農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.12.18(金)晴れ、最高温度10度、最低温度2度

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             畑は一面、白の風景へと変わる

 今季の冬は一段と寒くなりそうだ。畑は突然に、最強の寒気団に襲われた。

ゆっくりと冬の気候に移り変わっていくのであれば、野菜達もそれなりに寒さに

耐える準備は出来ていただろうが、この急激な寒の訪れに野菜達はいきなり風邪

を引いてしまったようだ。

農人も慌ててビニールトンネルを掛けて、畑は白の世界へと一変する。

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これからは、トンネル管理の毎日となる。
冬でも気温が最高温度が15度を超える日や雨が予測される日は、トンネルを

剥ぐり太陽の光に当てたり、雨を当てたりしてやらねばならない。

物言わぬ野菜達は小児と同じで、その顔色を見ながら育ててやらねばならない。

その慈しむ心が無い人は農業には向かない。

当農園のように、一季節40~50種類の野菜を育てている場合は、個々の野菜

によって寒さに強い弱いの特性を持っており、その特性に応じたきめ細やかな

判断と対応が要求される。

農園歴8年の竹内君も、去年独立し、正にその経験をしている処。

師匠からの指示を受けて対応するのとは大きく異なり、失敗を重ねて始めて一人前

の農業者となれる。自然循環農業の会得は難しく、人を育てるのもまた難しい。

その師匠もまだまだ失敗をする。この時代は気候が一定しない気候変動の時期に

当たっているようだ。自然から謙虚に学ぶしか無い。

 

「コロナウィルスにより人の価値観は変わる?」

 

 2011年福島で起きた原発事故、所謂原発ショックを契機にして放射能汚染

の危惧から健全な食への関心が急速に高まり、当農園も関東方面の消費者が急増

したことがあった。

当時は、放射能汚染問題に端を発して化学肥料・畜糞・除草剤や農薬と言った

化学物質による汚染に対して、農産物の安全性を求める気運が一気に高まった

時期であった。

この時期、農園のお客様(仲間と呼ぶ)が関東を中心にして一気に150名

ほど増えた。10年を経過した今でもその仲間の多くは定期購入を継続されて

おり、農園を支えて頂いている。

 

唯、わずか10年の間にその関心も次第に薄れ、安易で手頃で簡単なほうが良い

と言うノン価値観の時代へと変わって行った。時代の価値観は短い周期で変化

しているようだ。

そこに、唐突に自然界からコロナウィルスが襲ってきた。昨今の無関心・自己

本位の価値観「安・近・短」な世相は揺さぶられ始めている。今回はやや趣が

異なり消費者の熱気も薄くその価値観は内向きになっており、ひたすら身を屈

めて時を過ごそうとしているようにも見える。

 

コロナの影響で学校が閉鎖となり、うちの孫達は連日畑で過ごしていた。

自然野菜を食べ、菌のはびこった畑で遊び回るこの子達は至って健康である。

元来、人も微生物の進化形であり、微生物や菌類の棲まう自然循環の浄化の

仕組みの中では悪性耐性菌が特にはびこることも無く健康で居られる。

ここの畑では除菌・滅菌と言って、菌を悪者扱いしてはいない。もしも、

菌類がこの世に無かったら、地球は木・草・動物などの死骸だらけになっている。

菌類の繁殖の仕組みによって有機物を分解して自然環境を浄化してくれている。

本来は人間の体の内も外も菌類で覆われているからこそ健康で居られるのです。

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まん丸な目をした子供達

子供は本来、邪気も無く、好奇心の塊です。この子達は農園で育ったと言っ

ても過言ではありません。

多くの菌達に囲まれて毎日泥まみれになって畑で遊んでいました。

現在の社会環境は子供達にとって決して楽しいものではありません。

畑で育ったこの子達は、嘔吐下痢などしたことがありません。

きっと、菌に囲まれていただけに自然順応能力が付いていったのでしょう。

 

変異し続けるウィルスに勝とうと思うのは無理です。それならいっそ共生

あるいは、共存していく仕組みを作っていかねばなりません。

東洋人がコロナウィルスに比較的強いのは、もしかして、むかしの食生活文化

が残っているせいかもしれない。

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               自然栽培のお米に麹の花が咲いた

 

味噌・醤油・漬物などには乳酸菌を始め様々な菌が棲んでいる。無菌状態に置

こうとしている滅菌・殺菌などの食文化のほうがむしろ違和感を感じる。

当農園は醤油こそ作ってはいないが、そのむかしの日本人の食文化である味噌

・漬物は農園発足以来、無添加醸造・発酵食品と言う伝統的な方法で作り続け

ている。

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                  発芽したばかりの麦畑
 

世界は資本主義社会の矛盾、あるいは、大企業によるグローバリズムに至り

貧富の差が広がり、いつしか階級制のような社会が進行し始めていると言った

閉塞感の中で、人々の多くは不満や不安に満ちている。

その不満や不安が内向きになり、為政者に向かうのでは無く隣人に向かって

いる。国の運営も民主主義とは最早呼べない国民不在の専権政治に変化しよう

としている。

これは多くの国民が政治に無関心を装い、時の政権にお任せにした結果では無

いかとも思う。

「楽をする」「とりあえず」「今が良ければ」「自分さえ良ければ」などの

自己本位な価値観から、「頑張って見るか」「家族を大切に」「他の人の心も」

「おもいやり」などの利他主義的な価値観を共有していこうと考えてくれれば

良いのだがと思わずには居られない。

何故、子供達の将来を考えないのか?未来がどのような形になって行くのかを

考えようとしないのか?

この国は危ういと感じているのは私だけでしょうか?