農園日誌ー野菜の宅配ーPARTⅣ

28.6.15(水曜日)晴れ、最高温度29度、最低温度18度

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           万願寺とうがらしの支柱立てと初期的誘引作業

 トマトの支柱立て作業(9列)をようやく終えて、今度はピーマン系(万願寺トウガラシ・伏見とうがらし・ピーマン・パプリカ系三種)の支柱立て作業が待っている。
全部で12列ある。今は小さな支柱を一つの株に3本ほど立てて、放射線状に形を作っている初期的作業の段階。茄子も同じような行程でやはり12列ある。
これらのすべての作業を終える頃、農園は梅雨も明けて本格的な夏がやってくる。

 その間、草は旺盛に茂り、除草作業も雨の合間に行う。約一ヘクタールの圃場はやはり広い。
じゃがいもの収穫はほとんど手付かずで、放って置くと腐ってしまう。明後日は収穫(発送)作業を終えたものから順次じゃがいもを掘ろう。
玉葱はハウスの中に未整理の分もある。堆肥も残りわずかになり、剪定枝の破砕作業と共に作らねば・・やることだらけの毎日にみな文句も言わずよく頑張っている。
今日も農作業を終えたのが19時半頃。夕闇が迫っていた。

この時季は熱中症が怖い。全員がかりでの発送作業を行っているため、今日も一人人参用の畝作りをやっていると、動悸が激しくなり、その症状が現れ始める。蒸し暑さと太陽の光にやられたようだ。疲れが溜まっている時が一番危ない。

 これから、トマトを始め、茄子・ピーマン等の剪定誘引作業が続く。このところの暑さは、半端ではなく、炎天下の農作業は死の恐怖があり、冗談に「今日も無事生還しました」などと、言い合っている。
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こちらは、ゴーヤの初期的支柱立ての風景
本格的な棚を作る前に
竹の枝を残した支柱を
立てて、先ずは蔓を昇らせてやる。
7月頃になると、しっかりとした基部を作り、
旺盛に蔓や葉を茂らせる。
私もゴーヤのえぐみが嫌だったが、草木堆肥で育てたものなら食べられるようになった。

野菜の宅配についてーPART
 
有機野菜は農薬を使わない?)
 
 家庭菜園を楽しんでおられる方は、すでにお気づきでしょう。
5月~11月まで虫取りに追われ、ちょっと目を離すとキャベツなどはすだれ状に虫に食い荒らされていたり、春大根や春の蕪類などは茶色に染まり、線虫が這いまわった根菜になってしまったことなどのご経験があると思います。
自然農(無肥料栽培)にすると、虫が寄り付かないと自然農の本やホームページに紹介されているのでそれを実践してみた方もおられると思います。
ところが、何年しても虫害や成長不良で野菜の収穫にまでいかず、諦めてしまわれた方も多いのではないでしょうか?
 
 私は「美味しい有機野菜作り」のテーマで市主催のセミナーを数回開いたことがあります。その会場で、講義が終わったのち、座談会に入ると必ずこのような質問が出てきます。
「草木堆肥が必要なことはよく分かりましたが、先生は農薬をどのように考えられていますか?」と・・・
そこで、私は「有機野菜だと言っても農薬は使ってよいのですよ。但し、使ってはいけない農薬も多いのです」と答えます。続けてこのような説明を致しました。
農薬は野菜作りの中では必要悪なのです。
私も有機野菜は始めたころは、虫取りは全て手で行い、忌避剤として、とうがらし・にんにく・木酢・よもぎなどを混ぜて使っていました。但し、せいぜい10~20aまででしたね。
その時は、野菜作りどころではなく毎日虫取りばかりしておりましたよ。
ある時、お客様から佐藤自然農園さんは白菜は無いのですか?と言われました。もう皆様はピンと来ましたよね。白菜は虫の宝庫になります。種を蒔いても蒔いても新芽を虫にやられ、ようやく定植したかと思うと、すぐにすだれ状になってしまいます。
現在のように1.2ヘクタールになるとさすがに無理ですね。
農薬を初めて使う際は、随分と悩みました。
そこで、如何に土壌を汚染しないか、何を使ったら薬剤の効果が早く消えてくれるのか、残留しない農薬とは何か、様々に試してみました。
ある時、即効性の劇薬指定を受けている農薬(葉面散布)を葉っぱの片面だけ使ってみました。翌朝、その畑に行ってみますと、確かにその時は虫が死んでいたはずが、量は減ってはいましたが、生き生きとして葉っぱを食べていました。
 
 つまりはこういうことです。
即効性の神経性劇薬(農薬)は分解が早くなるように設計されています。
光合成分解・水溶性分解・自然分解・微生物分解などで、晴れた日には半日若しくは一日で分解されていたため、もう一方の片面に付いた虫が生き残っていたということになります。
もし効き目が長い農薬であれば、虫が移動する際、その薬に触れた虫は死んでしまいます。
 
そこで、絶対に使ってはいけない農薬を申し上げます。メーカー名や品名は避けます。
先ずは土中消毒と称する農薬です。何故なら、土中には数限りない子虫・微生物・放線菌などが棲んでおります。(草木性の施肥をすればするほどその生物層は豊かになります)
土中消毒(浸透性の劇薬が多い)はその生物層を完全に破壊してしまうからです。
次に、サリン系や浸透性農薬です。これは申すまでもなく、野菜に残留し、しかも浸透していく性格を持っており、これを食べた害虫は死んでいきます。国などは使用料が少なくて良いからと言って、低農薬農法に奨励しております。毒性が薄く、少量使用だから安全ということなのでしょうか?保存料等と同じく体内に蓄積します。これらの化学物質は遺伝子に組み込まれて子供に伝わっていきますから、怖いですね。
最後は生物資材と称する農薬(?)です。交尾しないように、したら、生殖機能を破壊し、その圃場にはその虫は居なくなるというものです。これなどは有機JAS規程では奨励しております。生物体系を破壊するのが正しいことなのでしょうか?
ミツバチが飛ばなくなったのは、このような農薬が使われるようになったことが大きな要因です。
 
 まさに自然破壊を国全体で、若しくは消費者も巻き込んで行っているのが
日本の姿です。
これでは持続可能な農業を目指しているはずの有機農業が、自然破壊を進めていることになってしまいます。オーガニック農産物に認められない日本の有機野菜は世界では市民権を得られないわけですから悲しいことですね。
 
このようなセミナーの話を進めていくと、会場では密やかなホッとしたため息が漏れてくる。
会場に集まった方のうち、2/3以上の方が農業若しくは家庭菜園をしておられたようで、安全と言われる有機野菜や自然野菜でも農薬は必要悪なのだと言うことが分かったという安心感からでしょう。
この呪縛から解き放された受講生たちは、それから一気に話が盛り上がって座談会は一気に質問の嵐となっていった。
 

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4・5日前の梅雨の晴れ間、ようやく平野さんのコンバインを借り、小麦の初収穫を
迎えた。冷却が入っていなかったため、煙を吹き出したり、近所の方から水をもらい、事なきを得たと思ったら、今度はオイルが切れており、またもや煙を吹き出す。
そのため、後藤君の畑は半分もできず、刈り残しが出てしまった。
それでも、当農園・後藤君・南君の三者の畑から約520キロの小麦の収穫となった

明日、由布市庄内地区のある農家さんに持ち込み、乾燥機にかけようとしていたら、
ご近所の農家さんが親切に教えてくれて、「刈り取ったらその日に乾燥機にかけないと麦はダメになる」と・・・
早速、ある農家さんに電話をするも、繋がらず、仕方がなくあちこちの乾燥所に電話するも、みな断られる。
その理由とは、農協に拠出するのでなければ、受け入れないとのこと。
ここでも農協の部会制度のような閉鎖社会が見られた。

それではと、郷里の宇佐にある精米所(同郷のよしみ)に電話し、四人で、軽トラック二台に乗せ、持ち込む。帰宅したのが23時をはるかに回っていた。
随分と高い小麦になりそうだが、とにもかくにも記念すべき「糧」とも言うべき小麦の
初収穫となった。加工所(建設予定)での製粉が楽しみになった。


(自然環境の激変)
 農業を初めて15年を超えた。
当初のころは、虫害もそんなにひどくなく、圃場も2~3反ほどと狭く、何とか自家製の忌避剤や手で虫を捕殺していた。夜は懐中電灯を持って夜登虫を捕獲していた。
今では野菜の圃場8反、穀類の圃場4反、農園の研修生を卒業し、自立を目指している若手グループの圃場が5反と広がっている。
そこに供給する草木堆肥の量も半端ではない。その労力も年々半端ではなくなってきた。
 
 一方、自然環境が変化するスピードが速くなってきており、温暖化と言うよりは異常気象が続いている。夜登虫(土中に生息する)などの害虫の異常繁殖はもはや止めようもない。
必然的に葉面散布の農薬の使用回数もやや増えてきている。
今までであれば、4月頃までは虫も発生しておらず、農薬を使わずとも葉っぱはしっかりと成長してくれていたが、今では越冬する虫・アブラムシ・赤ダニも増えており、放って置くと、圃場全体の野菜が全滅してしまう。
そんな生産現場では、虫が大量に発生し、一畝丸ごと全滅といったことも少なくない。放って置くと、次々と虫が渡り歩き、一つの圃場が全滅しかねない状況に陥る。
種を蒔いて3~4日で発芽し、その2~3日後には、新芽は全て消えてなくなっている。
そうした中では、5~11月の初旬頃までは、虫が大量発生しないように、初期的な段階の予防が必要となる。ある程度育つと、何とか出荷までは保つが、最後は虫が食べるか、人が食べるかの競争となることもしばしばある。
どんなに異常に虫が発生しているかはこんな事例でも分かる。
ほうれん草は通常ではシュウ酸という毒素を持つ。そのため、虫は寄り付かない。人参も独特の香りを持ち、人参のみに付く虫も居るが、その他の虫は寄り付かない。
ところが、最近の5年間では、ほうれん草や人参の先端で命が尽きている夜登虫がいる。
毒素にやられて死んでいる姿は凄まじいと言うしかない。当然に葉っぱはすだれ状になっており、もう出荷はできない。かってはこれほど多くの害虫が発生したことはなかった。
 
 日本では、異常気象の傾向がすでに7~8年は続いている。雨が降る時季は極端な集中豪雨か長雨が続き、渇水期になると一か月も雨が降らなかったり、暑い時季は畑の表面温度は50度以上となり、寒い時季は氷点下5度付近を行ったり来たり。
それでも全体としては確実に15年間で2~3度は温度が上昇している。
これは野菜にとっても、土中で越冬している虫に取ってもとんでもない大きな気候の変動に当たる。そのため、害虫は時に異常発生を繰り返している。
約20年以上も農業を続けていると、気候の変化は呼吸と同じくらいに分かってくる。
 
当農園だけがこんな状況になっているわけではないし、誇りを賭けて健全な野菜を作ろうとしている全国の有機野菜及び自然農の農人達も同じ悩みを抱えている。
それでも本で聞きかじった知識だけでいたずらに無農薬や無肥料を声高に言われておられる消費者に農業現場の真実の声は届かないのです。
有機農業及び自然栽培農家に農薬は使ってますか?と尋ねると、そんなものは使ったこともありません、と言う答えが返ってくる。意地悪く、では害虫が異常発生した場合は、とお聞きすると、その季節には害虫の寄り付く野菜は作りませんと・・・
そう答えざるを得ない農家の良心も傷んでいるのです。
ある自然農の方に聞いてみました。害虫が異常発生した場合、どうしておりますか?と。
その畑はしばらくは捨てます。では生活はどのように?とお聞きすると、養鶏やアルバイトをしております、と言う答えが返ってきました。その方は広大な山野をお持ちになられています。
これが有機及び自然農の生産現場の現実の姿です。
 
日本の気候は確実に変わってきており、温暖化による害虫の常時的な異常発生現象が続いております。北海道や長野の一部以外では、農薬の日常的使用は避けられなくなってきている。
但、土壌を汚す除草剤・土壌消毒・浸透性農薬・生物資材・持続性の高い農薬などの継続使用は、確実に自然環境を破壊していきます。
それを日常的に食さざるを得ない消費者の体には複合した化学物質が溜まっていきます。特に現在の日本では安全に対する認識が偏っており、大量の、かつ日常的に食品添加物だらけの食生活をしている。

少なくとも私達、むかし野菜の邑グループは、お客様の健康を守っているとの自負心を持っているからこそ、きつい農作業にも頑張っていけると思っております。

次回は、商業的農業について考えてみたいと思います。