農園日誌ー野菜の宅配についてーPARTⅠ

28.5.25(水曜日)終日雨、最高温度26度、最低温度17度

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               三番の畑はカモミールに占拠

農園は梅雨入り前の植え込みに忙しい。
火曜日は夏野菜、茄子・ピーマン・パプリカ・万願寺と伏見とうがらしなどを植え込む
育苗ハウスのなかも数ケースの苗を残すのみとなった。やれやれ!
堆肥作りが追い付かず、やや半生のまま畑に施肥、土の中で残りの醗酵はやってもらう。これができるのも、すでに畑の中には先住民となる微生物や放線菌の生物層
ができており、餌が来たと待ち構えているからだが、ついでに夜登虫(蛾の幼虫)他、ごまんと虫も棲んでいる。
こちらのほうは実に厄介物で野菜の天敵。それでも草木等の有機物を畑に施し続ければ、自然の野山とまったく同じ環境になり、虫の宝庫ともなる。自然に順なれ!ということになる。
おかげでほうれん草・赤玉葱・葉物野菜・キャベツなどは穴あき・すだれ状態。今年は温暖化がさらに進み、エルニーニョ現象が加わり、虫の大量発生となっている。
ほうれん草などは通常であれば、シュウ酸という毒素が含まれており、虫は食べないのだが、すさまじいのは、すだれ状態となった葉先で夜登虫が力尽きていること。

今日も出荷の後に、雨の中、第二弾のズッキーニ等を植え込む。
明日は雨の予報。それでも四角豆・一本葱の植え込みのため畑作りは休めない。

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由布市狭間町の麦畑
およそ3.5反はある。

種蒔き時季が遅れたため、本来ならばこの時季、黄金色に色づいて
いなければならないのだが、未だ青さが残る
それでもしっかりと麦
が実っている。
梅雨入りしてからでは困るので早く色づいてと祈る。

野菜の宅配についてーPARTⅠ、
 
日本の野菜作りは、「農産物の量の確保」と「大量流通」といった視点から、単作農業が主力となっている。国も国策としてそのような農業指導や支援(補助金等)を行ってきている。
そうなると、商品ラインを揃えるため、必然的に農協などに各農家の野菜を集めて、大手流通に野菜(農産物商品)を流す仕組みが必要となる。このようにして、消費者と生産者が直接的にも間接的にも(八百屋さんを通して)向き合うことは無くなってしまった。
ここから、消費者が欲する野菜という商品ニーズは、農協や流通が取り扱いやすい野菜にのみ集中するようになる。そのことから、消費者ニーズは流通のニーズということになった。
このようにして、野菜の価値評価の基準は大量流通に乗る規格・見栄えなどが良質な野菜ということになってしまった。
そのマーケットでは、本当に消費者が欲しがる「野菜の質」=味香り・旨み・食感・栄養価などは何ら評価を受けない。当然に安全性も形骸化していくことになる。
何故なら、見栄え形や規格を揃えるためには、農薬を一週間に最低一度はやらないと野菜に虫が付き、規格を揃えるためには、化学肥料やホルモン剤を使わなければならなくなる。
農業者の良心ともいうべき安全で栄養価のある美味しい野菜作りを追求すること(=質の追求)は農業者にとっては食っていけない、つまりは、死活問題になる。
 
これは当然の帰結なのだが、そのことに気が付いていない消費者が多すぎるし、農業者を責めることは全くのお門違いであることすら気が付かない。
そこで現れたのが有機野菜マーケットであり、安全性のみ追求する有機JAS規程である。(消費者保護の名目として規程化された)
 
ところが、この流通の価値観に慣らされた消費者は本来は安心安全の有機マーケットですら、規格や見てくれや見栄えを求めてしまう。虫食い一つない規格サイズに揃わされた野菜作りを要求される有機農家が圧倒的に多くなる。有機農業者も個別に消費者と向き合う販売方法をとっている方は数少なく、有機専門の宅配業者に有機野菜なるものを収めて生計を保つしかない。その有機専門の宅配先からは、全国の有機JAS農家から集めた、みてくれきれいな有機野菜(?)が送られてくる。
消費者サイドも有機野菜や自然野菜は無農薬と信じて疑わない。
有機JAS規程にも無農薬とは謳っていないのにも拘わらず・・・
当農園にも必ず無農薬の野菜を探しております・・・の問い合わせが多い。
まさに問題だらけ、矛盾だらけの無農薬そして有機野菜のマーケットが日本には厳然と存在している。
 
こうなると、真の有機野菜(本来的な意味は、安全で、栄養価に富んだ、美味しい野菜=良質な野菜のはず)を求める消費者は何を信じてよいのやら?
これが有機マーケットの実態なのです。
 
そこで本題だが、
真に安全で栄養価に富んだ美味しい野菜を求めているのなら、一農園若しくは農法を統一した農業者グループから野菜を求めるしかなくなる。
そして、さらに野菜の作り方を公開している先を探すしかない。
最後は消費者が野菜作りをもっと勉強しないと、あるいは、自分の舌を信じるしかない。
私は真に安全で美味しい野菜を求めるならば、メディアや学者の言っていることより、ご自分の価値観や感性を信じなさい、と言うことにしている。
そして、一度でよいから、安全で栄養価に富んだ美味しい野菜作りの現場を覗いてみることをお勧めする。

次回PARTⅡでは、有機野菜及び自然農について、その概念や生産方法などを詳細にお伝えします。天候不順・異常気象・世界的な気候の変化の中で農業現場では何が起こっているのか、なども併せてご紹介する。
それが少なくとも野菜を慈しんで頂いているむかし野菜の仲間たちに対しての礼儀であり、まだ見ぬ仲間達へのメッセージでもあるからです。
 
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トマトが順調に育って
いる5番の畑。
4日前に、芽掻き・支柱立て、除草作業を終えた。研修生も含めて総勢6人の共同作業を行った。
すでに一番果はこぶし
大に育っているものもある。
大型台風さえ来なければ、今年のトマトの出来は良い。


今日、福岡からの独身女性から研修の申し出が正式になされた。
6月から佐藤自然農園にて二年間の研修が始まる。
女性なのに、との危惧もあり、当然に不安で一杯だとも思う。
国の助成制度(補助金)を使った研修でもあり、当然にきつい縛りもある。

大学も生物が専攻であり、以前から野菜を育て、自然に触れ合いながらの暮らしに
あこがれも持っていたようだ。
二年間の研修を終えた後の不安が(独立か、就職か)胸いっぱいに広がっていることも想像できる。
こちらから、やりなさい!とも言えないが、本人の心がけに尽きる。
「やりたいと思うのならば、人生は一回しかない。やる前から先のことを心配しても
意味がない。ここでは、みんなが支えあって農業を頑張っていく環境ができつつある
まだ若いのだから、精一杯に生ききってみても良いのでは!やる以上は男子と同じことをしていても勝てないよ。むしろ、女性のきめ細かな粘りがあるという特性を活かして、管理が大変で希少価値のある存在領域をこのグループの中で作り上げても良いのではないでしょうか?」と励ます。
他の男性スタッフからは、近い将来、必ず、女性が必要になってくると、概ね好意的に受け止められている。

有機野菜による農業の活性化と地域の復活をテーマとして掲げ、スタートを切った
この事業にも女性が現れるような時代になったのかもしれない。
そうなれば、さらに新たな農業の形作りへのチャレンジが始まる。それもまた良い!
農園主としては、彼らの師匠としては、休む暇なく様々な課題が乗っかかってくる。
それもまた楽しい!と思うことにしている。