農園日誌ー露地栽培PARTⅡ


28.7.13(水曜日)終日雨、最高温度30度、最低温度20度

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             雨の日の収穫作業

 この処、収穫日は必ず雨となる。最も、雨が降らない日は数えるくらいしかないのだが、雨の日の収穫はとにかく時間がかかり、乾燥しないため、腐れの原因になる。お客様への箱詰めに、悩みながらの発送作業となる。
農園スタッフも疲れが溜まっている。

 その合間を縫って農作業を行う。困ったことは作物を植え込む、あるいは、種を蒔く際、先に草木堆肥を振り、耕し、畝立てを行わねばならないため、
長引く梅雨空の中、大豆・人参などの種蒔きができないこと。
特に、大豆は種蒔き時季を逸すると、成長不良になるし、次の作物の植え付けも遅れる。年間百種類以上の作物を育てているため、植付時季の遅れは、即、
出荷野菜不足に繋がってしまう。これが露地栽培の難しさ。
明日は雨の次の日となるが、早朝からフル回転の農作業が待っている。
将に、天候次第の農業。研修生たちもそのことを肌で感じていることだろう。

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              蔓紫(緑)の棚

夏の季節は、露地栽培の場合、酷暑が続き、表面を硬い膜で覆われた(保護)実物しかできない。
いつも夏場にできる葉野菜を探している。
今年は蔓紫と空心菜を選択した。他には少量ではあるが、丘わかめも育てている。丘ひじきはまだ実験段階。
この蔓紫は、独特の癖があるが、草木堆肥で育てると、灰汁もなく、やさしい
味になる。別名、夏ほうれん草と言って、暑い夏の食卓に青く涼しげな葉野菜がのぼる。

露地栽培―PARTⅡ―愛すべき不揃いの野菜達


PERTⅠのテーマ
(ハウス栽培野菜の成長スピードは露地栽培の倍以上)

PARTⅡのテーマ

(不揃いの野菜)


 化学肥料や畜糞(特に、鶏糞や豚糞などの畜糞は窒素等の肥料分が多い)施肥の畑では窒素分が多く、野菜は土中にある窒素分をあるだけ吸収しようとするため、成長スピードは速い。土壌中に過度な窒素肥料が存在するため、成長にもバラツキがない。ハウス栽培になると過酷な自然条件の洗礼は受けず、
さらに成長は加速し、揃った野菜が出来易くなる。


きっと野菜達は、ゲップが出ていることでしょう。(体に害となる残留硝酸態窒素の問題)
実は、この成長の早さや守られた環境から均質均一な野菜が生まれる。

 他方で、草木堆肥(元肥)だけ施肥した露地栽培の圃場では、自然の試練を受けて、野菜は生き残り競争をする。当然に低窒素土壌となり(但し、高ミネラルとなる)成長スピードは遅く、かつ、個々の野菜の成長もばらばらとなり、大人に育つまで、様々な試練を受けるため、いびつな形のものも出て不揃いとなる。
まだ、小さい実の時に、害虫にハードコンタクトを受けた小さな傷は、大人になると大きなフセとなり、切られ与三郎のように(若い方には分からないかな?)脛者になってしまいます。

但、自然条件の変化に適応して生き残った野菜だけに、圧倒的な存在感と生命力に溢れている。


 露地栽培野菜はハウス栽培の均一に揃ったみてくれの奇麗さはないが、筋は無く、肉厚でジューシーな食感となり、無骨であり、比較的長く畑にあり続けるため、傷を負ってはいるが、存在感がある。

私たちは多くの野菜と生活を共にしているだけに、その違いがすぐに分かるし、ナチュラルで美しいと感じる。


消費者の方々は、店頭に並んでいる、あるいは、有機専門の販売会社から購入なされておられるかもしれませんが、所謂、素性の悪い野菜、不揃いで、曲がったり、一部虫食いや傷が残っている野菜を選ばない。

それでも、もしも、そのような野菜に接する機会があれば、是非にその不揃いで不格好な野菜を手に取って、食して見られることをお勧めいたします。

きっと、どこか懐かしい味や香りがすることでしょう。それが愛すべき露地野菜だと思います。そのような野菜は土の香りがして、栄養価に富んでいます。勿論、安全な野菜です。


 当農園で永く野菜を取り続けておられる方々は、むしろきれいな野菜と呼んで下さる。当農園の姿勢や取り組みを理解して頂いて、感謝に耐えない。
必然的に、同じ価値観を持った消費者(仲間達)が集まることになる。


 現在、後藤君は当農園で2年間研修を積んで今年新たな圃場を借り、一年間経過しました。
彼は当農園の野菜と土に接してきたため、一年目から同じように野菜ができるとおそらくは期待して臨んだことでしょう。

結果は散々なものでした。

野菜はいつまでたっても成長せず、成長が遅れた分、莟立ちが早まり、ついには大人になり切らず、(商品にならず)その一生を終えてしまいました。


それは、化学肥料や畜糞を施肥していれば、ある程度は立派な野菜が育ったことでしょうが、残念ながら、草木堆肥を1~2回ほど、施肥したところで、土が育っておらず、当然の結果なのですが、彼も自分の圃場でそれを改めて実感したことと思います。それでも、諦めず、出荷の見込めない野菜の種を蒔き続けます。(鋤き込んで緑肥とするしかない)

今年の秋頃からは、草木堆肥の施肥が3~4回目となり、味はともかく何とか、出荷できるまでには行くと思います。


土作りに最低3年、むかし野菜になるまで(金ラベル級)5年の年月が必要になります。
もし、これがハウス栽培であれば、また、畜糞主体であれば、こんな結果にはならなかったことでしょう。

ちなみに、畜糞堆肥といった表現をよく聞きますが、畜糞堆肥と言うものは存在せず、それを施肥し続けると高窒素土壌となるので、本来は肥料と呼ぶべきものです。それでも、畜糞を施肥し、成長が遅いからと、さらに化学肥料を併用している圃場も多い。


 このように、皆様もあまりにも見かけ立派な野菜は、農薬過多だけではなく、過度な窒素を供給し続けられた圃場で育っており、分解、若しくは、消化しきれなくなった窒素分が野菜の体内に硝酸態窒素といった毒素に変換して、野菜の中に残存している可能性があることに、もっと関心を持って頂きたい。

 土作りには、長い時が必要です。15年もすると、リバウンドするふかふかな土に変化し、正しく、有機で言うところの持続可能な農業ということになります。後藤君に頑張ろうな!と声を掛ける。



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               ゴーヤの棚

例年、台風の時季に、必ずといって倒れていたゴーヤの棚。今回は、アルミ製
のハウス用のパイプを埋め込み、竹を組んだものにした。
三つの畑にリスク分散を図った。白・緑の二種類がある。