農園日誌ーむかし野菜の位置は?マーケティング的考察ーPART1

26.6.25 曇り時折晴間、最高温度27度、最低温度19度
 
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                  フルーツトマトの一番果
 
この実はまだ幼い時期に虫にちょっとキスされたため、傷跡が見える。主枝に
へばりついている十星天道虫(害虫)が見えるが、彼及び彼女が犯人です。
こうなったら、レストランでは出せないのかな?・・・・?
傷跡が残らないためには、一週間に一度は農薬をかけないと無理かな・・・・!
 
例年であれば、この一番果は日の目を見ないことが多い。
この時季には梅雨の真っ最中であり、大概は湿気で腐ってしまうのだが、今年は
奇跡的に生き残って皆様にお目見えできる。今年の梅雨は3~4日雨が降り続くこともなく、比較的温度も低く、初期トマトにとっては適度な気候と言うことになる。
そのかわり、茄子やピーマン系他の夏野菜が寒いのか今一発育が悪い。
全てが人間の都合よく行く訳がない。
 
昨日は、農業を心出す2名の男子が農園に訪れた。
 
一日及び半日ほど畑を手伝い、むかし野菜の体験や説明をして、帰っていかれた。
その中の一名が25歳と若く、大阪からバイクで、農業の経験と居場所を探す旅を続けているとのこと。話を聞いていると、有機農業をやりたいのまでは分かったが、
どのような有機野菜作りを目指しているのか定かではない。分った事は有機農業で自立したいことのみ。
どこに、どのようにして販売するの?と聞くと、インターネットとか戸口訪問したり、
レストランを開拓するとのこと。無謀と言うか、無茶と言うか、まったく計画性もなく、彷徨える若者世代といった処か。
最後に彼には、有機農業でめしを喰うことばかり考えずに、どのような品質の野菜をどのような顧客層に提供しようと考えるのか?その品質の野菜はどのような有機農法で育てるのか?そのためには本物の有機野菜とは何か?自分で食べてみて
様々な書籍を読み、貴方が真に信頼できると思える農家に弟子入りしなさい。
そしてもっと世の中を、人の心を理解できるように学びなさい、とは言ったものの
 ついに最後まで話の接点がなく、彼の心に私の言葉は届かず別れる事になった。
 
 又、グルナビ(レストランの検索サイト)の紹介にて、野菜を発送した処、予想通り、
クレームが入った。
野菜がぐたっとしており、蕪などの表面に土色の傷跡があり、胡瓜の腹が白っぽく
なっており、とてもプロの農家が作ったとは思えない。何日前に収穫したのか?との
ご意見。私も多くの農家を回っているから野菜は分る。とおっしゃられている。
 
まったく散々な一日とはなった。
 
このブログは消費者の方々だけではなく、家庭菜園をやっておられる方や有機野菜を生産しておられる方もよく見られているようで、今日はマーケットの中で、どのような野菜が本当に良い野菜なのか?マーケティング的な思考で語ってみたい。
長文になるのでご容赦を!
 
先ずは、野菜の旬とは何?
 
野菜には、走り旬→中旬→終わり旬→落ち野菜と、生育段階で味香り、旨み、歯ざわりなどが異なる。
 
走り旬; 出始め時季で、生育が旺盛な内に出荷する。現在の流通マーケットでは
      この走り旬の野菜でないと、まったく評価されない。
      成長過程での出荷となるため、勢いがあり、見栄えよくぴんとしている。
      但し、野菜として、味香り共になく、旨みは感じず、青臭い。
      主にレストランや流通に好まれ、良い野菜とされている。
      糖質はなく、栄養価はほとんどないが、市場占有率は90%となる。
 
中旬; 通常では、味香りが出始め、野菜としては栄養価もほどほどではある。
     勢いも保たれ、見栄えはまあまあと言ったところか。
     完熟一歩手前のため、旨みはまだ出てこない。
     但し、一歩間違えれば熟しかねず、流通では日持ちがしない野菜とされる。
 
終わり旬; これが完熟野菜と言われている。市場での評価はまったくといって無い
       さきほどのシェフの言われるとおり、ぐたっとした野菜に見える。
       とてもお客様に出せない野菜となる。
       完熟野菜は日持ちが悪く、流通からは最も嫌われる野菜となる。
       勢いをなくしているが、食すると旨み・糖質・栄養価共に高い。
 
最後に落ち野菜; これは主に農家で食される所謂「嫁に食わすな!」という美味し            い野菜となる。この価値が分る小数のレストランへは出荷する。
野菜はその命を終えようとする際に、しっかりと子孫を残そうとして頑張りを見せる。
沢山の実を産み出した後、その野菜の季節が終わろうとすると、野菜は力を無くし
ながら、実を付ける。最後の力をその子孫に残そうとして、野菜が残した栄養価を
全てその実に注入する。その実は実に長くその枝に留まり、中々成長しない。
そうなると、肥大化が遅くなるがために、栄養価の詰まった実となる。
これが落ち野菜。
むかしながらの農人達はこの落ち野菜の美味しさを知っている。勿論、市場性は
ないため、自分たちで頂く。
最近では、この美味しさを知らない農人達が増えているのが寂しい。
 
当農園では、走り旬の野菜をお客様へ出荷する考えは無い。美味しくないからです
し、栄養価が薄い野菜を出す気はありません。当農園のポリシーです。
中旬の出荷から始まり、終わり旬(完熟野菜)、あるいは、落ち野菜へと移って行く。
従って、出荷時期によって、野菜の見栄え・味香り・食感・旨みも変化していく。
勿論、終わり旬になればなるほど、出荷リスクは増えてくることになる。
 
昔からの農家では野菜の美味しい時期は知っているが、最近では流通が巨大化していくにつれ、流通にとって安全な出荷時季を求められ、走り旬野菜が全盛になったのも頷ける。
 
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たわわに実りつつある
フルーツトマト
 
まだ本当の美味しさは
出ては居ない。
やはりトマト(夏野菜)は
かっと太陽が照りつける
時期の夏野菜が一番
美味しい。
 
それでも野菜は待ってくれない。お客様に届けねば。
 
 
露地栽培のトマトは流通市場にはほとんど出回らない、と言うか、農家が作らない。
ほとんどがハウス栽培のトマトとなる。それでは、これは希少価値があるトマトと言うことになる。
 
わが農園でも育苗ハウスはあり、そこで最初の頃、トマトを育てたことがある。
同時に露地栽培トマトも育てたため、農園の女性スタッフは、最初はハウス栽培の
トマトを喜んで食べていたが、露地栽培トマトが出始めると、薄情なことに味香りが
薄く美味しくない。とのたまわれて、ハウス栽培のトマトには見向きもし無くなった。
仕方なく消費者に出すこともできずに、かわいそうにこのハウストマトは引き抜かれる運命を辿ることになった。
 
露地栽培トマトの難しさは、湿気の多いこの梅雨時季では、腐らないかぎりは、太陽もまだ強くなく、水分に慣らされたトマトはひび割れせずに済む。
やがて、梅雨が終わり、かっと照りつける太陽の時期になると、少しの露でもすぐに
ひび割れる。収穫時期を誤ると、つまり、木で完熟まで行くと、ひび割れたトマトしか
残らないことになり、傷みが早く、お客様の処へ着く頃には食べられない状態となってしまう。盛夏の時季、露地トマトの20~30%はひび割れにより廃棄処分となる。
露地栽培のトマトの出荷管理は画して経験と感だけが頼りとなる。
 
先ほどのレストランのシェフのご意見に戻ろう。
胡瓜の裏側が白っぽいのは、わたしの考えでは健全な証拠なのですが、日が当たらない裏側や土に接した面はいろが濃くつかない。極く自然なことなのですが、
このような胡瓜は流通市場では不良で美味しくない野菜と言うことになるらしい。
それらの胡瓜は廃棄処分にされていることになる。なんともったいないことなのか
とは思わないのが流通マーケット(多くのレストランもその意見のようだ)のようだ。
 
例えば、胡瓜をまっすぐに育てるためには、ハウス内で水をじゃぶじゃぶやり、
窒素分の多い(肥料多く)土壌で勢いよく育てれば、このように廃棄処分にされない
健全な(?)胡瓜が量産できる。樹勢は当然に強く、かなり長期間収穫が出来る。
 
その反面、露地栽培でかつ、低窒素土壌で育てた胡瓜は、至極、短期間でその
命を終える。樹勢は当然に弱く、量産は難しい。
そのかわり、味香りは強く食感に優れ、旨みのある胡瓜となる。曲がろうが、白っぽかろうが、美味しい=栄養価が高い野菜を作りたい。
 
表面が茶色く一部変色した蕪、これはこの時季になると線虫が発生し、大根・蕪類
などは虫が這いまわり、線条痕を残すし、夜登虫が大きな穴を空けることも多い。
もし、この時季にその痕がない蕪などが市場にあるとしたら、土消毒と称して、かなり強い農薬を土に混ぜ込んでいることになる。そうなると土中のみみずや子虫他
微生物・放線菌などは完全に死滅し、死の土壌へと変わることになり、最早、有機土壌と言い難い。それを避けるためには、菊類を植え込み、トラクターで鋤き込む
と一時的には線虫などは姿を消すが、その代わり約半年は野菜が作れない。
当農園としても、線虫による被害の多い蕪類の80%は捨てており、比較的被害の
少ない蕪のみ出荷としている。
 
このリスクの塊りとなる「THE野菜作り」を目指す農園主のポリシーを消費者の方々はどのように評価して頂けるのかな!
 
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これは種ごと調理して頂く。
当農園の夏の顔となる。
 
この姿を見ると夏が来たな
という思いに至る。
 
この他に、ピーマン・パプリカ・セニョリータなどのピーマン系夏野菜が出揃い始め
ている。
 
 
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農園では380本近い
ピーマン系野菜を植えて
いる。
これが一斉に大きく育ち
始めたら、消費者の台所
はピーマン系野菜に
溢れることになる。
この夏野菜を、農園主
がほとんど一人で竹の手作業を行っている。
目の奥がボーとしてくる
ほど、連日の作業に追われている。
うん!きれいになった!と独り言を言うもだれも相手をしてくれない。今日も黙々と一人農業・・・?それではと、明日からは新人達にさせようと一人決意する。
 
今日の処はいささか疲れたので、次回のブログーむかし野菜の位置は、PARTⅡ
にて、低窒素栽培=健全な土で育った野菜の成長過程を紹介しよう。
 
→ 次回へ続く、