農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.2.5(水曜日)晴れ、最高温度10度、最低温度1度

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       草木堆肥歴18年目のプラチナ級の2番の圃場の夕景

畑としてはやや異様な風景に映るかもしれない。

右端から芽キャベツ空豆、セロリ(トンネル)、エンドウ豆、白菜(トンネル)と連なっている。

エンドウ系の畝は枝が付いたままの竹を刺し、蔓が昇り易いように豆の手をしてやる。

毎年の風物詩となっている。

 

2020.2.4 立春


暦の上では、春が来ました。一年間の内で実は最も寒い日が続くのがこの頃です。
この最後の寒波が過ぎれば、日は一日一日と長くなってきておりますので、早朝凍える中での収穫作業からやや解放される。
育苗ハウス内では、トマト・ピーマン系の夏野菜の新芽が吹きました。底には電熱器を入れての強制的な発芽ですが、農園主の頭の中は、春野菜の種蒔き・定植作業を横目で見ながら、夏野菜の植え込み準備に飛んでおります。

今年は、記録的な(この処毎年そう言っておりますが)暖冬のため、野菜の種蒔き時季もかなり早めなければならないようです。そうなれば、作付け計画も例年の経験は生きて来ず、当然に数々の種類の野菜の収穫時期(出荷時季)も変わってきます。
当農園では、定期購入他の特定固定客が全てですから、お送りする野菜のアイテムも一度に重ならないように植え付けを配分・調整しなければなりません。
その際、農園主が常に考えているのは、その時季時季によって、一つ二つの核(主菜)になる野菜群を組み立てていきます。

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最近では冬の定番野菜となったブロッコリー。写真は二番果です。

一番果は大きいのですがさほどに美味しいわけではありません。実は、二番果・三番果の方が味が乗って美味しいのです。これは草木堆肥の特徴でもあります。

先ず、一番果を収穫しますと、野菜は子孫を残さねばと、二番果・三番果を付けようします。その頃、土壌の窒素分は少なくなってきており、窒素が不足気味で育つため、実が完熟野菜に近づいております。完熟野菜は糖質・ビタミンに富み、さらに、ブロッコリーは最後の力を振り絞って美味しい実を付けようと頑張ります。


例えば、こうです。
2月・3月は、すでに植え込んであるブロッコリー・キャベツ類・白菜・大根などを主菜として、葱類・白蕪・赤蕪類・紫大根などの添え野菜があり、じゃがいも・人参(赤・黄)・さつまいもなどの根菜があり、青梗菜・小松菜・ほうれん草などの葉物野菜があり、サラダセット・レタス系などのサラダ野菜がある。
そこに、セロリ・春菊・ビーツ・葉にんにく・芽キャベツなどの珍しい野菜の彩りを添えアクセントを付ける、と言った具合である。
このように野菜群を配していくと、色とりどりの野菜が通常のご家庭では、飽くことなく、いつもむかし野菜を楽しんで頂けることになる。新規に野菜を取り始めた定期購入のお客様からは、送られてくる野菜が楽しくて料理のレパートリーも増え、家族も喜んでおりますとのお便りも頂いている。
残念ながら10数年以上の古手のお客様からは、そんな感動させていただけるようなメールは送られて来ない。唯、むかし野菜が日常化しているのだろうと、有難く思ってはおります。

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赤蕪です。冬はこれ以外にも、紅蕪・紫大根・紅葉スティック・紅芯大根・黄金蕪・黒大根など色彩豊かな蕪及び大根が育ちます。

4~5月の春は、これらの野菜群が主役となっており、2月以降は野菜を切らさないように数段階で種蒔きをし続けておけば良い。
又、この時季は、晩秋に種を蒔いていた豆のシーズンが到来する。絹莢エンドウ、スナップエンドウ、実エンドウ、空豆と来て6月はインゲン豆へと続く。

唯、このままの暖冬が続くとなると、それぞれのシーズンが半月ほど早まり、インゲン豆の種蒔きは例年3月下旬頃から3月中旬へと早めねばならないようだ。

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様々な形のズッキーニ。初夏野菜の定番メニューとなる。

同じように、胡瓜・ズッキーニ・南瓜などの初夏野菜群の種蒔き時季も早まりそうだが、問題となるのが、これらの野菜は寒には滅法弱く、4月にやってくる遅霜のリスクがあり、遅霜や寒を避ける対策が必要となる。

このように、秋冬野菜から春野菜への移行は概ねアブラナ科の野菜が多く、ほとんど根源は同じ種類の野菜群であるが、がらっと変わってくるのが夏野菜群であり、初春は、露地栽培農業者の知識と勘と知恵を巡らせていかねば、うまくは繋がっていかないものなのです。
年間百種類の野菜を育て、特定顧客を抱え、常に消費者の皆様に満足して頂くと言うことは、それほど簡単なことでは無い。
この知識と経験と勘を如何に繋いで行くか、また、それを受け継いでいく者達の心構えは、常の精神力では難しく、自然や人に対しての謙虚さと探究心が必要とされているのです。
先人達の叡智を受け継いでいった者としては、その意識の高さを持ち続けて行って欲しいと願うのみです。

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麦を刈り取った跡に、大豆の種蒔きのために、草木堆肥を振っている処。この圃場は小原君(農園の卒業生)の穀類畑。むかし野菜の邑、全員での共同作業となる。