農園日誌ーひょっこりひょうたん島

28.4.6(水曜日)曇り、時折晴れ間、最高温度18度、最低温度9度

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         農園の片隅にダンディリオン(洋たんぽぽ)の花

季節はようやく春の暖かさが定着し始めており、急な遅霜の不安もなさそう。
こうなると、夏野菜の植え込みが一斉に始まる。
育苗ハウスで育てていた夏野菜の幼い苗の追い出しが始まろうとしている。
その前に、畝作り(畑作り)の作業を急ピッチで行わねばならない。
この植え込み作業は5月末まで続く。
今度は春野菜を畑から追い出さねばならなくなる。(春野菜の一斉収獲)
そのため、この時季は夏野菜を植え込むスペース確保のため、頭を悩ます。

トマト・インゲン豆・ピーマン系・茄子系・胡瓜系・ズッキーニ・南瓜と順次続き、
穀類としてはとうもろこしがある。その面積は一ヘクタール(3,000坪)に及ぶ。

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じゃがいもの芽が
出始めた。
草に覆い尽くされる
前に、除草作業を兼
ねて、土寄せ作業を
行う。
今年は250キロの種を
植え込んでおり、
長さ70メートルの畝
が7本ある。
この作業がかなり
きつい。



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この時季、葉野菜が中心となり、豆類などの実物が欲しくなる。
例年であれば、4月初旬から絹さやエンドウ、4月中旬頃からスナップエンドウ
4月下旬頃から実エンドウ、5月初旬頃から空豆と続くが、今年は2月に季節外れの暖かさがあり、一度花芽を付け、その後急速な寒波が到来し、一度、萎れてしまったため、この循環がうまくいっていない。
気候異変によって、季節に順なれの農園のコンセプトが狂い始めている。

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早稲玉葱は今の処、順調に生育している。今週第一陣の出荷を行う。葉玉葱として
葱の無い時季に葱の代用として葉物野菜ともなる。


今日、忙しい出荷日に、香港からの突然の訪問者が農園に訪ねてきた。
三菱商事を退職された方が通訳として同行。
先のカナダの農人に続いて、このところ、農園も国際色豊かになってきたのか?
はたまた、世界が狭くなってきたのか?
またしても、英語が喋れないもどかしさを味わうことになった。
香港のDRの方で、広州に農園を20ha経営しているとのこと。
日本にはすでに数回訪れており、有機野菜等良質な野菜を求めているとのこと。
国際都市香港の富裕層は中国の野菜が信じられず、それならばと、自社の農園を広州に開き、それらのニーズに応えようとしているとのこと。
香港の有名レストランや300名ほどの会員を顧客として持ち、同地ではかなりな
権威(信用かな?)をお持ちになられているとのこと。
話し合ってみると、中国人と言うより、アメリカ人というイメージに、お聞きしてみると
カリフォルニアに住んでいたが、香港に移住してきたとのこと。
アメリカ的な合理主義を身に着けておられるようだ。

それが何故当農園なのか?との質問に、日本の有名な有機農園を実地に訪れ、
栽培方法や野菜などを見て回ったが、いずれの農園も自分が全てに納得できずにいたが、偶々、当農園のホームページを見て、また、大分県という立地もなんだかよさそうなイメージを持ち是非にと、見学を乞い、訪ねてきたとのこと。

しばらく畑を案内して回り、農法や野菜のことを話していたが、いきなり今すぐに出せる野菜はないのだろうか?の問いかけには、
まさしく、ひょっこりひょうたん島です。

同行してこられた女性が彼の先生だそうで、まっすぐに私の目を見られるその姿勢には嘘は無いように見られた。言葉が通じないのは もどかしい。
彼女は何回もこの土は素晴らしい、と野菜のテイスト以上に当農園の姿勢に感心しているようで、野菜つくりに掛ける熱い情熱は感じられた。

当然に、今すぐにあなた方のご要望には応えられないと回答する。
但し、夏野菜からは、大量の野菜は無理でも、今からならば間に合いますよ、
と答える。一度、香港と貴農園にお伺いしてみたいものですね。と答えたものの
長々と飛行機に乗らねばならないと考えると、気が重たくなる。

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むかし野菜の邑グループの舵取りや新規就農の若者たちの将来を思うと、
既存の販売ターゲット(価値観を共有する顧客層)だけを維持拡大していけるのか
別のチャネルを用意しておいたほうが良いのではないか?など常に自分に問いかけていた。舵取りを行う者の孤独さとも闘ってきている。

そんな中、国外に、特に中国(香港ではあるが)に、近い価値観を持って、同じことを考えている人がいるとは、思いもしなかった。
今日はそんな価値観を共有できたことの方が嬉しく、なんとなく同志に巡り合ったような感覚になっている。
国内ではこの自然循環農法は評価を受けないであろうと思っていたし、もし、評価されるならば、海外からだろうと漠然と考えていたため、なおさらのこと。
もっとも、やってみなければわからず、信義が通ずるのかも分からない。
むかし野菜の邑を設立した時に、10年以内には海外ルート、特に香港上海などへの野菜の出荷を行う時が来ることは予感していたが、まさか、こんなに早くその機会が向こうからやってくるとは考えてもいなかった。

これからその詰めを行うことになるだろうが、このことを若い農人達に話しても、
実に懐疑的で覇気を感じられなかったのには、世代格差を感じ、どこか醒めた
若者像があり、見識・経験の浅さが今から思いやられる。まだまだむかし野菜の邑の道程は遠い。