比較的安価に(リーズナブル)消費者の方へ届けられる訳です。

さらに決定的なことは、消費者との面体取引によって当農園のように見栄え・規格などはある程度無視し、
美味しさ・味香り・栄養価、そして安全性を重視し、品質にこだわることに
専念できるわけです。
これを私たちは、一般顧客と違う特定顧客、つまりは、仲間への直接流通と呼んでおります。ある意味では、品質を求めている消費者の代わりに、私達が替わって農産物を作っていることになります。