農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.5.6(水曜日)晴れ、最高温度25度、最低温度16度

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       3番の圃場からむかし野菜の社屋(青い屋根)を覗く

 

連休中、最もずーっと子供が農園に居るため、連休の様なものだが、農園直売所

に、多くの方々がお見えになられた。

固定顧客化が進み、お菓子類だけではなく、ようやく野菜を本格的に購入して頂

くようになってきた。時折、口コミ等で新規客も混じる。

どう言うわけか、10時オープン直後にお客様が集中する。じっくりとお客様と

対話をしたいとは思うのだが、それもままならない日々が続いている。

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2020.5.5 国民を守らない政府

大型連休始まり、あいにくの雨の日曜日、今日、農園直売所には多くのお客様が

訪れてくれた。とは言っても、午前中でおよそ30組のお客様なのだが。
「草木堆肥による自然栽培は、手間と労力の塊です。中々大分の方々には理解

していただけない」と訪れたお客様にこぼすと、「良いではないですか、

こうして多くのお客様が見えているでは無いですか。その美味しさと健全性を

理解してくれる人だけで良いのでは・・」と励まされた。

コロナショックの影響で、東京では配送料金が高いにも拘わらず食のデリバリー

(個別宅配)が増えてきている。飲食店は生き残りを掛けて宅配やテイクアウト

を行い始めている。

そう言った中、一時送料の大幅値上げの影響で、当農園も多くのお客様が去っ

て行かれた。
処が、最近になって、宅配の申し込みが目に見えて増加し始めている。
同じく、農園直売所にも徐々にお客様が集まり始めている。
当農園の取組や野菜の質を評価して頂いているのも其の一つの要因ではあろ

うが、むしろ、コロナショックの影響の方が大きいような気がする。
免疫力強化のため、無理をしてでも自然野菜を食べようとする心の動きが垣間

見える。コロナウィルス感染対応の出口が見えてこない。

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      満開のジャーマンカモミール。3番の畑の中央を占拠している


政府は、ひたすら自粛自粛と繰り返し、人命尊重とはほど遠く、経済弱者だけ

ではなく、飲食店他、休業による困窮を深めている中小事業者への保障救済も

念頭には無かったようだ。
ようやく国民の批判を浴び、上から目線の様子見を止めざるを得なくなり保障

に動き出した。
それでも、他人ごとのように政権争いや自己保身に目が向いている政治家達と

事勿れ主義や前例主義にしか事を進めきらない官僚達にこの国はむしばまれて

いくのかと慨嘆するしかない状況にある。
国家の非常事態には、人・物・金を集中させて、一気にスピードを上げて対応

していかねばならないのに。

感染者を自宅待機にさせるのも驚きであり、家族はどうなっても良いのか?

自己責任だとでも考えているのか、PCR検査体制を敷くこともできず、感染者

受入施設の拡充もせず、医療関係者の実情は放置し、その精神力にだけ頼ろう

とする。アベノマスクには思わず絶句してしまう。
この国の政治は、一体誰が舵取りをし、責任を負おうとしているのか?
コロナ対応のまずさだけが目に付き、出口は全くと言って見えてこない。
日本は世界の笑いものになっているのにも気がつかない。これは何も政治家

だけでは無いと思う。

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春恒例のフレッシュハーブティセット。コップに差して一時楽しむのも良し、熱湯を注いでティー

楽しむのも良し、フライパンにオリーブ油を入れ、傾けてニンニクと一緒にハーブを入れ、香りを

移して肉のソティを楽しむのも良し、鬱積した心を癒やしてあげて欲しいと願っている。

相も変わらず、総理は官僚達の文案を棒読みし、漢字も読めず、国民の将来を

担っていると言う気概は感じない。彼ら政治家を選んだのは間違いなく国民で

ある。
このままで推移していけば、日本経済は泥沼化してくることになる。報道関係

者の矜持は何処へ行ったのか、時の政権に忖度を繰り返すばかりである。国民

ももっと声を上げていかねば、私達の生活は守ってはいけない。

農園は、来店されるお客様や定期購入の仲間達に健全な野菜をお届けし続ける

ことしかできないのが、どこかもどかしい。

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.29(水)晴れ、最高温度21度、最低温度9度

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今日は出荷日。そして農園直売日。

朝から多くのお客様が訪れてくれて、店頭に並べた野菜が次から次と無くなる。

その度に、畑に走り、野菜の補充をすることになった。

これもコロナショックなのかもしれないし、ようやく大分の消費者に認めて

頂けるようになったのかもしれない。

訪れてくれるお客様の顔も、始めた頃、恐る恐る野菜を手にしていた雰囲気とは

異なり、確信を持って買って頂いているように見える。

お客様の声も、他の売り場とは違って、説明を聞いてもどこかやさしい気持ちに

なれると言って頂いている。ありがたいことだ。

 

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2020.4.13 夏野菜の本格的植え込み始まる

一月からハウス内の育苗用トレイに種を蒔いて、ポットに揚げ、踏み込み堆肥の

上で育ててきた夏野菜の第一陣から定植が始まった。

トマト類・ピーマン・パプリカ・とうがらし類・茄子類など。
例年であれば、4月初旬、畑に定植し、4~5月の春の暖かさで根を張らせ、

6月の梅雨時期に一気に枝を広げ、7月初旬頃からぼちぼちと実を成らせ始める。

本格的出荷は7月後半から8月の盛夏になる筈である。日本の四季のサイクルは

旬野菜の生育を促してくれていた。

唯、最近の数年間は、日本の四季が壊れてきており、雨期と乾期のサイクルが

巡り始めており、年によって出来不出来が激しくなり始めている。今後、

自然環境の中で育てる露地栽培はリスクも大きく、その栽培に経験に基づく勘が

必要なこともあり、露地栽培農家が激減している。

露地栽培は栽培ノウハウや経験・知識がものを言う。さらには、毎年変化し続け
ている気候変動が露地栽培の難しさを加速させている。
そのため、管理し易い施設園芸が主流となっており、季節感の乏しい促成栽培

抑制栽培などのハウス栽培野菜が市場を占めている。
現代農業は、露地で美味しく育つはずの「旬菜」と言う言葉が失われつつある。

 

 

さらに農業者を育てて行くには現在の世相は難しくなってきたことを実感して

いる。特に、当農園のような低窒素栽培(自然栽培)の場合、成長が遅く、

目まぐるしい自然条件の変化に晒される。味香り豊かな(繊維を感じさせない)

歯切れの良い本来の有機野菜は厳しい自然環境に晒されることでより美味しく、

栄養価も豊かになる。そのことを、どれだけの消費者が理解してくれるだろうか。

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「美味しい野菜は栄養価がある」このことを知っておられる消費者はどれくらいいるのだろう。

化学物質を排した土壌から生まれてくる野菜達は、人の体を癒やしてくれる。腸内細菌は活性化し、

化学物質等の異物の入っていない野菜は免疫力を確実に付けてくれる。

そのことは知らない消費者でも何となく自然栽培は良さそうと感じておられるのだろう。

コロナショックに見舞われた消費者の方々は、普段はやや高いと感じている野菜でも本能的にそれを

求めようとしているのかもしれない。

 

兎にも角にも、今年も穏やかな四季の国であってくれることを祈っている。
古来より、農民は天の神に、五穀豊穣を願い、穏やかな四季が訪れてくれる

ように神社に祈りを捧げてきたものだ。残念ながら農園主は信心も薄く、徳も薄く

神社に祈ることはしないが、自然の神には、畏敬の念を抱いており、一所懸命に

努力している全国の農家が良い年であることを願っている。

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さて、夏野菜の植え込みである。
今年から佐藤自然農園にて学んできた竹内さんが、いよいよ、独立農家として

一人立ちすることになった。それも夏野菜のメイン圃場である5・6番(約4反)

を担当することにした。
この圃場は、草木堆肥歴7年目を迎える。この地域でも高地にあり、水捌けの

良い畑である。
そのため、水を好まない南米原産のトマトを植え込む。そして、比較的水分を

好まないピーマン・パプリカ・万願寺とうがらしなどが夏場のメイン野菜となる。

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茄子類・胡瓜類は、水分を好むため、佐藤自然農園の圃場である乾燥し難い

2・4番の畑に植え込む。

草木堆肥の特性は低窒素であり、次々と成って行く実物に対応するために、

畝全体に草木堆肥・焼き灰を撒き、鋤き込む。定植する際に、先肥と称して、

スコップ二杯ほどの草木堆肥を遣り、そこに直植えする。

根を充分に張りだした頃に草木堆肥の肥料効果が出始め、枝を茂らせる。
一番果が付き始めた頃、追肥と称して草木堆肥を畝間に施る。丁度この頃、

梅雨が終わりかけで、畝上の土が長雨で洗い流され、畝下に落ちてしまって

いる。
土寄せと言って、畝下を深く揚げることにより、根に酸素が供給され、木は

活性化し始める。これを中耕と言う。
これが夏野菜の生長を促す作業であり、梅雨の長雨によって堅くなった土を

ほぐし、野菜が呼吸しやすくしてやらねば、野菜の生育は止まってしまう。

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長い梅雨時期に降り続いた雨のため、畝の土は流され、畝が無くなっている。

梅雨が終わるか終わらない時季に草木堆肥を畝上に施肥し、畝下を鍬で埋まった土を深く掘り上げる。

 

ミネラル分及び炭素が豊富な草木堆肥は、そこに棲み着く微生物や放線菌によっ

て分解され、土を育ててくれる。その土の力によって低窒素栽培でも野菜が育つ。

それは草木堆肥にしか達成できない美味しい野菜の秘密なのです。

その秘密は先人達の叡智でもある。

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3番の畑に番の 自生したジャーマンカモミール。野生の生命力の強さを感じる。

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.22(水曜日)晴れ、最高温度17度、最低温度9度

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             由布市庄内の小麦畑にて、

除草剤を使わないため、畝間は大きく空けて、雑草に覆われるように麦が育っている

出穂寸前です。

 

2020.4.9 俵万智さんがやってきた その三日目

今日は最終日、連日の取材にいささか気疲れしているが、俵さんも含めて取材

スタッフ達がこの番組は良い番組ですと声を揃えて語っていた。彼らの熱意に

乗せられていつも以上に熱く語っている自分がいた。霧島酒造の試み(地域伝統

の技を伝える)に感謝している。
朝から、剪定枝の破砕作業・葉っぱと小枝の選別作業・草木堆肥作りなど、

農園の日常の撮影を行った。

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取材スタッフからの質問攻めとなり、微生物・放線菌の働きとは?草木堆肥と

ミネラル分の関係は?何故草木灰を使うのか?土作りの団粒構造とは?野菜の

美味しさと栄養価の関係は?完熟野菜の仕組みとは?などなど、さながら理科

授業の屋外研修の様相を呈してきた。

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そもそもが草木堆肥を使った土作りやその野菜の特性などを語り始めると、

日本の農業の歴史から自然循環の理・微生物や放線菌の果たす役割・農産物の

栄養価とは何か・野菜の成長とその生理の仕組みなどこれだけで延々と10時間

ほどを語らなければならない。
さらには、むかし野菜の加工品のこと、お客様とのコミュニケーション方法の

こと、むかし農法の伝承や後継者育成のことなども織り込まなければならない。
4回に分けて放映するとは言え、わずか2分×4回で語ることなど到底できる訳け

ない。
FM放送の方は、15分×4回となり、俵さんとの対談と言う事であり、どのよう

になるのか。
語るほうも、取材・編集するほうも真剣勝負とならざるを得ない。

ようやくお昼のランチタイムとなり、焼き野菜・だんご汁・麦御飯と漬物・野菜

コロッケ・野菜饅頭などなど、俵さんや取材スタッフのお腹に次々と詰め込まれ

ていく。

こちらは、疲れて食べる気力も無くなっていた。

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午後は撮り残しの撮影や味噌作りのシーン、俵さんとの対談、むかし野菜の邑

ファミリーの集合写真、出穂した麦畑を疾走する子供たちのシーン、俵さんの

締めの言葉に思わず涙しているうちの奥さんなど、ようやく解放されたのが、

午後6時を回っていた。
残念なのは、俵さんの締めの言葉を聞き漏らしたことであり、放映の日まで待た

ねばならない。
彼女に聞くと、「佐藤さんから私は語らされていた」とおっしゃって頂いたこと

がせめてもの救い。
今まで多くの取材に応じてきましたが、これほど疲れたのは初めてで、それだけ

中身の濃い取材であり、撮影であった。
最後は、スタッフ全員で野菜の収穫を行い、袋一杯に詰め込んだ野菜達を抱えて

帰っていった。

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農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.15(水曜日)晴れ、最高温度18度、最低温度7度

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     むかし野菜の邑の仲間達、平野さんの自然農栽培の梨園にて

 

匠の会(霧島酒造主催)の撮影二日目。

俵万智さん他、取材陣一行は満開の梨園を訪れた。農薬も化学肥料もやらない

自然農栽培を続けている平野さんとその苦労話をしていた。彼は、農薬も肥大ホル

モン剤も使わず、梨とお米を作り続けている。私以上に頑固者である。

唯、時として、カメ虫の大量発生の年などは、ほとんど梨の収穫が無いこともある。

この自然栽培の梨は、余りにも美味しくて、農園の仲間達の心をしっかりと掴んで

いる。但し、余りにも気まぐれで、出荷量は少ない。正に奇跡の梨です。

俵さんも白い花の咲く梨園は初めてのようで、興味深く話を聞いていた。

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ルッコラの花。サラダセットには必ず入るハーブの一種。胡麻の味香りがし、10種類の野菜が入るサラダセットののアクセントとなっている。

 

2020.4.8 俵万智さんがやってきた その二日目

二日目はテレビ西日本のクルーにFM福岡のスタッフが本格的に合流。総勢9名となる。
放映される番組は霧島酒造(専務担当)の番組であり、地元九州の匠の技を伝承していくプロフェショナルな方々の考え方・生き方などを紹介する取組である。未だに試行錯誤を繰り返している農園であり、小さく中途半端な当農園が何故選ばれたか、おそらくは、こうであろうと勝手に推察している。
以前いきなり霧島酒造の専務一行が当農園を訪れてきたことがあった。
その際、専務さんには、このような話をした覚えがある。

 

「今では飛ぶ鳥を落とす勢いのある霧島酒造であり、地域産業のリーダーでもある。

霧島酒造さんは製造メーカーであり、その主力農産物は芋ですね。となれば、地域の農家と結びつき、連携して共に歩んでいかねばなりませんですね。今からの時代は、一人勝ちの時代は終わったと私は考えております。
どうか、地域農業を慈しんでやってください」とお願いしたことがあった。
さらに、「今の日本は、古き良きものを捨て新しいものを作り出そうとしています。果たしてそれで良いのでしょうか?技術革新は常にしていかねばなりませんが、長きに続いてきた伝統の技やそれを継承していく日本の財産でもある職人を捨てて行って良いものでしょうか?
長く続いたものの中には、価値のある本物もあります。芋焼酎などはまさにその古き技であり、本物なのでしょう。ですから、浮沈を繰り返しながらも、現在の消費者に受け入れられたと思います。
当農園の草木堆肥を使った自然循環農業も千数百年間続いてきた本物の有機農業なのです。
私はこの農法を使って、新たな農業と言う産業を地域に興していきたいと願っておりますよ」などのお話をしたように記憶している。
その話を覚えていて今回のような取材があったのではないでしょうか。

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天原木椎茸栽培農家である田北さんの椎茸の圃場。むかし野菜の仲間の一人です。

木訥(ぼくとつ)で、うまく表現できず、俵さんの質問に時折、助け船を出す。

唯、確固たる信念を持ち、ハウス栽培が主流となっている原木椎茸の中で、あくまでも

露天栽培を行っている。彼は私が開催した農業セミナーの受講生の一人であり、今日も

「先生」と言う表現が出る。その度、私からたしなめられている。「佐藤さんです」と。

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山奥の圃場に向かうため、俵さん、軽トラに乗るの風景。ようやく彼女の素の顔が出てきた。

 

ともかく取材は二日目となり、今日のテーマは、野菜の収穫・選別・発送作業のこと、水曜日・日曜日に開催している農園直販所のこと、その合間に俵さんとの対談を挟む。
お昼は数種類の野菜が乗った農園ピザを焼き、スタッフ全員で軽く昼食。皆さん、わっと喜んでいたが、時間が無いので、すぐにお腹に詰め込み、早速に出発を促す。由布市庄内町に点在している農園の仲間達の圃場巡りと麦畑の取材となった。
由布市庄内町は典型的な中山間地であり、田園風景あり、里山ありで、その真ん中を由布川峡谷が割って入り、集落が里山に沿って点在している。
むかし野菜の邑の一員である完全自然農の梨園は、今、花盛り。次に訪れたのは、山間深くにクヌギのホダ木が並んでいる露天原木椎茸の圃場で、みんなで森林浴。
最後に佐藤自然農園の小麦畑の撮影を行った。撮影の最中、田園の真ん中を走る赤い電車が通る。
長閑な田園風景であるが、過疎の集落には、子供の声がしない。悲しい現実がある。
帰りに梨ソフトを皆さんにごちそうして、この日は現地解散となった。

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今では、農園の厄介者となってしまったジャーマンカモミールの花。

リンゴの香りが辺り一面の漂う。以前、注文でカモミールを植えたことがあった。

処が、それ以降毎年、あちこちで芽を吹き、かわいそうなので出来るだけ残している

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.8(水曜日)晴れ、最高温度18度、最低温度7度

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               インゲン豆の発芽の瞬間

 

新しい命が生まれる。いつもながら、この産みの苦しみを経て、生命が誕生する瞬間は愛おしく、そして神々しい。

思わず頑張れと声を掛けてやりたい衝動に駆られる。

よく見ると、雑草も芽吹いている。これも命なのですが、農家にとっては厄介者。

除草の手間が掛かる。自然の生存競争は、厳しい淘汰の中にありますね。

さらによく観察すると、畑の表面に小さな土塊が見えます。これが団粒構造に進化した

最高の土となります。

この団粒の中に水・空気・栄養分が綴じ込まれ、生命の営みには最高の条件を生んでくれます。この畑は草木堆肥歴18年目の圃場です。深さ50~60㎝まで、団粒化が進んでおります。この土によって美味しい野菜ができるのです。

 

2020.4.7 俵万智さんがやってきた。その一日目

テレビ西日本FM福岡の両ディレクターが総勢9名で、詩人の俵万智さんを連れて、当農園を訪れてきた。霧島酒造の「匠の会」のメンバーにご指名頂いているためです。
6月に4週連続してテレビ放映及びラジオ放送されるとのこと。そのため、取材期間は3日間と長い。
御担当者達は仕事とは言え、ご苦労なことです。
農園も取材のためだけに3日間を棒に振ることはできない。農園の日常をありのままにお伝え頂くことにし、畑作り・夏野菜の定植作業・収穫発送作業・味噌作り・漬物の仕作業に、俵さんも参加して、昼食は農園ランチをスタッフ達と一緒に摂って頂く。
唯、取材スタッフを含めると20人近くの食事となり、女性陣には迷惑を掛けることになる。

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ハンサムレッドと言うレタスです。まるでお花畑にいるようです。野菜の造形美も農業の一つの楽しみなのです。

 

初日の午前中から、朝からトマト・ピーマン・万願寺トウガラシ・パプリカの夏野菜の植え込み、牛蒡の種蒔き、玉葱の収穫作業をこなし、午後4時頃、俵さんの農園散策となった。
その夜は、当農園の野菜が主力となっている大分市の「然」と言う自然食レストランで、皆さん、会食をしていただいた。
後に感想をお聞きしたところ、むかし野菜のフルコースに感動していただき、「今まで食べてきた野菜は一体何だったのだろう」とのこと。
シェフのお話をお聞きしましたか?と質問したところ、「この野菜は何も手を加えないことです」と一言言われましたと。相変わらず無口の料理人です。
私はこのようにスタッフの方々にお伝えしました。「通常、料理の味付けや手を加えることが自分の腕だと思い込んでおられる料理人が多い中、彼は、野菜の素材の味香りや食感を如何に活かしていくかと言う事を知っている数少ない料理人なのです。野菜の熱の加え方、切り方など彼独自の手を加えており、その微妙な手の加え方が一流の証なのです」と・・・皆さん、静かに納得の表情を浮かべていた。

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               農園直売所にて、

万智さんです。初日はいささかお疲れ気味で、前日夜中まで取材番組の、収録があり

きつそうでした。これから三日間お付き合いが始まります。

彼女の素が出てきた時に、どのような反応が出るか、それも一つの楽しみです。

 

 

 

 

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.1(水曜日)終日雨、最高温度13度、最低温度7度

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              庭のしだれ桃に花が咲き始めた

 

今日から4月、春本番というのに、雨がしとしと振り、花寒の季節。

雨が降ろうと、出荷日は、野菜の収穫をしなければならない。カッパを着用して

凍える手で収穫をするのは、いささか辛い。

雨の日にも拘わらず、農園直売所にはちらほらと、固定客が見えてくれている。

水曜日の直売所は、菓子類はあまり無い。むしろ野菜を目当てにして、訪れてくれる

固定客に支えられている。ありがたいことです。

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暖冬の気候に誘われて、葉野菜や蕪類が一斉に莟立ちを始めて、仕方なく、葉野菜の替わりに青梗菜

小松菜・蕪などの花芽を出荷している。

これもいつもの農園の風景。子孫を残そうと、花芽は栄養価を一杯溜め込んで、甘く美味しくなる。

 

2020.3.27 端境期がやってくる

スーパーに行けば、季節とは関係なく様々な野菜が並んでいる。ハウス栽培全盛の時代を象徴している。
さらに、日本列島は南北に長い島国であり、鹿児島から北海道と野菜の出来る時季には幅がある。
当農園は全国の消費者へ草木堆肥により自ら育てた野菜を直送している。他から農法の異なった、あるいは、ハウス栽培などの野菜を仕入れてくることはしていない。
しかしながら、困ったことに露地栽培では、一年のうち、大きく二回の端境期が存在している。
春野菜から夏野菜へ移る時季、夏野菜から秋冬野菜へ移る時季の二回である。
うちの野菜を心待ちにしている消費者に「今は端境期ですから野菜が無いのです」とは言えない。

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今年の1月頃から順次種を蒔いて育苗中の夏野菜達。踏み込み堆肥の熱を利用して根を発育させている。彼らは、戻り寒の後、4月上旬頃から一斉に定植作業に入る。

 

地球が温暖化の方向へ向かっており、夏野菜が長く続く気候環境があり、夏野菜から秋野菜へと切り替わる間に秋野菜を育てることは比較的容易に出来るため、それほど苦労せずとも何とか野菜を繋いで行くことは可能である。
課題となるのは、春野菜から夏野菜へ移り変わる端境期に於いて、野菜を如何にして繋いで行くかと言うことにある。
夏野菜は、暖かいからと言って早めに種を蒔き、露地へ定植しても遅霜や寒の戻りなどで、全滅の可能性が高い。そのため、露地栽培しか行っていない当農園としては、6月前後に出荷できる繋ぎ野菜の植え込みに最も神経を使い、毎年大いに頭を悩ませている。
ハウス栽培を行えば、もっと楽に早く野菜が出来るのに、と思われる方も多いかとは思うが、同じ草木堆肥を使っても、露地栽培ほどの栄養価と美味しさが出せないのです。

キャベツ・ブロッコリー類は3月下旬頃に育苗ハウス内で種を蒔くと、5月末頃から6月に掛けて、出荷が見込めるが、蒸れや長雨に弱く、腐れや破球を起こす。ほうれん草はかろうじて生き残れる。
蕪類は線虫の餌食となり易く、割れが発生するし、莟立ちも起し易い。
そのため、晩春野菜(5~6月の初夏野菜)はリスクの塊となる。
唯、これらの春野菜が無いと、他では穴埋めの野菜の種類が足りない。
そのため、当農園では、リスク覚悟で端境期へ向けてこれらを捨て野菜として種を蒔く。捨て野菜となるかもしれない野菜達の頑張りに期待するしかないのです。

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育苗中のキャベツなど、彼らは5月下旬頃から出荷予定としている捨て野菜です。

この以前に圃場には、5月出荷予定にしている5~6百本ほどのキャベツブロッコリーが植えられている。

 

兎にも角にも、露地栽培農園からの直野菜を農園の仲間達(お客様)に届け続けることは、如何に端境期を作らないかに掛かって来る。他の農家からは、そんなの無理だ、とよく言われている。
今日も数年来むかし野菜を慈しんで頂いている関東のお客様から電話が入る。
コロナウィルスを脅威に感じておられ、うちの野菜に助けられているとのこと。「頑張って下さい!」のエールを頂いた。
話は止まらず、国民軽視の時の政権や政策の危うさや、時代の風潮に逆らって筋を通した生き方や健全な食の追求をし続けている姿勢のことまでに話が及び、遠い地にいるにも拘わらず、考え方や生き方が共有出来ていることの喜びが伝わってきた。
むかし野菜の邑は、良いお客様というか仲間に囲まれていることに、いつもながら思い知らされる。

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大人達の葛藤や思いは別にして、屈託のない子供達の笑顔には、救いがある。

 

この時期、堆肥作りに欠かせない草が手に入り難く、その後、日が暮れるまで、畑の除草作業に勤しむ。
除草し終えた草は集めて軽トラックで堆肥場まで運んで一日が終わった。
草も少し溜ってきた明日は堆肥作りが出来る。夏野菜を定植するまで残り二週間を切っていた。

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.3.25(水曜日)晴れ、最高温度16度、最低温度4度

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               育苗中の夏野菜達

 

4.10日頃に定植予定の夏野菜達。ビニールハウス(育苗用)内に草木堆肥を重ね、踏み込み堆肥ベットを作り、その微生物達の発酵熱を利用して根を発育させている。

これは第一陣の夏野菜達(トマト・茄子・ピーマン・万願寺トウガラシなど)であり、

第二陣が胡瓜・南瓜・ズッキーニ・瓜などであり、やはり温室内で育苗中。

 

2020.3.21 微生物の話し

この所、毎日、子供達の声が農園に響いている。コロナウィルスによる学校閉鎖のためである。農園唯一の畳の部屋に押し込められてはいるが、流石にじっと我慢などはしておれない。
農作業の合間に、子供達の相手をしてやらねば時間が潰せない。
うちの孫達は幸せだ。他のご家庭では、預けられるところも無く、親御さん達にも子供さんにもストレスが溜まっている筈。

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今日、子供達は朝から大活躍。午前中は、ハウス内で育苗トレイの中に春・夏野菜の種蒔き、ポット揚げなどを行い、午後からは漬け物用の芥子菜の収穫、3番の畑の除草作業、夕方6時頃無事終了。お疲れ様でした。子供達の手にはしっかりとバイト代が握られている。雑菌の中で育つ子供は逞しいのです。


農園の取引先である飲食店も閉店したり、閑古鳥が鳴き、毎週お送りしている野菜の量を半減させて、急場を凌いでいる。
日本でも、徐々に感染リスクは拡がり、感染経路が判明しない感染者が増えている。
症状の出ていない保菌者は、陽性反応を受けている方の10倍以上はいるはずであり、このままでは、個々の生活も保てなくなってしまうため、感染を恐れていつまでも、経済活動をストップしているわけにも行かなくなるだろう。

当農園は、開園以来、微生物達と真っ向から向き合ってきた。と言うより、草木堆肥作りと共に共存してきた。うちの農産物があるのもかれら微生物達のお陰である。


そこで微生物を改めて調べてみた。
やや専門的な事で申し訳ないが、微生物は菌類・細菌類・ウィルスなどの総称である。
その中にこの微生物の存在が無ければ、この世界は死骸だらけになっている。微生物は概ね、有機物を餌として増殖している。
菌類(キノコ・カビ・酵母など)は胞子で増えており、人類はこの菌のおかげで生きられている。
パン・チーズ・味噌・醤油・酒・酢・漬物など様々な加工品となって、我々はその恩恵をも受け続けている。
細菌類は、(ウィルスも含めて)良性・悪性と様々な微生物が存在している。
忘れてならないのは、腸内細菌である。人の免疫細胞(病原菌などと闘ってくれる)を守ってくれているのもこの腸内細菌である。
一種類の細菌が増殖し始めると、自然界では、この増殖現象を抑える作用が様々な種類の細菌類によって行われようとする自然循環の仕組みがある。正しく自然の(神の領域)淘汰若しくは浄化機能と考えざるを得ない。広義では「人」もその微生物の仲間の一つに過ぎない。
自然界の野山と同じというわけにはいかないが、人の腸内も様々な細菌類により自然淘汰の機能を果たし、命を守ってくれている。そのため、当農園はむかしながらの発酵食品である漬物・味噌作りに力を入れている。

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              高菜の本漬け作業中

漬物は無限大の微生物・菌類の集まりです。漬け込んでいる中で、発酵していき、悪性菌を排除していく作用が働く。そのために、古来より農家において様々な工夫が為されている。乳酸菌と塩とのバランスや手間を掛けることによって、オー157もサルモネラ菌も繁殖できない。正しく小宇宙の微生物達のドラマがある。

 

我々人は生きているのでは無く、自然界の仕組みによって生かされているのです。

残念ながら科学はその神秘の仕組みを未だ捉え切れていない。

 

ウィルスや癌などは、人にとって異物です。その異物が体内に入ってくると、免疫細胞が動き出し、抗体を作ります。抗体には二種類あり、「異物を認識して結合して排除する」ものと、「免疫細胞を活性化させ異物を排除する」ものがあります。
コロナウィルスが体内に入ってきても、発症しない人は、おそらくは、免疫力が強く、抗体が正常に機能して、発症を抑えるのではないかと思われます。


元来が人は自然治癒能力を持っている。その自ら治癒させる能力は、健全な食生活と、健全な農産物から来るのではないかと考えられます。
その意味では、ミネラル分・糖質・ビタミンに富んだ農産物を常日頃から食している人は強い免疫力を持っていることになります。
微生物や菌を排除することではなく、腸内環境を常に健全にする食べ物(乳酸菌などの発酵食品など)もより多く摂取し、体内の自然浄化機能を強くして行くことが重要ではないでしょうか。

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農業は現在の政権によって、大きく損なわれている。それでも農業に掛けていこうとする若者達も居る。彼らにはいつもこう言っている。やがて見ておれ!の反骨精神と熱意、そして学ぼうとする謙虚さが必要だと・・・何処やらの首相達や官僚達にその謙虚さが少しでもあれば、もっと国民は幸せになれる。

 

物事の上っ面しか見ようとしない、あるいは、自己のことしか気に掛けない風潮、悪いことは悪いと言えない、見て見ぬ振りをする忖度がはびこるこの時代、人はごまかせても、自然界は決して容赦してはくれない。
亡くなった方や苦しまれておられる方々には申し訳ないが、これら突然に現れるウィルスなどは、自然界からの警告なのかもしれない。