むかし野菜の四季ーPART2

2022.1.5(水)晴れ後曇り一時雨、最高温度11度、最低温度3度

f:id:sato-shizen-nouen:20220105163803j:plain

              由布市狭間町の麦畑

 

明けましておめでとうございます。

今年最初の農園日誌ブログとなります。

寒い寒いと言いながらも今のところは極寒の日も少なく、最低温度は1度前後で

ビニールトンネルの中の野菜もほんの少し生長しているように見えます。

この麦畑もほどよく育ち、来週には麦踏みをします。

 

新型コロナの変異株が不穏な広がりを見せ始めており、必ずくると言われている第6波

も大きく広がらなければ良いのですが、経済的弱者への打撃が大きくなることを憂えて

おります。

日本の政治も迷走飛行を繰り返し、相も変わらず日本の経済政策は大手中心の方向しか示さず、地域を含めた経済及び産業構造の変革への道筋は、その言葉すら消えているように見えます。

農林水産業、特に農業しか産業を持たない地域の疲弊は極まっております。

 

世界では独裁と対立の姿が際立ってきており、混沌としており、危険な匂いすら感じてしまいます。

そうした中、中国では農産物が不足してきており、自国の食料を賄えず、外国からの輸入に頼っております。この国は世界の食糧を買い占めることを厭わず、後進国の食糧不足は深刻になってきております。怖いのはインドでも人口が急増しており、その食も輸入に頼ってくることになると、世界的な食糧不足はよりいっそう深刻な度合いを深めていきそうです。

食糧増産政策として各国が除草剤・化学肥料・農薬・成長ホルモン剤などを多用し始める危険も見えてきております。

日本でも加工食品の値上がりは徐々に始まってきております。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20220105170610j:plain

待望の雨が降るとの予報で畑のビニールトンネルを一斉に剥ぎました。

普段は閉められているトンネル内の野菜の様子があらわになり、徐々に成長している

野菜が姿を現します。農園はこの時、白い畑から緑の畑へと変わります

 

世界的な食の値上がりの予兆はすでに見え始めており、おそらくは5年、若しくは10年以内に顕著になってくると思われます。

世界が食の確保に走り始めた時、日本はどうするのでしょうか?

食を提供し続けてきた農家は居なくなり、いざ、食糧増産と国が音頭を取ったとしてもその農家は居ないのです。

 

皆様も今年は食の大切さと安全性、そして自分たちの健康を考えて頂きたいと願っております。

 

むかし野菜の四季ーPART2

2021.12.25(土)晴れ、最高温度11度、最低温度2度

f:id:sato-shizen-nouen:20211225222343j:plain

                3番の畑の夕景色

 

今年最後の農園日誌ブログとなりました。

朝から温度が下がり続けて、写真を撮った時は4度くらいに冷え込んできました。

農園ではビニールトンネルを掛けたり、不織布を掛けたり、寒に備えて冬ごもりの

支度に忙しい一日でした。

f:id:sato-shizen-nouen:20211225223012j:plain

二番の畑は、一面、白の世界になりました。顔を出しているのは寒に強いほうれん草

芽キャベツだけです。

ハウス栽培全盛の時代、露地栽培でのビニールトンネルの畑はここだけです。

これから剥いだり閉めたりの作業となります。

 

一年間ご愛読頂きありがとうございました。

このブログは来年か再来年一冊の本にまとめようと考えており、現在、書き綴っております。「失われた先人達の叡智」に続いて、まだタイトルは決めてはおりませんが、

先の本が入門編でしたので、今度のは、専門編になります。

入門編では書けなかった自然循環農業の実践と真の農業自立に向けた消費者と直接向き合っていくために必要なマーケティング(商品開発・ターゲット戦略・消費者とのコミュニケーション戦略)の知識などを織り込んで行こうと考えております。

 

農業軽視の風潮と効率だけを重視した持続不能な農業に対しての警鐘の意味を込めております。生産者と消費者が真に健全な食を一緒に考えて行くことができたら幸いです。

 

 

むかし野菜の四季-PART2

 

「草木堆肥を使った土作り」

草木堆肥の原料は以下の通りです。

①木屑と葉っぱ

地表面、特に農地は農産物の収穫によってミネラル分が持ち出され続け、慢性的なミネラル不足になっています。その補給はわずかな雨(極く微量なミネラル分)によってもたらされますが、人類の食の営みに追いつくわけもありません。

私は常に不足するバランスの良いミネラル分を畑に補給するにはどうしたら良いのか、考えました。日本の先人達は林から大量の柴を切り出し、1~2年を掛けて土や草や少量の人糞と混ぜて堆肥を作っていることに着目しました。

木は地中深く根を張り、地殻に存在する豊富なミネラル分を吸収しています。その様々なミネラル分を吸収した枝や葉っぱを捨て場所に困っている造園会社にお願いして、当農園の堆肥場に捨ててくれるように頼みました。

その剪定枝を中型破砕機で破砕して堆肥の主原料とします。

さらに太い木や破砕機に掛かり難い短い枝は燃やして焼き灰を作り、草木堆肥と一緒に畑に振ることにしました。

草木堆肥と焼き灰のダブルで圃場にミネラル分を圃場に補給し続けます。

焼き灰を振って「枯れ木に花を咲かせましょう」と言う花咲かじいさんの逸話は実は本当のことだったのです。

次に重要なことは、枝や葉っぱには様々な菌類・微生物が棲んでおり、草・木・葉っぱを使った草木堆肥によって、すでに棲んでいる土中菌と合わせて計測不能な雑多な菌類が投入されることになります。完熟一歩手前の草木堆肥(有機物)を食料にして彼らは畑でさらに増殖していきます。つまりは畑を耕してくれます。

そのことによって圃場には自然循環の浄化機能が果たされることになるのです。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211225225935j:plain

               剪定枝の破砕作業

この破砕機は人間の腕くらいの太さまで破砕できます。

それ以上の太さの木を除けながら破砕しなければなりません。破砕機に掛けた後

破砕機に掛かりにくい小さな枝は葉っぱとより分けて、太い木と一緒に燃やし、焼き灰を作ります。葉っぱの一部は剪定枝を積んでいる間に分解され腐葉土になっているものもあります。

 

②雑草や野菜屑

除草剤を使わない自然栽培では旺盛に茂る草には手を焼きます。

種を蒔いて野菜が芽を吹いても大きく育つまでには、除草作業は2~3回は行わねばなりません。畑の周囲の草の除去もまた大変です。除草した草はまとめて置き、枯れ始めるとこれらを一輪車やフォークなどを使って持ち出し、堆肥場に運び堆肥の主原料として溜めておきます。また、収穫した野菜を整理した残渣もまた、堆肥の原料となります。

畑の有機物は常に循環しているのです。この草集めの作業も中々に手間が掛かり疲れます。

勿論それだけでは草は足らず、河川敷などの草をもらい受けている。ゴルフ場の草は除草剤や農薬を多く使っているため堆肥原料としては当然に除外します。

f:id:sato-shizen-nouen:20211225230736j:plain

収集し備蓄していた草を堆肥場一面に広げている処です。

この作業が中々の重労働です。足で踏んで確かめ厚さを均等にしなければそこだけ

微生物分解されず、均質な堆肥になりません。

 

③牛糞

肥育牛の牛糞・鶏糞・豚糞は使わない。これは家畜飼料のほとんどをアメリカからの輸入に頼っており、その中に含まれている薬品や抗生物質を畑に入れるのを嫌っているからです。そのため、餌の主原料が草である放牧牛や繁殖牛の牛糞を使います。鶏糞や豚糞などは窒素分が多過ぎるため除外します。ほとんどの餌が草である馬糞があればそれが一番望ましい。

 

草や葉っぱだけでは発酵までに約6ヶ月を要し、1ha以上ある畑を年に3~4回転させるには堆肥量が足らず、1カ月半ほどで堆肥にするためにこの放牧牛糞は発酵促進剤としてどうしても必要となるのです。

 

(草木堆肥の作り方)

先ずは熟らせた草を約10センチの厚さに均等に広げます。その上に牛糞を約3センチの厚さに重ねます。さら破砕した木屑・葉っぱ・腐葉土を厚さ3センチに敷き、トラクターのロータリー(回転刃)で二回後ほど混ぜ合わせます。それをタイヤショベルで高さ2mに積み上げ、水分調整をしながら圧を掛けます。堆肥の温度は微生物等の増殖熱で70度前後にまで上がります。これを一次発酵と言います。

約1カ月後に切り返し、空気を補充してやると中塾堆肥が完成する。

二回以上切り返し作業を行うと、完熟堆肥になり易くもはや肥料にしかならない。

何故、中熟堆肥かというと菌類・微生物が活性化しているうちに畑に施肥し、畑の中でさらに発酵(繁殖)させるためです。この繁殖作用により土を耕しているのです。

 

草木堆肥の原料; 草6:葉っぱや木の破砕屑2:放牧牛の糞2

放牧牛の糞は草を主食としており、ほぼ草であり、草木堆肥は草や木・葉っぱなどの窒素分の少ない自然の有機物を発酵させたものです。草木堆肥はN/C比(窒素分と炭素分の比率)は低く、肥料効果は少なく、畑を健全な低窒素土壌にしてくれます。

この畑には小動物から小虫・微生物・菌類・ウィルスに至るまで生命に満ちており、

生きた土です。ふかふかとした団粒構造(粒上の土)が出来上がっています。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211225231206j:plain

草を広げ、牛糞を重ね、さらにその上に破砕屑と葉っぱを重ねている処です。

この後、この上をトラクターで二往復させると草・牛糞・木屑葉っぱが混ざります。

右のビニールを掛けている処にはすでに作っていた堆肥があります。

むかしは1~2年かけて作っていた草木堆肥は今では、機械がありますので随分と

楽になりました。

それでも余りにも手間と労力が掛かり、草木堆肥を作って土作りを行う農業はおそらくはこの農園だけだと思います。

むかし野菜の四季ーPART2

2021.12.17(金)曇り、季節風強し、最高温度11度、最低温度2度

f:id:sato-shizen-nouen:20211217185603j:plain

   由布市庄内、田北さんの圃場にスタッフみんなで麦蒔きを行う

f:id:sato-shizen-nouen:20211217185755j:plain

         麦を蒔きながら管理機で土寄せ作業を行う。

 

ここには古代麦・裸麦・小麦・大麦の四種類の種を蒔きました。

大麦だけは田北さんとこのベコ(牛)のおやつで、ウメーと言って食べるそうです。

この牛も家族なのですね。田北さんは繁殖牛の牛を4頭飼っております。

彼はお米5町歩、原木椎茸2反、そして、無添加の搗き餅をむかし野菜の邑から

皆様へ出荷しております。

 

農園もこの麦蒔きが終わると、一段落が着き、越冬時季に入ります。

とは言ってもビニールトンネル張りなどの作業は待っております。

 

 

むかし野菜の四季ーPART2

「美味しい野菜とは?」

これは当農園の大きなのテーマの一つです。

私自身野菜は苦手でした。食卓に出される野菜を食べても美味しいと感じたことはあまりありませんでした。何を食べても野菜の味はせず、香りも無く、いつまでも口の中に残る筋の食感は最悪でした。もはや健康のためと自らを言い聞かせて半ば義務的に食べていたに過ぎませんでした。読者の中にも共感していただける方は多いと思います。

f:id:sato-shizen-nouen:20211217195854j:plain

冬の作物、甘藍系(キャベツなど)の野菜を定植しました(左端)その右は芽キャベツ

です。寒さに耐えながらじっくりと育ち、春3月頃に出荷時期を迎えます。

ただあまりにも小さく極寒に耐えられるか心配で、1月頃にはビニールトンネルを掛けて守ってやらねばならないでしょう。芽キャベツは極寒の1月頃から出荷が始まります

寒さに強いのですね。

 

衰退し続ける地域と農業の現状を見て、「何とかしなくちゃ」という思いを抱き、「有機農産物及びその加工品の商品化」によって地域を再生できるのではないかと考えて始めた有機農業でしたが、その野菜の美味しくないことにそのしょっぱなから疑問が湧いてきました。

様々な有機肥料を施ればやるほど、野菜は味香りを無くしていきました。

まだ小学生の頃、スイカが好きで畑に出て野菜作りを手伝っておりましたが、畑でもいだトマトや胡瓜の鼻に抜けるような味香りやカリッとした食感が私の野菜の美味しさの原点でした。

そこでまだ実験農園段階の時(銀行員時代)、思い切って有機肥料(畜糞・米糠・油粕等)栽培を止め、江戸時代の農業本に基づいて、草木堆肥に絞って土作りからやり直しました。

草木堆肥による土作りを始めて3年が経った頃から、野菜に瑞々しい味香りや歯切れのよい食感が蘇ってきました。

 

野菜には「基本味」である5味があり、甘味・酸味・塩味・苦味、そして旨味と言われております。

料理の世界では、旨味をどの食材で、どうした調理料を加えていくのかが常に問われます。

一番知られている旨味はたんぱく質の中に含まれるアミノ酸の一種であるグルタミン酸です。他には魚介類のイノシン酸やキノコ類のグアニル酸が知られております。

西欧ではこの旨味をトマトやチーズ・ハム類から取り、日本では昆布や鰹節などから取っております。

 

学者や研究者が確認した旨味の元は、その通りであるとは思いますが、私はそれだけで旨味が説明できないと考えております。

窒素過多となりやすい肥料栽培では野菜の「えぐみ」や「苦味」が出易くなります。

料理の世界ではよく「灰汁取りをしなければいけません」と言われます。

それは肥料栽培を基本とした近代農業になってから顕著に言われるようになったのではないかと考えております。

人間の舌の先では甘味や塩味を感じ取り、舌の付け根辺りで苦味やえぐみを強く感じます。

自然栽培の野菜では苦みやえぐみではなく旨味を感じるのです。

つまり、私は絶え間ない土作りを行う自然栽培の野菜を食べてえぐみを感じず様々な複雑な雑味=旨味を感じるのは、グルタミン酸だけでは説明できず、ミネラル分が多い野菜だからではないかと考えるようになりました。

精製塩(純粋な塩化ナトリューム)と岩塩(ミネラル分を含有している)の味の違いに似ております。

f:id:sato-shizen-nouen:20211217200756j:plain

ビニールトンネルを剥ぎ、冬の貴重な雨を待っている処です。
種を蒔いたばかりの野菜は不織布を掛け、その上にさらにトンネルを掛けます。

二重に寒さ対策をしてやらねばこの寒さの中では育ちません。

このトンネルは今日の冬の嵐でみな吹っ飛んでしまいました。復旧作業が大変です。

 

旨味の話はさておいて、それでは「美味しい」とはどういうことでしょう?

美味しいということは多分に人の情緒的な感性から出る言葉ですね。

その場の雰囲気や視覚聴覚から感じ取るものや味香りや食感から感じ取るものです。

そうであれば、人の先入観念で「この野菜は有機野菜だから美味しいのだ」「最高のプロが作った高級料理だから美味しいのだ」と思って食べている方も実際には多いようです。

一般(流通)マーケットでは、味香りや美味しさは評価の対象にはならず、見え形・規格サイズ・新鮮さなどが評価のすべてと言っても過言ではありませんし、虫食いの痕などあろうものならだれも手を出しません。

野菜ソムリエなどが形の悪い野菜、例えば曲がった胡瓜や先が太い胡瓜などは選ばないようになどと、まことしやかに伝えておりますが、それを聞く度に悲しくなります。野菜の美味しさや健全性などには一切関わりは無いのにです。私などはむしろまっすぐな胡瓜のほうがよほど危なく美味しくないのにと思ってしまいます。胡瓜は太陽に当たると当然に曲がり、むしろそれが自然なのです。

このように「美味しい」と言う感じ方は多分に世評や権威、そして概念(観念)に支配されているようです。

ところが「有機JAS野菜だから美味しい」と信じ込んでいた消費者が、何かのきっかけで、ふと疑問を抱き始める。「有機無農薬野菜なのに何故虫食いの痕が無いのだろう」「化学肥料も使っていないのに、何故こんなにスーパーで売られている野菜のように形が揃っているのだろう」

 

自然栽培を始めてすでに20年を迎えようとしております。

私はこの「美味しさ」を追求し続けてきましたし、今まで多くのお客様と接してきました。

私たちの仲間(定期購入者の方々)の全てが自然栽培だからお客様になったわけではありません。むしろ市場の既存価値観(見てくれ)に近い方も多数いらっしゃいました。

それでも仲間となって頂いたのには、理由があります。

食べて美味しいと感じていただいたからですし、ただ、美味しいのではなく、圧倒的な野菜の味香り・食感・鮮度、そして、旨味をわかって頂いたからです。

真に美味しい野菜とは、健全で栄養価が高い。この当たり前のことに気づかされたからです。

私は新規のお客様によくこのように伝えます。

「世評や観念に囚われず、貴方の舌と感性を信じなさい。そうすればきっと貴方が真に探している野菜に出会うでしょう」

 

全国に350名のお客様がおられる中で、10年以上野菜をとり続けて頂いているお客様が120名以上おられます。これらの仲間たちは私にとっては良き理解者であると同時に、良きマーケティング対象者でもあります。

私たちもこの野菜の恩恵に預かっており、20年以上歯医者以外行ったことがありません。

私は、今ではむかし野菜の美味しさの訳は、体にやさしい味がするからだと考えております。

f:id:sato-shizen-nouen:20211217201258j:plain

右側はセロリ、左はニンニクです。

このセロリは地中海原産のセリ科の作物です。セロリは好き嫌いがはっきりとしていて

うちのお客様の中にもその1/4の方は「食べれないので要りません」と言ってきて

農園主を困らせます。そこで私はこのようにお伝えします。

「セロリは万能の調味料であり、旨味の元です。茎の部位は生食でも良いのですが、

葉の部位は細かく刻んでニンニク・玉葱・生姜などと一緒に油で炒めて、カレー・スープ料理・炒飯などにして食べてみてください。おそらくは明日からやみつきになり、

貴方は必ずセロリが好きになります。香味野菜は油と一緒に加熱しますと旨味成分に変わります。尚、当農園のセロリは灰汁や独特の苦みやえぐみが無く、旨味成分をふんだんに持っております」と・・・

それ以降、一度か二度のやりとりは起こるものの、セロリを断ってきたお客様は

おりません。

 

 

 

 

 

 

むかし野菜の四季ーPART2

2021.12.12(日)晴れ、最高温度16度、最低温度8度

f:id:sato-shizen-nouen:20211211224412j:plain

         由布市庄内の4反の畑に草木堆肥を振る

 

長閑な風景ですね。田園風景と山里が広がり、空は青一色です。

ここは椎茸やお餅を作っているグループの田北さんの畑です。

トラック4台で二回転しました。結いの仕組みを取っておりこのように広い圃場での

作業はみな、共同作業です。

この圃場には遅れてしまった麦蒔きを来週全員で行います。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211211225202j:plain

こちらは3週間前に麦を蒔き終えた由布市古市の圃場です。

青々と麦が育っております。約2反の畑ですが、全行程で2日掛かりました。

皆様には分かり難いとは思いますが、除草剤を使わず、草木堆肥だけで土を育て、

穀類を栽培している農園は世界でも当農園だけです。如何に手間が掛かりリスクが

大きいかはおそらく分かってはいただけないでしょうね。

その貴重な大豆・麦を使って味噌・黄な粉・麦製品・加工品を作っているのです。

これらの穀類ではアレルギー、アトピーも発生しませんし、しっかりとした麦や大豆の味香りがするのです。ここに昔の農法の真骨頂があるのです。

その貴重な農産物はわずか350余名の全国の仲間達だけに配られております。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211211231727j:plain

野菜の自然な色合いは本当にきれいです。自然栽培の野菜ではその色が鮮明に出るから不思議です。

 

§2.自然栽培

「完熟野菜」

野菜が完熟するとはどういうことでしょうか?

結論から言いますと完熟した野菜果物は糖分に富み甘くなります。そのことは皆様の

想像の範囲内です。完熟作用は野菜果物の生理現象です。

ところが、高窒素となり易い肥料栽培は完熟する生理現象が起きないように作用してしまうのです。窒素分の多い肥料を使うと(N/C比は高い)常に土中には有り余る窒素分があり、野菜は出荷まで成長を続けます。土中に窒素分が切れない限りは完熟作用は起きないのです。

 

これに対して自然栽培では炭素分の多い草木堆肥を使うため、土中の窒素分は常に不足気味です。草木堆肥施肥(完熟一歩前)した際には、有機物とまだ活性化している微生物・菌類が同時に圃場に入ります。この時、有機物に含まれる窒素分は微生物等が増殖するためその多くは彼らによって費消されます。これを窒素飢餓と言います。

 

※窒素飢餓

 生の有機肥料は畑に投下してはいけないと言われております。そこに棲む微生物等が有機物に含まれる窒素分を吸収して増殖します。このため、土中は窒素が極端に不足し、野菜は成長できません。

 

草木堆肥施肥後、その圃場に種を蒔いても窒素分は得られませんので、発芽した野菜は土中の窒素分を懸命に探し、髭根を広く深く張ろうとします。発芽してから1カ月程度は目に見えて野菜は成長していないように見えます。実はその一ヶ月間は野菜が成長するための土台作りをしている成長の準備期間であり、根と基部がしっかりと土を掴みつつあるのです。

一か月を経過した頃から基部作りを終えた野菜は、急速に上に伸び始めます。

それは今まで活発に増殖し続けていた微生物等がその活動を鎮静化し始め、一部は死に、逆に窒素分を土中に放出し始めます。加えて有機物残渣からも窒素分の供給が続き、野菜の成長に必要な窒素分が土中に放出されるため、野菜が目に見えて大きく育つのです。(土中に窒素分が増えると野菜の体内に成長酵素ミトコンドリアが増加する)

野菜が生長した頃(約二か月経過)、土中への窒素分の供給が次第に止まり、成長酵素であるミトコンドリアの増殖も止まります。野菜は成長を終えて完熟期を迎えます。

 

※土中に窒素が切れると野菜は完熟期に入る

草木堆肥を施肥してからおよそ一ヶ月経過した頃から土中に窒素分が供給され始め、二ヶ月を経過した頃から窒素分の供給が徐々に減り、およそ二ヶ月半で窒素供給が著しく落ちてきます。これが草木堆肥の不思議な自然の摂理なのです。

 

野菜の体内に蓄積されてきたでんぷん質や炭水化物は、野菜が生き残るために分解され糖分とビタミンに変換され、生きるためのエネルギーに変えて行きます。デンプン質等は人も含めて野菜もそのままでは吸収できないのです。これが自然栽培における完熟のメカニズムです。完熟した野菜は味香りも高く、筋が無く、葉肉は厚く、甘味や旨味が備わっており、栄養価に富んだ野菜となります。

ちょっと難しいですが、お分かり頂けたでしょうか。

 

私は草木堆肥による農業の実践を重ねる中で、この完熟一歩前の草木堆肥の特性を見いだした時には昔の先人達の叡智に驚きました。

健全で栄養価に富んだ完熟野菜とは低窒素土壌の自然栽培でしか生まれないのです。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211211230603j:plain

              除草中の玉葱の畑

青く見えているのが玉葱の畝です。草がびっしりと育っております。

お気づきの方も居ると思いますが、草を抑え地温を上げ強制的に大きく育てる

黒マルチはしていません。

冬の寒暖の差を受け、自然の中で育てるからこそ、野菜は美味しくなり、栄養価に

富んでいるのです。その分、除草の手間は掛かり、大変な作業となります。

およそ数万本の玉葱を植えており、気が遠くなるような除草作業が寒い冬の間、

続きます。

 

ちなみに芋類・南瓜などの追熟と原理は同じです。(芋類などは収穫してから20日程度常温で寝かせて、でんぷんなどを分解させ甘くさせます)

むかし、化学肥料も畜糞も無かった時代、草や葉っぱを熟らせてから畑に施肥して農産物を育てていました。当時の野菜はみな低窒素栽培であり、完熟野菜であり、栄養価の高い美味しい野菜だったことでしょう。

ただ、完熟野菜は野菜の生命を終えようとする寸前ですので、その出荷適期は短く傷みが早く、このリスクは生産者と同時に消費者も同じように負っているのです。その代償は美味しさと栄養価です。

 

自然栽培の場合、常にこの完熟野菜を目指します。ベビーリーフのような栄養価の乏しい野菜は作りたくないのです。

栄養価が高く美味しい野菜を作るためには、草木堆肥の使い方やその性質を熟知しておかねばなりません。

草木堆肥の最大の特性と利点は完熟野菜となる自然の摂理をうまく使っていることです。

ただ、低窒素栽培の欠点もあります。成長に不可欠の窒素分が少ないということは、成長が遅れ、自然の恩恵だけではなく、厳しい自然の変化や害虫被害のリスクに長期間晒されることです。

さらに巻物野菜(キャベツ・白菜等)や実物野菜などはある程度の窒素の力を借りなければ、巻いてくれないし、次々と実を成らせてはくれません。

草木堆肥の実践については「草木堆肥の使い方」の項で詳述いたします。

 

草木堆肥は完熟一歩手前のものを畑に施肥します。

完熟してしまうと最早肥料にしかなりません。完熟一歩手前の堆肥は有機物残渣が残り、微生物や菌類が増え続けている状態のものです。彼らが畑の中で増殖を繰り返しながら畑を耕してくれるのです。60%の農学者は完熟堆肥でなければ窒素飢餓状態に陥るので未完熟堆肥は施肥してはいけないと言っています。(今では40%の学者は完熟堆肥では意味が無いと言い始めております)農業は理論の中だけでは分からないことの方が多く、実践を重ねた現場の農業者のほうが正しい場合が多いのです。

完熟一歩手前の草木堆肥の目安は堆肥の温度が約40度程度、草の繊維がかすかに残り、葉っぱなどは残っていても菌糸に覆われている状態のものを施肥します。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211211231411j:plain

これからビニールトンネルが徐々に増えていき、1月頃にはこの圃場もすっかり白一色の畑となります。

暖かい日や雨の日などはトンネルを剥ぐってやり、太陽や雨に晒します。

その開け閉めの作業が冬中続きます。

むかし野菜の四季ーPART2

2021.12.5(日)晴れ、最高温度12度、最低温度4度

f:id:sato-shizen-nouen:20211205204058j:plain

              ビニールトンネルを張る

 

今年最初のトンネルを張る。人参と白菜が第一号となった。

11月下旬頃から寒気が強まったというものの、例年よりは遅いトンネル張りでした。

12月の中旬頃にかけて寒さが収まり、暖冬の気配すら漂う。

一気にビニールトンネルの白一色の畑とはなりそうもない。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211205204802j:plain

                 大豆の脱穀

およそ半反の畑に植えていた大豆を脱穀しているところ。30キロくらいしか採れなかった。庄内の大豆はいまだ乾燥し切れておらず、年末から初春に掛けての脱穀作業となる。今週はその大豆を収穫した圃場に麦を蒔くため、草木堆肥を振りに全員で出向くことにした。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211205205224j:plain

研修生達がレイキ(熊手のようなもので畝を均している)を掛けているところ。

このところ、毎週誰かが農園に訪れ、農業体験やら研修を行っている。

彼らに作業終了が声を掛けると、みな「楽しかった・清々しい」との評価。

一日弁当を持ってきて、露天で農作業をすると日常とは異なり、思い切り開放感に

満たされるようだ。手取足取りで教える方は大変なのですが・・・!

この中から、未来の自然循環農業の担い手が出てくることを祈る。

 

むかし野菜の四季-2

2. 自然栽培(低窒素栽培=完熟野菜)

 

自然栽培という公の言葉はありません。有機栽培と区別するために他に呼び方が無くこのような表現を使っただけで、あえて言うなれば、むかしの有機農法です。

有機・無機を問わず、現在の農業は肥料栽培です。これに対して自然栽培は根本的に異なります。肥料も無いむかしの農業は草・葉っぱ・木(柴)に人糞をかけて、1年がかりで発酵させた堆肥を使って土を育て、その土の力で野菜を育てていました。

当然に肥料とは違って土壌の中に窒素分は少なく野菜が育つ土を作るのに、数年以上、あるいは、数代をかけていましたから随分と労力がかかっていたのですね。

この昔の農法を破砕機やタイヤショベルを使って発酵が早く進むように改良し、現代に復活させました。機械を使ったからと言っても労力や手間が掛かることには変わりません。

ちなみに牛糞と藁を混ぜた堆肥は厩肥と呼ばれており、畜糞と草・藁・おが屑などを混ぜたものも堆肥と呼んでおりますが、いずれも畜糞(窒素分が多く)が多くN/C比が高くなり肥料に近いものとなっているようです。ただ、これらも数少なくなってきており残念です。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211205212606j:plain

         草木堆肥歴20年の2番の畑の一本葱

12月頃になると、この畑で育った一本葱は直径4センチほどの太さに育ちます。

他の圃場ではこんなに太くはなりません。土の力ののですね。

白根の部位は素揚げや焼き野菜として、葉の部位はてんぷらや煮物に使います。

甘いと言うより極上の果物を食べているようで味が深いのです。

 

「土を育てる」

 当農園の自然循環農法の特性は肥料は使わず、草木堆肥しか畑には投与しません。

肥料は野菜を育てますが土は育ててはくれません。草木堆肥は土を育て、育った土が野菜を育ててくれます。

肥料分(窒素)が無いと野菜は育たないのではと疑問を抱く方も多いかと思いますが、その仕組みは以下の通りです。

完熟一歩手前の草木堆肥(微生物や菌類が活性化したままです)を年間3~4回施肥すると、野菜収穫後も土中には微生物分解されなかった有機物残渣が微量ながら残り、それを食料として残っている微生物や菌類も生き続けます。

さらに野菜の収穫を終えた畝にまた草木堆肥を振り、直ちに次の野菜を植えます。一つの畝に年間3~4種類の野菜を植えますので、その畝には新たな草木堆肥とともに新たな微生物と菌類が加わります。その結果、土壌には炭素分の多い草木堆肥の残渣が残っていきます。これを餌として菌類・微生物が棲み着きます。つまりは、菌類等によって土が耕されていく訳です。これを繰り返し、畑は生物相豊かな持続(再生)可能な圃場となるのです。

 

窒素分の多い畜糞・米糠油粕・魚粉・動物の内臓などは微生物等によってすぐに分解され、窒素肥料として野菜等に吸収されてしまい、有機物残渣は残りにくいのです。

草木堆肥を施肥し続けると3年を経過した頃から土が約10センチの深さまで出来上がっていきます。(一年間でおよそ3センチ団粒化が進みます)

この土の成長は団粒構造(粒々の土の粒子)となって表れてきます。土の粒子の中には水分・空気・肥料分が蓄えられ、それぞれ、保水力・保気力・保肥力が備わってきます。これが肥えた土ということになります。

他より購入してきた有機堆肥や肥料は何が混じっているか分かりませんので、むかしの有機栽培農家は自らの手にて堆肥や有機肥料を作っていました。最近では、ほとんどの有機農家が他から購入しているのは残念です。

変な話ですが、草木堆肥が底を尽き始めると急に貧乏になったような気がしてきます。

腐葉土化した葉っぱや破砕屑を見ると、美味しそうと思ってしまい、気持ちはほぼ菌類や微生物と同じです。

草木堆肥を使った自然栽培では、N/C比(窒素と炭素の割合のこと)が低く、土が育つまでに最低2年~3年を要します。その間は土中に有機物残渣が少なく、当然に微生物層も育っておりませんので窒素分の供給が圧倒的に少なく、野菜は思うように成長しません。

元々の土壌にもよりますが、2年を経過してようやく根の浅い葉物野菜が育ちます。

今まで化学肥料(畜糞も同じ)や農薬・除草剤を使用してきた畑は微生物や菌類が育っておりませんので、土が生き返るのに3年を要します。逆に長年放置されてきた畑には生物層ができており、雑草の種子は多く残されてはいるが、草木堆肥施肥によって化学肥料を使っていた畑よりは1年早く土はできあがります。(その代わり3年間は除草作業に悩まされ続けます)

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211205212239p:plain

畑に草木堆肥を振っているとどこからか蝶々が飛んできます。
堆肥に含まれた甘い養分を吸っているのですね。自然界は不思議なことばかりです。

農人は作業を中断し、蝶々にその甘い蜜をしばし吸わせております。

 

むかし野菜では、草木堆肥歴3年以上目安として赤ラベルとし、3年~5年未満を銀ラベルとし、5年以上経過した圃場を金ラベルの土と評価していきます。どのラベルで育ったかによって、当然に野菜の価格にも反映されます。

10年を経過すると団粒構造は30~40センチの深さまで達しております。その土の上を歩くとバウンドしてきます。こうなると、何を栽培しても上手くいきますし、野菜は美味しい。土は最早プラチナラベルです。

草木堆肥をたくさん施肥すると土が早くできあがることはありません。生物相形成には年月を要するのです。日本の先人達は何代も掛けて土を育てていたのです。ちなみに当農園の2番の畑は草木堆肥歴20年です。鍬を入れるとまるで砂をすくっているようで、草取りも鍬打ち作業も楽です。

何の野菜を植えても良くでき、至上の味香りがして美味しいです。ちなみに、味香りのよく分かる人参・セロリはそのプラチナ級の畑をメインにしております。うちのお客様からは人参は・セロリはまだですか?と一番人気です。

 

団粒構造の土

銀行員時代、再建出向したときの話ですが、広大な遊休地にハーブ園を作ることを計画しました。

ものの本によると、ハーブを育てるのに適した土とは「保気力があり、保湿力があり、保肥力がある土」とありました。そんな魔法の様な土はどうしたら出来るのか?当時全く見当も付きませんでした。

農園を開いて草木堆肥を施肥し続けて数年経過し出来上がった土、それが団粒構造の魔法の土でした。

団粒構造の土は小さな砂粒を寄せ集めたような土です。有機物残渣・微生物の死骸を核として、土が粒状に固まった状態のことを指します。土に肥料を与えずとも有機物残渣とミネラル分豊富なその土が野菜を育ててくれます。森の腐葉土と似ています。

団粒構造の土には小動物・小虫・微生物・菌類が棲み着き一定間隔で有機物を与え続けると、絶えず進化していきます。そこには自然循環の仕組みがあり、持続可能な農業に繋がっていきます。

 

 

むかし野菜の四季ーPART2

2021.11.27(土)晴れ、最高温度14度、最低温度7度

f:id:sato-shizen-nouen:20211127215714j:plain

        自然栽培大豆の収穫作業風景(4反の圃場)

 

 一見すると大豆畑とは思えない光景が広がる。

除草剤も農薬も使わない大豆の栽培とは、このようになってしまうことが多いのです。

大豆は7月に種を蒔き、11月中下旬頃に枯れた大豆の収穫を行う。

この時季は夏草の繁茂する時季と重なり、旺盛な草に大豆が負けてしまう。

畝間の草刈りは行うのだが、それくらいではどうにもならないくらいに草の勢いが

強い。

そのため、大豆を探しながら草刈りを行い、草を除去した後に数回耕して、今度は

麦の種を蒔く。大豆と麦の二毛作と言うことになります。今年は遅くとも12月中旬

頃には麦を蒔きたい。折しも急激な寒波が襲ってくると予想され、心は逸る。

f:id:sato-shizen-nouen:20211127220639j:plain

まだ青く、大豆は青刈りの状態では脱穀ができない。一端農園の作業場に持ち帰り、

自然乾燥させてから脱穀となります。

f:id:sato-shizen-nouen:20211127220841j:plain

むかし野菜の邑の社屋軒下は青い大豆で一杯となっている。年内には脱穀作業はできないだろう。味噌・黄な粉作りは来年の2月頃になってしまうでしょう。

 

 

「農薬の話」-Ⅱ

 

それでは危険な農薬について詳しく説明いたします。

前項では農業者にとって危険な農薬(劇薬)の話をしました。これは分解スピードが

速く、約1日で光合成分解などで無害となるように設計されていると説明いたしました。

つまりは劇薬は出荷直前まで使わない限りは消費者にとって一番安全な農薬と言うことになります。

 

農薬は分解スピードが遅い農薬(緩効性農薬)ほど効き目が長く続きます。

普通は10日間ほどその農薬の効能は残ります。繰り返し使っているとそれを残存農薬と言います。通常、この緩効性農薬は3~5日間隔で使用されております。特に出荷直前に害虫に葉などを食い荒らされては流通も消費者も買ってはくれませんので、出荷間際まで使われることが多い。これが消費者にとっては危険なのです。

 

農薬はその後、より農業者の人体に危険性が少なく、出荷直前まで使わなくて済むようにと、散布量を減らしてより効能持続性の高い農薬に改良されるたネオニコチノイド(人体に大きな影響を及ぼす可能性が高い)を代表とした浸透性農薬が誕生した。

その農薬は野菜に浸透していき、散布した野菜を食べた虫が死ぬ、あるいは、生殖能力を失わせるというものです。

浸透性農薬は害虫だけでは無く、虫・微生物・菌類も殺してしまいます。土に潜んで居る害虫(線虫・夜登虫など)を駆除するため、土中消毒と称して使われている浸透性農薬は生態系を破壊します。自然の生態系の破壊は自然の循環機能・浄化・再生の仕組みまでも壊してしまうことになります。

浸透性農薬の代表であるネオニコチノイド系の農薬は何故か日本では使用禁止になっておりません。使用量が少なくて済むからと言ってむしろ国が奨励しているくらいです。

残念なことに、この浸透性農薬は農薬使用の70%を超えております。農薬が浸透した野菜を食べた虫が死ぬ。そして生き残った野菜を人が食べることになる。誠におかしな話です。

 

ちなみに最近になって有機無農薬と言う表現を国が禁止しております。農業生産活動において農薬の使用は避けられなくなってきており、有機無栽培栽培は有機農家ですら、やむを得ず虚偽表示をし始めたからです。さらには、有機JAS規定が自然界の変化の実態に合わなくなってきており、ついには、「減農薬野菜」と言うわけの分からない野菜を認めております。

どの農薬をどの程度使っているのが減農薬野菜か消費者の方は分からないですね。

 

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211127224342j:plain

        漬け物用の高菜を天日干ししているところ

毎年、11~1月頃まで冬野菜の漬け物作りが行われる。その代表的な漬け物が高菜

です。干した高菜を塩もみして大樽に漬け込みます。その後、2~3段階で出てきた汁を搾り出し、漬け込み直すことにより、本高菜漬けとなるのです。

この頃、大根に米糠と天然塩で昔ながらの大根漬けも作ります。

当農園では、昆布や削り節などのグルタミンも使いません。乳酸菌発酵をさせ、素材の

味を大切にしているからです。勿論、甘味料・防腐剤・酸化防止剤など一切加えません

 

 

もう一つ問題となるのが、除草剤です。除草の手間を掛けさせないようにと除草剤の改良も進み現在ではほとんどの農業者が除草剤を使用するようになってきた。作物毎に細かく除草剤の濃度などの説明がなされている。(遺伝子組み換え作物の種子を作っているモンサント社の枯れ葉剤が日本で多く使われるようになってきた。良く効きますと宣伝されている)

さらには野菜を立派(大きく)にするために成長ホルモン剤が開発され、野菜に限らず果物・家畜の肥育にも使用されるようになってきた。アメリカの知識階層では自国産の牛肉を食べないそうです。

 

浸透性農薬の普及と残存農薬・除草剤の恒常的使用・高窒素肥料施肥などにより、農地の土壌は深刻な汚染状態に陥っております。その結果、さらなる大きな問題が発生し始めた。

アトピー・アレルギー・神経疾患・癌などの現在病の多発です。看過できないのは自然の秩序破壊の問題であり、農家にとって野菜果物の受粉を行ってくれていたミツバチが死滅し始めていることです。

国の支援を受けている農学者(有識者とされている)は、「決められた一定の農薬使用であれば人体及び環境に深刻な影響は出ない」としている。一つの作物にその一定量であれば問題は発生しないと言うなら、毎日数種類の野菜や果物を摂り続けるとどうなるのですか?と敢えて問いたくなる。

その説明の仕方は人体に悪影響を及ぼし、未だ増え続けている数限りない食品添加物とよく似ている。

食品添加物にしてもホルモン剤にしても、除草剤にしても、浸透性農薬にしても、継続して使用していれば人体だけではなく自然界の浄化再生機能を壊し続ける事になる。

欧米ではすでに癌などの現在病を引き起こす恐れの強いネオニコチノイドなどの浸透性農薬を使用禁止あるいは、大きく制限するようになっている。それをしていない先進国は、唯一、日本と言う国なのです。

欧州では「日本の食は危険」と見られていることは、オリンピック選手団が食糧の持ち込みを考えていたと言う笑えない話が出てくるくらいです。

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211127225654j:plain

            2年前に行った農園体験会

200人を超えるご家族が参加していた。子供達に収穫鋏を持たせての収穫体験でしたが、驚くほど、無心で鋏を野菜の根元に入れる幼子達の顔、顔、顔が心に残っております。コロナが長引き体験会が開かれないのが残念です。

食育活動の一環ですが、本当に学ばなければいけないのは親御さんなのですが・・

 

むかし野菜の四季ーPART2

2021.11.18(木)晴れ、最高温度20度、最低温度9度

f:id:sato-shizen-nouen:20211118222500j:plain

 

11月中旬、この時季は冬の寒さが訪れる前の最も忙しい季節に当たります。

玉葱は一年間のストック分を大量に定植し無ければならない。(数万本です)

秋麦は蒔かねばならない。(約6反分)

大豆は収穫しなければならない。(除草剤を使わない分、収量は他の農家の1/4)

これに加えて、秋冬野菜を今、種を蒔き、苗を定植しておかないと12~3月

までの出荷野菜が無いということになってしまうからです。

最高気温が10度を切ると発芽が難しくなってしまいます。そのため、この時季

一斉に種蒔きを行う訳です。

発芽さえしてしまえば、後はビニールトンネルを掛け、成長を促すことができます。

あとはあまりにも厳しい寒さが来ませんようにと天に祈るしか無いのですが・・・

 

f:id:sato-shizen-nouen:20211118223756j:plain

              定植中のレタス系野菜

 

むかし野菜の四季ーⅡ

 

「農薬の話」-1

 

※野菜が持つ害虫からの自己防衛機能

野菜本来の味と香りや微毒は害虫から身を守るために野菜が備えている防衛機能であり、肉厚な葉もその防衛機能の一つです。高窒素栽培では味香りが薄く害虫も食べやすくなります。近代農業(高窒素栽培)では化学肥料と農薬は一つのセットであり、近代農業の歴史は窒素肥料と農薬の発明の歴史でもある。畜糞肥料(窒素過多)等の有機栽培もその意味では同じ事なのです。

 

農園のメールに時折、「貴農園は有機無農薬野菜ですか?」との問い合わせが舞い込む。

その度に、農薬の話を詳しくして差し上げるのだが、大概の方は「えっ!農薬を使っているのですか?」と・・・、正直またか!と思ってしまう。

いつの間にか、「有機野菜は無農薬である」と言う間違った概念が定着してしまった。

近年は地方自治体からカメムシやアカダニの異常発生情報が流され、全地域の農家に農薬の散布を要請されることもしばしばです。何故なら、一気に撲滅しないとその地域全体に大きな被害がもたらされるからです。昨年は当農園もピーマン・パプリカ・万願寺とうがらしなど、その90%以上がカメムシ被害に遭い、出荷不能となった。

 

近年になって地球温暖化による異常気象が常態化し始め、害虫の異常発生が続いている。

例えば、種を蒔き、4日ほどするときれいに新芽が芽吹く。二週間後、本葉が出揃ったころ、その新芽がことごとく食べられている。又、成長し始めたキャベツの葉っぱはすだれ状になり、何とか巻き始めても底のほうから夜登虫が大穴を空け、中から芯を食い尽くす。シュウ酸と言う微毒性を有するほうれん草や臭いの強いニラなどにも害虫が付く。こうなると最早為す術がない。

この姿をその質問者に見せてやりたいとの衝動に駆られる。有機無農薬と言う言葉が独り歩きを始めたものですから、ほとんどの有機農家は、こう答える。「はい!農薬は全く使用しておりません」と・・・

そう答えないと、その有機農家から野菜を買ってもらう人が居なくなってしまいます。

これが有機JAS認定を取得した農家であっても農薬を使わないと死活問題になります。特に蛹から成虫となった蛾などが飛び回り始める5月中旬頃から11月初旬頃までが農薬を使用する頻度が上がります。葉っぱなどに産み付けた卵が孵化し、幼虫が葉っぱを食い荒らすからです

これが農業現場の実態です。消費者はもっと現在の農業現場を知る必要があります。

消費者や国家の誰が農業者を守ってくれるでしょうか。慣行農業であれ、有機栽培であれ、自然栽培であれ、農業者も生きていかねばならないのです。

通常の農家では一ヶ月の間に5~7回ほど農薬を散布します。減農薬栽培でも10日に一回は散布します。特に出荷直前になると使用頻度は上がってきます。何故なら虫食い痕のある野菜は消費者が買ってくれないからです。責められるのは流通や消費者達なのです。

f:id:sato-shizen-nouen:20211118224427j:plain

表面は何事も無いきれいな白菜ですが、中に夜登虫が入り込み、食い荒らしている

ことも多いのです。時にはアブラムシがびっしりと付いていることも。

 

 

むかし野菜の邑でも、こんなメールが飛び込んで来ることもあります。

「こんなにひどい状態の葉物にはお金を払えませんよ。流石にこれはひどいですね」と写真を添付して送られてきた。確かに葉っぱは虫食いの痕が多く、葉っぱを食いちぎられている。

それでもせっかく育った野菜ですから、煮込んでしまえばどうと言うことも無いのですが。

お客様の野菜定期購入のお申し込みの際、お断りを入れて居たことはすっかり忘れていらっしゃるようでした。

そこで農園主はこうお返ししました。

「出荷できた葉野菜は畝全体の1/3しかないのです。後はみな鋤き込んでしまいました。

何とか出荷に耐えうるものだけをお送りしたのですが、お支払い頂けないのであればやむを得ないですね。この時季は3~4日間隔で農薬を使用すれば良いのですが、私たちもお客様と同じものを食べますので、農薬の使用はいたしませんでした。次回からは虫食いの痕の無い野菜をいずれからかお買い求めください」と・・・このお客様は以降、返信は無いが、未だにご継続頂いております。分かって頂いたと信じたい。

気持ちは分かるのですが、農薬の怖さと虫の怖さといずれが本当に恐ろしいのでしょうか?

f:id:sato-shizen-nouen:20211118224801j:plain

玉葱の定植は一年間に一回しかありませんので、一年分を植えておかねばなりません。
厳しいのは面積を取られ、他の秋冬野菜を植える場所に苦労しています。

 

草木堆肥を使って土を育てる「自然栽培」でも、畑には普通に害虫はおります。

そもそも、野山の土には小動物を頂点にして、みみず・小虫・微生物・菌類などが棲んでおり、自然の生態系を作り上げている。そのような野山の土壌に近づけようとして、有機物を施肥していますから当然害虫も居るわけで、彼らも生きていくためには野菜を食べねばなりません。ですから、当農園も害虫発生が続く時季、害虫を瞬殺する劇薬を2回は使います。ある程度野菜が大きくなってくると、自力で育ってもらいます。

ある程度の虫食い痕のある野菜については、当農園の定期購入のお客様とのコンセンサスは得ているからです。ただ、出荷に耐えられ無いほど食い荒らされ、一畝全滅することもしばしばです。

f:id:sato-shizen-nouen:20211118225138j:plain

       野菜の自然な色合いにはびっくりさせられます