むかし野菜の四季ーPART2

2022.9.27(火)雨のち曇り、最高温度28度、最低温度18度

             台風14号による被害

 

雨風共に最強クラスの台風14号が九州を襲ってきました。

茄子・ピーマン類など木物はほとんどが壊滅寸前までに被害を受け、種を蒔いていた

秋野菜も流されたり、埋まったりで、かなり大きなダメージを受けました。

この畑は高台にあったために大雨の被害は視覚的少なくて済み、何とか

秋野菜は残っております。雑草まみれですが。(5番の畑)

 

(消費者とのコミュニケーション)

化学肥料(同時に農薬)を使う近代農業が慣行農業とされて久しい。また、有機農産

物が市場の2%にも満たない現状が続いている。

化学肥料や農薬・除草剤の多投による農地の劣化(微生物や菌類が棲めない)の危機

や持続可能な農業や自然環境保全の危機を世界がいくら唱えても、それに関心を示そ

うとしない日本国民の意識の薄さ。

そうした中では、有機・無機栽培を問わず肥料栽培を捨てて、草木堆肥による土を育

てる自然循環型農業に転換し、有機栽培の問題点を克服しようと始めた「自然栽培」

と言う言葉もその意義も消費者は知らない。

特に肥料を使わず、露地栽培にこだわり続け、草木堆肥による土作りを行っている

農家は、世界でもほとんど居ないわけですから、むかし野菜(=自然栽培)は差別化

商品と言うよりマーケットではほとんど新規商品ということになります。

 

消費者はどのような農薬が危険なのか、危険な農薬は何が問題なのか、どの程度害虫

被害が深刻なのか、除草剤は実際の農業現場でどの程度使われているのか、如何に除

草作業が大変なのか、有機野菜は安全なのか、蓄糞に何故農薬・薬品・抗生物質

入っているのか、その具体的な実情を知らない方がほとんどです。

さらに市販されている加工品にどの程度添加物が入っているのか、何故流通する食

品に添加物を入れないといけないのか、などなど、「食の健全性の認識」を明確に持

たれているのか疑問です。まして、農業現場の実態を知ることは難しいと思います。

私が自然循環農業を始めるまでそうでしたから・・・

メディアも含めて安心安全・有機無農薬などが一般的に健全な野菜だと信じて居ら

る方が多いのが現状です。

このような農産物は市場啓発・啓蒙活動を同時並行して販売普及に努めていっても

理解してくれる消費者は圧倒的に少ないのです。ここに消費者へ伝えることの難しさ

があります。

そのため、知名度の低い農園や農法はマーケティングを導入し、それを欲する消費者

とのコミュニケーション能力(消費者へどのようにして伝えるか)が重要となります。

自然栽培野菜の説明には二時間のセミナーを5回繰り返してもまだ時間が足りないく

らいです。そのため、「失われた先人達の叡智」-むかしの有機農法の復活―と言う

タイトルの入門編とも言うべき本を執筆致しました。

            アフリカ原産の四角豆の花(四番の畑)
 

消費者に商品を知ってもらおうとする場合、その伝達の仕方には広告・ちらし・新聞

及び雑誌記事・テレビラジオ・イベント・口コミなどがあります。

消費者が購買行動に移っていくまでには「望・見・知・認」の4段階があります。

「望」は広告・ちらし・ラジオなどであり、「見」は新聞・テレビ・イベント・SNS

など、「知」は雑誌記事・新聞記事・テレビ放映・ホームページなどがあり、「認」

はお試し購入や口コミなどです。

広告・チラシ・SNSなどは、全国である程度大規模で名が通った事業体が行えばそれ

なりの効果も期待できるが、小規模及び無名の事業体にとっては効果が薄く大きな

市場伝播力は期待できない。

眺めた(望)、見たこと(見)があるでは消費者の頭の中にはその情報は刷り込め

ないが、頭の中にわずかに残る効果はあります。

次に、雑誌などで「記事を読んだ」ことがあると「知る」という効果が出ており、

消費者はやや関心を持ち始めます。だとしても、それだけでは消費者は即購買活動

には移り難い。

親しい人から強く紹介されたり、あるいは、勧められると購買行動に移る可能性が

高くなる。

この口コミは実際に体感された消費者が同じような価値観を持っている極く親しい

方に伝えるからこそ効果があるのです。

眺めて、見て、知って、商品の価値を認めなければ消費者は金銭という痛みを伴う

購買行動に移りません。

これらの4段階の伝達手段を組み合わせて消費者にその商品価値を伝え認めてもらう

ことをコミュニケーション戦略と言います。

       大雨で流され埋まり込んだ畝を修復しました(三番の畑)



それでは「むかし野菜の邑」が農産物等の価値観を共有できるであろう消費者層に

向けて実際に行ってきたコミュニケーション方法を述べておきます。

当初は(佐藤自然農園でしたが)市内の知人を頼って戸別訪問を行い、野菜を有料

にてお配りして、その価値を認めて頂いた方の知人縁故の方々を紹介してもらいま

した。

そのため、ホームページを開設し、より詳しい野菜作りの方法や「今週の野菜」

「農園日誌」

ブログを立ち上げて、啓発活動から始めました。(読んでもらう、知ってもらう)

その後、問い合わせのあった方々へ個別にメールや電話などで当農園の取り組みや

活動内容などを紹介しながら、啓蒙活動に専念していくうちに、共鳴・共感を頂いた

方からの口コミが関東方面の消費者へ広がっていきました。

その後、テレビなどからの取材・総合雑誌への掲載などが散発的に起こるようになり

お試し購入の申し込みが入るようになりました。その効果もやはり一時的なものです。

今では、むかし野菜の定期購入者からの口コミによる紹介がこの自然循環農業を支え

てくれており、これらの様々なコミュニケーション活動を繰り返すことによって緩や

かにお客様が全国に広がっていきました。

口コミも一人のお客様からの伝播力はわずか0.5人よりも少ないと思います。

ただ、悪い口コミの伝播力は1,000倍とも言われております。

           作っても作っても足りない草木堆肥

消費者の商品への既存の評価基準(見栄え・外見)に囚われる事無く、自分が正しい

と信じた商品価値観を貫く姿勢や思想が信頼できる消費者の共感を呼んでいるのだと

思います。

それ故、お試し購入のお客様が定期購入のお客様へ転じた時には、「農園の仲間」と

言った感覚に生産者も消費者も変わっていきます。そこには両者の信頼関係が生まれ

てきていると信じております。

当農園の定期購入のお客様殻のメッセージは先ず「何時も美味しい野菜をありがとう

ございます」から始まり、当農園の返信は「むかし野菜を慈しんで頂きありがとうご

ざいます」となります。