農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.2.5(水曜日)晴れ、最高温度10度、最低温度1度

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       草木堆肥歴18年目のプラチナ級の2番の圃場の夕景

畑としてはやや異様な風景に映るかもしれない。

右端から芽キャベツ空豆、セロリ(トンネル)、エンドウ豆、白菜(トンネル)と連なっている。

エンドウ系の畝は枝が付いたままの竹を刺し、蔓が昇り易いように豆の手をしてやる。

毎年の風物詩となっている。

 

2020.2.4 立春


暦の上では、春が来ました。一年間の内で実は最も寒い日が続くのがこの頃です。
この最後の寒波が過ぎれば、日は一日一日と長くなってきておりますので、早朝凍える中での収穫作業からやや解放される。
育苗ハウス内では、トマト・ピーマン系の夏野菜の新芽が吹きました。底には電熱器を入れての強制的な発芽ですが、農園主の頭の中は、春野菜の種蒔き・定植作業を横目で見ながら、夏野菜の植え込み準備に飛んでおります。

今年は、記録的な(この処毎年そう言っておりますが)暖冬のため、野菜の種蒔き時季もかなり早めなければならないようです。そうなれば、作付け計画も例年の経験は生きて来ず、当然に数々の種類の野菜の収穫時期(出荷時季)も変わってきます。
当農園では、定期購入他の特定固定客が全てですから、お送りする野菜のアイテムも一度に重ならないように植え付けを配分・調整しなければなりません。
その際、農園主が常に考えているのは、その時季時季によって、一つ二つの核(主菜)になる野菜群を組み立てていきます。

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最近では冬の定番野菜となったブロッコリー。写真は二番果です。

一番果は大きいのですがさほどに美味しいわけではありません。実は、二番果・三番果の方が味が乗って美味しいのです。これは草木堆肥の特徴でもあります。

先ず、一番果を収穫しますと、野菜は子孫を残さねばと、二番果・三番果を付けようします。その頃、土壌の窒素分は少なくなってきており、窒素が不足気味で育つため、実が完熟野菜に近づいております。完熟野菜は糖質・ビタミンに富み、さらに、ブロッコリーは最後の力を振り絞って美味しい実を付けようと頑張ります。


例えば、こうです。
2月・3月は、すでに植え込んであるブロッコリー・キャベツ類・白菜・大根などを主菜として、葱類・白蕪・赤蕪類・紫大根などの添え野菜があり、じゃがいも・人参(赤・黄)・さつまいもなどの根菜があり、青梗菜・小松菜・ほうれん草などの葉物野菜があり、サラダセット・レタス系などのサラダ野菜がある。
そこに、セロリ・春菊・ビーツ・葉にんにく・芽キャベツなどの珍しい野菜の彩りを添えアクセントを付ける、と言った具合である。
このように野菜群を配していくと、色とりどりの野菜が通常のご家庭では、飽くことなく、いつもむかし野菜を楽しんで頂けることになる。新規に野菜を取り始めた定期購入のお客様からは、送られてくる野菜が楽しくて料理のレパートリーも増え、家族も喜んでおりますとのお便りも頂いている。
残念ながら10数年以上の古手のお客様からは、そんな感動させていただけるようなメールは送られて来ない。唯、むかし野菜が日常化しているのだろうと、有難く思ってはおります。

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赤蕪です。冬はこれ以外にも、紅蕪・紫大根・紅葉スティック・紅芯大根・黄金蕪・黒大根など色彩豊かな蕪及び大根が育ちます。

4~5月の春は、これらの野菜群が主役となっており、2月以降は野菜を切らさないように数段階で種蒔きをし続けておけば良い。
又、この時季は、晩秋に種を蒔いていた豆のシーズンが到来する。絹莢エンドウ、スナップエンドウ、実エンドウ、空豆と来て6月はインゲン豆へと続く。

唯、このままの暖冬が続くとなると、それぞれのシーズンが半月ほど早まり、インゲン豆の種蒔きは例年3月下旬頃から3月中旬へと早めねばならないようだ。

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様々な形のズッキーニ。初夏野菜の定番メニューとなる。

同じように、胡瓜・ズッキーニ・南瓜などの初夏野菜群の種蒔き時季も早まりそうだが、問題となるのが、これらの野菜は寒には滅法弱く、4月にやってくる遅霜のリスクがあり、遅霜や寒を避ける対策が必要となる。

このように、秋冬野菜から春野菜への移行は概ねアブラナ科の野菜が多く、ほとんど根源は同じ種類の野菜群であるが、がらっと変わってくるのが夏野菜群であり、初春は、露地栽培農業者の知識と勘と知恵を巡らせていかねば、うまくは繋がっていかないものなのです。
年間百種類の野菜を育て、特定顧客を抱え、常に消費者の皆様に満足して頂くと言うことは、それほど簡単なことでは無い。
この知識と経験と勘を如何に繋いで行くか、また、それを受け継いでいく者達の心構えは、常の精神力では難しく、自然や人に対しての謙虚さと探究心が必要とされているのです。
先人達の叡智を受け継いでいった者としては、その意識の高さを持ち続けて行って欲しいと願うのみです。

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麦を刈り取った跡に、大豆の種蒔きのために、草木堆肥を振っている処。この圃場は小原君(農園の卒業生)の穀類畑。むかし野菜の邑、全員での共同作業となる。

 

 

2020.1.29(水曜日)晴れ、最高温度13度、最低温度6度

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            プラチナ級の2番の圃場の冬景色

冬の作業の一つであるエンドウ豆系の手を刺したところ。

晩秋に種を蒔き、冬の間に根を太らせて、春4月に収穫となるスナップエンドウ・絹莢エンドウ・実エンドウの蔓が伸び易いように、枝付きの竹の支柱を立てる。

今年は、直売所を開いたため、例年よりやや多く5列とした。春の人気アイテムでありまた、美味しい。

特にこの二番の圃場は草木堆肥歴18年と土が肥えており、何を作っても美味しい。右隣は3月採りの越冬紫キャベツと春キャベツの畝。

 

2020.1.25 気候異変による野菜の豊作貧乏

 地球規模で異常気象が続いている。今までに経験したことの無い暖冬となっている日本の農家では、野菜が出来過ぎて困っている。価格が暴落し収入が半分以下になった生産者の苦悩は計り知れません。消費者は野菜が安くなってハッピーなのでしょうが、手放しで喜んでは居られなくなるのです。これは単に農家が痛手を被ると言うだけでは済まないのです。
その理由はこうです。

 

野菜で生計を立てている農家は、年間生産量を決めております。
季節毎の気候条件に合わせて、一品種について、2~3段階で種を蒔き、毎年ほぼ同季節に野菜を段階的に出荷しようとします。
例えば、今年のような異常な暖冬気候の場合、一段階目の野菜の成長が早くなりすぎて、市場に大量の野菜が出回り、価格は暴落します。さらに、悪いことに二段階目の野菜も暖冬のため、成長がすぐに追いつき、だぶついている市場に、さらに出荷しなければならなくなります。三段階目の野菜も全く同じことになります。
さらに、野菜の成長時期が早まるだけでは無く、異常に大きく太くなる事によって、大量の規格外商品が生まれ、折角一所懸命に育てた野菜を大量に畑で放棄しなければならない生産者の心の痛みは計り知れないものです。

こうして、マーケットには、一時期に大量の野菜が出された結果、次の時期に出る野菜が畑から無くなり、野菜がマーケットから姿が消え、結果として、野菜の価格が高騰してしまいます。
これが、消費者にとって、野菜が暴落することがハッピーなことにならない理由です。
特にこのように全国的な暖冬となれば、一地域に限定された災害などの場合と異なり、一気に野菜が市場から姿を消すことになってしまいます。

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             春白菜とレタスの定植

春3月下旬採り予定の白菜と、3月中旬採り予定のレタス系。畝を分けて植え込む。

春白菜は必ず、1~2月に定植し、トンネルを掛けて保温し、成長を促す。この間、トンネルを開けたり閉めたりと忙しい。急に温度が上がると蒸れて溶けてしまうからです。3月初旬頃になると、トンネルを撤去し、伸びきった白菜を寒に当て、締めてしっかりとした株にしていく。この時季の判断が難しい。

 

当農園は草木堆肥(低窒素露地栽培)による手間と労力と時間を掛けて野菜を育てております。
野菜は土壌に窒素分が少ない分、慣行栽培や有機栽培と比べて根を土中に広げ、髭根も多く、根菜などは根を分岐し地中に暴れまわっております。市場で言うところの規格外商品が多く育ちます。
この見てくれの悪い栄養価に溢れた健全な野菜を市場原理に委ねようとは、最初から考えておりませんでした。そのため、農園を開いてから特定顧客、つまりは、定期購入のお客様だけに野菜を直接販売する方法を選んだのです。

従って、その特定のお客様への出荷に応えるだけの計画栽培になります。
そのため、野菜の価格は概ね常に一定価格としております。豊作の時季も、不作の時季も同じ価格でお届けすることが公平だと思うからです。
葉物野菜など一時季に急に成長する際は、価格は変えず1.5倍に増量して届けます。
全国的に不作の時は、変動する気候条件に合わせて懸命に工夫しながらも何とか最低量を確保します。
そのため、関東のお客様からこう言ったお便りが届いたこともありました。
この野菜の不作の時季、キャベツが半玉で300円もするのに、一玉300円で良いのですか?と・・・

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           4番の圃場に植えたほうれん草。

今現在、9番→3番→4番→4番の圃場と4段階で種を蒔いている。ほぼ3週間間隔で種を蒔いている。9番は現在出荷中であり、野菜の成長に合わせて計算すれば今後、二ヶ月分強のほうれん草は確保していることになる。ビニールトンネルは開けたり閉めたりすることによって、成長スピードの調節が可能となる。それも永年経験してきた農業者の勘の世界です。

 

資本主義は、市場原理(需要と供給)に任せて置けば、落ち着くところに落ち着く、と言うのが、定説でしたが、それは長い時間を掛けて、実証されて世界が自由と繁栄を謳歌してきました。
しかしながら、ここに来て富みの偏りを産み、個人主義(互いの価値観を尊重する)から自己主義に移り、階層社会から階級社会的なものが形成されつつあるような気がします。
断っておきますが、私は決してコミュニストではありません。むしろ頑張った者にはそれなりの報酬がもたらされるべきだと思っております。
化学肥料や農薬・ホルモン剤を使い、手軽に大量に均一商品を生み出そうとする慣行農業と比べて、草木堆肥の原料を一から集め、労力とリスクを掛け、健全な野菜を生産し、自らの健康だけでは無く、それを買って頂いている消費者の方々の健康を守ろうとする自然循環農業に対して、相応の代金を求めるのは当然だと思っております。

但、社会は、決して一人では生きていけません。
いくら崇高な理念を掲げ、安全で美味しい野菜を生産しているとは言っても、其の価値を認めて頂ける、購って頂ける消費者の方が居なければ、生産者は生きてはいけません。その意味では、我々生産者と消費者は、価値観を共有する仲間達ということになります。
別の言葉で言い換えると、その仲間達は一つのコミュニティということになります。
そうであれば、沢山採れる時季でも、わずかしか採れない時季でも、その農産物の価格を変えるのはフェアーでは無いと思うのです。
その生産者と消費者達は、価値観を共有する一つのコミュニティだと農園主は考えております。

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             出荷作業中の風景

全国二百数十名の定期購入のお客様へ野菜をお送りしている。この仕事を始めてから様々な方との出会いが生まれた。それもまた楽しからずや!

 

 

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.1.22(水曜日)雨、最高温度14度、最低温度2度

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              冬の風物詩ー麦踏み

 

スタッフ総出で麦踏を行う。楽そうに見えるが、結構きつい。

かっては何処に行っても、見られた初春の麦踏みの風景が今ではほとんどの地域で見られなくなっている。ここ、挟間町で数軒の農家が麦を蒔いているだけになっている。

兼業農家では、稲作の裏作として麦を育てていたが高齢化が進み、後を引き継ぐ人も居なくなった。勿論、麦の専業農家はほとんど居ない。

仕方なく祖先から受け継いでいる田圃に稲を植えるのが精一杯なのです。

 

2020.1.22 冬の農園

 今年の冬は、気候が安定していない。厳冬期だというのに、寒気団も中々九州へは降りて来ず、南海上には湾岸低気圧が周期的に顔を出し、曇ったり、雨が降ったりと冬晴れは長続きしない。
いつもであれば、畑全面、ビニールトンネルに覆われ、静寂な白い世界となっているのだが、色合いが錯綜し騒がしく見える。

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冬の厳冬期だと言うのに、今週は一週間ほぼ雨の予報。暖かい南風が吹き、湿った雲を連れてくる。ビニールトンネルを一斉に剥ぎ、雨に当てる。

 

冬季は何もすることが無いだろうと考えるのは、農業を知らない方の言うことで、この時季、春野菜だけではなく、夏野菜の準備が始まる。
育苗ハウス内では、レタス・キャベツ・白菜・ブロッコリー・トレビスなどの春野菜の種蒔きを行っている。同時にトマト・ピーマン・茄子・万願寺などの夏野菜の種蒔きも始まる。
暖かくなる春頃に、夏野菜の主役となる実物(果菜類)の種を蒔いても実が稔るのは、夏以降となってしまい、それこそ秋野菜になってしまう。
そのため、専業農家では、厳冬期から育苗ハウス内で、育苗トレイに種子を蒔く。底には、電熱器を敷き、ビニールトンネルで覆い発芽を促す。自ら種を蒔き苗を育てる専業農家は少なくなっている。最近ではハウス栽培農家は、苗を他から購入しているようだ。

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育苗ハウス内に、底に電熱器を置き、育苗トレイに種を蒔き、さらにビニールで覆い、発芽を促す。これは第一陣の夏野菜と春野菜の苗床です。

本葉が出て、ある程度成長したら育苗トレイからポットに揚げ、草木堆肥で育苗ベットを仕立て、堆肥の発酵熱で根を育てる。
実に定植するまで、3カ月を要することになり、その間、如何に上手に育て管理していくかがポイントとなる。毎年同じことをやっているのに、中々うまく育ってくれない野菜もある。
上記の果菜類の他に、インゲン豆・胡瓜・南瓜・ゴーヤなどの実物もあり、3月初旬頃からその種蒔きが始まる。夏野菜の植え込み(定植)は、遅霜のリスクが去る4月10日過ぎに行う。

一方、春野菜も出荷時期に応じて数段階にて、種を蒔き、こちらも中々に忙しい。
春野菜は、パオパオと言う優れものの不織布を掛けたり、ビニールトンネルで覆ったりして、出荷の時期をずらしながら、1月末頃から定植作業を行っており、この作業は3月まで続く。

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発芽したばかりのキャベツの苗。右側は春菊。

春野菜はこの時季、およそ3週間単位で3~5段階で種を蒔く。この連続した種蒔きで野菜を途切れさせることなく、お客様にお届けできる。

この他に、1月はほうれん草・ツァーサイなどの冬野菜の種蒔き、氷点下を下回らなくなる2月下旬頃からは、人参・大根・蕪類などの種蒔き作業が始まる。
年間百種類以上の野菜を切らすことなくお客様に直接お届けすると言うことは、そんなに甘くはない。
少しでも気を抜くと、あるいは、思い込みが過ぎると、野菜はすぐに途切れることになり、いつも同じ野菜しか揃わないか、度々休園を繰り返さねばならなくなる。

さらに、この時季、数万株植え込んでいる玉葱などの除草作業が延々と続き、春夏野菜に備えて草木堆肥の原料となる剪定枝の破砕作業をしなければならない。
忘れてはならないのが、去年種を蒔いた麦畑の麦踏みと除草作業です。右左に重心を移しながら踏み込んでいく作業は、ほんの数分もするといくら寒くとも額に汗がにじんでくる。畑5枚分約1haあるのですから・・・

このように露地栽培農家は、皆様がご想像する閑寂な冬とは異なり、冬季は中々に賑やかしく毎日が忙しく、寒さに耐え、春の訪れを待ちながら、春夏野菜に向けて働き続けております。

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日曜日開催している農園マルシェで試食用に作っている「おいもダンダン」(石垣餅)

子供たちもお手伝い。蒸し上がった石垣餅を取り出している処。

訪れたお母さんがおっしゃる。ここの子供たちは皆闊達で明るい。子供を育てるのに良い環境ですね。うらやましいですと

この子供たちを見ていると、社会が夢のある環境でいて欲しいと願わざるを得ない。

 

唯、腹立たしいのは、多くの国民が先の見えない将来への不安を持ちながら、生きるために懸命に毎日働いているのにも拘わらず、党利党略のため、あるいは、自己保身のため、国民のためと称しながら政争に明け暮れている野党や、長いものには巻かれろと言わんばかりに、忖度を繰り返している与党の政治家達である。政権を担う与党なら、行政府の奢りや不公正さを是正すべく動く政治家がいるべきであり、
一政治家の独裁的な動きを牽制してしかるべきと思うのです。最も大企業の多くが似たり寄ったりであるのは、この時代が生み出した末期的な構造なのでしょうか。
そう言った思いを持っているのは農園主だけであろうか?
政治に期待していないと答えている若者達は、実に87%も居ると言う現実に、心寒いものを感じる。
彼らもまた、闘うと言う事を知らない。この国は、世界は、何処へ向かおうとしているのか・・・
70代になって、農園主は彼ら若者達にそのことを教え、導く努力をしてきたのだろうか?私達の世代の責任を感じてしまうのです。

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定期購入のお客様2百数十名、農園マルシェに訪れてくれるお客様は、延べ百名ほど、

農園を開いているために、様々な出会いが起きる。お話をする中で、互いにプライベートのことには触れずとも、その方々の生活やバックヤードが見えてくる。

そこはかとなく、さりげなく、心の交流がある場でもあり、やさしい気持ちになったりする。

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.1.15(水曜日)曇り、最高温度9度、最低温度2度

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             ツァーサイ(中国野菜)

存在感があるでしょう。葉緑素の塊です。放射線に伸びた姿が特徴的で、誰かが「コサージュ」のようですねとおっしゃった。主には炒め物にするが、実は煮魚に合う。冬に育つ希少な品種です。暖かい時期に育てると上に伸びてこのようにきれいな放射線状には育たない。

 

2020.1.15 「社会的存在価値」

現在の農産物は、化学肥料・農薬(特に浸透性農薬やサリン系農薬)・除草剤・ホルモン剤抗生物質などの化学的物質に満ちている。有機野菜と言えども、畜糞(飼料に含まれる化学物質や抗生物質)主体であれば、野菜の体内に硝酸態窒素(窒素過多)も含めて有害物質が内包され、人体への悪影響を及ぼす可能性が高まっている。
この危険性に警鐘を鳴らしている学者も多く、それを感じ始めている消費者層も増え始めている。
一方、現代農業は、野菜生産が容易な施設栽培(ハウス等の管理栽培)全盛の時代である。
気候変動・寒暖差・風雨・太陽の光・虫の害などに晒されるため、生産リスクの高い露地野菜から多くの農家は、離れてきている。
それならば、自然の中で逞しく育つ露地栽培・自然栽培農産物の商品化ができら・・・と農園主は考え続けた。それが、先人達の叡智を受け継ぐ日本古来からの草木堆肥による(木に含まれているミネラル分や微生物・放線菌を活かしたまま、土に戻す)自然循環農法であった。現在では、日本だけでは無く世界にも残されていない農法です。

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これは9番の圃場。佐藤自然農園にて研修を終えて、独立農園としてむかし野菜に所属している。7年目の後藤さんの圃場です。この圃場は土作り(草木堆肥による)4年目の「銀ラベル級」の圃場となりました。微生物・放線菌層が深さ18センチ程度までに棲んでいる腐植土になっている。(一年間で3~5センチ、腐食が進む)土作りには時間がかかるのです。

 

農法が決まると、次は、商品ラインが必要となる。
消費者と直接向き合おう(直販)としたら、いつも同じ野菜を送り続けてもお客様はすぐに飽きてしまう。自分がお客さんだったら間違いなく飽きる。
当農園も次第に商品アイテムが増えていき、今では年間百種類を超えている。
毎週、あるいは、隔週にお届けする野菜は一回につき、10~15種類にも及ぶ。それも毎週新たなメニューを加えながらの発送が続く。
農園主は、野菜が途切れないように、頭の中のコンピューターが長い経験に基づき、毎年、毎季、変化し続けている気候条件に対応しながら、次々と作付計画を指示し続けることになる。

さらに、野菜・穀類などの農産物生産と同時並行して模索し続けてきたことがある。
無添加醗酵食品である漬物・味噌・その他加工品の製造であった。
漬物原料の野菜やお米はグループ内農園で生産されているが、味噌及び穀類加工品となると大豆・小麦の生産者はいない。
となると、自然農の大豆や小麦などマーケットには無く、あったとしてもかなり高価なものとなる。
新たな田んぼを借り入れ、畑作転換のための草木堆肥による土作りから始めねばならなくなった。
2~3年の失敗を重ね(時には全滅の年もあった)、ようやく、大豆・小麦・とうもろこしの自然農生産が軌道に乗ってきた。

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由布市下市の後藤さんの麦畑。2018年度の裸麦の収穫風景。この年までは草木堆肥しか施肥しないため麦の背丈が足らず、かなりの量の麦を無駄にした。2019年度より、本格的な収穫ができるようになった。麦は窒素分を好む。そのため、元々低窒素の草木堆肥では、生育は無理だと、農業普及所の研究員が指摘していたが、土作りが進んだ2019年度から収量が飛躍的に増え、定説をようやく覆し、昔ながらの草木堆肥での自然循環農法の在り方を示すことができた。まさしく、古代からの農法の復活であった。

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これが2019年度の裸麦の成長した姿です。しっかりした麦が出来た。しかも、その味香りの豊かさに農園主すら感動した。

 

グループ内に露天原木椎茸の生産者がいる。
彼と出会ったのは、私が由布市で美味しい野菜作りのセミナーを開催した時でした。
その受講生の一人であり、質問を受けた。
「私は、ハウスや施設栽培の原木椎茸は作りたくないんです。あんな実が痩せて味香の薄い椎茸ではなく、露天で、自然条件に晒されて美味しく育った椎茸を作りたいのです」
さらに彼の悩みを聞く。
「それでも乾燥椎茸にしたら、以前のようにはドンコやコウシンの一級商品もそんな施設栽培の乾燥椎茸とそんなに価格の差がつかず、それが悔しいのです」
私は彼にこう言った。
「それなら、一度圃場に行きましょう。その上で、乾燥するためには油代が嵩み、そんなに頑張っても利益は出ないでしょ。露天原木椎茸生産の苦労はよくわかりますよ」
「こうしましょう。その高級ドンコを生椎茸として、出しましょう。我々は自然循環農法で生産している同行者です。私の販売している消費者層にはきっと理解してもらえますので、一緒に頑張りましょう」と・・・
このようにして、絶対にマーケットでは手に入らない最高級ドンコ椎茸がむかし野菜のお客様達の食卓に今では並んでいる。新しい「ドンコ生椎茸商品」の誕生である。
ついでに、もう一つ、彼には庄内産の美味しい糯米を生産してもらい、自宅の竈で蒸した糯米をお餅として製造してもらっている。関東の方にはまる餅は珍しい商品となる。
今ではむかし野菜グループの一つの人気商品となっている。当農園の自然農の大豆からできた黄な粉(大豆粉)がお供としてついている。

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米麹と大豆を等倍で合わせたもの。これからこれをミルで混ぜ込み(砕き)、味噌玉にした後、樽に漬け込む。むかしながらの本醸造味噌(無添加・天然塩)となる。原料全てが自然栽培の味噌は全国にも例が無い

正しくオンリーワンの味噌となる。

 

むかし野菜グループの味噌や漬物・加工品の原料は、草木堆肥施肥する自然循環農法によるものであり、原料の全てが自然栽培となれば、市場に出回っているその他の加工品とは、全く異なる新規開発商品であり、これは市場創造商品と言うことになる。

視点を変えれば、農業の世界でも、差別化商品として、あるいは、市場創造的(新規開発)商品として、様々な可能性があることを、知って欲しいのです。
その裏側には、廃れていく昔ながらの健康であった時代の食文化を、現在の食の安全を脅かされ始めた飽食の時代に復活させたいという強い思いがあります。
70代以上の方にとっては、古き良き時代の食の復活となり、若いお母さん達には、まったく新しい食文化の提案ということになります。
ここに私達のグループは、「社会的存在価値」のある存在であり続けていきたいと考えております。
同時に、唯、「儲ければ良い」との社会的風潮にも苦い思いを抱いており、農園主は、現在、失われつつある事業体の「社会的責任」と言う概念を強く感じております。

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                   野菜饅頭の仕込み風景

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2020.1.8(水曜日)雨後晴れ、最高温度16度、最低温度12度

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      孫たちの冬休み、みんなで幼苗のポット揚げ作業を手伝う

 

2020.1.8 農園お任せ発送について

 

明けましておめでとうございます。

今年も変わらずよろしくお付き合いのほどお願いいたします。

 

17年前、佐藤自然農園を開いて以来、続けている「農園お任せ野菜」と言う配送方式を、農園スタッフ達は当たり前のように行っている。

このことについて原点に帰って改めて考えてみようと思います。


除草剤・添加物・ホルモン剤などの化学物質に塗れた日本の現在の「食」環境に、気づき、不安を感じ始めた消費者は、より健全な「食」を求めて、全国生協などから食料品を購おうと考え始める。
そうした消費者の中には、届けられる農産物、特に(有機)野菜について、違和感を抱く方も現れる。
その違和感は、健全だと信じていた有機野菜が揃いすぎており余りにもきれいであったり、味香りも乏しく筋っぽく美味しくないと感じたり、畜糞の臭いを感じたりなど、様々である。
そのような意識の高い消費者は、ネットで探したり、口コミで紹介され、生産農園から直接農産物を買い求めてみようとする。
そんな消費者の方に対して、農園では、先ずはお試し購入(隔週二回)をお勧めしている。他の野菜との味香りやナチュラルな姿の違いに気がついて頂くために、あえて二回のお試しとした。

唯、残念なのは、そんな意識の高い消費者は、年々減ってきているように思える。

原発ショックは今では遠い過去のものになっているのか、食への関心が薄れてきつつあるように感じるのは私だけであろうか。(被災地は今でも大きな苦しみの中におられるのに)病気の恐れがでてきたとか何か特別なきっかけが無い限りはそんなに増えては行かないのかもしれない。

農園直取引の場合、生産者側から見ると、下記の課題が出る。
○生産者はスーパー(有機野菜専門流通店も含む)などとは異なり、消費者の要望するアイテムだけを揃えるというわけにはいかないし、一農園でそれだけ、多種類の野菜を育てることも出来ない。
有機及び自然栽培の場合、露地栽培が基本となり、季節に沿った旬菜しかなく、気候変動も激しく、一年間を通して安定した生産が難しく、農園出来合の野菜しか揃えられない。
○健全な野菜を求めている消費者に対して、農業者も自分が納得できない野菜を、種類を揃えるために他から取り寄せてお送りする事はしたくない。そこが流通業者との違いである。

こうして佐藤自然農園は、「むかし野菜の邑」グループを結成し、農法・出荷基準を揃え、年間百種類以上の野菜・果菜類・穀類などの生産を行い、「お任せ野菜の配送」と言う事になっていった。

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天原木椎茸栽培農家、田北さんの椎茸の圃場。彼は美味しい野菜作りセミナー開催の際、偶々その受講生であった。「ハウス栽培(これも原木椎茸には間違いない)と露天栽培の価格が違わないのはおかしい」と言っていた。彼の言葉に耳を貸し、それでは、露店原木椎茸の美味しさと品質を消費者に分かってもらおうではないか、と言って、定期購入のお客様への定番メニューとした。

 

このお任せ野菜の配送には、消費者側にとっても、幾つかの課題が出てくる。
○自分が好まない野菜も入るし、経験したことの無い野菜では調理の仕方も分からな い。生産者お任せの野菜が届いても料理のレパートリーの少ない、あるいは、共働きの家庭にとっては送られてくる野菜の量に恐怖感すらある。
○今までは、今晩の献立を考えて、その都度、野菜等の食材をスーパーにて買い求める習慣が染みついている。一方的に送られてくる野菜を使って料理を組み立てる考え方に慣れていかねばならない。
これはレストランではさらに深刻で、素材を活かすことに慣れていないシェフを悩ませる事にもなる。
○一種類の大量の野菜が届いても困るし、家族構成・食習慣の異なるご家庭に、全員一律的な量を届けられても困る。

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どんこ椎茸は、最高級の乾燥椎茸になる。これを生椎茸として、皆様へお送りしている。さらに、彼らはもち米を作っており、丸餅として、むかし野菜の定番メニューとなった。

 

そこで、農園では、毎週「今週の野菜」ブログをホームページ上に掲載し、野菜・穀類などの調理方法などの紹介、年に1~2回、全員のお客様へ、野菜の量・品目の確認・調整なども定期的にインタビューを行いながら、個々のお客様の要望にできうる限り答えようとしている。
一品目の量は食べきれるだけの少量にし、品目数も13~15品目と多種類にし、毎週幾つかの野菜は変更していく。根物・根菜・葉物・果菜・サラダ系のバランスを図り、彩りも考え、楽しい野菜メニューとした。そのためには、定番野菜と特殊野菜も適度に混ぜながら、数段階での種蒔きを行いながら、野菜が途切れることのないような栽培方式を確立していった。

その結果、当初は、送られてくる野菜の量と種類の多さに困惑している方もいたが、次第に、送られてくる野菜に合わせて一週間の献立の組み立てが上手に成り、今までの様に無駄な買い物をして、冷蔵庫で野菜をダメにして行くことも少なくなる。さらに、スーパーへは一週間に一度だけ行けば済むようになり、無駄な買い物を控えるようになってくると言った利点も出てくる。
野菜が美味しいということは、素材を活かした調理方法と味付けを行うようになり、何より、食卓が楽しくなり、家族の会話が進むことに繋がっていく。自然野菜を食べ続けることによって、体は自然治癒能力を取り戻し、家族が健康になっていく。
(そのようなメールが届くことが、スタッフには励みになっている)

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定期配送も17年経過する中で、野菜のみでは無く、様々な加工品などが加わってきた。漬物・味噌・自然農のお米・お餅・黄な粉・干し柿・果物・麦製品・惣菜(コロッケ・野菜饅頭)・お菓子類などである。
時代経過と共に、おかず中心の食生活から、副食・惣菜・菓子類などを求めるようになってきている。
時代のニーズ変化は、健全な野菜だけお届けすれば良いと言うことではなさそうである。その変化に合わせて、当農園もその欲求に応えていかねばならない。

野菜に、バラエティに富んだ加工品が加わってくると、生産者側(届ける者)と消費者側(届けられる者)の意思確認が課題となってくる。

野菜・漬物などの野菜をメインとした食品群は、「お試し購入」時点で、「生産者からのお任せ野菜となり、畑の出来合の出荷となります」との合意を得て、定期購入へと進めている。
つまりは、お任せ配送であるとの契約は成立していることになる。
しかしながら、穀類・穀類の加工品・惣菜やお菓子類・海産物加工品などは、お客様との合意(契約)外のことになり、一方的に生産者側から送り届けるわけにはいかない。
かと言って、品目毎に毎回送るアイテムの確認や合意を取ること(個別オーダー方式)は、生産者側も消費者側も余りにも煩雑であり、現実的では無い。

農園直売所を持つと、訪れる一般消費者の反応や意見を直接、伺うことが出来る。
売れ方を見ていると、加工品の人気度(支持度)が分かる。
そこで、その支持率の高かった商品と食卓への必要度を秤に掛けて、その商品へのインタビューを添えて、一回のテスト販売を試みることにした。その商品に対して、「必要なし」の回答を寄せられた方には、今後の定期発送便には入れないこととし、お客様の意思確認を行う。
又、自然農米と同じように、ケーキなどのお菓子類については、「個別オーダー方式」を採用する方向で検討し始めている。
このようにして、オーダー方式による加工品の発注と言った双方にとって煩雑なことを避け、2百数十名の定期購入のお客様の需要満足度を保とうとしている。

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農園で、定番の惣菜を一品作ろうとした。ジャガイモは美味しい。玉葱も美味しい。それだけでは、評判のコロッケにはならない。折角、添加物を加えないのであれば、パン粉も自家製で行こうと決めた。

古代麦ブレンドの小麦粉でパンを焼き、砕いて手作りパン粉を開発した。これが中々に面倒ではあるが、ジャガイモ等の野菜に麦の香りが加わった。これで、どこにもないコロッケになった。

 

この「農園お任せ配送」は、「むかし野菜の邑に集う消費者の方々の健全な食を支える」と言った趣旨で始めた方式であり、それだけの自信と自負心は持っていた。
それ故、多少強引に野菜等のメニューを押しつけてきた経緯がある。
(勿論、体が拒絶反応をする野菜まで押しつけていた訳では無い)
その根底には、農園には、「食育」と「健康」と言うテーマがあるからでした。
どの野菜も何かの機能と役割を持ってこの世に存在している。あまり意味の無いサプリメントに頼るのでは無く、その自然界での大きな役割を負って生まれてきた数多い種類の野菜達を、好き嫌いせずにバランス良く、毎日適量に体に取り込むことによって、人は健康で居られる。
例えば、鉄分を多く取り込む野菜、カルシューム・マンガンを多く取り込んでいる野菜、ビタミンA・Bなどの細胞を活性化させてくれる成分を多く持つ野菜、あるいは、腸内細菌を活性化してくれる乳酸菌他の菌類も棲んでいる。それらが複合的になって一つの役割を担っていることもある。

今年は、「定期購入方式」・「農園直販」の両面での活性化を図っていかねばならない。そして、この農法を未来へと繋ぎ、ここに集う生産者と消費者が共に語り合える「むかし野菜の邑」を目指して行こうと、農園主は考えている。

農園日誌Ⅲーむかし野菜の四季

2019.12.25(水曜日)曇り後雨、最高温度14度、最低温度3度

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               3番の圃場の冬景色

 

今年は観測史上最も温度の高い冬となっているそうだ。

温暖化が進んでいるのでしょうね。

例年の冬は白い世界に変わっているのだが、今年はビニールトンネルの数も少なく、

グリーンが目立つ畑となっている。未だ氷点下を経験していない。

 

2019.12.25 今年の一年間を振り返ってみれば・・

今年も今日で出荷は終わり、農園は10日間ほどの休園に入る。
農作業は、由布市庄内の麦蒔きも終わり、数張りのビニールトンネルを張り終えれば今年最後の仕事は終わる。問題だったのは、草木堆肥が底を付き来年早々の畑作りができないこと。
丁度、原料の草が手に入り難い季節となっており、急遽、周辺の草を刈り、掻き集め、何とか一月中の植え込みのための堆肥は確保した。
長い間行ってきた自然栽培農園の倣い症で、野菜の在庫が無い、売上が減った、などと言うことより、むかし野菜の生命線である草木堆肥が無いことのほうが、より農園主の心を貧乏にさせてくれるから不思議である。

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こちらは5・6番の圃場。来春用の野菜、ここには色彩豊かな蕪類・大根系の野菜が多く植えられている。

定期購入のお客様から今年はブロッコリーが届かない。好きなので植えてください、とのメールが届いた。植えているのですが、育っていないのです。一見順調な農園風景に見えますが、実は、今年の異常気象で、野菜の歯車が狂っているのか、株は大きくなっているのですが、ブロッコリーの実の成長が遅れているのです。

宅配による定期購入のお客様の場合は、お任せメニューであるため、野菜80%、漬物・味噌・穀類セット(麦ご飯・ブレンド粉・黄な粉など)15%、干物・果物・その他加工品5%と言った構成比率である。
これに対して、今年から始めた農園マルシェ(直販所)に訪れるお客様のお買い上げ頂く構成比率は、野菜45%、穀類15%、菓子類40%となっている。直売では、野菜の購買量が少ないのです。
直売所では、野菜60%、穀類等20%、菓子類20%の販売構成が望ましいのですが・・
関東においても野菜を主とした専門店は、弁当・惣菜・菓子の比率が上がって行き、所謂八百屋さんそのものが立ち行かなくなっている。

一般家庭では、共働き家庭が増えて、中々料理をしなくなっていることも大きな要因の一つではあるが、専業主婦のいるご家庭でも同じような傾向が続いている。
野菜や食材に気を掛けて、家族の健康を考えて良品を選び、家庭料理を重視し、不要な買い物を倹約する賢明な母親像も今では遠い過去のものになっていくのかもしれない。

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当農園では、安全で栄養価の高い野菜を生産している。健全な野菜作りには、手間とコストが掛かるため、一般市場と比較して、1~2割ほど高い。お客様の買い方を見ていると、価格が高いため、野菜を前にして躊躇している姿が垣間見える。
他方では、お菓子類(こちらも手間が掛かってはいるが)にはすーっと手が伸びる。菓子類はほぼ毎回完売状態となっている。ありがたいことではあるが、やや複雑な気持ちになる。

定期購入されておられるお客様へは、隔週配送の場合、野菜だけで14品目程度、漬物味噌・穀類・干物などが2品目程度お送りしている。
初めて定期購入される方の多くは、少量多品目なのが良いと喜ばれているが、中には、野菜が消費できなくなり、中止されたり、月一購入に変更なされる方も少なくはない。
その都度、調理例の提言や形にこだわらず野菜を使いまわすことをお勧めしてはいる。
唯、日本人の食生活は、野菜をほとんど使っていないのだな!と実感させられることが多い。
10年以上ご継続されておられる方も多く、その方々は、総じて野菜が好き、と言う訳ではなく、料理を楽しんでおられる方ではないかと推察される。野菜が美味しいと食卓が楽しくなり、家族だんらんが生まれる。それを願いながら農園から産出される多種類の野菜を組み合わせてお送りしている。

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ネット記事を見ていたら、「安倍政権が切り捨てる日本の食と農。日本だけが輸入する危険な食品」「日本の食と農が崩壊する」などのニュースが飛び込んできた。
これだけ、本音と建て前が分離している政権も珍しい。「日本の農業は守る」と言う言葉の裏には、すでに経済産業省が進める自動車・鉄鋼・電力などの業界優先の政策が打ち出されている。
その輸出を引き替えにして農産物輸入関税を大幅に引き下げ、農産物自由化を進めている。先ずは酪農家にしわ寄せが行っている。牛肉の食糧自給率はすでに36%、豚肉は48%まで低下。
牛乳については北海道の酪農農家は壊滅状態に追い込まれている。
欧州・アメリカなどでは、農業(特に露地栽培や酪農)には手厚い補助金(ほぼ生産額と同額100%の補助)が出されている。国内の食糧確保と国土保全のため、安全政策としての補助金の姿がある。
日本では、補助金内容に制約が多過ぎて、偏り、しかもわずか20~30%程度に過ぎない。日本では農業政策も相も変わらず「助けてやっている」と言う考え方である。これでは、欧米と農産物の価格競争をしても勝てるわけは無い。実にアンフェアーである。ちなみに当農園は農協出荷はしないため、国から1円の補助金ももらっていない。

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自然栽培による大豆の圃場。枯れ葉剤である除草剤を使わないため、草に覆われ、収量は慣行栽培(化学肥料・除草剤使用)の1/3以下となる。それだけに自然栽培の大豆や穀類は単価も高くそれだけ貴重品なのです。

アメリカへの関税引き下げによって2035年には牛肉の食糧自給率は10%以下に、牛乳は日本から消えていく。(当然に国産乳製品もです)
穀類・果実類が次に来る。遺伝子組み換えや成長ホルモン剤・ゲノム編集作物の解禁が進むであろう。
2019年、すでに食品にゲノム編集食品の表示義務も無くなりました。アメリカでも危険と言われ一部販売を自粛している発がん性の極めて高い除草剤成分「グリホサート」や成長ホルモン剤の使用表示もしなくて良くなっております。
日本の食の安全神話はすでに無いことは前回もお伝えしました。唯、それらのことに関心を示そうとしない消費者の意識はどうしたものか?日本全体がモルモット化しようとしているのにです。

欧州では、1989年から成長ホルモンを使用したアメリカ産の牛肉を輸入禁止にしています。中国もロシアもです。

安全・健全・品質には、コストがかかると言うことを忘れてはいけません。我々がすべきことは、安全で安心なものを作ってくれる生産者とそれを支える消費者が手を結ぶことではないでしょうか。
欧州のスイスでは、1ケ80円の卵のほうが1ケ50円の卵より売れているそうです。
1ケ50円の卵は生産現場も分からない輸入品だからです。

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むかし野菜には、5人の若いスタッフがそれぞれ独立農園主として、共同作業を行いながら働いている。健全な食作りを目指して通常の農業と比較してかなり過酷な労働を休みも無く行っている。

彼らの支えは、皆様の健全な食を支えているという自負心のみです。

 

今年の一年間は、送料一斉値上げと約6か月間のホームページ閉鎖(アクシデント)によって、お客様が減少し、苦しい一年間でした。
家計が苦しく定期購入を泣く泣く断念しなければならないと言うメールが寄せられる際は、こちらも辛くなってしまう。送料の大幅値上げには参りました。
それでもむかし野菜を慈しんで頂いたお客様にはこのようにお伝えしております。
エンゲル係数がどうのと言う前に、健全な食を切り詰めるより、無駄な費消を抑える努力をなされたほうが良いと思います。ご家族のご自身の健康は決してお金では贖えないものですよ。と・・・

果たして来年はどのような年になるのか?各国が自国主義に偏り始め、権力が集中してしまっている。政治や行政に、腐臭が漂っている。権力者は自分を律する事を知らない。国民のためと言う言葉がいかにも軽く空しく響く。取り巻きは権力者に忖度し、物事が歪められていく。
それが社会にも拡がり、権力者への忖度が会社という狭い世界で蔓延しており、権力者の監視の役割を担うべき報道も真実を避けて行こうとしている。

自己に籠もり、他を思いやらず寛容性を失い、政治や社会には無関心を装う。負の連鎖が続いている。
まるで、第二次世界大戦前夜のような風習が拡がっていく。

一人一人が自立し、未来のある子供達の将来に思いを馳せることが大切なのでは無いでしょうか。
そうであれば、他を思いやり、政治社会に無関心ではおれないはずなのだが・・・

次週は、農園日誌はお休みを頂きます。
来年は、皆様にとって良き年となるようにお祈りしております。

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農園日誌Ⅲ-むかし野菜の四季

2019.12.18(水曜日)曇り、最高温度18度、最低温度11度

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          弥富ブレンド粉で焼いたパウンドケーキ

 

 「麦に味香りがある」このことに皆様は驚かないでしょうか?

農園主は驚きました。去年のことですが、草木堆肥歴4年目の穀類の圃場から採れた麦を食べてみました。最初は弥富ブレンド粉(筑後いずみ小麦と弥富もち麦)をだんご汁にして食べた際、もともちした食感の他に、口の中に広がる麦の香り、そしてその後に来る麦の味にびっくりしました。

むかし農法で栽培した麦は美味しいのです。むかしの人達はこれを食べていたんだな!と実感した瞬間でした。

 

 「麦物語」-2

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今週から麦蒔きが始まった。去年と同じく小麦・裸麦・弥富もち麦(古代麦)の三種である。
今の課題は、大豆・麦類・とうもろこしなどの自然栽培雑穀類による加工品の商品開発、そして、消費者への紹介をしながらの販売活動であり、ブレンド粉を使ったむかしおやつ作りの普及活動である。
何故自然栽培の穀類にこだわっているかというと、今の穀類は、除草剤が恒例化しており、品種改良が進み過ぎて、あるいは、輸入穀類はポストハーベストの問題が大きいなど、本来は命を繋ぐ筈の「糧」となる穀類が健全性からは程遠い存在になりつつからです。むかし野菜としては、野菜・穀類・加工品の三つを食の柱として考えて行こうとしている。

現代病(アレルギー・癌・アトピー等)への対策として、草木堆肥を使って、除草剤を排して5年掛かりで土作りをしてきた圃場での穀類生産(自然栽培)がようやく軌道に乗りつつある。

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加工品の開発に当たって、折角自然素栽培の原料ができたわけだから、その素材を活かしながら危険と言われている化学物質の排除を考えざるを得ない。
加工品製作に、ベーキングパウダーなどの化学合成添加物の塊を加えたら意味が無い。

グルテン含有量の少ない中力小麦の半全粒粉と古代麦の全粒粉の素材は、ドライイーストでパンを焼いても、中々に膨らんでくれない。
商品開発の方向性として、中力小麦粉と弥富麦の粉のブレンドを行った。
当初、小麦粉8:古代麦2の割合で粉にしてみたが、伸びず纏まらずで失敗。
それではと言うことで、小麦粉9:古代麦1の割合でブレンドし、試作を繰り返した結果、ようやく何とかやや硬く食べ難さはあるものの、良い結果が出せた。

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それでもイメージしているパン他の商品開発ができずに悩んでいたら、うちのお客様であるNご姉妹がこれらの素材に興味を持って頂き、パン作りにご協力を頂くことになった。イースト菌の代わりに天然酵母を開発し、小麦粉を膨らませるために、古代麦から起こした天然酵母を元種に使用する事にしてみた。

※この弥富もち麦(古代麦)は、味香りが強烈であるなど個性が強い。その反面、グルテンはほとんど無く、膨らまず、伸びが悪く、纏まりにくいなどの難点がある。
唯、この品種改良を全く行われていない麦は、グルテンフリーと言うだけでは無く、ハイグルテンの優性遺伝子とは真逆にむしろ劣性遺伝子(抗体反応を抑える)を多く持っていると考えられる。
人間の麦に対する抗体反応を抑える役割を担わせようと考えた訳です。勿論、麦アレルギー症状を発症させないためです。この試み(使用実験)は未だ改良中ではあるが、一応の成功を収めている。

※抗体の異常反応がアレルギーであり、ハイグルテン増加のための無理な品種改良の結果、麦アレルギーを引き起こしたわけです。人の体(抗体)は異物が入ったと感じて排除に乗り出す作用がアレルギー反応と考えられます。現在の科学では、このことの解明や明確な解決策を未だ見いだしておりません。

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        コロッケに使う自家製パン粉(ブレンド粉使用)

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ここから、商品開発が次第に加速し始めて、おいもだんだん(石垣餅)・やせうま・クレープが商品として店頭に並び始め、パウンドケーキ・焼き菓子・ドーナツ・クッキー・ビスケット、そして、ハードパン等を製作した。アレルギー対応も考慮して、卵・ベーキングパウダー(亜鉛化合物)を排除させるという徹底ぶりであった。
次に考えたのが、消費者には馴染みのある日常的に食卓に並べられるコロッケである。
旨みを引き出すために、玉葱・葱・セロリなどを通常より倍以上加えた。
これもパン粉を使うため、アレルギー対策として市販のパン粉を避けて、ブレンド粉を使用したハード系パンを焼き、それを砕いてパン粉とした。実に手間のかかる作業行程となった。
販売価格は「農園の売り」の商品にこだわり、1ケ100円とした。原価は加工手間を除いても50%を越していた。完全な赤字となる。

今年、春頃から始めたささやかな農園マルシェの商品棚も、菓子類・コロッケなどが加わり、随分と賑やかになってきた。
女性陣の商品作りの奮闘と男性陣のビラ配りなどにより、徐々に周辺のお客様にも知られるようになってきており、マルシェに訪れて頂くお客様も新規客50%、お馴染み様50%と半ばするようになってきた。
水曜日は近在の方が多く常連さんで支えられ野菜中心に売れており、日曜日は新規客が多く、比較的遠方の方も混じり、加工品中心に売れている。
野菜饅頭は今では農園の定番商品として定着しており、ケーキ類は完売状態、コロッケは10ケ・20ケと注文が入り、お客様もそれが目当てで訪れてくれる方もいるほどになっている。
農園主としては、喜んで良いのか、憂えて良いのか・・・うちは野菜屋さんなのにと、複雑な心境ではあるのだが・・・

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そうした中、課題となっているのが、ベーキングパウダー(膨らし粉)も使わず、グルテンの少ない麦を使い、アレルギー対応など、健全な食の在り方をご提案しているのだが、何分にも生地は硬く、出来上がった商品は歯ごたえがあるものの、一般商品とは距離がある。
直売所に訪れる消費者の方には、なじみの薄い、と言うか、今ではマーケットを席巻しているふわふわとした食感とは程遠い特定商品群とならざるを得ない。
農園の商品コンセプト(健全な食の提案)を守りながら、如何に一般消費者に近づけていくか、あるいは、
あくまでも距離を置いたものとしていくか?大きな課題となっている。
来年は、この課題と向き合う一年となりそうだ。

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別府の保育園にて、父兄会などの催し物がある日、むかし野菜のスタッフ一同がやせうまなどをその場で作り、無料試食会の一コマ。当日は、農園人気の野菜饅頭をお母さん達の手によって販売された。

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この保育園に通っておられる子供さんの母親が、農園の定期購入のお客様であり、その子供さんにこの野菜饅頭を食べさせたところ、小麦アレルギーを持つこのお子さんに何らのアレルギー症状も発症しなかった。

それが契機でこのイベントへの参加となった。