農園日誌-この国の行方ーPARTⅡ

28.12.9(金曜日)曇り後晴れ、最高温度17度、最低温度5度

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               由布市庄内地区、焼き畑の風景

 4反の広い畑に、大麦・小麦の種を蒔く。先ずは、草の刈り取り、焼き畑を行って
草木堆肥を振り、畝を立てる。同時にスタッフ総出で麦の種を蒔く。
6~7人で三日を要する。

去年できた自然農の小麦を製粉して、きれいな小麦粉(中力粉・地粉)ができた。
早速、大分の郷土料理(おやつで食べる習慣がある)「やせうま」を作った。

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当農園の取引先である
ベネフィットフォーユー
(別府の長期滞在型温泉保養施設)のお客様が農園見学をしたいと言うので、来園の折、早速にふるまってみた

中力粉ですから、歯ごたえがあり、弾力のある食感に黄な粉をまぶして食する。


都会の皆さま、始めて食べるやせうまに一同、感激の声を上げていた。
ちなみに、内の孫たちは皆、このやせうまのファン(スタッフ達も)。

※「やせうま
ここ大分では、むかしから、親しんできたおやつと言うか中食に食べられてきたもの。
地粉(小麦粉)を水で溶いて、伸ばし、黄な粉・砂糖・塩少々を加えた粉にまぶして
食べる。

今後は、この中力小麦と裸麦(大麦)、古代小麦(一粒小麦)を生産していくつもり。
大分の郷土料理である、やせうま・だご汁の材料となる。
無添加醗酵食品である味噌や黄な粉(すべて自然農)と合わせて、お客様にレシピ
付きで配送する予定にしている。
今からその反応を楽しみにしている。
先ずは今回、都会地の消費者に高感度をもって、郷土のお母さん達が作り続けてきた味が受け入れられたことになる。

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左は成長途上のほうれん草、右は蕪類(トンネルを半開き)。
この時季、トンネルの管理が難しい。
ずーっと寒いのであれば、かけっぱなしでも良いのだが、暖かい日と寒い日が交互にやってくる季節であり、放っておくと、なよなよしたもやし状態になるため、開けたり閉めたりの毎日の管理が不可欠となる。
その見極めができるまでに、7~8年の経験(歳月)を要する。

常に気候と野菜とお話ができるようにならねば、有機栽培・露地栽培を目指す農人としては半人前である。それがゆえに、この自然循環農法では、時として、自然と語らう「神の領域」に近づく。但し、自分が神になってはいけない。自然と向き合う謙虚さと探求心が必要となる。


―この国の行方―PARTⅡ 地域復興への厳しい途
 
 日本は先進国なのか?と言った議論はさておいて、間違いなく工業先進国ではある。
繊維産業・粗鋼生産・家電産業などは、後進国(中進国かな)の追い上げ(技術習得)を受けて、海外では国際競争力を失いつつあり、日本国内の需要は頭打ちの状況にあり、伸びは見込めず、産業としての環境は厳しい。自動車産業でも組立てなどは海外へ移りつつある。
工作機械・ロボット産業などの市場創造的な先端産業の興隆でしか、工業立国としての地位は確保できなくなるであろう。
 
米国では、労働者階層(かっては中流層)の反逆が話題になっている。それを受けて、トランプ旋風が吹くまくっており、自国主義保護貿易に舵を切ろうとしている。
国民受けは良いが、それでもその試みは決してうまくはいかないだろう。
何故なら、世界市場に広がっているグローバリゼーションの風は、複雑に絡み合い、貿易収支の依存度の少ない米国と言えども、労働者階層の働く場もそこにあるからです。
 
米国と同じような状況は日本でも起きてきている。所謂、生産産業の空洞化現象であり、生産事業に従事している若者は減収しつつある。
米国と少し異なるのは、人口があまりにも大都市に集中し過ぎており、地域の生産産業に従事する若者が少なくなっていることである。
例えば、農業・建設土木業・職人・看護などの業種の多くは敬遠されており、人手不足が深刻になりつつある。その労働に対しての報いが少ないことがさらに拍車を掛けている。
 
 資本主義が健全な発展を遂げることはかなり難しい。富はさらに富を生み出し、中流階層は減少し続け、低所得階層がさらに増加し、今の米国のように、やがて支配階層との明確な分離が進む。
今の世界は、殖産興業・富国強兵などの鹿鳴館時代とは異なる。生産規模の大きな大企業をさらに大きくしたとしても、富はさらなる投機を望み、生産活動に従事しない一部の支配階層を生み出すことは、ロシア・中国でも全く同じではないのか。
今の政権の時代錯誤の政策によって、所得格差・地域格差が拡がり、地域産業の芽生えを摘み取り、産業構造の歪を生み出す。
それでも現政権への支持率が50%を超えているこの国は、一体何処に行くのだろう。
 
 日本は資源のない国であり、加工貿易を国是として、全世界との通商契約でしか成り立たない国でもある。とは言っても、国内総生産に占める貿易収支が韓国のように極端に多いわけではない。むしろ、国家内の資金循環・産業のバランスを図る取り組みが求められている。
大企業が全てではない。大規模生産が全てではない。零細・小規模な生産活動しか行えない地域が、今、喘いでいる。

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                復興が進む5・6番の畑の風景

葉物類は何とか追い付いてきているが、8~9月に全滅した根菜類の復活は、12月下旬から1月初旬頃までかかるかもしれない。寒さが厳しくなる時季のため、成長スピードはかなり緩やかになっている。
 

世界は今後少なくとも半世紀程度は、自国主義民族主義に向けて舵を切っていくことだろう。
そうなると、国内での資金循環(内需とはやや異なるが)に「食」に関する生産活動はかなり大きな部分を占めてくることになる。
過去に何度も戦火に見舞われた欧州の先進国では食料自給能力確保や農業環境(特に露地栽培)は手厚く保護され続けている。
農産物、特に穀物価格の内外価格差は3~7倍となっている。日本産の生産コストが高過ぎるからと言われ続けている。
これは大規模農業や機械化の遅れと言って片づけているが、実は、欧州・米国などでの農産物の国内生産に対する保護(補助金)は日本の比ではない。
それらの国は農業者に対して農業所得に見合った(同額)補助金を出している。(日本では実質ゼロに等しい)これは国土保全と国の安全政策(食料確保)に基づくものです。
 
そのことについて日本の農家(国民)には全くと言って知らされていないし、日本国民も他人事として受け止めるだろうし、やがて襲ってくるであろう大規模な気候変動により、あるいは、自国主義民族主義の台頭により、国内に食べる物がないという状況が生まれる可能性が高くなってきていることに、飽食の時代の真っただ中にいる日本国民は全くと言って気付かず、無関心さが底流に流れている。
 
地域には今後、遊休農地が無尽蔵に生まれてくる。
その日本の先人達の膨大な遺産を如何に引き継いでいくのかが、今、問われている。
この受け皿が、つまりは農業人口が増えない限りは、地域は正しく崩壊していくことになる。
これから、誰が日本の食糧(安全)を支えていくのだろう。
地域の疲弊していく現状を黙視して、相変わらず、経済や量の拡大しか考えていない日本政府や官僚たちは、一体この国をどこに向かわせていくつもりなのだろう。
このことに怒りや危惧を覚えない日本人とは一体何だろう・・・

PARTⅢ-地域復興への新たなる試み、へ続く。