農園日誌ー社会的存在価値-PARTⅧー消費者とのコミュニケーション

29.8.2(水曜日)晴れ、最高温度34度、最低温度26度

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                    ゴーヤのトンネル

 農作業中、休憩をしていると、身を隠すところが無く、日差しを避ける場所として、
重宝しております。ゴーヤのカーテンでひんやりしている。
農園のゴーヤは、灰汁やえぐみが無いため、苦みがマイルドで、嫌いな方もなんとか食べれます。私もその一人。二歳になるうちの孫の一人は、ゴーヤを選んで口に入れております。

 農園は一昨日の恵みの雨で、生き返っており、最高温度は34度超えるものの、
吹く風が何となく冷たく感じる。おかげで、日中の選定誘引作業が心持ちやさしい。
梅雨明けの追肥遣り・中耕作業が茄子の畝数本、一本ネギ15本、里芋・筍芋数本となる。これを終えると、本支柱立て作業ができて、ようやく夏が迎えられる。
かなり日程が遅れている。
特に茄子は、今年、生育が遅れている。余分な枝と重なり合った葉っぱを落とし、
懸命な立て直し作業をしており、本格的な出荷は8月末頃からとなる。最盛期は9月になる見通し。
10月~11月になると、秋茄子へと変わり、最も美味しい時季となる。


社会的存在価値ーPARTⅧー消費者とのコミュニケーション
 
§2.市場啓発的販売
 今まで十数年、草木堆肥だけを使った自然循環農法で育てた土作りと、その結果として産出される野菜を中心とした農産物は、畜糞やぼかし肥料(米糠・油粕など)主体の有機野菜とは明らかに違う。
数年前から取り組んできた穀類生産(草木堆肥・焼き灰・蛎殻のみ使用)は、除草剤は勿論のこと、化学物質は一切持ち込まない自然農法である。
そこで改めて気づかせてもらったことなのだが、従来の麦や大豆とはその味香りの豊かさが違う。むかし、肥料とすれば、人糞と草木堆肥しかなかった時代の人たちは随分と豊かな食生活をしていたのだと、思うほど、穀類に存在感があり美味しかった。
おかげで、農園は益々忙しくなり、きつくなっているが、これは真剣に取り組まなければ、と覚悟を固めつつある。
この穀類の多くは、味噌・粉・パンなどの加工品にしていくつもりではあったが、今は、麦ご飯・豆料理などにも広げてレシピを添えて消費者にお届けしようと考えている。
 
農園を開いた当初は、有機野菜の商品化を進め、地域活性や農業の再興を計ろうと、今から思えば思い上がった発想から始めた農業ではあったが、自然の、農業の奥深さを知れば知るほど、如何に安全で栄養豊かな美味しい野菜を作ろうと考えはじめ、その農法が、ある程度確立し始めると、次は、この農法の次世代への継承へとそのテーマが変っていった。
今では、この農法による「地域の再生と農業の再生」・「自然循環農法のさらなる深化」・「事業及びこの農法の継承」そして、「市場への啓蒙啓発的活動」へと、そのテーマは広がりつつある。随分と欲張ったものだと我ながら感心している。
歳を経て、自分の先が見え始めると、その欲はさらに大きくなるようだ。
 
 お客様への直接販売を行ってきて10数年。消費者の消費行動や各消費者層の価値観の違いなどが見えてきており、それならばと、もっと多くの消費者に露地栽培・自然農業・野菜の品質や性質のこと・調理方法のこと・昔ながらの加工品のこと、など、むかし野菜の多くの情報を共有できないかと考えるようになった。
現在、露地栽培・むかし農法の現場の実態やマーケットのことなどをお伝えしている「農園日誌」、時季時季の野菜の性質やその調理方法などをお伝えする「今週の野菜」、季節ごとに行う計画を持っている「催事等・・」の三つのブログを開設している。
消費者や生産者の方々への啓発に繋がればと、書き続けている。

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葱の畝の除草作業風景
雑草の生育は早く、野菜の生育は遅い。しばらく目を離していると、あっという間に
雑草に覆われる。これでこの畝は二回目の除草作業となる。


 
その中で、感じたことを率直にお話しておきます。
不遜に感じられる方も多いかと思いますが、その点はどうかお許しください。
 
有機野菜と言っても、国が定めている有機JAS規格認定の野菜しか有機野菜と呼べないと定められております。それでもこの法規には矛盾が多く、建前と現実も異なっております。それもあってか、有機野菜発祥の地である日本の有機JAS野菜は、欧州でのオーガニック野菜の認定が得られておりません。
それに加えて、消費者は必ずこう言ってきます。「有機無農薬ですか?」と・・・
現実には、温暖化が進む日本では、無農薬野菜など、家庭菜園以外では難しいのも現実です。
自然農と言われる農法もあります。これも実際には、何をもって自然農と言えるのかも定かではありませんし、不安定な自然農では農家の生活も定まりません。
自然農は「持ち込まない・持ち出さない」が基本と言われておりますが、そうであれば、決定的にミネラル不足に陥るという欠点があります。
 
他方では、野菜の価値と言うか評価は何で決まるのか?美味しさとは何か?となると、これが難しく、現代人の舌は旨み調味料や化学物質に慣らされており、本物の美味しさとは何か?すら、分かり難くなっております。
農産物の価値基準は流通の中で作られており、規格サイズ・均一・見てくれ・鮮度くらいでしょうか。美味しさや栄養価に加えて安全性などの評価基準すらありません。
 
 当農園では、美味しさの定義を「味香り・食感(歯切れ)・旨味」に置いております。
規格サイズ・均一・見てくれは評価の対象にすらしておりません。美味しいとは栄養価が高いということです。
テレビ放映により、1,200名を超える方々から問い合わせがありました。実際に野菜をお送りした方は、約800名でした。
さらに、今のところ、定期購入へと進んだ方は、150余名でした。継続率は18%。最終的なご継続者は100名そこそこだと思います。
今まで、自ら探し当農園のホームページに辿り着き、あるいは、口コミによりお申込み頂いた方の継続率は90%以上でした。消費者の理解度の差は大きいものです。
継続しなかった方々のご感想ははっきりとは分かりませんが、概ね、見てくれが悪いとか、その味香りなどの美味しさがご理解いただけなかったか、商品の中で1~2のアイテムが良くなかったとか、スーパーでの商品と見劣りしたか、などの理由だと推察します。
 
通常、特定の商品は、同じ価値観を持ち、同じような消費行動を取る特定消費者層(これをターゲット層と称します)に向けて販売します。
しかしながら、実際には、当農園のような自然循環に基づいて生産された農産物を求めている消費者層を、探すのは実に困難です。
例えば、有機無農薬や自然農などの情報や知識で頭の中が一杯になり、それを求めてこられるお客様の中には、いざ、買い物をする段になると、見てくれや形、あるいは、安さを求める消費行動を取る方も多い。その方はまた、クレーマーともなり易いのです。
また、15年間の経験では、食の安全や栄養価などへの関心の薄い消費者もあるきっかけで関心を持ち始めたりして学びますし、価値観も変化もします。
 
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オクラがようやくできはじめた。よく見るとこの花は貴婦人のように華やかであり、夏の暑い盛りにさわやかさも与えてくれる。


当農園のもっとうは、来る人拒まず、去る人追わずです。つまり、どのような価値観をお持ちの方でも、変化する可能性があるということです。最初から決めつけずに、体験してもらい、語り掛け、学んで頂きたいと思うからです。
当農園の販売方法は、ある意味、押し付け商法です。食育も大きなテーマの一つでもあります。誰しも健康になりたいと願っているにも拘わらず、好き嫌いを言う方は多いものです。私がそうでしたから・・・
灰汁・えぐみの無いむかし野菜や穀類・加工品を一旦は押し付け、バランスよく多くの種類の野菜を食していただくことにしております。
それでも価値観を共有できない方は、去って頂ければ良いと割り切っております。
 
 むかし野菜で販売している商品は、農園スタッフも常日頃から食しており、自分たちが納得できない農産物及び加工品は、消えていきます。
その意味では、定期購入へと進んだ消費者の方々は、敬意を込めて仲間たちとお呼びしております。
今後も少しでも多くの方々に、むかし野菜の取り組みを知って頂きたく、農園体験や農業セミナーなども開催しながら、市場啓発活動を続けていきます。
この輪が広がっていくことを願っております。