農園日誌ー悩める研修生

28.10.26(水曜日)曇り、時折小雨、最高温度25度、最低温度16度

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                     畑からきのこが・・

 相変わらずの天候不順(安定しない)が続き、壊滅した畑に蒔き直した野菜達も
今一、成長が思わしくない。
夏野菜はほとんどが落ち野菜となりつつあり、かろうじて、生き残った一本葱・黒大豆の枝豆・里芋・サツマイモなどが残っているのみとなっている。

 近くの苺農家(土耕栽培)に聞いても、一度全滅し、今ようやく再定植したばかりとのこと。玉葱の苗は市場にも無く、みなで奪い合いとのこと。
みな同じなのだな!と妙に連帯感を感じたりしている。
台風被害による全滅でもないのに、この不作は今までに経験したことのない被害状況となっている。
マーケットから野菜が消える日も近いかもしれません。

そんな中、写真の畑の真ん中からにょきっと出てきた「きのこ」。これも雨が多い高温多雨の時季に時折みられる現象で非常に珍しい。
当農園ではしばしばみられる。これは圃場の中に微生物や放線菌(黴)が繁殖している畑でないとみられない現象。
つまりは、野山の自然の土壌に近い畑と言うことを証明したことになる。

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問題の研修生の二人

研修開始から約6カ月
経過。
共通して言えることは、非力であること、畑仕事の何たるかをしらないこと。

作業は真剣にやるようになったのだが、見事なヘッピリ腰。
おそるおそるの作業では仕事も捗らないし、
精度も落ちる。農作業もリズムであると教える。

 かれらが二人で一つの畝立て作業を完成するまでに、農園主は二つの畝を完成させている。しかもこの畝も手直しを行うといったおまけ付きである。
出来栄えは別にして、農園主の1/4の作業効率であることになる。
しかしながら、ようやくここまでになったと言うべきか!・・・?
せめて、1/2人(半人前)までには、成長してほしい。

 すでに研修を終えた二人の先輩たちに任せてはいたが、匙を投げてしまった。
そのため、今月からは、農園主の直接指導と言うことになった。
 一つには、教えることの難しさをこの先輩達も知ってほしいとの思いもあったのだが、まだまだそこまでの技量や精神力がないことになる。
「教えることは愛情と忍耐でもある」
同時に、教えながら、手直しをしながら、自分の仕事もこなさなければならないだけに、実に疲れる。
毎日、農園主の罵声が畑を飛び交う。家に帰るともうぐったりの農園主。
お互いさまか?叱られても叱られてもへこたれないのは大物の器か・・・大器晩成?

その甲斐あってか(?)最近は目の色が少しは変わってきたようではあるが、
一人は頭と体がバラバラ、一人は見られていないと手の動きが緩慢になる。

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先輩と向かい合わせで
マンツウマンの指導。

隣は、何が珍しいのか
見学者が写真をパチリ

当農園ではよく見られる風景でもある。

見学者は一様に、スタッフ達は、みなさん、
挨拶をしてくれるとお褒めの言葉。


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蔓紫も終わりに近づいている。
紫蘇と同じく、畑で種をなし、来年また、芽を出す。
10年以上その繰り返し
不思議なことに、購入してきた新しい種を蒔いては見るのだが、
何故かこぼれ種のほうが、成長が良く、丈夫に育つ。
土のせいか!

このように自家採取の種が結構畑では活躍してくれる。ありがたいことだ。

彼等研修生は、国のファーマーズスクールの補助金を受けている。
その県の研修指定農園が我が農園である。

二年間の研修期間を終えると、通常ではほっぽり出されて、独立するしかない。
技量・体力・能力・知識・経験も不完全な状態での新規就農は脱落者を多く作る。
その98%が中途で挫折するのが現状である。
もしも、新規就農が1年以内にできなければ、その受けた補助金は全額返還しなければならない。

畑を探すことすらできないし、仮に運よく畑が探し出せて、作物が出来たとしても販路も無い。親がかりで機械器具を揃えて、施設でも立てようものなら、借金を背負うことになり、返済はおろか、生活もできない。これが国の補助事業のおそまつな実態である。

当農園では受け入れた研修生は独立できるまで、金銭的・労力的にも支援し、
販路まで確保してあげることにしている。
その独立支援が(株)むかし野菜の邑ということになる。
佐藤自然農園が生産施設や機械器具を貸し、畑を探してあげて、むかし野菜グループ内にて共同作業、共同販売を行う形を取っている。

こうなると、最早、親以上の支援をすることになる。果たしてそのことが研修生の心に届いているのかというと、甚だ心もとない。

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ようやく、堆肥場に通常通りの草木堆肥のストックができた。
まだまだ足らない。秋野菜の回復作業を行いながらの堆肥作り作業が待っている。
秋の日は短い・・

農園主は最近、ふと考え込む。

他の受け入れ先の研修生達は不安の中で独立を目指さなければならない。

当農園の卒業生も研修生も必死のがむしゃさが欠けているのではないか?
みな、よく頑張っているとは思うが、何かが足りないのではないか?
農業の、独立することの厳しさをどのように教えたら良いのか?

一人、模索の中に入り込む。