農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.22(水曜日)晴れ、最高温度17度、最低温度9度

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             由布市庄内の小麦畑にて、

除草剤を使わないため、畝間は大きく空けて、雑草に覆われるように麦が育っている

出穂寸前です。

 

2020.4.9 俵万智さんがやってきた その三日目

今日は最終日、連日の取材にいささか気疲れしているが、俵さんも含めて取材

スタッフ達がこの番組は良い番組ですと声を揃えて語っていた。彼らの熱意に

乗せられていつも以上に熱く語っている自分がいた。霧島酒造の試み(地域伝統

の技を伝える)に感謝している。
朝から、剪定枝の破砕作業・葉っぱと小枝の選別作業・草木堆肥作りなど、

農園の日常の撮影を行った。

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取材スタッフからの質問攻めとなり、微生物・放線菌の働きとは?草木堆肥と

ミネラル分の関係は?何故草木灰を使うのか?土作りの団粒構造とは?野菜の

美味しさと栄養価の関係は?完熟野菜の仕組みとは?などなど、さながら理科

授業の屋外研修の様相を呈してきた。

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そもそもが草木堆肥を使った土作りやその野菜の特性などを語り始めると、

日本の農業の歴史から自然循環の理・微生物や放線菌の果たす役割・農産物の

栄養価とは何か・野菜の成長とその生理の仕組みなどこれだけで延々と10時間

ほどを語らなければならない。
さらには、むかし野菜の加工品のこと、お客様とのコミュニケーション方法の

こと、むかし農法の伝承や後継者育成のことなども織り込まなければならない。
4回に分けて放映するとは言え、わずか2分×4回で語ることなど到底できる訳け

ない。
FM放送の方は、15分×4回となり、俵さんとの対談と言う事であり、どのよう

になるのか。
語るほうも、取材・編集するほうも真剣勝負とならざるを得ない。

ようやくお昼のランチタイムとなり、焼き野菜・だんご汁・麦御飯と漬物・野菜

コロッケ・野菜饅頭などなど、俵さんや取材スタッフのお腹に次々と詰め込まれ

ていく。

こちらは、疲れて食べる気力も無くなっていた。

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午後は撮り残しの撮影や味噌作りのシーン、俵さんとの対談、むかし野菜の邑

ファミリーの集合写真、出穂した麦畑を疾走する子供たちのシーン、俵さんの

締めの言葉に思わず涙しているうちの奥さんなど、ようやく解放されたのが、

午後6時を回っていた。
残念なのは、俵さんの締めの言葉を聞き漏らしたことであり、放映の日まで待た

ねばならない。
彼女に聞くと、「佐藤さんから私は語らされていた」とおっしゃって頂いたこと

がせめてもの救い。
今まで多くの取材に応じてきましたが、これほど疲れたのは初めてで、それだけ

中身の濃い取材であり、撮影であった。
最後は、スタッフ全員で野菜の収穫を行い、袋一杯に詰め込んだ野菜達を抱えて

帰っていった。

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農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.15(水曜日)晴れ、最高温度18度、最低温度7度

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     むかし野菜の邑の仲間達、平野さんの自然農栽培の梨園にて

 

匠の会(霧島酒造主催)の撮影二日目。

俵万智さん他、取材陣一行は満開の梨園を訪れた。農薬も化学肥料もやらない

自然農栽培を続けている平野さんとその苦労話をしていた。彼は、農薬も肥大ホル

モン剤も使わず、梨とお米を作り続けている。私以上に頑固者である。

唯、時として、カメ虫の大量発生の年などは、ほとんど梨の収穫が無いこともある。

この自然栽培の梨は、余りにも美味しくて、農園の仲間達の心をしっかりと掴んで

いる。但し、余りにも気まぐれで、出荷量は少ない。正に奇跡の梨です。

俵さんも白い花の咲く梨園は初めてのようで、興味深く話を聞いていた。

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ルッコラの花。サラダセットには必ず入るハーブの一種。胡麻の味香りがし、10種類の野菜が入るサラダセットののアクセントとなっている。

 

2020.4.8 俵万智さんがやってきた その二日目

二日目はテレビ西日本のクルーにFM福岡のスタッフが本格的に合流。総勢9名となる。
放映される番組は霧島酒造(専務担当)の番組であり、地元九州の匠の技を伝承していくプロフェショナルな方々の考え方・生き方などを紹介する取組である。未だに試行錯誤を繰り返している農園であり、小さく中途半端な当農園が何故選ばれたか、おそらくは、こうであろうと勝手に推察している。
以前いきなり霧島酒造の専務一行が当農園を訪れてきたことがあった。
その際、専務さんには、このような話をした覚えがある。

 

「今では飛ぶ鳥を落とす勢いのある霧島酒造であり、地域産業のリーダーでもある。

霧島酒造さんは製造メーカーであり、その主力農産物は芋ですね。となれば、地域の農家と結びつき、連携して共に歩んでいかねばなりませんですね。今からの時代は、一人勝ちの時代は終わったと私は考えております。
どうか、地域農業を慈しんでやってください」とお願いしたことがあった。
さらに、「今の日本は、古き良きものを捨て新しいものを作り出そうとしています。果たしてそれで良いのでしょうか?技術革新は常にしていかねばなりませんが、長きに続いてきた伝統の技やそれを継承していく日本の財産でもある職人を捨てて行って良いものでしょうか?
長く続いたものの中には、価値のある本物もあります。芋焼酎などはまさにその古き技であり、本物なのでしょう。ですから、浮沈を繰り返しながらも、現在の消費者に受け入れられたと思います。
当農園の草木堆肥を使った自然循環農業も千数百年間続いてきた本物の有機農業なのです。
私はこの農法を使って、新たな農業と言う産業を地域に興していきたいと願っておりますよ」などのお話をしたように記憶している。
その話を覚えていて今回のような取材があったのではないでしょうか。

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天原木椎茸栽培農家である田北さんの椎茸の圃場。むかし野菜の仲間の一人です。

木訥(ぼくとつ)で、うまく表現できず、俵さんの質問に時折、助け船を出す。

唯、確固たる信念を持ち、ハウス栽培が主流となっている原木椎茸の中で、あくまでも

露天栽培を行っている。彼は私が開催した農業セミナーの受講生の一人であり、今日も

「先生」と言う表現が出る。その度、私からたしなめられている。「佐藤さんです」と。

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山奥の圃場に向かうため、俵さん、軽トラに乗るの風景。ようやく彼女の素の顔が出てきた。

 

ともかく取材は二日目となり、今日のテーマは、野菜の収穫・選別・発送作業のこと、水曜日・日曜日に開催している農園直販所のこと、その合間に俵さんとの対談を挟む。
お昼は数種類の野菜が乗った農園ピザを焼き、スタッフ全員で軽く昼食。皆さん、わっと喜んでいたが、時間が無いので、すぐにお腹に詰め込み、早速に出発を促す。由布市庄内町に点在している農園の仲間達の圃場巡りと麦畑の取材となった。
由布市庄内町は典型的な中山間地であり、田園風景あり、里山ありで、その真ん中を由布川峡谷が割って入り、集落が里山に沿って点在している。
むかし野菜の邑の一員である完全自然農の梨園は、今、花盛り。次に訪れたのは、山間深くにクヌギのホダ木が並んでいる露天原木椎茸の圃場で、みんなで森林浴。
最後に佐藤自然農園の小麦畑の撮影を行った。撮影の最中、田園の真ん中を走る赤い電車が通る。
長閑な田園風景であるが、過疎の集落には、子供の声がしない。悲しい現実がある。
帰りに梨ソフトを皆さんにごちそうして、この日は現地解散となった。

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今では、農園の厄介者となってしまったジャーマンカモミールの花。

リンゴの香りが辺り一面の漂う。以前、注文でカモミールを植えたことがあった。

処が、それ以降毎年、あちこちで芽を吹き、かわいそうなので出来るだけ残している

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.8(水曜日)晴れ、最高温度18度、最低温度7度

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               インゲン豆の発芽の瞬間

 

新しい命が生まれる。いつもながら、この産みの苦しみを経て、生命が誕生する瞬間は愛おしく、そして神々しい。

思わず頑張れと声を掛けてやりたい衝動に駆られる。

よく見ると、雑草も芽吹いている。これも命なのですが、農家にとっては厄介者。

除草の手間が掛かる。自然の生存競争は、厳しい淘汰の中にありますね。

さらによく観察すると、畑の表面に小さな土塊が見えます。これが団粒構造に進化した

最高の土となります。

この団粒の中に水・空気・栄養分が綴じ込まれ、生命の営みには最高の条件を生んでくれます。この畑は草木堆肥歴18年目の圃場です。深さ50~60㎝まで、団粒化が進んでおります。この土によって美味しい野菜ができるのです。

 

2020.4.7 俵万智さんがやってきた。その一日目

テレビ西日本FM福岡の両ディレクターが総勢9名で、詩人の俵万智さんを連れて、当農園を訪れてきた。霧島酒造の「匠の会」のメンバーにご指名頂いているためです。
6月に4週連続してテレビ放映及びラジオ放送されるとのこと。そのため、取材期間は3日間と長い。
御担当者達は仕事とは言え、ご苦労なことです。
農園も取材のためだけに3日間を棒に振ることはできない。農園の日常をありのままにお伝え頂くことにし、畑作り・夏野菜の定植作業・収穫発送作業・味噌作り・漬物の仕作業に、俵さんも参加して、昼食は農園ランチをスタッフ達と一緒に摂って頂く。
唯、取材スタッフを含めると20人近くの食事となり、女性陣には迷惑を掛けることになる。

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ハンサムレッドと言うレタスです。まるでお花畑にいるようです。野菜の造形美も農業の一つの楽しみなのです。

 

初日の午前中から、朝からトマト・ピーマン・万願寺トウガラシ・パプリカの夏野菜の植え込み、牛蒡の種蒔き、玉葱の収穫作業をこなし、午後4時頃、俵さんの農園散策となった。
その夜は、当農園の野菜が主力となっている大分市の「然」と言う自然食レストランで、皆さん、会食をしていただいた。
後に感想をお聞きしたところ、むかし野菜のフルコースに感動していただき、「今まで食べてきた野菜は一体何だったのだろう」とのこと。
シェフのお話をお聞きしましたか?と質問したところ、「この野菜は何も手を加えないことです」と一言言われましたと。相変わらず無口の料理人です。
私はこのようにスタッフの方々にお伝えしました。「通常、料理の味付けや手を加えることが自分の腕だと思い込んでおられる料理人が多い中、彼は、野菜の素材の味香りや食感を如何に活かしていくかと言う事を知っている数少ない料理人なのです。野菜の熱の加え方、切り方など彼独自の手を加えており、その微妙な手の加え方が一流の証なのです」と・・・皆さん、静かに納得の表情を浮かべていた。

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               農園直売所にて、

万智さんです。初日はいささかお疲れ気味で、前日夜中まで取材番組の、収録があり

きつそうでした。これから三日間お付き合いが始まります。

彼女の素が出てきた時に、どのような反応が出るか、それも一つの楽しみです。

 

 

 

 

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.4.1(水曜日)終日雨、最高温度13度、最低温度7度

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              庭のしだれ桃に花が咲き始めた

 

今日から4月、春本番というのに、雨がしとしと振り、花寒の季節。

雨が降ろうと、出荷日は、野菜の収穫をしなければならない。カッパを着用して

凍える手で収穫をするのは、いささか辛い。

雨の日にも拘わらず、農園直売所にはちらほらと、固定客が見えてくれている。

水曜日の直売所は、菓子類はあまり無い。むしろ野菜を目当てにして、訪れてくれる

固定客に支えられている。ありがたいことです。

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暖冬の気候に誘われて、葉野菜や蕪類が一斉に莟立ちを始めて、仕方なく、葉野菜の替わりに青梗菜

小松菜・蕪などの花芽を出荷している。

これもいつもの農園の風景。子孫を残そうと、花芽は栄養価を一杯溜め込んで、甘く美味しくなる。

 

2020.3.27 端境期がやってくる

スーパーに行けば、季節とは関係なく様々な野菜が並んでいる。ハウス栽培全盛の時代を象徴している。
さらに、日本列島は南北に長い島国であり、鹿児島から北海道と野菜の出来る時季には幅がある。
当農園は全国の消費者へ草木堆肥により自ら育てた野菜を直送している。他から農法の異なった、あるいは、ハウス栽培などの野菜を仕入れてくることはしていない。
しかしながら、困ったことに露地栽培では、一年のうち、大きく二回の端境期が存在している。
春野菜から夏野菜へ移る時季、夏野菜から秋冬野菜へ移る時季の二回である。
うちの野菜を心待ちにしている消費者に「今は端境期ですから野菜が無いのです」とは言えない。

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今年の1月頃から順次種を蒔いて育苗中の夏野菜達。踏み込み堆肥の熱を利用して根を発育させている。彼らは、戻り寒の後、4月上旬頃から一斉に定植作業に入る。

 

地球が温暖化の方向へ向かっており、夏野菜が長く続く気候環境があり、夏野菜から秋野菜へと切り替わる間に秋野菜を育てることは比較的容易に出来るため、それほど苦労せずとも何とか野菜を繋いで行くことは可能である。
課題となるのは、春野菜から夏野菜へ移り変わる端境期に於いて、野菜を如何にして繋いで行くかと言うことにある。
夏野菜は、暖かいからと言って早めに種を蒔き、露地へ定植しても遅霜や寒の戻りなどで、全滅の可能性が高い。そのため、露地栽培しか行っていない当農園としては、6月前後に出荷できる繋ぎ野菜の植え込みに最も神経を使い、毎年大いに頭を悩ませている。
ハウス栽培を行えば、もっと楽に早く野菜が出来るのに、と思われる方も多いかとは思うが、同じ草木堆肥を使っても、露地栽培ほどの栄養価と美味しさが出せないのです。

キャベツ・ブロッコリー類は3月下旬頃に育苗ハウス内で種を蒔くと、5月末頃から6月に掛けて、出荷が見込めるが、蒸れや長雨に弱く、腐れや破球を起こす。ほうれん草はかろうじて生き残れる。
蕪類は線虫の餌食となり易く、割れが発生するし、莟立ちも起し易い。
そのため、晩春野菜(5~6月の初夏野菜)はリスクの塊となる。
唯、これらの春野菜が無いと、他では穴埋めの野菜の種類が足りない。
そのため、当農園では、リスク覚悟で端境期へ向けてこれらを捨て野菜として種を蒔く。捨て野菜となるかもしれない野菜達の頑張りに期待するしかないのです。

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育苗中のキャベツなど、彼らは5月下旬頃から出荷予定としている捨て野菜です。

この以前に圃場には、5月出荷予定にしている5~6百本ほどのキャベツブロッコリーが植えられている。

 

兎にも角にも、露地栽培農園からの直野菜を農園の仲間達(お客様)に届け続けることは、如何に端境期を作らないかに掛かって来る。他の農家からは、そんなの無理だ、とよく言われている。
今日も数年来むかし野菜を慈しんで頂いている関東のお客様から電話が入る。
コロナウィルスを脅威に感じておられ、うちの野菜に助けられているとのこと。「頑張って下さい!」のエールを頂いた。
話は止まらず、国民軽視の時の政権や政策の危うさや、時代の風潮に逆らって筋を通した生き方や健全な食の追求をし続けている姿勢のことまでに話が及び、遠い地にいるにも拘わらず、考え方や生き方が共有出来ていることの喜びが伝わってきた。
むかし野菜の邑は、良いお客様というか仲間に囲まれていることに、いつもながら思い知らされる。

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大人達の葛藤や思いは別にして、屈託のない子供達の笑顔には、救いがある。

 

この時期、堆肥作りに欠かせない草が手に入り難く、その後、日が暮れるまで、畑の除草作業に勤しむ。
除草し終えた草は集めて軽トラックで堆肥場まで運んで一日が終わった。
草も少し溜ってきた明日は堆肥作りが出来る。夏野菜を定植するまで残り二週間を切っていた。

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.3.25(水曜日)晴れ、最高温度16度、最低温度4度

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               育苗中の夏野菜達

 

4.10日頃に定植予定の夏野菜達。ビニールハウス(育苗用)内に草木堆肥を重ね、踏み込み堆肥ベットを作り、その微生物達の発酵熱を利用して根を発育させている。

これは第一陣の夏野菜達(トマト・茄子・ピーマン・万願寺トウガラシなど)であり、

第二陣が胡瓜・南瓜・ズッキーニ・瓜などであり、やはり温室内で育苗中。

 

2020.3.21 微生物の話し

この所、毎日、子供達の声が農園に響いている。コロナウィルスによる学校閉鎖のためである。農園唯一の畳の部屋に押し込められてはいるが、流石にじっと我慢などはしておれない。
農作業の合間に、子供達の相手をしてやらねば時間が潰せない。
うちの孫達は幸せだ。他のご家庭では、預けられるところも無く、親御さん達にも子供さんにもストレスが溜まっている筈。

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今日、子供達は朝から大活躍。午前中は、ハウス内で育苗トレイの中に春・夏野菜の種蒔き、ポット揚げなどを行い、午後からは漬け物用の芥子菜の収穫、3番の畑の除草作業、夕方6時頃無事終了。お疲れ様でした。子供達の手にはしっかりとバイト代が握られている。雑菌の中で育つ子供は逞しいのです。


農園の取引先である飲食店も閉店したり、閑古鳥が鳴き、毎週お送りしている野菜の量を半減させて、急場を凌いでいる。
日本でも、徐々に感染リスクは拡がり、感染経路が判明しない感染者が増えている。
症状の出ていない保菌者は、陽性反応を受けている方の10倍以上はいるはずであり、このままでは、個々の生活も保てなくなってしまうため、感染を恐れていつまでも、経済活動をストップしているわけにも行かなくなるだろう。

当農園は、開園以来、微生物達と真っ向から向き合ってきた。と言うより、草木堆肥作りと共に共存してきた。うちの農産物があるのもかれら微生物達のお陰である。


そこで微生物を改めて調べてみた。
やや専門的な事で申し訳ないが、微生物は菌類・細菌類・ウィルスなどの総称である。
その中にこの微生物の存在が無ければ、この世界は死骸だらけになっている。微生物は概ね、有機物を餌として増殖している。
菌類(キノコ・カビ・酵母など)は胞子で増えており、人類はこの菌のおかげで生きられている。
パン・チーズ・味噌・醤油・酒・酢・漬物など様々な加工品となって、我々はその恩恵をも受け続けている。
細菌類は、(ウィルスも含めて)良性・悪性と様々な微生物が存在している。
忘れてならないのは、腸内細菌である。人の免疫細胞(病原菌などと闘ってくれる)を守ってくれているのもこの腸内細菌である。
一種類の細菌が増殖し始めると、自然界では、この増殖現象を抑える作用が様々な種類の細菌類によって行われようとする自然循環の仕組みがある。正しく自然の(神の領域)淘汰若しくは浄化機能と考えざるを得ない。広義では「人」もその微生物の仲間の一つに過ぎない。
自然界の野山と同じというわけにはいかないが、人の腸内も様々な細菌類により自然淘汰の機能を果たし、命を守ってくれている。そのため、当農園はむかしながらの発酵食品である漬物・味噌作りに力を入れている。

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              高菜の本漬け作業中

漬物は無限大の微生物・菌類の集まりです。漬け込んでいる中で、発酵していき、悪性菌を排除していく作用が働く。そのために、古来より農家において様々な工夫が為されている。乳酸菌と塩とのバランスや手間を掛けることによって、オー157もサルモネラ菌も繁殖できない。正しく小宇宙の微生物達のドラマがある。

 

我々人は生きているのでは無く、自然界の仕組みによって生かされているのです。

残念ながら科学はその神秘の仕組みを未だ捉え切れていない。

 

ウィルスや癌などは、人にとって異物です。その異物が体内に入ってくると、免疫細胞が動き出し、抗体を作ります。抗体には二種類あり、「異物を認識して結合して排除する」ものと、「免疫細胞を活性化させ異物を排除する」ものがあります。
コロナウィルスが体内に入ってきても、発症しない人は、おそらくは、免疫力が強く、抗体が正常に機能して、発症を抑えるのではないかと思われます。


元来が人は自然治癒能力を持っている。その自ら治癒させる能力は、健全な食生活と、健全な農産物から来るのではないかと考えられます。
その意味では、ミネラル分・糖質・ビタミンに富んだ農産物を常日頃から食している人は強い免疫力を持っていることになります。
微生物や菌を排除することではなく、腸内環境を常に健全にする食べ物(乳酸菌などの発酵食品など)もより多く摂取し、体内の自然浄化機能を強くして行くことが重要ではないでしょうか。

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農業は現在の政権によって、大きく損なわれている。それでも農業に掛けていこうとする若者達も居る。彼らにはいつもこう言っている。やがて見ておれ!の反骨精神と熱意、そして学ぼうとする謙虚さが必要だと・・・何処やらの首相達や官僚達にその謙虚さが少しでもあれば、もっと国民は幸せになれる。

 

物事の上っ面しか見ようとしない、あるいは、自己のことしか気に掛けない風潮、悪いことは悪いと言えない、見て見ぬ振りをする忖度がはびこるこの時代、人はごまかせても、自然界は決して容赦してはくれない。
亡くなった方や苦しまれておられる方々には申し訳ないが、これら突然に現れるウィルスなどは、自然界からの警告なのかもしれない。

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.3.18(水曜日)晴れ、最高温度15度、最低温度2度

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初春の農園は、うららかな天候に恵まれ、農作業も順調に進み、やや余裕が生まれている。唯、小松菜・青梗菜・蕪などのアブラナ科の野菜達は、一斉に花芽を持ち始め、

出荷を断念せざるを得なくなっている。農園はこれから花盛りとなる。

 

2020.3.11 突然の電話

農園は、今、菜の花・エンドウ豆・空豆などの花が春の風に揺られ、長閑な時間が流れている。
天気は目まぐるしく替わり、雨の合間に畝作りを行い、キャベツ・ブロッコリー・白菜などを定植したり・葉野菜・ほうれん草・蕪・人参などの種蒔きを行っている。
気温は暖冬の中でも、ようやく平年の気温に戻りつつあり、例年通り4月初旬の花冷えがいつもの通り訪れてくると予想したが、夏野菜の第三陣の種蒔き(胡瓜・ズッキーニ・南瓜)を迷った末に、いつもの季節よりやや早めに行った。(4月10日頃、寒の戻りがあり、暖かいからといって夏野菜を定植していると遅霜でやられてしまうことが多いのです)

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宮崎のKさんから久しぶりの電話が入った。Kさんは今から7年前、医者から悪性リンパの癌宣告を告げられ、ネットで探し、藁にも縋る思いで、当農園へ野菜の申し込みをしてこられた。
その際は、かなり深刻な状況で、こちらも当農園の野菜の特性(高ミネラル・ビタミン糖質などの栄養価に富んでいること)や野菜の調理の仕方(温野菜や油を絡めて食することなど)などの御助言を行った。
癌の進行を止めるには、健全で美味しい野菜を食べることによって自らの治癒能力を引き上げ、正常細胞の再生を促し、異常細胞を抑えることに賭けてみますかと申し上げた。
その後、お便りは無かったので、良い方向へ進んでいると農園主も喜んでいたのだが、もしや?との不安が頭をよぎる。
電話の内容は、今回のお願いは、急性の腸閉塞を患い入院をしなければならなくなり、しばらく野菜を止めて欲しいとのお話であり、悪性リンパ腫瘍も今では消えておりますとのこと。
思わず、良かったですねと言ってしまった。しまった!と思い、緊急手術を要する内容であり、「お大事に!」と言葉を掛けた。何という間の悪さか・・・
それでも、Kさんから、「今生きているのも農園の野菜のお陰です」と言う言葉に、そうですね!私達も含めてこの野菜達に感謝しなければいけませんですね、とお答えした。
このようなお客様も私の知る限りでは少なくともKさんを含めて4人居られる。
未だにご継続して野菜を取って頂いていると言うことは、この自然栽培の野菜の力によって命を支えられているのだろうと思っている。

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後藤君の畑(9番)に全員で畝作りを行っている処。

里芋・金時生姜の植え込み、露地ニラの株分けと植え替え作業を行っている。

一人農業では中々に作業が捗らないし、途中で心が折れてしまう。むかし野菜の邑では、月~金までは全員で農作業を行う。自分の畑でも無いのに、皆、黙々と相互に手伝い作業を行う「結いの仕組み」が出来ている。

 

近時、世界を席巻している通販会社アマゾンやゾゾタウンなどの所謂プラットフォームビジネスが曲がり角に来ているとの記事を読んだ。
その取扱商品に模造品がかなりな数混じり始めているとのこと、また、商品力と言うかブランド力のある会社から撤退を始めつつあると言った内容であった。(ナイキ・オンワードミキハウス等々)

ブランドとは、「品質」のことであり、変じて消費者からの「信用」を得ていると言う意味でもある。
中小メーカーは例え品質が優れていても知名度が無く、消費者からの信用を得ることは容易ではない。
アマゾンなどのプラットフォームを利用していかねば消費者とのコンタクトは難しい。
しかしながら、生産者が商品の品質を守り維持していくには、たゆまざる努力と研究開発が必要である。
そのためには、インセンティブや中間手数料を払うより、その分の手間やコストを品質の改善に力を注ぎたい筈である。
ナイキ・オンワードなど、販売の拡大より、商品の充実・品質の保持に重きを置いたと言う事であり、その行動を支持する消費者の支えがあることになる。このブランド力は生産者だけでは、到底作りえないし、維持継続も難しいのです。

当農園も開園以来、直接販売を行ってきた。「品質」には自信を持ってはいるが、お客様の信用を得るには、まだまだ長い時間が必要なのかもしれない。
そんな時、全面的に信頼をしていると言う宮崎のKさんのお電話は嬉しかった。
健全で美味しい商品作りに向けて改めて身の引き締まるものを感じた。

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農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.3.11(水曜日)晴れ、最高温度14度、最低温度5度

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              農園は、今、花盛り

4年前に植えた李(すもも)の木にびっしりと白い花が咲き始めた。

今年は、甘い李が皆様に届けられればと願っている。只、李の実が成る頃は梅雨時期に重なり、溶けてしまうこともある。天候次第となります。

 

2020.3.3  農園は託児所となった

この所、農園には子供達の声が充ち満ちている。親達は農作業や加工品作り、出荷作業に忙しく、構っては居られない。農園に設けた乳幼児待機室に孫達が集合させられ、

ほとんど丸一日を過ごしている。コロナウィルス対応による学童の休校によるものだ。
ジージ、暇」と言って相手をしてくれとせがむ孫達。農作業の合間に軽トラックの荷台に乗せ、畑を一周したり、タイヤショベルカーに乗せたりと、この処、ジージは中々に忙しい。

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暇をもてあましており、それならと、漬物用の大根を引き、年長さん達で丸洗いしている。

ところが後がいけない。「ジージ、バイト代は?」と、最近の子供達はちゃっかりとしている。それでも、

労働の喜びとその対価は、子供達の大事な教育なのか・・・

 

コロナウィルス対策は国難と言って良いほどの拡がりを見せている。
保菌者がどれだけいるか分からないし、新型肺炎の発症者や保菌者にすら手が回らない現状では、このウィルスを封じ込めることはさらに難しい。
その検査対策に頭が追いついて行っていない政治や行政があり、日本の政治や役所仕事のお粗末さが露呈している。
その対策の厳しさは分かるが、役所仕事の決まり規則・法律に縛られ、事勿れ主義・前例主義体質の染みついたこの国の体質が、より不透明さや不確実性を高めているように見える。
コロナウィルス対応の終熄は未だ見えていない。まだこの危機は始まったばかりと言えそうだ。
経済の損失は、数兆円にまで昇り、蓄積の少ない中小企業や国民の生活を直撃していくであろう。経済的弱者の痛みが増幅しないことを祈るしか無い。

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エンドウ豆の花。こうしてみると、野菜の花は素朴で実に愛らしい。今年は、約半月早く、花が咲き始めた。

とは言っても、農園の日々の仕事を欠かすことは出来ない。
農園では間もなく、春野菜と夏野菜の谷間の端境期を迎えようとしている。
そのため、この時期は春野菜の種蒔き・定植作業と夏野菜の育苗作業を同時に行っている。
夏野菜の育苗は、三段階に分かれ、先ず一段階は、トマト・茄子・ピーマン系の種を蒔き、ある程度育てば、ポットに揚げ、さらに温床ベット(踏み込み堆肥の発熱を利用)の上で育て、4月初旬頃、定植する。
第二段階は、南瓜・ズッキーニ・胡瓜などを3月中旬頃から種をポットに蒔き、温室で4週間程育て、4月中旬頃畑に定植する。
第三段階では、インゲン豆・枝豆などの直播きとポット蒔きを併用し、遅霜のリスクが無くなる4月中旬頃、発芽させたり、定植作業を行う。

課題となるのは、この時季、草木堆肥の原料となる草が少ないことである。
あちこちで除草したり刈り取った草を軽トラックで集め回り、多目の破砕屑や葉っぱを使って、細々と草木堆肥を作ることになる。
4月上旬頃から一斉に夏野菜の定植作業が待っており、膨大な草木堆肥が必要となるため、毎年草集めに苦労させられている。

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こちらは、空豆の花。かなり大げさな花模様であり、良く観察すると、蝶々のようにもあり、これは昆虫を引き寄せるための自然の造形美かもしれない。

唯、浸透性農薬(食べた虫が死ぬ)などの普及でミツバチなどが居なくなっていることのほうが心配である。

 

このコロナウィルスは、保菌者であっても、発症しない人が居ると言う事は、免疫力や抵抗力を有している健康体の体には、菌が増殖しないと言う事かもしれない。素人考えで申し訳ないが、人の体の抗体が増殖する悪性菌を撃退しようとする。この時、体は発熱していくことになる。
小麦アレルギーなどの現象も抗体と異物(高タンパク=ハイグルテン)のせめぎ合いで起こる現象であり、もしかしてそれと似通っているのかもしれないと思うのです。
ウィルスや微生物などの実態や影響は未だ明確な科学的解明が為されていない。

ちなみにうちの孫達は、常に雑菌の中で育っている。自然の対応力と言うか抵抗力と言おうか、実に逞しい。

これからしばらくは、「ジージ、暇」に付き合って行かねばならなくなりそうだ。

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