農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.6.3(水曜日)曇り、最高温度26度、最低温度17度

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          草木堆肥を作っている処

 

春野菜から夏野菜への転換期は、草木堆肥を二週間に一回のペース

で作り続けねばならない。自然循環農業では、この草木堆肥を切ら

すことは、生産が出来ないのと同じことである。

葉っぱや破砕木屑に生息している微生物や放線菌と同じ目線で、

ものを考える習性が付いており、絶えず気にして、彼らに語りかけ

ている。頑張れ!と・・・菌が増殖する際は、70度ほどに堆肥の

温度が上昇する。

 

 

2020.6.1 コロナウィルスにより人の価値観は変わる?

 

2011年福島で起きた原発事故、所謂原発ショックを契機にして、

農産物汚染が問題となり健全な食への関心が急速に高まり、当時、

120名前後であった定期購入のお客様は一年間で全国に拡がり、

230名に急増した。
その後、農園のテレ朝放映などで一時的に500名ほどに膨らん

できたこともあったが、すぐに熱が冷める方も多く、300名

ほどのお客様に落ち着いていた。
それが宅配料金の大幅なアップによって、ついに、200名を

割り込んでいった。
そんな中、今回はコロナショックによって、定期購入のお客様は

元の人数であった230名へ戻りつつある。

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梅雨が来るというので、大急ぎであちこちの畑に点在している玉葱を引いている。

今年は極早生は頗る好調であったが、早生は、球になりきれていないものも多く

、所謂、男玉葱(中に硬い膜ができる)が多く、ものにはならなかった。

農業は一か八かの掛けでもある。

 

その時代のトレンドの変化によって人の価値観は変化してくる。
元々人の心に不変なものがある訳では無いが、昨今の安・近・短

な世相はコロナウィルスによって無関心・自己本位の価値観は

大きくに揺さぶられ始めている。
宅配料金の大幅なアップとなっても、尚、120~130名ほど

の方は、10年以上取り続け、むかし野菜はそれらの方々に慈し

んで頂いている。
時代のトレンドが変化しても、その方々の価値観は変わらない。

畑は草木堆肥を施肥し続けて行くにつれ、土壌は微生物・菌が畑

を耕してくれるため、さらに進化を続け、未来へと持続可能な

農業と言える。
その自然循環の思想と農法は今後も不変であり、お客様に健全な

野菜を届け続け、皆様の健康を守っているとの自負心は、スタッ

フ一同、強く持ち続けている。

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収穫し終えた玉葱は、いきなり保冷庫に入れておくと腐ってしまう。

そのため、麻紐で括って軒先に吊しておく。紐掛け作業です。

例年玉葱はほとんど儲けにならない。リスクと手間の塊である。

それでも昨年も数万個の玉葱を植えた。ご家庭の必需品であり、定期購入の

仲間達のために切らすわけには行かない。

 

コロナの影響で学校が閉鎖となり、うちの孫達は連日畑で過ごし

ていた。
自然野菜を食べ、菌のはびこった畑で遊び回るこの子達は至って

健康である。
元来人も微生物の進化形であり、微生物や放線菌の棲まう自然

循環の浄化の仕組みの中では、悪性耐性菌が特にはびこること

も無く、健康で居られる。除菌・除菌と言って、菌を悪者扱い
してはいけない。
もしも、菌類がこの世に無かったら、木・草・動物などの死骸

だらけになっている。
菌類の繁殖の仕組みによって分解して自然環境を浄化してくれ

ている。
人間の体の内も外も菌類で覆われているからこそ健康で居られ

るのです。

ウィルスに勝とうと思うのは、無理である。それならいっそ共生

あるいは、共存していく仕組みを作っていかねばならない。
日本人が、コロナウィルスに強いのは、様々に言われてはいるが

、若しかして、日本のむかしの食生活文化が残っているせいかも

しれない。
味噌・醤油・漬物などには、乳酸菌を始め、様々な菌が棲んで

いる。
無菌状態に置こうとしている滅菌・殺菌などの食文化のほうが

むしろ違和感を感じる。
当農園は、醤油こそ作ってはいないが、そのむかしの日本人の

食文化である味噌・漬物は農園発足以来、無添加醸造と言う

伝統的な方法で作り続けている。

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トマトの初期設定(形を整えるための初期的な剪定誘引作業)を終えて

次は茄子の初期設定作業へと移る。すでに実を付け始めておりこのまま行くと、

倒れてしまう。7種類の茄子を14列植えている。

トマトと茄子は農園主の仕事。他の男性スタッフはピーマン系を受け持っている。

 

原発ショックの際のお客様の急増とは異なり、今回のお客様の

漸増は、少し趣が異なっているのかもしれません。
人は本能的に命の危険を感じると、自己防御の行動を取ろうと

します。
農園の自然栽培や自然循環農法や草木堆肥と言った「むかし」

と言うキーワードに、反応し、何かは分からないが、

「何か良さそう」と感じておられるのかもしれません。

「楽をする」「とりあえず」「今が良ければ」「自分さえ良け

れば」などの自己本位な価値観から、「頑張って見るか」

「家族を大切に」「他の人の心も」「おもいやり」などの利他

主義的な価値観を共有していこうと考えてくれれば良いのだが

と思わずには居られない。

世界は資本主義社会の矛盾、あるいは、大企業によるグローバ

リズムに至り、貧富の差が広がり、いつしか階級制のような

差別社会が進行し始めていると言った閉塞感の中で、人々の多く

は怒りや不安に満ちている。
国家の指導体制も民主主義とは最早呼べない独裁・特権・権力

構造に変化しようとしている。
これは多くの国民が政治に無関心を装い、時の政権にお任せに

した結果では無いかとも思う。
今回のコロナウィルスによるパンデミックは、自然界からの警鐘

と言えるのかもしれません。

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草・葉っぱ・木屑・牛糞を三層に重ね、トラクターで混ぜ込み、

タイヤショベルで積み上げる。

この時季、約1ケ月ほどの発酵期間で畑に施肥する。

 

 

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.5.27(水曜日)曇り、最高温度25度、最低温度16度

 

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         無残な姿となったキャベツ

この畝のキャベツ500ヶは、およそ1/3の出荷で終わって

しまった。正に人間が食べるか、虫が食べ尽くすかの競争と

なった結果です。

 

2020.5.19  害虫の異常発生

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葉っぱは穴だらけ、芽は食い倒され、無残な姿となった茄子。

 

先日、とあるお客様から自然栽培を学びたいとの申し出があった。

行く行くは有機無農薬農業をやりたいとのお話であった。
聞けば、高校生・中学生の二児のお母さんであり、夫も感心を持っ

ているとのこと。
そこで、こう申し上げた。有機無農薬野菜なんて無いのですよ。

10年前ならいざしらず、現在の気候は虫たちの天下です。

5月以降~11月までは、野菜によってですが、種を蒔いても

発芽した途端に、虫たちの食糧になってしまいます。

ようやく幼苗時季を終えて成長したとしても完熟期(野菜が

糖質に富む)を迎えると地面から幼虫が雲霞のごとく現れ、

食い尽くします。
本来虫が食べないほうれん草(シュウ酸が含まれている)も

穴だらけになるほどだから、キャベツは地中から湧いて出てくる

夜登虫に食い荒らされ、キャベツの底辺には数十匹が群がって
いる。その他にも茄子は十星テントウムシが付くのだが、

夜になってこの夜登虫が登ってきて葉っぱを食い荒らし、

ひどいものになると、茄子の幹を噛み倒してしまう。
5月中旬頃から11月まで、害虫の発生が続き、5~7月まで

が特にひどい。

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蝶々乱舞。卵を産み付け、青虫の大群で葉っぱはやられ、地中からは夜登虫が

這い出し、キャベツの下部から芯にまで食い込む。

 

当農園は草木堆肥であるだけに土は肥えれば肥えるほどに蛾の

幼虫が卵を産み付け、土中は、虫の住処となっている。
野山の自然の土壌に近づける草木堆肥による土作りと、害虫も

含む虫達の繁殖は相関関係にあり微生物・放線菌・小虫は、

土が肥えれば肥えるほど、増えてくることになる。

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畑で草木堆肥を撒いていた。その上に焼き灰・蛎殻・苦土石灰を振る。

ふと、見ると、蝶々が堆肥の上に群れていた。完熟一歩手前の草木堆肥は

香しい匂いがする。その甘い香りに吊られたのだろう

これからの時代、微生物・放線菌・虫達と共生していかねば

成りません。但し、害虫に対しては、人間が防御してやらねば、

農家は自然の恵みと収入を得られないことになってしまいます。
唯、土を汚すことは絶対に避けねば成りません。
化学物質や菌を殺してしまう浸透性農薬の使用は、自然の循環

及び浄化及び再生の仕組みを壊してしまいますし、土中消毒・

除草剤の使用は微生物・放線菌が棲めない土となってしまいます。
農業現場を知らない学者やメディアそして、無農薬、無農薬と

唱えておられる消費者が考えている概念上の有機野菜とは一線を

画しており、私達は自然栽培と称しております。

近在の農家の方が、私と一緒に農業をしようと考えたそうですが

除草剤を使わないと、広い農地では草取りに追われ、回していけ

ないので、残念せざるを得ないと言っておられます。

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こちらは紫キャベツ。一つの株からおよそ20匹の夜登虫が現れる。

剥いて剥いて、キャベツはどんどん小さくなり、出荷出れば良い方です。

我々の行っている自然循環農業は過酷な作業の連続です。

その上、害虫被害により季節によって半滅・壊滅状態も日常的

に起こり、それが度々重なると心が折れそうになります。
今年は特に異常な気候と害虫の異常発生によって皆様にお届け

する野菜が、底を尽きそうです。
この自然栽培(全て露地栽培)は10年を超える経験と勘や

不屈の精神が要求されます。そして、野菜に対して愛情を注ぐ

人で無ければ続けていくことはできません。

以上のこと申し上げたのですが、現場を踏んでいかねば中々

分からないことだと思います。

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トマトの初期設定作業。トマトは一本の木に2~3本の枝とするように剪定。

竹の支柱を二本、太陽に向けて斜め50度に傾けて枝を伸ばす

最大で5メートルの長さまで伸ばす。もうかわいい玉が付いている。

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.5.20(水曜日)晴れ、最高温度23度、最低温度16度

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          黄金色に染まる裸麦

 

 今年は暖冬の影響で、麦の出来が良い。ここは草木堆肥歴3年目の

小原君の圃場。麦は高窒素(化学肥料や牛糞多投)でないとグルテン

も少なく出来が悪いと農業試験場の方がおっしゃっていた。草木堆肥

は典型的な低窒素栽培である。

今までの失敗を活かして、やや堆肥の振り方を多くした。今までで

あれば、5年の土作りを経てようやく何とか麦が実ってきた。

それだけに、小原君の3年目の圃場の出来具合が気になっていたが、

何とかなりそうである。

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こちらは、草木堆肥歴6年目の麦の圃場。やはり出来は小原君の圃場

と比べてかなり良い。背丈が高く、実入りも良い。向かって右側は

小麦です。

 

2020.5.15 ハーブ料理とは?

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またかと思う独裁・独善・自己保身の道を歩む安部総理、それを自制

させようとしない自民党議員達にも呆れてしまう。検察はある意味

では法の番人であり、行政府権力の暴走を抑えることのできる公正性

の監視役でもある筈。

ロッキード事件を思い起こしてみれば分かる。
その検察庁のトップ人事を行政府が握れば、権力の暴走や隠蔽はいかねばならない。
とあるジャーナリストの記事を読んだ。「自民党公明党・維新の会

などの国会議員に各選挙区でこの法令を支持した議員の対抗馬に投票

する」と意思表示したらどうか、と言うものである。
これなら特定政党や特定議員を支持するということにもならず、無色

透明であり面白い。
選挙において自民党の支持層はそんなに多くは無い。無党派層が圧倒

している。
それほど、国会議員は信頼されていないということも、悲しいこと

ではあるが、声なき声を現実化させるには妙案だと思うのだが・・・
いずれにしても、日本のメディアが政権に対する忖度が目立ち、真実

を伝え切れていない中でSNSツィッター・ラインの影響力は良きに

付き、悪しきに付き、大きい。

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さて、農園では、年に二回、春と秋にハーブセットを皆様にお送り

している。

日曜日の農園マルシェでも、常時、フレッシュハーブティをお出し

している。
その他にもクリスマス頃には干した赤唐辛子とローリエ(月桂樹)

のセットを必ずお送りする。

このハーブと農園主は実は長い付き合いがある。
私が銀行員時代、とある住宅不動産会社の再建出向で、住宅の企画

設計や広大な遊休地の売却処分をしている時、どうしても売却し難

い歯抜けとなっている3万坪の土地があった。
そこは、風光明媚な海岸線に沿っており、廃墟となったビニールハ

ウスの残骸に覆われていた。
その本社で企画室長と言う肩書きで、午前中、住宅企画設計の指導

・営業販売管理チェックなどの日常業務を終えて、昼からは一時間

半を掛けて土木・農作業担当の作業員達の現場へ走って行った。
廃墟の片付けから3万坪の用地の図面割りを行い、当時、流行掛か

っていた観光ハーブ園の設計作業や現場の作り込み作業に掛かりきり

になった。現場の作業員に混じってトラクターに乗ったり、鍬やツル

ハシを振るい陣頭指揮を執っていた。

それと同時に、飲食開発に取り組んでいた。ハーブ料理なるもので

した。
何しろ、ハーブの使い方どころか、ハーブの育て方さえ分からない

手探りの状態でした。
およそ、半年で何とか形を作り上げ、ハーブを育て、約一年を掛け

てようやく開園に持ち込んだ。
周囲の人からはその脅威のスピードに気狂いだと言われていた。

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ハーブピザ;数種類の食用フレッシュハーブとオリーブ油・塩胡椒のシンプルな

ピッザです。生地は農園のブレンド粉を使っていますイベントで大人気でした。

 

その経験からハーブについては多くの事を学んだ。
皆様はハーブ料理と言うものがあると思われておられるかもしれま

せんが、結論から言うと、そんなものは無くて、欧州ではハーブ調味料や保存料として広く家庭料理に浸透している。

現在農園では、毎年春と秋に二回ほど、全国2百数十名の定期購入の

お客様へフレッシュハーブをお送りしている。
コモンタイム・レモンバームスペアミントレモングラス・ジャー

マンカモミールなどです。
ハーブは一種類だけ使うのでは無く、基本的には数種類を混ぜて使

った方が味香りのハーモニーが出せて美味しくなります。ですから

ミントティーではなく、レモン系の味がするものと混ぜるとより飲

みやすくなります。料理に使う場合もまったく同じです。

ハーブティの場合、数種類のフレッシュハーブを熱湯で数分間蒸ら

します。

一煎目は香りを、二煎目は味を楽しみます。
タイムは、フライパンに刻んだニンニクをオリーブ油で炒める際に

加えます。

そこに肉類をソティしますと、肉類の臭みや余計の脂分を抑えてく

れます。
当農園の人気商品の一つであるコロッケにも使います。野菜コロッ

ケが主体ですが子供さんはやはり肉の入ったプレーンコロッケに

人気が集まります。

肉類の臭みを取るために、タイムは欠かせません。

農園では、ハーブビザなどをイベントの際、皆様へ提供しております。
これもハーブ園を開いた際のメニューの一つで、その当時はスカボロ

ピッザと呼んでいました。
ハーブの代表的な食用ハーブであるパセリ・セージ・ローズマリー

&タイムの歌のタイトルです。
当農園のブレンド小麦粉を使い、その食用ハーブを載せ、オリーブ

油と塩胡椒で焼いたものですが、人気があり、何時の日か、予約制

で農園マルシェの定番商品にしたいと考えております。

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農園にはあちこちにさりげなくハーブが植わっております。お入り用であれば、株分け

致しますよ。

 

コロナウィルスとの共存若しくは共生をしていかねばならなくなると

したら、今までの生き方や価値観を少しずつ変えていかねばならない

かもしれません。
余りにも化学に頼った、あるいは、実利ばかりを追い求める生活の

価値観から、余裕・ゆとり・利他主義(他への思いやり)もその価値

観の中に入れていかねばなりません。
その時、夜、静かな一時を過ごす際に、是非ともフレッシュハーブ

ティなどでゆったりと過ごす時間を作ることも必要なのではないで

しょうか。

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.5.13(水曜日)晴れ、最高温度23度、最低温度13度

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                 夏野菜の定植

これは茄子です。農園では、茄子の味香りを残している昔ながらの種子を大切に

している。茄子であれば、黒陽・筑陽と言う品種。

その他には、東南アジア系の色茄子(紫・白・緑)、これはクリーミーで、炒め

物に適している。そして、賀茂茄子、半切りにして味噌を付けて焼くと美味しい。

様々に試してみたが、残ったのが、食感風味とも納得のいったこの三種です。

 

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              トマトの初期設定

手前の方はすでにひっくり返っている。これを芽掻きし、下葉も落とし、太陽の

方向に、50度に傾けながら斜めに誘引作業を行う。

枝はほぼ3本として太陽に向けて伸ばしていく。最長5メートルにもなる。

 

 

2020.5.8 全豆類が一気に最盛期を迎えた

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                スナップエンドウが鈴成り

今年は暖冬から始まったが、3~4月は意外と寒く野菜の方も常の気候と違う

と感じている。
ニンニクは芽が吹き出すことも無く球根から葉っぱが出始めてしまった。

こうなると球にはならず、今年のニンニクはほぼ壊滅状態となった。
春白菜は花芽が付いてしまい、巻かないまま終わってしまった。
豆類については、例年であれば、4月初旬頃から絹莢エンドウが出始め、

スナップエンドウ実えんどう、5月に入ると、空豆と続き、6月頃から

インゲンで、豆街道は終える。

処が、気候の歯車が狂ってしまっているようで、野菜達も敏感にそれに反応

している。農業は平均気温が1度異なると大きく狂ってしまうものであるが、

どうやら今年はそれ以上の変化がもたらされたようだ。
今年は、時間差はあるものの、絹莢エンドウとスナップエンドウの出荷時期が

遅くなったために、4月下旬に出荷時季が重なり、すぐに実えんどう空豆

と続いてしまった。
こうなると、お客様へは、同時に2~4種の豆類を送らねばならなくなりそう。
最近の露地栽培農業の難しさを痛感している。
当農園は、全てがお客様への直接販売が基本の農業スタイルである。

その意味では、固定のお客様若しくは、仲間達との契約栽培に似ている。
生産者と消費者との信頼関係を永年構築してきており、定期購入のお客様を

我々は仲間と、勝手に、呼んでいる。お客様にとっては迷惑かもしれないが、

同じ野菜をそして、価値観を共有する仲間ということになる。
農園での生産量はその仲間達の消費量を予定して栽培している。
処が、このように気候が狂ってくると、一気に野菜が出揃ってしまい当然に

収穫量は一時的に増加してしまう。野菜に成長を待ってくれとは言えない。
このような時、農園では、価格は抑えて量だけ増やす「増量」発送を行う

ことにしている。

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                      絹莢エンドウ

例えば、今年スナップエンドウは走り旬には100gで180円だったものが、

二週目で150gが200円となり、三週目の最盛期には300gで300円

となっていく。

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これほど収量が多い年も初めてであり、嬉しいような、困ったような、兎に角

毎日豆だけの収穫作業に8時間を要する。熟れすぎて放置すると野菜はすぐに

終わってしまう。「私は子孫を残したからもう終わりです」となる。

折角の自然の恵みは、大量に採れた時季は破棄すること無く農園の仲間達と

分け合うことにしている。
当農園基準で、走り旬(野菜の収量は少ない)・中旬(収量は適量になって

いる)・最盛期の旬(野菜が農園で溢れている)では野菜の価格は大きく変動

してくる。

農園の野菜の価格は市場連動していない。
市場で野菜が溢れている時季も、市場で野菜が採れ難い時季でも、価格は

基本的には変えない。
何故なら、特定の定期購入のお客様しか居ないわけですから、農園で採れた

野菜は分け合うと言うのは至極自然な流れだからです。
関東のお客様からは時に、こんなに安くて良いのですか?との質問が寄せら

れることもある。それは以上のような販売スタイルを取っているからです。
農園の仲間達からの暖かいメールが寄せられる度に、改めてうちは良い仲間達

に囲まれていると実感する。

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                      空豆

空豆は熟してくると、下を向く。実に収穫のタイミングが分かり易い

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.5.6(水曜日)晴れ、最高温度25度、最低温度16度

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       3番の圃場からむかし野菜の社屋(青い屋根)を覗く

 

連休中、最もずーっと子供が農園に居るため、連休の様なものだが、農園直売所

に、多くの方々がお見えになられた。

固定顧客化が進み、お菓子類だけではなく、ようやく野菜を本格的に購入して頂

くようになってきた。時折、口コミ等で新規客も混じる。

どう言うわけか、10時オープン直後にお客様が集中する。じっくりとお客様と

対話をしたいとは思うのだが、それもままならない日々が続いている。

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2020.5.5 国民を守らない政府

大型連休始まり、あいにくの雨の日曜日、今日、農園直売所には多くのお客様が

訪れてくれた。とは言っても、午前中でおよそ30組のお客様なのだが。
「草木堆肥による自然栽培は、手間と労力の塊です。中々大分の方々には理解

していただけない」と訪れたお客様にこぼすと、「良いではないですか、

こうして多くのお客様が見えているでは無いですか。その美味しさと健全性を

理解してくれる人だけで良いのでは・・」と励まされた。

コロナショックの影響で、東京では配送料金が高いにも拘わらず食のデリバリー

(個別宅配)が増えてきている。飲食店は生き残りを掛けて宅配やテイクアウト

を行い始めている。

そう言った中、一時送料の大幅値上げの影響で、当農園も多くのお客様が去っ

て行かれた。
処が、最近になって、宅配の申し込みが目に見えて増加し始めている。
同じく、農園直売所にも徐々にお客様が集まり始めている。
当農園の取組や野菜の質を評価して頂いているのも其の一つの要因ではあろ

うが、むしろ、コロナショックの影響の方が大きいような気がする。
免疫力強化のため、無理をしてでも自然野菜を食べようとする心の動きが垣間

見える。コロナウィルス感染対応の出口が見えてこない。

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      満開のジャーマンカモミール。3番の畑の中央を占拠している


政府は、ひたすら自粛自粛と繰り返し、人命尊重とはほど遠く、経済弱者だけ

ではなく、飲食店他、休業による困窮を深めている中小事業者への保障救済も

念頭には無かったようだ。
ようやく国民の批判を浴び、上から目線の様子見を止めざるを得なくなり保障

に動き出した。
それでも、他人ごとのように政権争いや自己保身に目が向いている政治家達と

事勿れ主義や前例主義にしか事を進めきらない官僚達にこの国はむしばまれて

いくのかと慨嘆するしかない状況にある。
国家の非常事態には、人・物・金を集中させて、一気にスピードを上げて対応

していかねばならないのに。

感染者を自宅待機にさせるのも驚きであり、家族はどうなっても良いのか?

自己責任だとでも考えているのか、PCR検査体制を敷くこともできず、感染者

受入施設の拡充もせず、医療関係者の実情は放置し、その精神力にだけ頼ろう

とする。アベノマスクには思わず絶句してしまう。
この国の政治は、一体誰が舵取りをし、責任を負おうとしているのか?
コロナ対応のまずさだけが目に付き、出口は全くと言って見えてこない。
日本は世界の笑いものになっているのにも気がつかない。これは何も政治家

だけでは無いと思う。

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春恒例のフレッシュハーブティセット。コップに差して一時楽しむのも良し、熱湯を注いでティー

楽しむのも良し、フライパンにオリーブ油を入れ、傾けてニンニクと一緒にハーブを入れ、香りを

移して肉のソティを楽しむのも良し、鬱積した心を癒やしてあげて欲しいと願っている。

相も変わらず、総理は官僚達の文案を棒読みし、漢字も読めず、国民の将来を

担っていると言う気概は感じない。彼ら政治家を選んだのは間違いなく国民で

ある。
このままで推移していけば、日本経済は泥沼化してくることになる。報道関係

者の矜持は何処へ行ったのか、時の政権に忖度を繰り返すばかりである。国民

ももっと声を上げていかねば、私達の生活は守ってはいけない。

農園は、来店されるお客様や定期購入の仲間達に健全な野菜をお届けし続ける

ことしかできないのが、どこかもどかしい。

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.29(水)晴れ、最高温度21度、最低温度9度

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今日は出荷日。そして農園直売日。

朝から多くのお客様が訪れてくれて、店頭に並べた野菜が次から次と無くなる。

その度に、畑に走り、野菜の補充をすることになった。

これもコロナショックなのかもしれないし、ようやく大分の消費者に認めて

頂けるようになったのかもしれない。

訪れてくれるお客様の顔も、始めた頃、恐る恐る野菜を手にしていた雰囲気とは

異なり、確信を持って買って頂いているように見える。

お客様の声も、他の売り場とは違って、説明を聞いてもどこかやさしい気持ちに

なれると言って頂いている。ありがたいことだ。

 

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2020.4.13 夏野菜の本格的植え込み始まる

一月からハウス内の育苗用トレイに種を蒔いて、ポットに揚げ、踏み込み堆肥の

上で育ててきた夏野菜の第一陣から定植が始まった。

トマト類・ピーマン・パプリカ・とうがらし類・茄子類など。
例年であれば、4月初旬、畑に定植し、4~5月の春の暖かさで根を張らせ、

6月の梅雨時期に一気に枝を広げ、7月初旬頃からぼちぼちと実を成らせ始める。

本格的出荷は7月後半から8月の盛夏になる筈である。日本の四季のサイクルは

旬野菜の生育を促してくれていた。

唯、最近の数年間は、日本の四季が壊れてきており、雨期と乾期のサイクルが

巡り始めており、年によって出来不出来が激しくなり始めている。今後、

自然環境の中で育てる露地栽培はリスクも大きく、その栽培に経験に基づく勘が

必要なこともあり、露地栽培農家が激減している。

露地栽培は栽培ノウハウや経験・知識がものを言う。さらには、毎年変化し続け
ている気候変動が露地栽培の難しさを加速させている。
そのため、管理し易い施設園芸が主流となっており、季節感の乏しい促成栽培

抑制栽培などのハウス栽培野菜が市場を占めている。
現代農業は、露地で美味しく育つはずの「旬菜」と言う言葉が失われつつある。

 

 

さらに農業者を育てて行くには現在の世相は難しくなってきたことを実感して

いる。特に、当農園のような低窒素栽培(自然栽培)の場合、成長が遅く、

目まぐるしい自然条件の変化に晒される。味香り豊かな(繊維を感じさせない)

歯切れの良い本来の有機野菜は厳しい自然環境に晒されることでより美味しく、

栄養価も豊かになる。そのことを、どれだけの消費者が理解してくれるだろうか。

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「美味しい野菜は栄養価がある」このことを知っておられる消費者はどれくらいいるのだろう。

化学物質を排した土壌から生まれてくる野菜達は、人の体を癒やしてくれる。腸内細菌は活性化し、

化学物質等の異物の入っていない野菜は免疫力を確実に付けてくれる。

そのことは知らない消費者でも何となく自然栽培は良さそうと感じておられるのだろう。

コロナショックに見舞われた消費者の方々は、普段はやや高いと感じている野菜でも本能的にそれを

求めようとしているのかもしれない。

 

兎にも角にも、今年も穏やかな四季の国であってくれることを祈っている。
古来より、農民は天の神に、五穀豊穣を願い、穏やかな四季が訪れてくれる

ように神社に祈りを捧げてきたものだ。残念ながら農園主は信心も薄く、徳も薄く

神社に祈ることはしないが、自然の神には、畏敬の念を抱いており、一所懸命に

努力している全国の農家が良い年であることを願っている。

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さて、夏野菜の植え込みである。
今年から佐藤自然農園にて学んできた竹内さんが、いよいよ、独立農家として

一人立ちすることになった。それも夏野菜のメイン圃場である5・6番(約4反)

を担当することにした。
この圃場は、草木堆肥歴7年目を迎える。この地域でも高地にあり、水捌けの

良い畑である。
そのため、水を好まない南米原産のトマトを植え込む。そして、比較的水分を

好まないピーマン・パプリカ・万願寺とうがらしなどが夏場のメイン野菜となる。

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茄子類・胡瓜類は、水分を好むため、佐藤自然農園の圃場である乾燥し難い

2・4番の畑に植え込む。

草木堆肥の特性は低窒素であり、次々と成って行く実物に対応するために、

畝全体に草木堆肥・焼き灰を撒き、鋤き込む。定植する際に、先肥と称して、

スコップ二杯ほどの草木堆肥を遣り、そこに直植えする。

根を充分に張りだした頃に草木堆肥の肥料効果が出始め、枝を茂らせる。
一番果が付き始めた頃、追肥と称して草木堆肥を畝間に施る。丁度この頃、

梅雨が終わりかけで、畝上の土が長雨で洗い流され、畝下に落ちてしまって

いる。
土寄せと言って、畝下を深く揚げることにより、根に酸素が供給され、木は

活性化し始める。これを中耕と言う。
これが夏野菜の生長を促す作業であり、梅雨の長雨によって堅くなった土を

ほぐし、野菜が呼吸しやすくしてやらねば、野菜の生育は止まってしまう。

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長い梅雨時期に降り続いた雨のため、畝の土は流され、畝が無くなっている。

梅雨が終わるか終わらない時季に草木堆肥を畝上に施肥し、畝下を鍬で埋まった土を深く掘り上げる。

 

ミネラル分及び炭素が豊富な草木堆肥は、そこに棲み着く微生物や放線菌によっ

て分解され、土を育ててくれる。その土の力によって低窒素栽培でも野菜が育つ。

それは草木堆肥にしか達成できない美味しい野菜の秘密なのです。

その秘密は先人達の叡智でもある。

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3番の畑に番の 自生したジャーマンカモミール。野生の生命力の強さを感じる。

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.22(水曜日)晴れ、最高温度17度、最低温度9度

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             由布市庄内の小麦畑にて、

除草剤を使わないため、畝間は大きく空けて、雑草に覆われるように麦が育っている

出穂寸前です。

 

2020.4.9 俵万智さんがやってきた その三日目

今日は最終日、連日の取材にいささか気疲れしているが、俵さんも含めて取材

スタッフ達がこの番組は良い番組ですと声を揃えて語っていた。彼らの熱意に

乗せられていつも以上に熱く語っている自分がいた。霧島酒造の試み(地域伝統

の技を伝える)に感謝している。
朝から、剪定枝の破砕作業・葉っぱと小枝の選別作業・草木堆肥作りなど、

農園の日常の撮影を行った。

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取材スタッフからの質問攻めとなり、微生物・放線菌の働きとは?草木堆肥と

ミネラル分の関係は?何故草木灰を使うのか?土作りの団粒構造とは?野菜の

美味しさと栄養価の関係は?完熟野菜の仕組みとは?などなど、さながら理科

授業の屋外研修の様相を呈してきた。

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そもそもが草木堆肥を使った土作りやその野菜の特性などを語り始めると、

日本の農業の歴史から自然循環の理・微生物や放線菌の果たす役割・農産物の

栄養価とは何か・野菜の成長とその生理の仕組みなどこれだけで延々と10時間

ほどを語らなければならない。
さらには、むかし野菜の加工品のこと、お客様とのコミュニケーション方法の

こと、むかし農法の伝承や後継者育成のことなども織り込まなければならない。
4回に分けて放映するとは言え、わずか2分×4回で語ることなど到底できる訳け

ない。
FM放送の方は、15分×4回となり、俵さんとの対談と言う事であり、どのよう

になるのか。
語るほうも、取材・編集するほうも真剣勝負とならざるを得ない。

ようやくお昼のランチタイムとなり、焼き野菜・だんご汁・麦御飯と漬物・野菜

コロッケ・野菜饅頭などなど、俵さんや取材スタッフのお腹に次々と詰め込まれ

ていく。

こちらは、疲れて食べる気力も無くなっていた。

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午後は撮り残しの撮影や味噌作りのシーン、俵さんとの対談、むかし野菜の邑

ファミリーの集合写真、出穂した麦畑を疾走する子供たちのシーン、俵さんの

締めの言葉に思わず涙しているうちの奥さんなど、ようやく解放されたのが、

午後6時を回っていた。
残念なのは、俵さんの締めの言葉を聞き漏らしたことであり、放映の日まで待た

ねばならない。
彼女に聞くと、「佐藤さんから私は語らされていた」とおっしゃって頂いたこと

がせめてもの救い。
今まで多くの取材に応じてきましたが、これほど疲れたのは初めてで、それだけ

中身の濃い取材であり、撮影であった。
最後は、スタッフ全員で野菜の収穫を行い、袋一杯に詰め込んだ野菜達を抱えて

帰っていった。

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