農園日誌ー秋雨前線停滞ーむかし野菜についてPARTⅠ

27.9.2(水曜日)終日小雨、最高温度29度、最低温度24度

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          曇天の空模様の中、6番の畑から5番の畑を臨む

猛暑が終わり、朝晩が涼しく感じるようになってきたと思ったら、台風襲来に続いて秋雨前線の停滞。
日照不足と連日の雨により、秋野菜種蒔きや植え付けの大切な時季に、土作業が
できない。今日も堆肥を撒き、畝作りを始めようとしたが、振り続いた雨により土が
ぬかるみ、畝立ても出来ない有様。
大根一列・聖護院大根半列・サラダセット二列・人参二列・ほうれん草一列・蕪類
二列・小松菜一列・インゲン豆一列・わけぎとエシャレット三列の種蒔きと植え込みしか進んでいない。じゃがいもはまだ100キロの種芋が植わっていない。
予定している種蒔きや植え込みの半分もできていない。焦る気持ちだけが空回り。

これから、夏野菜を順次つぶしては、第二陣・第三陣・第四陣・第五陣の植え込みを
行わねばならない。第一陣はまだ半分未了の状態では先が思いやられる。
この処の例年からみれば異常気象(高温に続いて異常低温、そして長雨による
日照不足)が続いている。野菜の価格も随分と高騰しているようだ。

ある人から、佐藤さんところは野菜の値が上がっており随分と儲かるな!と声を掛けられる。「お陰さまで」とは答えるものの、むかし野菜グループでは農産物の価格は、固定のお客様(仲間達)の食卓をお預かりしているため、常に一定であり、
ある時も、無い時も価格は同じ。
逆に、如何に安定的に安心できる美味しい野菜を作り続けるプレッシャーが重い。
農園主にならないと分らない。そんな気持ちとは関係なく、スタッフ達の屈託の無い
笑い声が遠く聞こえる。

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昨日胡瓜の畝を潰して
即日、サラダセットの二列
目の種を蒔く。
回転の速さが当農園の特徴
そのため、畑の風景は
あっという間に変わってしまう
左は蔓紫とゴーヤの棚
右は青じその畝(四番の畑)
この時季、早ければ明日にも
芽吹きが始まる。
虫さん達がおとなしくしてくれることを祈る。

(むかし野菜への思い)

最近特に感じていることは、色んな評論家やマスメディア、団体や消費者グループ達が、有機無農薬や自然農などの定義ばかり気にして本音(実態)と建前(概念)
を置き去りにした風評や議論が多すぎること。
それに振り回されれば、消費者個人個人の価値観や感性が育っていかない。
空論に終止していては、実態も分らず、分かろうともせず、判断は他の人に、あるいは、権威に任せようとする。

例えば、こうだ!
農薬を使った野菜は健康を害する。そこで有機野菜と言えば無農薬野菜である。と信じてとりあえず有機野菜を大手有機専門の通販会社から取って見る。
送られてきた野菜を食べてとりあえず安心する。
やがて、少し慣れてくると、何故この有機野菜は虫喰いの痕がなく、きれいなのか、
何故、味香りも無く美味しくないのかと気付く。
これはこの会社の野菜が本物の有機ではないのではないかと、他の通販会社へ
取引を変えてみる。今度は虫が喰った痕も残り、どうやら有機野菜らしい。ただ時折未熟な野菜が混じり、畜糞の匂いがする。

そこから、野菜についてネットなどで調べてみると、有機野菜は畜糞を多投しており
その飼料に抗生物質や様々な薬品が使われている。と書いている。

それではと、今度は自然農の野菜を求めてみる。
これも味香りが薄いが、安全なんだと自分に言い聞かせてとりあえず続けてみるが、あまりにも高額となり、続けることが苦痛になり、また、元に戻る。

おそらくこのような消費行動をとっておられる消費者も多いようです。

無農薬野菜と言う概念に振り回されて、土作りこそ、真に安全で栄養価のある美味しい野菜であることに気が付かず終ってしまうことが残念です。
きっとその方は真に美味しい=栄養価の高い=そして安全な野菜に巡り合って
いないのでしょう。
それでも諦めずにネットを探して、あるいはクチコミにより、むかし野菜に辿り着く。
当農園はそんな迷える消費者の終着駅となっている。
ですから、そのようなお客様には、必ずこう答える。
「今まで随分と探してこられたのですね。もっとご自分の舌と感性を信じて、世評に振り回されずに、ご自分の価値観を育んでください。そして、貴方の感性にフィットしたら、その生産者のことを信じてやってください」と・・・

イメージ 3金時生姜

幻の生姜ということで、特に
女性の体には薬になる。
発汗作用や新陳代謝
深めてくれる効能を強く持つ。

根は赤く美しい。葉は香り高く
和製ハーブです。
肉と一緒にグリルしたり、
押し寿司に使ったり
楽しめる。

果たして、日本(北海道や信濃地方は別にして)では、無農薬で野菜が作れるのか
丹念に虫取りが出来る時間のある小規模な家庭菜園では可能ですが、気候温暖な日本では、それこそ虫のために野菜を育てているようなものになることのほうが多い
私の経験では(ほとんどの農家がそうであるように)時季によっては種を蒔いて芽が吹く段階で、新芽や本葉を食べつくされてしまうことが多い。(特に5月下旬~11月
初旬頃まで)
また、有機(JAS認定)野菜では一定の農薬は使用できることになっていることを知らないか、無視している消費者が多すぎる。

慣行栽培(近代農業)では、種蒔きから収穫まで季節によっては2~3ヶ月を要する葉野菜に、20回以上農薬をやり続けることが一般的に知られている。
減農薬ではその回数が15回以下、若しくは10回以下である。
つまりは一週間に最低一回は使用することになる。
これでは、農薬は害になると言われても仕方のないことではある。

農薬は実は、一定の期間で光合成分解や水溶性分解をする。
但し、慣行栽培のように頻繁に使用すると分解速度が間に合わず、どうしても野菜や土に残ってしまう。これが残留農薬と言う問題。
さらに危険なものはネオニコチノイドという浸透性農薬である。これは即効性ではなく野菜に浸透させて虫が食べない、あるいは、食べたら死んでしまうもの。
(近い範疇にあるのが、遺伝子組み換え野菜である。この野菜は害虫対策として、
あるいは、除草のためにこれらの農薬に近い除草剤(枯れ葉剤)として使用される)
弱毒性農薬として減農薬野菜推進に一役買っているし、国も奨励している。
一番問題になるのが、畑に棲む線虫・夜登虫などの子虫を駆除するため、土に直接施される農薬、これを土消毒と称して頻繁に使用していること。多くの農家では、
危険な農薬とは思っていない節があり、同じく種蒔き前に使用されている除草剤と同じくらい危険である。草一本も無いきれいな圃場では間違いなく使われている。
次に有機リン系農薬も浸透性農薬の一種であり、地下鉄サリンで撒かれたものと
同系統の農薬。これは現在多く使われているようだ。
これらが先の回数で撒かれると、土壌は限りなく汚染され続けることになり、一旦土壌に入り込むと中々に消えない。
画して、土壌は無生物の世界へと変わってしまう。虫どころか微生物や放線菌も
棲めなくなり、土壌の浄化作用である自然循環システムは破壊されていく。

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白長茄子

異様な風景ですね。
畑に白い野菜が現れる
最初作った時はそんな
感じでした。
元来が欧州産のようです。

クリーミーで紫・緑などの
長茄子と同系列野菜。



これでは一体何が安全なのか?消費者は迷うことだろう。
このように理解して頂きたい。

浸透性農薬は論外として、(これを知らずに使用している農家は多いが)一般的に
農薬は葉面散布で幼い時季に害虫から守ってやるとして、1~3回までであれば、
日本の気候においては必要悪でもある。
それも弱い効き目のある農薬ほど、回数を増やさねばならなくなる。
そのような種類の農薬ほど、光合成分解などはし難く設定されている。
逆に、強い効き目のある農薬ほど、回数は少なくでき、かつ、光合成分解は早く
設定されている。(効き目は1~2日で無くなる。つまりは分解されてしまう)
参考までに強い効き目のある農薬は、実は農人の体を蝕むが、回数を少なくすれば
野菜へは残らず、従って消費者の方はより安全である。

このことを理解して、消費者のために安全で美味しい野菜作りを真摯にされている農家も少なくないことを信じたい。そのような農家は、自分の家庭で食する野菜も
市場に出す野菜も同じ方法で同じ土壌で育てている。

浸透性農薬や生物資材(有機野菜において認められている微生物などの農薬で、害虫に取り付き生殖機能を犯す。つまりは自然循環機能を破壊していくもの)などの害は、計り知れないものがあるが、実は、真に言いたいことは他にあります。

これは、次回に詳述していきますが、適切になおかつ、1~3回程度使用される農薬よりは、圃場に残されていく化学物質のほうが、私の経験ではよほど怖いものがあります。
それら化学物質は畑に永年蓄積していき、野菜に取り込まれていきます。
化学肥料・残留農薬・畜糞多投による飼料に含まれる薬品や抗生物質などがそれ
です。ただでも空気汚染により土壌に化学物質が降り注いでいるのにですよ。

次回からのブログにて、それら化学物質を如何に減らしていくか?その役割を
何がしてくれているのか?自然循環農法を実践して自然から学んだことだけでしか
語れませんが、お楽しみに!

参考までに、当農園には時折、近所で聞きつけた家庭菜園を楽しんでおられる方が尋ねてこられる。その際、農薬のことは必ず聞かれる。それらの方々は決まって皆さん有機、若しくは自然農を目指しておられるが、どうしても虫の被害が多く、どうしたら良いのか悩んでおられる。その際、語る内容を今回ブログに載せてみました。

→次回へ続く