農園日誌ー農園は初夏の風景へ

27.6.4(木曜日)快晴、最高温度27度、最低温度18度

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                       ディルの花

ハーブの花を見ると、毎年言っているが、いつも実行できたためしがない。
ディル・フェンネルキャラウェイシードなどを収穫してパンを焼いてオリーブオイルと
一緒にトッピングして焼きこんだらうまいだろうな!
沢山収穫し、レストランや好きなお客様に送ったら喜ぶだろうな!などと言って、いつも枯れ落ちるにまかせてしまう。悲しいかな、畑に余裕が無い。
ゆとりを持った暮らしは当分はできそうにもない。

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梅雨に入る前に定植しようと
種を蒔いた一本葱の苗。
一体、何千本あるのだろう。
5月頃に定植し、暑い夏を
ひたすら耐えて何本も消えて
いくのを横目で眺めながら
さらに耐えて、ようやく9月頃
になると葱に付く虫害を受けて
さらに仲間が減っていく。
ようやく10月頃になって出荷の
日を迎える。
晩秋から冬に掛けてジューシーで甘い一本葱が皆様に届く。

イメージ 3梅雨に入った6月初旬
ようやく定植された一本葱。

2月に種を蒔き、冬に出荷。
およそ一年程畑で育つ。
その間二回ほど土寄せし
白根の部分を大きく育てる。
青葉もこの品種は美味しく
捨てる処が無い。

全長70メートルの畝二本に
今日ようやく植えつけられた

それでも苗はまだまだあり、畝九本分の苗が三番の畑に育っている。
誰が蒔いたのか?と嘆きながら植え込み作業をする嫁(長男の)
空には照りつける太陽と一点の雲さえない青空が広がる。
午前中は赤玉葱2千本を引き、今年初めてのじゃがいもも掘る。良い出来だ。
畝4本に草木堆肥を振り、畝立てをし、葱・オクラ・胡瓜の苗を植えつける。

農園主一人と三人の研修生、プラス、寛子さんを含めて植え付け作業を行う。
帰りに二番の畑の胡瓜の除草作業、夕方日のあるうちに本日予定の作業が終る。
小屋に帰ると、女性陣が整理した赤玉葱を納屋天井に吊るす。
今日は段取りよく一日の作業が終った、ご苦労さんでした。お疲れさん!と声を
掛ける。
今日は一日中炎天下の農作業となり、みな、疲れの色が出ている。
作業を終えて畑を見回すと、そこには初夏の畑の風景が広がる。

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育苗ハウス内に所狭しと
置かれた植え付け用の
野菜苗、夏野菜の植え付け作業はようやく終わりが見え始めた。残すところ、一ダースのケースだけとなった。

夏野菜が植わると高低差
のある風景となり、平面から立面の世界へと変わる。
作業を終えて残光に浮かび上がる初夏の風景がやさしい。

一日の作業を終えて帰宅すると、すぐにパソコンの前に就く。
今日も数件のメールが届いていた。

悪阻がひどくしばらく休んでおられた方からのメール。
「どうしてもむかし野菜の味が忘れられず、再開をお願いします」
きつそうですが、お腹の赤ちゃんのためにも頑張ってください。とメールを打つ。

お試しセット二回目配送の方からのメール。
「最初の野菜は一週間で食べてしまいました。家族からは次は何時着くの?」
「二回目の野菜が届きました。ズッキーニと人参葉の掻き揚げをします」
毎週配送を希望しており、増量での配送可とメールを書く。家族で野菜を待ってくれていることが嬉しく、疲れも遠退く。

お試しセット一回目のお客様からのメール。
これは余りにもその内容が濃く、一部をご紹介しておきましょう。
「美味しい美味しいと言っても、その美味しさを形容するのは大変難しく、またおこがましいのですが、いま流行りの甘い!ばかりのものとは違い、五味を感じられるお味に感動いたしました。
流行りの甘さは生理的味覚であり好まれやすくもありますが、時に他の味を殺してしまう危うさも感じます。
一点強調の強い味は、見た目の綺麗さやただただ安い価格同様、分かり易さ=目を引く受け入れられ易さに繋がるのかもしれませんが、その強調がどこか不自然、どこかバランスが悪く無理がある、他を受容する余白や寛容さに欠けるように感じてしまいます。その野菜本来の栄養バランスも崩れているような。
融合して調和して支え合って補い合ってこその相乗効果より、自己完結の印象がどこか寂しいのです」

食に対して今まで様々なご体験をなさってこられたのでしょうが、特に野菜に対する
今の風潮に対して鋭いご指摘をなさっておられます。
これは私が有機野菜を目指してから、ようやく辿り着いた境地を見事に表現されていることに先ずは驚かされる。

「美味しさとは何?」
舌先で感じるのは甘みや辛味など。それは人間の特に日本人の本来持つ優れた舌の一部しか使っていない。舌の奥ではエグミや灰汁を感じますが、真の美味しい野菜はそこで旨みを感じます。」それに加えて香り・食感があれば、それは必ず美味しい野菜の筈。美味しい野菜=栄養価が高い野菜なのです。

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小屋の天井に吊るされた玉葱とにんにく、これに赤玉葱が加わる。夏にはさらに
とうもろこしが吊るされているはずですが・・・自然乾燥された野菜は旨みが加わる
これを追熟と言います。

一週間前、あるレストランのシェフからこのような質問が寄せられた。
取引を始めてから一年未満のイタリアンのシェフで、自然野菜を使われている。

「葉野菜に虫食いの痕があり、お客様には出せない」
「サラダセットにも葉焼けや虫食いがありこれもお客様には失礼になる」

皆様はこのお考えに対して如何思われますか?

即座にメールを返しました。内容は以下のとおり。

ナチュラルをテーマとして取り組んでおられるとお聞きしておりますが、そのご意見では自然農の野菜をお使いになる資格は無いのではないでしょうか?」
「それは牛頭を掲げ、内で狗肉を売る」のと同じではないでしょうか?」
市場では、虫食い一つ無い有機野菜やら、自然野菜が流布しておりますね。
まさかそれを信じておられるとは思いませんが、それらの方々は市場がそんなみてくれきれいな野菜を求めているとして、「流通」が作りあげた価値観です。

当農園と長く取引をしておられる10数軒のレストランもその壁を皆乗り越えてきております。虫食いが気になれば刻めば良いことですし、葉焼けがあれば、露地栽培の何たるかを堂々と説明すれば良いことではないでしょうか?
うちの取引のあるレストランは皆大きく成長されているのは何故でしょう?
それはお客様が皆様そのことを容認して、安全や美味しさを求めているからです。

それでもそのシェフの方は、未だに取引を継続しております。
私としては、美味しさを理解する舌を持つ数少ない料理人であろうと期待しており、そのシェフにもその壁を乗り越えてもらいたいと願っております。

むかし野菜のお客様達はたった220余名ですが、価値観を共有する仲間達です。
当農園やむかし野菜の生産者達の農産物は日本中で220余名のご家族しか食べていないわけですから・・・それとレストランのお客様達もでした。