農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2019.10.23(水曜日)曇り後雨、最高温度25度、最低温度16度

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      育苗ハウスの中で育てているレタス・白菜・キャベツの苗

 

5日前に種蒔きをした。8月下旬頃からこれで4回目の種蒔きである。

日照不足と湿気、それに加えて害虫による被害により、守られている筈の育苗ハウス内でも、溶けていったり、徒長してしまったり、新芽を食べられたり、幼苗に育ったのは極くわずか。トレイの表面が茶色っぽいのは栴檀の実を砕いて虫除けにしているため。

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何とか育った白菜とキャベツを定植したばかりの2番の圃場。

本来であれば、これにレタス・ブロッコリーが加わり、3・5・7・9番の圃場には

満杯の秋野菜が植えられている筈であった。

7番の葉野菜が害虫により食べ尽くされ全滅してしまい、約一ヶ月間出荷が出来ない事態に追い込まれている。蕪も、今、芽が出たばかりの状態である。うかつであった。

もっと早く手を打つべきであったと後悔している。

害虫の多発が予測できていたのに・・・

 

むかし野菜の四季

2019.10.20. 自然栽培の小麦粉を使った菓子・惣菜の開発

 

害虫被害の多発は、毎年5月中旬頃から11月初旬頃まで続く。中でも秋野菜の種蒔き適期である8月下旬~10月中旬頃までは、種の蒔き直しが続き、まともに幼苗が育たない。育ったとしても害虫被害によって、あるいは、暑さや湿気によって、いびつな野菜しか出来ない。
最近の数年はそれを繰り返しているが、農業は気候変動の洗礼を受けて次第に厳しさが増している。
特に、当農園のように低窒素露地栽培である自然循環農業の場合は、さらに厳しい。
その10月中旬を過ぎた頃から、寒が訪れるまで、毎週、葉物・根菜・巻物(白菜・キャベツ類)の種蒔き作業が続く。この時季に種を蒔いて、発芽させ、せめて幼苗にまで、育てておかないと、秋冬野菜は畑にまったく無いことになってしまう。
この時季は、幼苗を守るため、葉物野菜などには農薬を使わねばなら無くなってしまった。
使う農薬は害虫を瞬殺する農薬であり成分分解が早い。緩効性(農薬効果が長く持続する)及び浸透性(野菜に染み込み、虫を殺す)農薬は使えない。土を汚し、微生物・放線菌を殺してしまうからである。
但し、農薬散布の頻度は一週間に一度の慣行農業、あるいは、2~3週間に一回の減農薬ほどでは無い。
野菜もせめて小学生程度にまで育ってしまえば、よほどの害虫多発事態でない限りは、野菜の生命力に委ねる。
人間の子供さんでも、幼い時期は大人が守ってやらねばならないのと同じである。

 

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   これは全て裸麦。約2反の面積があり、別に古代麦1反、裸麦3反、

   中力小麦(筑後イズミ)4反、合計麦系の圃場が10反(3,000坪)ある。

 

むかし野菜では、現在、除草剤・農薬を排した草木堆肥による自然栽培の穀類を育てている。土作りも進み、去年頃から本格的な生産態勢に入っており、今年かなりな麦の生産ができた。
大麦は止めて、裸麦・筑後イズミ(九州固有の小麦)・古代もち麦(弥富麦)の三種である。
裸麦は焙煎して麦茶にしたり、古代もち麦と合わせて「麦ご飯セット」にした。すでにファンが多く付いており、分かってくれる方には、ご飯が美味しくなったと大好評であった。
問題だったのは、小麦粉のほうだ。
筑後イズミは中力小麦であり、味香りも良く、うどん・団子には最適なのだが、グルテンは少なく、パン系には向かない。古代もち麦は流石に原始麦であるだけに、味香りの強さは麦の中でも群を抜いている。
しかも、交配を繰り返していない固定種であり、アレルギー・アトピー体質の改善に効果があることが分かった。数人の高度アレルギーの子供さんに試してもらった。結果は、一人だけアレルギー反応が出た。
それもひどくはならず、引き続き少量試してもらっているが徐々に慣れていっているようだ。

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左側が古代もち麦(弥富もち麦)、髭が無くやや紫色がかっている。収量は他の麦の

1/4しか採れない。如何にも原始麦の臭いがしてくる。それだけに味香りは極めて濃い

扱いもかなり難しい。古代人はこれを雑炊などにしたり、あるいは、粉に引き団子のようなものを食べていた。現代人より遙かに健康であったろう。


この古代もち麦の味香りと現代病対抗力を何とか活かせないかと、試行錯誤が始まった。
中力小麦粉の半粒粉と古代もち麦全粒粉をブレンドしてみる。先ずは、パン作りはグルテンが無い分、難航を極めた。
試行錯誤の上、ブレンド割合が決まった。乾燥イーストでは膨らまず、ついには、麦から起こした天然酵母菌を開発し何とかパン風にはなった。
そのことから、化学物質の多く含まれたベーキングパウダーを使わずにパウンドケーキができ、クッキーなどの焼き菓子なども開発した。このブレンド小麦粉は焼き菓子などとは相性が良いことも分かった。
この粉で焼いたパン粉を使い、さくっとした食感のある美味しいコロッケも完成した。
従来から人気のあった野菜饅頭・石垣餅・やせうまに加えてピロシキも商品開発が進み、これで、何とか菓子類や惣菜などの加工品の商品ラインが完成しつつある。
お客様であったN姉妹の商品開発に向けた試作品作りの助成がようやく日の目を見ることになった。
今も、絶え間ない菓子類や惣菜の商品開発や改良が続いている。

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石垣餅。古代もち麦を全粒粉にしてブレンドしており、もちもちとした食感となり、

随分と腹持ちが良い。腸がきれいになりそうだ。しかも噛み応えがあり、美味しい。

 

5年間の草木堆肥による土作りから始めて、除草剤・農薬・化学肥料を排して、苦労して生産された穀類を素材にした。現代病に対応できる健全な菓子類・惣菜作りを行った。麦の味香りがし、素材感に溢れ、美味しく健全な食品とはなった。
但、体に良いものは、食べ難い菓子類や惣菜にはなり易く、その商品開発がどれだけの消費者に、その価値を評価してもらえるのか、それが難しい。230余名の既存の定期購入のお客様からは確実に高い評価を頂けてはいる。
すでに、麦ご飯セット・麦茶・ブレンド小麦粉・黄な粉は定期的に配送に入れ込んでいる。

特筆すべきは自然農米・自然栽培大豆・海の塩で醸造した味噌が一番人気であり、次に麦ご飯セットと続いている。
この方々は、自然栽培の農産物を元々求めていた訳であり、何の問題も無い。
課題は農園直販に訪れてくる消費者である。その消費者の方に如何に伝えられるかが、今、大きな課題となっている。