農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.3.18(水曜日)晴れ、最高温度15度、最低温度2度

f:id:sato-shizen-nouen:20200318190219j:plain

初春の農園は、うららかな天候に恵まれ、農作業も順調に進み、やや余裕が生まれている。唯、小松菜・青梗菜・蕪などのアブラナ科の野菜達は、一斉に花芽を持ち始め、

出荷を断念せざるを得なくなっている。農園はこれから花盛りとなる。

 

2020.3.11 突然の電話

農園は、今、菜の花・エンドウ豆・空豆などの花が春の風に揺られ、長閑な時間が流れている。
天気は目まぐるしく替わり、雨の合間に畝作りを行い、キャベツ・ブロッコリー・白菜などを定植したり・葉野菜・ほうれん草・蕪・人参などの種蒔きを行っている。
気温は暖冬の中でも、ようやく平年の気温に戻りつつあり、例年通り4月初旬の花冷えがいつもの通り訪れてくると予想したが、夏野菜の第三陣の種蒔き(胡瓜・ズッキーニ・南瓜)を迷った末に、いつもの季節よりやや早めに行った。(4月10日頃、寒の戻りがあり、暖かいからといって夏野菜を定植していると遅霜でやられてしまうことが多いのです)

f:id:sato-shizen-nouen:20200318191225j:plain

宮崎のKさんから久しぶりの電話が入った。Kさんは今から7年前、医者から悪性リンパの癌宣告を告げられ、ネットで探し、藁にも縋る思いで、当農園へ野菜の申し込みをしてこられた。
その際は、かなり深刻な状況で、こちらも当農園の野菜の特性(高ミネラル・ビタミン糖質などの栄養価に富んでいること)や野菜の調理の仕方(温野菜や油を絡めて食することなど)などの御助言を行った。
癌の進行を止めるには、健全で美味しい野菜を食べることによって自らの治癒能力を引き上げ、正常細胞の再生を促し、異常細胞を抑えることに賭けてみますかと申し上げた。
その後、お便りは無かったので、良い方向へ進んでいると農園主も喜んでいたのだが、もしや?との不安が頭をよぎる。
電話の内容は、今回のお願いは、急性の腸閉塞を患い入院をしなければならなくなり、しばらく野菜を止めて欲しいとのお話であり、悪性リンパ腫瘍も今では消えておりますとのこと。
思わず、良かったですねと言ってしまった。しまった!と思い、緊急手術を要する内容であり、「お大事に!」と言葉を掛けた。何という間の悪さか・・・
それでも、Kさんから、「今生きているのも農園の野菜のお陰です」と言う言葉に、そうですね!私達も含めてこの野菜達に感謝しなければいけませんですね、とお答えした。
このようなお客様も私の知る限りでは少なくともKさんを含めて4人居られる。
未だにご継続して野菜を取って頂いていると言うことは、この自然栽培の野菜の力によって命を支えられているのだろうと思っている。

f:id:sato-shizen-nouen:20200318191328j:plain

後藤君の畑(9番)に全員で畝作りを行っている処。

里芋・金時生姜の植え込み、露地ニラの株分けと植え替え作業を行っている。

一人農業では中々に作業が捗らないし、途中で心が折れてしまう。むかし野菜の邑では、月~金までは全員で農作業を行う。自分の畑でも無いのに、皆、黙々と相互に手伝い作業を行う「結いの仕組み」が出来ている。

 

近時、世界を席巻している通販会社アマゾンやゾゾタウンなどの所謂プラットフォームビジネスが曲がり角に来ているとの記事を読んだ。
その取扱商品に模造品がかなりな数混じり始めているとのこと、また、商品力と言うかブランド力のある会社から撤退を始めつつあると言った内容であった。(ナイキ・オンワードミキハウス等々)

ブランドとは、「品質」のことであり、変じて消費者からの「信用」を得ていると言う意味でもある。
中小メーカーは例え品質が優れていても知名度が無く、消費者からの信用を得ることは容易ではない。
アマゾンなどのプラットフォームを利用していかねば消費者とのコンタクトは難しい。
しかしながら、生産者が商品の品質を守り維持していくには、たゆまざる努力と研究開発が必要である。
そのためには、インセンティブや中間手数料を払うより、その分の手間やコストを品質の改善に力を注ぎたい筈である。
ナイキ・オンワードなど、販売の拡大より、商品の充実・品質の保持に重きを置いたと言う事であり、その行動を支持する消費者の支えがあることになる。このブランド力は生産者だけでは、到底作りえないし、維持継続も難しいのです。

当農園も開園以来、直接販売を行ってきた。「品質」には自信を持ってはいるが、お客様の信用を得るには、まだまだ長い時間が必要なのかもしれない。
そんな時、全面的に信頼をしていると言う宮崎のKさんのお電話は嬉しかった。
健全で美味しい商品作りに向けて改めて身の引き締まるものを感じた。

f:id:sato-shizen-nouen:20200318192225j:plain

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.3.11(水曜日)晴れ、最高温度14度、最低温度5度

f:id:sato-shizen-nouen:20200311172825j:plain

              農園は、今、花盛り

4年前に植えた李(すもも)の木にびっしりと白い花が咲き始めた。

今年は、甘い李が皆様に届けられればと願っている。只、李の実が成る頃は梅雨時期に重なり、溶けてしまうこともある。天候次第となります。

 

2020.3.3  農園は託児所となった

この所、農園には子供達の声が充ち満ちている。親達は農作業や加工品作り、出荷作業に忙しく、構っては居られない。農園に設けた乳幼児待機室に孫達が集合させられ、

ほとんど丸一日を過ごしている。コロナウィルス対応による学童の休校によるものだ。
ジージ、暇」と言って相手をしてくれとせがむ孫達。農作業の合間に軽トラックの荷台に乗せ、畑を一周したり、タイヤショベルカーに乗せたりと、この処、ジージは中々に忙しい。

f:id:sato-shizen-nouen:20200309115110j:plain

暇をもてあましており、それならと、漬物用の大根を引き、年長さん達で丸洗いしている。

ところが後がいけない。「ジージ、バイト代は?」と、最近の子供達はちゃっかりとしている。それでも、

労働の喜びとその対価は、子供達の大事な教育なのか・・・

 

コロナウィルス対策は国難と言って良いほどの拡がりを見せている。
保菌者がどれだけいるか分からないし、新型肺炎の発症者や保菌者にすら手が回らない現状では、このウィルスを封じ込めることはさらに難しい。
その検査対策に頭が追いついて行っていない政治や行政があり、日本の政治や役所仕事のお粗末さが露呈している。
その対策の厳しさは分かるが、役所仕事の決まり規則・法律に縛られ、事勿れ主義・前例主義体質の染みついたこの国の体質が、より不透明さや不確実性を高めているように見える。
コロナウィルス対応の終熄は未だ見えていない。まだこの危機は始まったばかりと言えそうだ。
経済の損失は、数兆円にまで昇り、蓄積の少ない中小企業や国民の生活を直撃していくであろう。経済的弱者の痛みが増幅しないことを祈るしか無い。

f:id:sato-shizen-nouen:20200308170918j:plain

エンドウ豆の花。こうしてみると、野菜の花は素朴で実に愛らしい。今年は、約半月早く、花が咲き始めた。

とは言っても、農園の日々の仕事を欠かすことは出来ない。
農園では間もなく、春野菜と夏野菜の谷間の端境期を迎えようとしている。
そのため、この時期は春野菜の種蒔き・定植作業と夏野菜の育苗作業を同時に行っている。
夏野菜の育苗は、三段階に分かれ、先ず一段階は、トマト・茄子・ピーマン系の種を蒔き、ある程度育てば、ポットに揚げ、さらに温床ベット(踏み込み堆肥の発熱を利用)の上で育て、4月初旬頃、定植する。
第二段階は、南瓜・ズッキーニ・胡瓜などを3月中旬頃から種をポットに蒔き、温室で4週間程育て、4月中旬頃畑に定植する。
第三段階では、インゲン豆・枝豆などの直播きとポット蒔きを併用し、遅霜のリスクが無くなる4月中旬頃、発芽させたり、定植作業を行う。

課題となるのは、この時季、草木堆肥の原料となる草が少ないことである。
あちこちで除草したり刈り取った草を軽トラックで集め回り、多目の破砕屑や葉っぱを使って、細々と草木堆肥を作ることになる。
4月上旬頃から一斉に夏野菜の定植作業が待っており、膨大な草木堆肥が必要となるため、毎年草集めに苦労させられている。

f:id:sato-shizen-nouen:20200308171445j:plain

こちらは、空豆の花。かなり大げさな花模様であり、良く観察すると、蝶々のようにもあり、これは昆虫を引き寄せるための自然の造形美かもしれない。

唯、浸透性農薬(食べた虫が死ぬ)などの普及でミツバチなどが居なくなっていることのほうが心配である。

 

このコロナウィルスは、保菌者であっても、発症しない人が居ると言う事は、免疫力や抵抗力を有している健康体の体には、菌が増殖しないと言う事かもしれない。素人考えで申し訳ないが、人の体の抗体が増殖する悪性菌を撃退しようとする。この時、体は発熱していくことになる。
小麦アレルギーなどの現象も抗体と異物(高タンパク=ハイグルテン)のせめぎ合いで起こる現象であり、もしかしてそれと似通っているのかもしれないと思うのです。
ウィルスや微生物などの実態や影響は未だ明確な科学的解明が為されていない。

ちなみにうちの孫達は、常に雑菌の中で育っている。自然の対応力と言うか抵抗力と言おうか、実に逞しい。

これからしばらくは、「ジージ、暇」に付き合って行かねばならなくなりそうだ。

f:id:sato-shizen-nouen:20200305154735j:plain

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.3.4(水曜日)曇り、最高温度13度、最低温度5度

f:id:sato-shizen-nouen:20200304144712j:plain

 

「なんでも有機の時代が来ている」

 

玉葱の除草作業も無事終了し、春野菜の植え込み・種蒔きも一段落し、春じゃがの植え込みも終わった。
剪定枝の破砕作業の後、除草した草と混ぜ、懸案の夏野菜用の草木堆肥を作り終えた。
気候が季節外れの暖かさのせいか、野菜の成長が良く農作業も順調に推移し、突然に「ポカン」と時間が空いた。
農園ですから、やる事は山のごとくあるが、ひと段落したため、スタッフ達も疲れが溜まってきており、農園始まって以来の平日休暇を取ることになった。
スタッフ一同に、「木曜日はお休みにするぞ!」と伝えると、一瞬の間があり、みな、「ポカン」とした顔をしていた。
今日、突然に電話が入る。東京のMですが、今大分に来ております。今から農園におじゃましてもよろしいですか?野菜が欲しいのでと。
今日は農作業デイでしたが、収穫体験を兼ねて、一緒に畑を回った。食べるだけでは無く、収穫もする事でかなりリフレッシュされたようだ。雑談の中で、彼女たちはこう言った。
「今、東京では有機無農薬野菜が駅の構内も含めて至るところで売られている」
やはりそうか、と思った。
日本では、今、何でも有機と称する時代となっているようだ。レストランでも有機野菜を使っておりますの表示が目立っている。日本ほど、自称有機野菜に溢れている国は無い。有機野菜の生産量は野菜全体の0.2%しか無いと言うのに・・・
以前、大阪に赴いた際に、大分県の数人で居酒屋に行った。なんのさかなが良いかなとメニュー表を見ていると、「関アジ関サバ」の表示があった。面白そうなので、店員さんにこう告げた。「我々は大分から来たのだが、安い関アジがあるそうですね」と問うと、店員さん、急に真顔で「お客さん!止めたほうが良いですよ」と。

f:id:sato-shizen-nouen:20200227102957j:plain

一次発酵段階の草木堆肥。びっしりと白い放線菌が有機物に付き、分解している。

柔らかい有機物は微生物が、リグニン・セルロースなどの方有機物は放線菌が、分解してくれている。この世に微生物や放線菌(黴)がなければ、世界中は死骸だらけになっている筈。何かと世の中を騒がせているコロナウィルスもその菌の一種です。

有用な菌も居るわけですから全てを悪者扱いしないでやって欲しい。

 

「畜糞を使ったら有機野菜」となるのも有機JAS法や日本の有機農業に対する曖昧さといい加減さがもたらせた結果である。アメリカ産の配合飼料の影響で抗生物質・薬品まみれとなってしまった畜糞を使う有機農業は、畑をむしろ汚していると言う悲しい現実がある。
だからこそ、世界基準のオーガニック野菜の認定から日本の有機JAS野菜は外されている現実を消費者は知らない。本物の有機野菜や無農薬野菜とは一体何なのだろうかと考えざるを得ない。
消費者はもっと有機野菜の現場の苦労や現実を知らなければならない。真摯に土作りを行っている有機農業者のしていることを知れば、そんなに安い有機野菜があろうはずもない。

私達が、無化学肥料・脱除草剤・草木堆肥による土作りに力を入れ、少しでも健全な農産物作りを行っていても、他方では世界一食品添加物を認めている日本の食品の現実を知れば、やや空しさを感じてしまう。消費者の無関心がそれに拍車を掛ける。
安全安心にはコストが掛かる。健全な農産物を求めるのであれば、消費者も相応の負担をしなければならない。自分の健康は国が守ってもくれないし、消費者自身がもっと賢明な消費者とならなくてはいけないと思うのですが・・・

f:id:sato-shizen-nouen:20200304144915j:plain

 

2020.2.26(水曜日)晴れ、最高温度14度、最低温度6度

f:id:sato-shizen-nouen:20200226183535j:plain

              剪定枝の破砕作業

f:id:sato-shizen-nouen:20200226183648j:plain

           小枝と葉っぱを選り分けている処

当農園では、化学肥料や畜糞を肥料として圃場に撒く代わりに、草木堆肥を撒いている。その堆肥を作る作業に膨大な労力を要する。

写真は造園会社が持ち込んでくる剪定枝を大枝は破砕し、小枝は葉っぱと選り分けて

いる作業風景です。葉っぱと破砕屑が堆肥の原料となる。

木には、計測不能なほどの微生物と放線菌が棲んでいる。草と繁殖牛の牛糞と混ぜ合わせ、2メートルの高さに積み上げる。

2日ほど経過すると、微生物と放線菌が有機物を餌として増殖してくる。これが発酵と言う現象です。高速で分裂増殖するために、発酵熱が出る。

この堆肥作り作業を一ヶ月に2回ほど行っている。

他の農家と比べると余計な作業が必要となるが、その分、野菜は健全で美味しくなるのです。

 

2020.2.23 健全な食を求めて!

f:id:sato-shizen-nouen:20200226185849j:plain

農園では草木堆肥を作るにあたって繁殖牛の牛糞を発酵促進剤として20%ほど草や葉っぱ・剪定屑に混ぜて堆肥を作っている。肥えてしまえば、子供を産まなくなってしまうため繁殖牛の主たる飼料は、配合飼料では無く草を食べさせている。
それに対して、肥育牛はアメリカ産の配合飼料を餌として与えている。それは養鶏・養豚でも同じです。
その配合飼料には、遺伝子組み換えの穀類(除草剤を吸い込んでも枯れない遺伝子が組み込まれている)が主原料となっており、さらに、病気や菌の増殖を抑えるために抗生物質が大量に入っている。抗生物質は皆様ご存じのように菌類を殺すことがその役割です。
本来、有機栽培(自然栽培も同じ)は土壌に微生物や放線菌を(有機物を餌として)増殖させて土を育てて行くものです。→自然循環農業
この除草剤と抗生物質の含まれた畜糞を畑に施肥すると、当然に微生物や放線菌は圃場では生きていくことが出来ません。故に、当農園では、繁殖(放牧)牛の牛糞しか使わないのです。
しかも、草木と一緒に発酵させておりますから、発酵途上に土着菌によって、多少混じり込んだ化学合成物質は分解されます。野菜を植え込む度に、計測不能な種類の微生物・放線菌が草木と一緒に圃場に補給され続けられるために、土壌は自然の浄化機能(自然循環)を保ち続けております。
そのため、当農園の圃場の土は微生物・放線菌が棲み付き、ほかほかとしております。気温が上がり、雨が降ったりすると、キノコ類が顔を出します。むかしの農家では、畑にキノコ類が生えてくる土が最高と言われてきました。

f:id:sato-shizen-nouen:20200226190317j:plain


さらに怖いのは、肥育ホルモン剤の使用です。
週刊誌である女性セブンにこの肥育ホルモン剤のことが掲載された。(2020.2.27号)
近年日本の農業にも成長ホルモンが使われております。真っ直ぐな胡瓜・丸々と大きくなった梨などなど、成長ホルモン剤が使われている可能性が高い。
かって、肥大したスイカが大きな問題になったことがありました。
アメリカでは牛肉の消費量が半減しているそうです。その理由はアメリカでは育牛に肥育ホルモン剤を使用しているからです。子供さんのお乳が急に発育しだしたり、女児の生理が早くなったりと明らかに異常な影響が出ているようです。アメリカの知識人達は肥育ホルモン剤投与の牛肉は決してそれを食べないし、欧州ではアメリカ産の牛肉は発がん性物質等の理由にて輸入禁止となっております。
アメリカとの農産物関税の撤廃が進んでいる中、アメリカで消費が少なくなった牛肉が大挙して日本の消費者に回されているのです。
肥育ホルモン剤の使用は日本では認めていないにも拘わらず、それを使いたい放題に使用しているアメリカ産の牛肉は解禁している。アメリカ大統領トランプの圧力に屈した結果としか言い様がない。
ちなみに、肥育ホルモン剤の禁止成分の表示が為されていない国は世界でも日本しか無いのです。

f:id:sato-shizen-nouen:20200226190549j:plain

日本の消費者の方は、もっと「食の安全性」に関心を持つ必要があるのではないでしょうか?
自らの健康は自分で守るしか無い時代に入っていることをもっと認識しておいたほうが良いと思います。
食の安全性は、日本の男社会では「忖度」社会となっており、余り語られることもありません。家族の健康を守っている女性が厳しい目を向けるべきだと思います。
日本の政治はそのようなことも全てクローズしており、又、現在の日本の報道は自粛されておりますから、消費者へは真実が伝わりにくくなっております。日本は今では世界の中でも食の安全性劣等国になっております。日本人は世界のモルモットになっているのです。念のために・・・

f:id:sato-shizen-nouen:20200226190638j:plain

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.2.19(水曜日)晴れ、最高温度13度、最低温度-1度

f:id:sato-shizen-nouen:20200219184143j:plain

 

2月の気候は、三寒四温。太陽は次第に上に回り、日照時間も増えてきている。

この時季、露地栽培の農作物の管理には、神経を使う。朝は突然に氷点下に下がったり

日中は15度を上回る暖かさとなりやすい。

作物によっては、凍結したら溶けていくものもあれば、ビニールトンネル内の気温が上がり過ぎると、腐れが発生するものなど、皆その性質が異なる。

そのため、ものによって、トンネルを開けたり、閉めたりの繰り返しの作業が当分の間、続くことになる。この当たりになると、露地栽培の経験が物を言う。

これを覚えるには、10年ほどの経験を要することになる。自然栽培・露地栽培・年間百種類の野菜作りには実に長い時間が掛かるため、人育てが難しいのです。

そう言う農園主も未だに試行錯誤の繰り返しではある。

 

2020.2.19  カット野菜・冷凍野菜の増加

数ヶ月前、農園へ一人の青年が訪れてきた。
彼は佐伯市で農業をしてきた。その後、大分市東部の自宅で農家から野菜を集め、ご夫婦で野菜の販売をしているが、むかし野菜を扱ってみたいとの申し出がなされた。
当農園では、直販が基本であり、「流通=小売」との取引はしていなかったが、熱意もあり、取引を行う事にした。
その時、農園ではネット宅配の他に、農園直売も行い始めた時期であったが、野菜中心の八百屋さんと言う商いの難しさを感じていた。
彼には大分市の東西地区でお互いに頑張ろうと、励ました。
その後、奥様も当農園を訪れるようになり、八百屋さんの難しさを訴えていた。
彼女はこう言った。
「うちは、若い主婦層が多いのです。野菜を売る前に、料理の仕方から始めねばなりません。さらには、野菜の切り方まで教えねばなりません。こう聞かれるのですよ。一口サイズとはどの程度なのですか?」
ついには、農園から仕入れた野菜をカットして届けるようになったそうだ。

都市圏では、八百屋さんが立ちゆかなくなってきていると言う情報が伝わってくる。
一時は、テレビにまで紹介されていた新進気鋭の八百屋さんが、今では生鮮野菜の販売の比率を極端に落としており、店先に並ぶ商品群の多くが弁当や惣菜・加工品に移っている。
また、東京の青山(高級住宅地)にあるファーマーズマーケットに行ってみたら、有機野菜のコーナーは激減しており、雑貨店やお菓子屋さんのテントが立ち並び、一体ここは何だったのだろうと思われる状況に変わってしまっている。

f:id:sato-shizen-nouen:20200219190353j:plain

30年前頃、バブル崩壊前夜の時期、「安・近・短」と言う言葉が流行った時代があった。
安くて、易くて、安楽と言ったような意味である。健全性・本物志向とは真逆な価値観であり、節約志向とも異なる。
カット・冷凍野菜は、手軽・簡単・便利が「売り」であり、楽な食を求めるのであれば、当然に支出(費用)は増えることになる。さらには、安全性や健全性とは遠く距離を置く事にもなる。
家族に美味しく安全な食を!と言う賢明さが命を預かる主婦から失われつつあることに憂慮している。

f:id:sato-shizen-nouen:20200219185816j:plain

これは農園のチーズケーキ。古代麦ブレンドの小麦の粉(半粒粉)を使用。そのため、味香りが高く、存在感がある一品となっている。写真は試食の風景ですが、偶々、作りたてを食べた時、熱々のチーズケーキとなり、それがまた、実に美味しいのです。

 

当農園の直売所では、水曜日は野菜中心に売れているが、日曜日は惣菜・お菓子類が中心となっている。
これは水曜日のお客様の年代層が高く熟年層が多く、日曜日は比較的若い層が多く見えられているせいだと思われる。ここでも料理に手間を惜しむ「安・近・短」の傾向が見え隠れする。
明らかに消費者のマインドがバブル全盛時代のような方向へ変化し始めているのを感じている。
自然栽培の農産物を広めるために、次世代を担う若いスタッフ達(後継者達)は毎週団地に赴き、ビラ配りを行っている。徐々に固定客も付き始めているが、その拡がり方は鈍い。
彼らは店頭に並んだ野菜を前にして、逐一野菜の説明を行っている。唯、その説明が精一杯で、そもそも自然栽培とは何か?化学物質に塗れ始めている食の安全性は?何故今自然栽培なのか?健全な農産物はどのようなものか?どのように労力をかけどのような農法で栽培しているのか?などなどの説明をする時間が取れず、苦労している。

若い後継者はこう言う。
「何故我々が手間を掛けてこのような自然循環農法を行っているのか?現在の農産物や加工食品の安全性に危惧があること、などの詳細を理解してもらえる機会を作ったほうが良いです」と・・・
唯、農園主が感じたことは、健康は自分で守らねばとか、現在の食は危ないとか、健全な食生活とは?などと話しかけても、それに関心を抱いている消費者は、年々減少していっていると言う事です。
例えば、自然循環農法を若い方に理解してもらいたくて、農園体験会を開催すると、

200人を越える家族が参加してくれる。
処が、それによって、むかし野菜の購入にも、食の健全への興味関心にも繋がっていかない。只、子供さん達を遊ばせるために参加しているに過ぎないのかもしれない。

f:id:sato-shizen-nouen:20200219190517j:plain

約4反(1,200坪)の5・6番の圃場。ここには20種類以上の野菜が育っている。

 

欧州では、有機野菜のシェアーが15%を越えている。日本では、わずか0.5%以下である。
欧州では有機野菜生産活動が環境への負荷を減らし、自然を守っているとの認識が消費者に強く、それが有機野菜を支えている。それに比べて、日本では、自らの周りしか見ておらず、自然を守るのは自分達の責任であるとの認識が消費者に乏しい。
私が気に掛かるのは、日本の大人達が子供達の未来は考えていないことにある。
古き良き時代の日本人は、もっと寛容性があり、社会的責任を分かっていたように思うのだが・・

 

農園日誌Ⅲ-むかし野菜の四季

2020.2.12(水曜日)終日雨、最高温度15度、最低温度5度

f:id:sato-shizen-nouen:20200212174820j:plain

二番の圃場。正面は芽キャベツの畝。空豆、セロリ(ビニールトンネル)と続いている。約一反の面積に冬春野菜 が15アイテムほど育っている。

 

2020.2.12 規制国家に生きること

中山間地を回ると、田園風景は一見今までと同じように拡がっているが、人の影は無い。田植えシーズンだけは、トラクターで田圃を耕している80代のお年寄りの姿がぽつぽつと見える。
元気よく飛び回っている子供達の声はまったく聞こえてこない。農業承継者である筈の息子は街に出て行ってしまっているからだ。
圃場の周囲には、必ずと言って電気柵が見える。里山が消え、山際が人家に迫ってきているため、猪や鹿などが里に直接下りてくる。田圃には獣に掘り返されたような跡が散見される。あちこちで放置された田圃が目立ち始めており、多くの獣たちの住処になっている。
千数百年を掛けて営々と田圃に張り巡らされてきた用水路は誰が維持していくのだろう。
一見豊かに見える田園風景には、それを維持していく働き手はいない。
これが今の政治が作り上げた地域の現実です。

日本国民は農業に手厚い補助金助成金が出されていると思っているのかもしれない。
かっては、農業族と言われた農政官僚達の手によって、多くの補助金が出されていた。
その下請け機関として、農協があった。それは今でも大きくは変わっていない。
その補助金の使い道は細かく分類されており、その規程に沿わなければ、返還を求められる。
つまりは、農協を絡めて作り上げられてきたのが、近代農業を勧める大量生産・規格型の日本の農業システムであり、日本の農業は農政官僚・役場・農協などによる一体化した岩盤組織となっている。
広大な面積を駆使してグローバル農業を推進しようとした日本の農業は、日本が規制国家である縮図のようなものなのです。
消費者の方が思うほど、緩くは無く、規制が隅々まで行き届いており、農業に於ける自由は無いに等しい。日本の農業は、狭い耕作面積を使った高集約型農業(高付加価値型)しかできない国土なのです。
こうして全国紋切り型の農業を押しつけられてきた農村部は、すでに自浄していく力も改革する能力も失い、日本の政治は農業そのものを見捨てようとしている様にさえ見える。

f:id:sato-shizen-nouen:20200212175422j:plain

米麹。きれいに麹の花が咲きました。この麹は主には味噌作りのために作っているのですが、他にも漬物・蒸し饅頭などの隠し味に使っている。旨味が付加され美味しくなる。

f:id:sato-shizen-nouen:20200212180147j:plain

今年の冬は気温が急上昇し雨が降り続いたり、また、突然に寒の戻りがやってきたりと、野菜にとっては、生き死にに拘わるほどの変化が起こっている。その度に、露地栽培農業者もトンネルを開けたり閉めたりと振り回され続ける毎日である。

 

「大企業優先による経済の浮揚が国を富ませ、やがては中小企業や地域を潤してくれる」
殖産興業・富国強兵の政策はすでに明治時代に終わっている。世界が縮み、経済的繋がりも拡がり、大企業は生き残りをかけて自社主義に走らざるを得ない。国内に広く資金を(富みを)循環させることは決して無い。
こういった政策に、「そうだ」と頷く国民も今ではそんなに多くは無いだろうとは思っている。
バブル崩壊後、失われた30年と言われている。日本の経済構造の変革(リストラクチャリング)も行われず、規制緩和や撤廃も為されず、ひたすら現秩序を国の補助金などで維持させてきた。
「規制」とは、現秩序・現体制・現企業を守るためにしか作用しない。
このため、生き残れないはずの企業が残され、新しい秩序どころか、新規分野の産業も生まれてはいない。農業と言う産業が変わらないのもそのためである。
このままでは農業と言う産業は崩壊してしまうでしょう。失われた30年ではなく、失われた50年となっており、この先も失われる訳でしょうから、食糧自給も難しくなってくる。

f:id:sato-shizen-nouen:20200212180716j:plain

とある日曜日の農園直売日の風景。竈で石垣餅を蒸して、試食用の小さな団子をお客様へお配りするお手伝いをしている子供たち。

「日本という国は、豊かな山野を持ち、田園風景が拡がる美しい四季の邦である」
以前、日本の現職総理大臣が言った言葉である。
その総理大臣の使ういつもの美辞麗句には慣れてはいるものの、現実政策とのギャップに余りにも大きな開きがあり過ぎる。

官公庁では、自然栽培農家はおろか、有機栽培農家も異端なのです。有機栽培と言うだけで、既存農家からも蔑視の目を向けられてきました。それは今も変わらない。
日本の農政は農協を中心とした米国を真似た近代農業(化学肥料・農薬・除草剤を使う慣行農業)を推進しており、有機栽培への助成支援は実質ゼロに近い。むしろ、消費者保護の名目で有機JAS法を制定し、厳しく規制を加えられております。そのためか、有機栽培農家は増えるどころか、減少しております。
有機農産物のシェアーは0.5%でしか無い。国が一方的に定めた有機JAS規程に沿って生産される所謂「有機JAS農産物」は0.2%に留まっており、年々その有機農家も減少している。
これらのことはおそらくは消費者の方々も知らないでしょう。欧州では有機農産物のシェアーは増え続け、15%に達している。
それに加えて、最近特に、食の安全に関心を寄せる消費者も漸減し始めております。
メディアも既存価値観に忖度しており、栄養価とか健康に関する報道は組まれてはいるが、その内容は底が浅く、薄っぺらい。食の安全・健全性などに関する報道は激減しております。
現在は有機野菜生産農家には逆風が吹き始めております。

f:id:sato-shizen-nouen:20200212181048j:plain

これでは、益々新たな農業に関する産業が生まれてくる土壌は無くなり、日本の農業の構造改革は難しいでしょう。
農業を心出す若者がいたとしても、農業後継者が育つ環境が失われつつあることを憂慮しております。
ここしばらくは、内を固め、耐えていくしかないのかもしれません。
そうした時代、有機農業を越えた自然循環農業を推進して行こうとする「むかし野菜の邑」の存在意義を実感しているのですが、その難しさも痛感しております。
価値観を同じくする消費者の輪の拡がりと、特に若い消費者への啓蒙・啓発活動の重要性が問われているのではないかと思うのです。
日本の田園風景には、子供達の飛び跳ねる風景が一番似合う。

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.2.5(水曜日)晴れ、最高温度10度、最低温度1度

f:id:sato-shizen-nouen:20200205182513j:plain

       草木堆肥歴18年目のプラチナ級の2番の圃場の夕景

畑としてはやや異様な風景に映るかもしれない。

右端から芽キャベツ空豆、セロリ(トンネル)、エンドウ豆、白菜(トンネル)と連なっている。

エンドウ系の畝は枝が付いたままの竹を刺し、蔓が昇り易いように豆の手をしてやる。

毎年の風物詩となっている。

 

2020.2.4 立春


暦の上では、春が来ました。一年間の内で実は最も寒い日が続くのがこの頃です。
この最後の寒波が過ぎれば、日は一日一日と長くなってきておりますので、早朝凍える中での収穫作業からやや解放される。
育苗ハウス内では、トマト・ピーマン系の夏野菜の新芽が吹きました。底には電熱器を入れての強制的な発芽ですが、農園主の頭の中は、春野菜の種蒔き・定植作業を横目で見ながら、夏野菜の植え込み準備に飛んでおります。

今年は、記録的な(この処毎年そう言っておりますが)暖冬のため、野菜の種蒔き時季もかなり早めなければならないようです。そうなれば、作付け計画も例年の経験は生きて来ず、当然に数々の種類の野菜の収穫時期(出荷時季)も変わってきます。
当農園では、定期購入他の特定固定客が全てですから、お送りする野菜のアイテムも一度に重ならないように植え付けを配分・調整しなければなりません。
その際、農園主が常に考えているのは、その時季時季によって、一つ二つの核(主菜)になる野菜群を組み立てていきます。

f:id:sato-shizen-nouen:20200205185157j:plain

最近では冬の定番野菜となったブロッコリー。写真は二番果です。

一番果は大きいのですがさほどに美味しいわけではありません。実は、二番果・三番果の方が味が乗って美味しいのです。これは草木堆肥の特徴でもあります。

先ず、一番果を収穫しますと、野菜は子孫を残さねばと、二番果・三番果を付けようします。その頃、土壌の窒素分は少なくなってきており、窒素が不足気味で育つため、実が完熟野菜に近づいております。完熟野菜は糖質・ビタミンに富み、さらに、ブロッコリーは最後の力を振り絞って美味しい実を付けようと頑張ります。


例えば、こうです。
2月・3月は、すでに植え込んであるブロッコリー・キャベツ類・白菜・大根などを主菜として、葱類・白蕪・赤蕪類・紫大根などの添え野菜があり、じゃがいも・人参(赤・黄)・さつまいもなどの根菜があり、青梗菜・小松菜・ほうれん草などの葉物野菜があり、サラダセット・レタス系などのサラダ野菜がある。
そこに、セロリ・春菊・ビーツ・葉にんにく・芽キャベツなどの珍しい野菜の彩りを添えアクセントを付ける、と言った具合である。
このように野菜群を配していくと、色とりどりの野菜が通常のご家庭では、飽くことなく、いつもむかし野菜を楽しんで頂けることになる。新規に野菜を取り始めた定期購入のお客様からは、送られてくる野菜が楽しくて料理のレパートリーも増え、家族も喜んでおりますとのお便りも頂いている。
残念ながら10数年以上の古手のお客様からは、そんな感動させていただけるようなメールは送られて来ない。唯、むかし野菜が日常化しているのだろうと、有難く思ってはおります。

f:id:sato-shizen-nouen:20200205190226j:plain

赤蕪です。冬はこれ以外にも、紅蕪・紫大根・紅葉スティック・紅芯大根・黄金蕪・黒大根など色彩豊かな蕪及び大根が育ちます。

4~5月の春は、これらの野菜群が主役となっており、2月以降は野菜を切らさないように数段階で種蒔きをし続けておけば良い。
又、この時季は、晩秋に種を蒔いていた豆のシーズンが到来する。絹莢エンドウ、スナップエンドウ、実エンドウ、空豆と来て6月はインゲン豆へと続く。

唯、このままの暖冬が続くとなると、それぞれのシーズンが半月ほど早まり、インゲン豆の種蒔きは例年3月下旬頃から3月中旬へと早めねばならないようだ。

f:id:sato-shizen-nouen:20200205191127j:plain

様々な形のズッキーニ。初夏野菜の定番メニューとなる。

同じように、胡瓜・ズッキーニ・南瓜などの初夏野菜群の種蒔き時季も早まりそうだが、問題となるのが、これらの野菜は寒には滅法弱く、4月にやってくる遅霜のリスクがあり、遅霜や寒を避ける対策が必要となる。

このように、秋冬野菜から春野菜への移行は概ねアブラナ科の野菜が多く、ほとんど根源は同じ種類の野菜群であるが、がらっと変わってくるのが夏野菜群であり、初春は、露地栽培農業者の知識と勘と知恵を巡らせていかねば、うまくは繋がっていかないものなのです。
年間百種類の野菜を育て、特定顧客を抱え、常に消費者の皆様に満足して頂くと言うことは、それほど簡単なことでは無い。
この知識と経験と勘を如何に繋いで行くか、また、それを受け継いでいく者達の心構えは、常の精神力では難しく、自然や人に対しての謙虚さと探究心が必要とされているのです。
先人達の叡智を受け継いでいった者としては、その意識の高さを持ち続けて行って欲しいと願うのみです。

f:id:sato-shizen-nouen:20200205191625j:plain

麦を刈り取った跡に、大豆の種蒔きのために、草木堆肥を振っている処。この圃場は小原君(農園の卒業生)の穀類畑。むかし野菜の邑、全員での共同作業となる。