農園日誌ーむかし野菜の位置は?PARTⅢ

26.7.8(火曜日)曇り、湿度高い、最高温度33度、最低温度23度
 
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   嵐の前の静けさか?西の空がこの時季には珍しく鮮やかな茜色に染まる
 
本日、20時過ぎに、ようやく台風対策がおよそながら完了した。
なすべきことはなして、天命を待つ。大型台風が九州を直撃する。
このトマトもどれだけ残っているか?まるっと4日かけて、補強処理を行う。
他には、ピーマン・万願寺及び伏見とうがらし・茄子・パプリカなども支柱立てを
施し、何とか全滅は免れたい。約六ヶ月かけて育てた苗が全滅することもあるが、
そうなると今夏は野菜が無いということになる。
 
イメージ 2夏野菜の代表的存在、
 
種は出さずそのまま焼く・
蒸す・炒めるなどで食べる
 
京野菜といっているようだが、そんなことはない。
 
ピーマンとししとうとの掛け合わせでできたもの。
 
 
 
 
むかし野菜のマーケットの中での位置について、述べてきたが、低窒素・高ミネラル
草木主体の自然循環農法・露地栽培・完熟野菜という概念をどのように表現したら皆に伝わるのかと苦慮した結果、むかし野菜のネーミングに行き着いた。
日本の先人達が営々と行ってきた農法は後世の近代人が有機野菜あるいはオーガニック野菜と表現しているようだが、どうも有機無農薬、あるいは自然農とも異なり、違和感を覚える。やはり、むかし野菜のほうがしっくりと行く。
 
何故かは、PARTⅠ・Ⅱで述べてきたつもりだが、有機野菜であっても、ハウス栽培であったり、畜糞主体であったり、自然農と言っても黒マルチを掛けていたり、無農薬と言っても農薬を使用していたり、虫食いの痕もなく、きれいに揃っていたり、痛みもない。
少しは畑をやったことのある方であればすぐに気がつくであろうような、そんなきれいに揃った野菜が無農薬・無化学肥料・ノンホルモン剤なしでできるわけがないことを・・・
 有機野菜と言うことで、きれいに揃った・無傷の野菜が多数出回っております。それを信じて購入している流通マーケットが現実にあります。
それが可笑しいと言って農人を誰が責められますか?
有機無農薬野菜でなくっちゃ!と言う方に限って、店頭に虫食いのある野菜を見つけたら絶対に買わないし、もし、配送でも受けようものなら、必ずと言ってクレームになってしまう。前回、登場頂いたレストランのシェフのように。それが、市場で戦後、大量流通の時代を経て、営々として築かれてきた価値感です。
だれも買ってくれない有機野菜を労力と時間を費やして、農人達が作れるでしょうか
彼らも生活がかかっております。
そんなきれいな有機野菜(野菜に限ったことではないとは思いますが)の価値感は、
大量消費に対応するための流通の価値観であり、いつしか有機野菜も流通市場の価値観に置き換えられて行ったわけです。
そういった実態が多くの消費者の疑問を産み、信頼を損ね始めている有機マーケットでは、今後の発展はない。
現在、問い合わせがある主に関東のお客様達は、様々な処から野菜を取ってみて
皆、疑心を抱いておられ、むかし野菜が届いたらすぐに、このような答えが返ってきます。
「これが野菜なのですね。やっとたどり着きました」と・・・
勿論、180余名という少数な方々の反響ですが、虫食いの痕あり、風雨に晒された傷ついた野菜ありですが、活き活きとして存在感があり、一様に思っていた通りの美味しさです。と・・・
このような消費者は私達にとってはお客様ではなく、大切な仲間です。
 
 
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草木堆肥
 
原料;
草5:葉・破砕枝3:牛糞2
 
牛糞は乳牛小屋から頂く
ストレスがかかると乳が出難くなるので、おが屑を敷き詰め、糞尿で汚れると、
漉き取り、我が農園に運ばれてくる。そのため、実際には畜糞割合は、1割程度となる。
 
牛糞は草を食べさせるので、比較的抗生物質の多い飼料用穀類などが少ない。
発酵促進材として畜糞を使用する。
剪定枝は一般家庭や公園などの剪定されたものが持ち込まれ、農園にて破砕し、
原料とする。ここにはバランスの良いミネラル分が含まれ、何より、木等に棲む
計測不能な種類の放線菌や微生物の宝庫となる。
これらを混ぜ合わせ、積み上げ、切り替えしなどを行い、中熟堆肥として、畑に施肥する。これと枝や竹・草などを焼いた草木灰を加え、畑を作り替える度に施肥する。
 
ここにマーケットマップがある。これはデプスマーケティングを行う際に活用するもので、市場の動きが分りやすいので紹介する。
 
有機野菜マーケット分布
 

   ①イノベーション層 ①マニュアック層(1%)
              
   ②価値観層     ②野菜の味が分かる層(2~3%)
    (市民層A)     (安全・健康を意識する層)
   ③価値観層     ③野菜の美味しさを求める層(5~7%)
    (市民層B)     (食の安全に関心を持つ層)
   ④世評に敏感    ④イメージ有機客層(約15%)
    (大衆層A)   (無農薬野菜に強い関心は示すが、購買行動
               は見た目や最終的には価格重視の層)
                    
   ⑤世評に追随    ⑤一般大衆層(55%)
     (大衆層B)   (有機野菜に関心は示すが、見た目や
               価格を重視する層)
                        
     ⑥頑固な人々    ⑥食の安全に関心を持たない層(20%)
                        
 
上記はマーケティングマップという一般的に使われている消費者層の分類
方法です。決して裕福であるからこの層であるとは限りません。
 
④⑤の層は圧倒的な多数層であり、一般大衆層と言われている。量を追及するスーパーなどの量販店ではこの層を取り込まないと事業目標は達成できません。
④の層は、野菜の質よりも「有機の表示」に弱い客層と言えます。
有機JAS認定が有効
有機野菜の価格帯は慣行栽培野菜の1.2倍が限度。
⑤の層は慣行栽培野菜より高いと買わないという方が多いのもこの層の
特徴。
 
②はJASなどにも懐疑的で時代の先取りをする価値観層であり、自分の意見をしっかりと持っており、本物の見極めができる少数層です。③は本物の見極めに時間を要しますが、しっかりとした価値観を持とうとする意思があります。
従って、安全で美味しく良質な野菜は②③の層がメインターゲットになり、マーケットの5~10%程度に過ぎません。
但、②③の客層は市場影響力が強く特に④の層や⑤の層の一部は追随する動きを見せます。
その意味では「美味しい野菜」のマーケット規模は15~20%の可能性はあります。
 これらマーケットの動きや原理は、生産活動や販売活動には極めて重要な意味を持っており、例えば、世界のトヨタはこの徹底的なリサーチにより顧客満足や信頼を得るために、商品の品質改良や向上への努力をし続けております。
 
これはあくまでも、マーケット分析の手法であり、決してご自分がどの位置にいるかなど、自己分析はなされないで頂きたい。念のために・・・
人は変わるものであり、あるきっかけで突然に目覚めたり、感心を持ったりします。
 
私は②③の層を特定マーケットと呼んでおり、むかし野菜を愛しんで頂いておられる層は大概はこのあたりの価値観をお持ちの方々です。
 
有機野菜に対する意識調査を農林水産省が行っております。H19年ですが。
それによりますと、現在有機農産物と認定されている市場流通農産物は、1.8%
となっている。これは有機JAS認定野菜のことを指しているようです。
 
(現在有機野菜を買っていますか及び買いたいですか?)
実際に購入している    44%
条件が揃えば買いたい  55%
 こんなに有機野菜はマーケットから支持を得ているのか?と驚くべきデータが・・
 
(その条件とは?)
表示が信頼されるならば、
近場で買いやすければ、
価格がもっと安ければ、
 この三要素が大きいようだが、これはかなりハードルが高く、特に価格が安ければ
 の意見は、慣行栽培と有機栽培でかける労力などを勘案すれば無理でしょうと
 言わざるを得ない。
 
(何故有機野菜を求めるのか?)
安全だと思うから、            89人
味が良く栄養価が高いと思うから、  30人?/100人中
 
これらのアンケートと調査は大きな意味をなさないが、一般消費者の購買行動の
像は比較的反映されている。
欲求とは、願望であり、実際にお金を払って購買するという消費行動をおこすこととは異なるため、実際の有機野菜の生産量と消費量には大きな開きが出てしまっている。
有機野菜を求めておられる消費者は安全安心への思いが大きく、美味しいとか、
栄養価が高いといった有機野菜本来の特性とはかなり離れてしまっている。
このことが実は最も憂慮すべきことになっている。
これも国が定めた有機JAS規程の影響で、ここにきて大きな障害となっている。
もしマーケットの一般消費者が良質な美味しく栄養価の高い野菜を欲するようになれば、有機農家もそれに向けた取組(草木を中心にした)をするようになるのでしょうが、残念ながら、一般消費者の顕在化したニーズ(見え形)に捉われてしまい、農薬を使ってでも見え形を良くする有機野菜となりつつあるのは真に残念でならない。
 
さらにニーズ(購買行動)には潜在的ニーズと顕在的ニーズがあります。
総称して有機野菜の本質は、安全安心なのは当たり前であり、むしろ、走り旬のような見え形ではなく、糖質・ビタミン・ミネラル分に富んだ美味しく栄養価が高い野菜
(完熟野菜)ではなかったのか。
特定消費者のみならず、多くの一般消費者でも、潜在的ニーズは美味しく栄養価に
富んだ野菜を求めている筈。現在の流通によって形作られた顕在的ニーズ(見え形
・規格サイズ)を求めているとは考えられないし、そう思いたいのは私だけでしょうか
 
むかし、八百屋さんがあり、そこでは農家の仲介をしており、ある意味では野菜の
マイスターであり、「今日は何をするの!それならこれとこれを買いなさい」とか、
「それは○○さんが作った野菜だから、特別に美味しいよ!だから高いのさ!」
などとお客様をリードしていたものです。現在の野菜ソムリエよりははるかに高度な農業現場の知識を身につけておりました。
今はその八百屋さんもなくなり、スーパーで大量に並んだ野菜を購入する時代
となり、説明をしてくれる八百屋さんもおりません。
 
さて、それでは、皆様は一体誰の言葉を信じたら良いのでしょうか?
どうやら、PARTⅢでは終わりそうもありませんですね。次回は最終章として、
このテーマを皆様と考えていきましょう。
 
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加茂茄子です。
 
決して京野菜ではありま
せん。この加茂茄子は
やはり作り難い。
味は濃く、半割りにして
木の芽和えにして焼いて
食べるのが一番です。
今年は茄子の生育が
特別に悪い。まして、
今回の台風により、果たして生き残るのか、それすらわかりません。
 
→次回へ続く