29.6.28(水曜日)曇り時折小雨、最高温度27度、最低温度19度
李(すもも)
農園に一本しかない李。今年は偶々、腐らずに収穫が出来た。
と言うのも、研修生達が仕事前の早朝から脚立を立てて、ちぎったから。
例年は、忙しくて放置されることが多く、腐らせてしまっていた。
美味しく、もったいないとのことで、研修生達の臨時収入にしてやると、言ったものだから、日の目を見ることになった。
全員には配れなかったが、ふいに届いたお客様からは絶賛の声・声・・
そんなに喜んで頂いて、お金の無い研修生達も潤う。良いことだらけです。
三年もすると、むかし野菜の邑の社屋の庭に10本ばかり植え込んでいるので、皆様にお届けできるのでは、と期待している。
5番の畑の全景
トマトの畝が13列、ピーマン・万願寺伏見とうがらし・パプリカが7列、一本葱が7列
夏野菜一色となっている。手前は6番の畑。ここにはズッキーニ、九条葱が主力で並んでいる。
不思議なもので、野菜にも圃場に相性があり、5・6番は比較的水分が少なく、乾燥気味なのが良いのかもしれない。
6~7月の梅雨時季に水分をたっぷりと補給し、やがて来る8~9月の乾季に耐える。日本の気候はまことによくできている。
梅雨時季には、夏野菜の支柱作り、剪定誘引作業、除草作業を行う。
6~7月は合羽を着ての作業となり、40度近くまで気温が上がる8月の炎天下での剪定誘引作業が続き、人間にとっては、過酷な時期になる。
社会的存在価値―PARTⅦ―自然循環農法の実践
§6.葉物野菜
当農園発足以来、10年を超えた取引のある飲食店が二軒ある。
両店ともその地域では、一つの地位を得ている良店である。
共に当農園の野菜が常に主菜となっている。
当初、そこでの葉物野菜の地位は驚くほどに低かった。
代表的な葉物野菜は小松菜・青梗菜・味美菜。これらは、サラダ野菜と区別して茎物と呼んでいる。酷暑の7月中旬~9月までのおよそ三カ月間は育たないが、ほぼ一年間を通して生産できる。
当農園の茎物野菜は、草木堆肥(低窒素)であるため、成長は遅く、肉厚ジューシーで繊維を感じさせない歯触りが得られる。そのため、加熱時間は短くして、湯がく・蒸す・炒めるなど、薄味で調理を行って、肉・魚の添え野菜(箸休め的)には最高なのだが、中々使おうとしなかった。
こうなると根競べであり、どんなに嫌おうと、送り続け、その調理方法などを語り続けた。
今では、その二店舗では定番の葉物野菜の地位を得ている。
さっと湯がいて、あるいは、蒸して洋食はコンソメ出汁で、和風は昆布鰹節などの煮浸し風にしてシャキシャキ感を残してもらっている。(露地ニラも同じように調理する)
まだ取引の浅い飲食店も先ずはこのやりとりから始まる。
ご家庭でも、ほうれん草やキャベツなどと比較してこの葉物野菜(茎物)の評価は判り辛いのか、その美味しさを分かってもらえるには少々時間がかかるようだ。地味ではあるが、この葉物野菜が無いと食卓は随分と寂しいものになる。
ご家庭であろうと、飲食店であろうと、自然循環農法の野菜の美味しさを理解して頂いているかどうかの物差しになるのが、この葉物(茎物)野菜である。
次に、サラダ系野菜。
当農園の定番メニューにサラダセットがある。人気メニューである。
そのヒントになったのは、ベビーリーフであった。
サラダは、単品で食べるには見栄えも味も今一となり、様々な色・味・香りの野菜をミックスで食べたいと思うのは当たり前であり、その欲求を叶えるためにセットを開発した。
ベビーリーフが幼苗段階出荷されているのに比べて、当農園では、大人にならないと出荷しない。何故なら、ベビーリーフは野菜としては成熟しておらず、味香・旨みも無く青臭い段階での出荷となり、栄養価も薄く、何より美味しくない。
未成熟(完熟)野菜は出荷しないのが当農園の基本的な考え方である。
そのため、やや籐が立っていたり、虫食いの痕が目立ったり、伸び上がってしまったりするかもしれないが、栄養価の無い美味しくない野菜よりは良い。
それが悪ければ(言葉を変えると当農園の価値観と合わなければ)無理をして取引をしなければよい、と割り切らなければ、この価値観(コンセプト)は維持できない。
葱・セロリ・春菊がその代表的な野菜であるが、当農園では人参葉もその一つに入れている。これらは油と相性が良い。
余談ではあるが、ハーブなどは欧州の香味野菜であり、調味料です。
中華料理も上手にこの香味野菜を料理の下味付けに使っている。
香味野菜は油で炒めると、その香味成分が旨みに変わるという性質を持っている。
例えば、にんにく・葱・トウガラシ(セロリも)とタイムをやや多めのオリーブ油でゆっくりと転がすように炒める。これは油にその旨みを移す調理方法です。
パスタ・スープ・炒飯等にこの方法を使うと、家庭料理も一流シェフの料理に変わる。
ズッキーニの花
これら葉物野菜は当農園では、密集栽培にしている。
多くの葉物野菜は、種を直播する。近代農業の野菜作りの教則本では、筋蒔きした後、間引きをするとなっているが、当農園では幼苗の間引きはしない。
3年以上草木堆肥を撒き続けた土壌では、土が育ってきており、地力が付いているために、密集栽培が可能となる。そのような土壌では、密集させることによって、競り合いながら野菜が育ち、大きく育った野菜から間引き出荷していく。
このため、一つの畝から3~4回に亘って出荷が可能となる。これが高集約農業である。
化学肥料と農薬による高窒素栽培となった現在農業との違いです。
むかしの農業は如何に土を育てるかに腐心し、現在農業は如何に窒素等の肥料を調整し、多くの野菜を収穫できるかに注力する。
むかしの野菜は、ミネラル分・糖質に富んだ完熟野菜を育てる。
近代農業は、見栄え良く、均一な野菜を揃える。そのため、高窒素土壌にならざるを得ず、窒素を過剰吸収した野菜には硝酸態窒素(毒素)という形で余分な窒素分が残留する。
極論すると、これでは、何のために野菜を食べているのか分からないことになる。
こんなところにも、先人たちの叡智はあったのですね。