農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.2.19(水曜日)晴れ、最高温度13度、最低温度-1度

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2月の気候は、三寒四温。太陽は次第に上に回り、日照時間も増えてきている。

この時季、露地栽培の農作物の管理には、神経を使う。朝は突然に氷点下に下がったり

日中は15度を上回る暖かさとなりやすい。

作物によっては、凍結したら溶けていくものもあれば、ビニールトンネル内の気温が上がり過ぎると、腐れが発生するものなど、皆その性質が異なる。

そのため、ものによって、トンネルを開けたり、閉めたりの繰り返しの作業が当分の間、続くことになる。この当たりになると、露地栽培の経験が物を言う。

これを覚えるには、10年ほどの経験を要することになる。自然栽培・露地栽培・年間百種類の野菜作りには実に長い時間が掛かるため、人育てが難しいのです。

そう言う農園主も未だに試行錯誤の繰り返しではある。

 

2020.2.19  カット野菜・冷凍野菜の増加

数ヶ月前、農園へ一人の青年が訪れてきた。
彼は佐伯市で農業をしてきた。その後、大分市東部の自宅で農家から野菜を集め、ご夫婦で野菜の販売をしているが、むかし野菜を扱ってみたいとの申し出がなされた。
当農園では、直販が基本であり、「流通=小売」との取引はしていなかったが、熱意もあり、取引を行う事にした。
その時、農園ではネット宅配の他に、農園直売も行い始めた時期であったが、野菜中心の八百屋さんと言う商いの難しさを感じていた。
彼には大分市の東西地区でお互いに頑張ろうと、励ました。
その後、奥様も当農園を訪れるようになり、八百屋さんの難しさを訴えていた。
彼女はこう言った。
「うちは、若い主婦層が多いのです。野菜を売る前に、料理の仕方から始めねばなりません。さらには、野菜の切り方まで教えねばなりません。こう聞かれるのですよ。一口サイズとはどの程度なのですか?」
ついには、農園から仕入れた野菜をカットして届けるようになったそうだ。

都市圏では、八百屋さんが立ちゆかなくなってきていると言う情報が伝わってくる。
一時は、テレビにまで紹介されていた新進気鋭の八百屋さんが、今では生鮮野菜の販売の比率を極端に落としており、店先に並ぶ商品群の多くが弁当や惣菜・加工品に移っている。
また、東京の青山(高級住宅地)にあるファーマーズマーケットに行ってみたら、有機野菜のコーナーは激減しており、雑貨店やお菓子屋さんのテントが立ち並び、一体ここは何だったのだろうと思われる状況に変わってしまっている。

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30年前頃、バブル崩壊前夜の時期、「安・近・短」と言う言葉が流行った時代があった。
安くて、易くて、安楽と言ったような意味である。健全性・本物志向とは真逆な価値観であり、節約志向とも異なる。
カット・冷凍野菜は、手軽・簡単・便利が「売り」であり、楽な食を求めるのであれば、当然に支出(費用)は増えることになる。さらには、安全性や健全性とは遠く距離を置く事にもなる。
家族に美味しく安全な食を!と言う賢明さが命を預かる主婦から失われつつあることに憂慮している。

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これは農園のチーズケーキ。古代麦ブレンドの小麦の粉(半粒粉)を使用。そのため、味香りが高く、存在感がある一品となっている。写真は試食の風景ですが、偶々、作りたてを食べた時、熱々のチーズケーキとなり、それがまた、実に美味しいのです。

 

当農園の直売所では、水曜日は野菜中心に売れているが、日曜日は惣菜・お菓子類が中心となっている。
これは水曜日のお客様の年代層が高く熟年層が多く、日曜日は比較的若い層が多く見えられているせいだと思われる。ここでも料理に手間を惜しむ「安・近・短」の傾向が見え隠れする。
明らかに消費者のマインドがバブル全盛時代のような方向へ変化し始めているのを感じている。
自然栽培の農産物を広めるために、次世代を担う若いスタッフ達(後継者達)は毎週団地に赴き、ビラ配りを行っている。徐々に固定客も付き始めているが、その拡がり方は鈍い。
彼らは店頭に並んだ野菜を前にして、逐一野菜の説明を行っている。唯、その説明が精一杯で、そもそも自然栽培とは何か?化学物質に塗れ始めている食の安全性は?何故今自然栽培なのか?健全な農産物はどのようなものか?どのように労力をかけどのような農法で栽培しているのか?などなどの説明をする時間が取れず、苦労している。

若い後継者はこう言う。
「何故我々が手間を掛けてこのような自然循環農法を行っているのか?現在の農産物や加工食品の安全性に危惧があること、などの詳細を理解してもらえる機会を作ったほうが良いです」と・・・
唯、農園主が感じたことは、健康は自分で守らねばとか、現在の食は危ないとか、健全な食生活とは?などと話しかけても、それに関心を抱いている消費者は、年々減少していっていると言う事です。
例えば、自然循環農法を若い方に理解してもらいたくて、農園体験会を開催すると、

200人を越える家族が参加してくれる。
処が、それによって、むかし野菜の購入にも、食の健全への興味関心にも繋がっていかない。只、子供さん達を遊ばせるために参加しているに過ぎないのかもしれない。

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約4反(1,200坪)の5・6番の圃場。ここには20種類以上の野菜が育っている。

 

欧州では、有機野菜のシェアーが15%を越えている。日本では、わずか0.5%以下である。
欧州では有機野菜生産活動が環境への負荷を減らし、自然を守っているとの認識が消費者に強く、それが有機野菜を支えている。それに比べて、日本では、自らの周りしか見ておらず、自然を守るのは自分達の責任であるとの認識が消費者に乏しい。
私が気に掛かるのは、日本の大人達が子供達の未来は考えていないことにある。
古き良き時代の日本人は、もっと寛容性があり、社会的責任を分かっていたように思うのだが・・