農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.1.22(水曜日)雨、最高温度14度、最低温度2度

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              冬の風物詩ー麦踏み

 

スタッフ総出で麦踏を行う。楽そうに見えるが、結構きつい。

かっては何処に行っても、見られた初春の麦踏みの風景が今ではほとんどの地域で見られなくなっている。ここ、挟間町で数軒の農家が麦を蒔いているだけになっている。

兼業農家では、稲作の裏作として麦を育てていたが高齢化が進み、後を引き継ぐ人も居なくなった。勿論、麦の専業農家はほとんど居ない。

仕方なく祖先から受け継いでいる田圃に稲を植えるのが精一杯なのです。

 

2020.1.22 冬の農園

 今年の冬は、気候が安定していない。厳冬期だというのに、寒気団も中々九州へは降りて来ず、南海上には湾岸低気圧が周期的に顔を出し、曇ったり、雨が降ったりと冬晴れは長続きしない。
いつもであれば、畑全面、ビニールトンネルに覆われ、静寂な白い世界となっているのだが、色合いが錯綜し騒がしく見える。

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冬の厳冬期だと言うのに、今週は一週間ほぼ雨の予報。暖かい南風が吹き、湿った雲を連れてくる。ビニールトンネルを一斉に剥ぎ、雨に当てる。

 

冬季は何もすることが無いだろうと考えるのは、農業を知らない方の言うことで、この時季、春野菜だけではなく、夏野菜の準備が始まる。
育苗ハウス内では、レタス・キャベツ・白菜・ブロッコリー・トレビスなどの春野菜の種蒔きを行っている。同時にトマト・ピーマン・茄子・万願寺などの夏野菜の種蒔きも始まる。
暖かくなる春頃に、夏野菜の主役となる実物(果菜類)の種を蒔いても実が稔るのは、夏以降となってしまい、それこそ秋野菜になってしまう。
そのため、専業農家では、厳冬期から育苗ハウス内で、育苗トレイに種子を蒔く。底には、電熱器を敷き、ビニールトンネルで覆い発芽を促す。自ら種を蒔き苗を育てる専業農家は少なくなっている。最近ではハウス栽培農家は、苗を他から購入しているようだ。

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育苗ハウス内に、底に電熱器を置き、育苗トレイに種を蒔き、さらにビニールで覆い、発芽を促す。これは第一陣の夏野菜と春野菜の苗床です。

本葉が出て、ある程度成長したら育苗トレイからポットに揚げ、草木堆肥で育苗ベットを仕立て、堆肥の発酵熱で根を育てる。
実に定植するまで、3カ月を要することになり、その間、如何に上手に育て管理していくかがポイントとなる。毎年同じことをやっているのに、中々うまく育ってくれない野菜もある。
上記の果菜類の他に、インゲン豆・胡瓜・南瓜・ゴーヤなどの実物もあり、3月初旬頃からその種蒔きが始まる。夏野菜の植え込み(定植)は、遅霜のリスクが去る4月10日過ぎに行う。

一方、春野菜も出荷時期に応じて数段階にて、種を蒔き、こちらも中々に忙しい。
春野菜は、パオパオと言う優れものの不織布を掛けたり、ビニールトンネルで覆ったりして、出荷の時期をずらしながら、1月末頃から定植作業を行っており、この作業は3月まで続く。

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発芽したばかりのキャベツの苗。右側は春菊。

春野菜はこの時季、およそ3週間単位で3~5段階で種を蒔く。この連続した種蒔きで野菜を途切れさせることなく、お客様にお届けできる。

この他に、1月はほうれん草・ツァーサイなどの冬野菜の種蒔き、氷点下を下回らなくなる2月下旬頃からは、人参・大根・蕪類などの種蒔き作業が始まる。
年間百種類以上の野菜を切らすことなくお客様に直接お届けすると言うことは、そんなに甘くはない。
少しでも気を抜くと、あるいは、思い込みが過ぎると、野菜はすぐに途切れることになり、いつも同じ野菜しか揃わないか、度々休園を繰り返さねばならなくなる。

さらに、この時季、数万株植え込んでいる玉葱などの除草作業が延々と続き、春夏野菜に備えて草木堆肥の原料となる剪定枝の破砕作業をしなければならない。
忘れてはならないのが、去年種を蒔いた麦畑の麦踏みと除草作業です。右左に重心を移しながら踏み込んでいく作業は、ほんの数分もするといくら寒くとも額に汗がにじんでくる。畑5枚分約1haあるのですから・・・

このように露地栽培農家は、皆様がご想像する閑寂な冬とは異なり、冬季は中々に賑やかしく毎日が忙しく、寒さに耐え、春の訪れを待ちながら、春夏野菜に向けて働き続けております。

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日曜日開催している農園マルシェで試食用に作っている「おいもダンダン」(石垣餅)

子供たちもお手伝い。蒸し上がった石垣餅を取り出している処。

訪れたお母さんがおっしゃる。ここの子供たちは皆闊達で明るい。子供を育てるのに良い環境ですね。うらやましいですと

この子供たちを見ていると、社会が夢のある環境でいて欲しいと願わざるを得ない。

 

唯、腹立たしいのは、多くの国民が先の見えない将来への不安を持ちながら、生きるために懸命に毎日働いているのにも拘わらず、党利党略のため、あるいは、自己保身のため、国民のためと称しながら政争に明け暮れている野党や、長いものには巻かれろと言わんばかりに、忖度を繰り返している与党の政治家達である。政権を担う与党なら、行政府の奢りや不公正さを是正すべく動く政治家がいるべきであり、
一政治家の独裁的な動きを牽制してしかるべきと思うのです。最も大企業の多くが似たり寄ったりであるのは、この時代が生み出した末期的な構造なのでしょうか。
そう言った思いを持っているのは農園主だけであろうか?
政治に期待していないと答えている若者達は、実に87%も居ると言う現実に、心寒いものを感じる。
彼らもまた、闘うと言う事を知らない。この国は、世界は、何処へ向かおうとしているのか・・・
70代になって、農園主は彼ら若者達にそのことを教え、導く努力をしてきたのだろうか?私達の世代の責任を感じてしまうのです。

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定期購入のお客様2百数十名、農園マルシェに訪れてくれるお客様は、延べ百名ほど、

農園を開いているために、様々な出会いが起きる。お話をする中で、互いにプライベートのことには触れずとも、その方々の生活やバックヤードが見えてくる。

そこはかとなく、さりげなく、心の交流がある場でもあり、やさしい気持ちになったりする。