農園日誌Ⅱー「活きること」PART31

2019.8.28(水曜日)雨後曇り、最高温度30度、最低温度24度

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                     黒大豆の花

ちなみに白大豆の花は白、黒大豆の花は薄紫色となる。

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黒大豆の畝

もう何年になっただろうか?
枝豆を作ろうと、最初は白大豆の枝豆を
育てていたが、若しかして、黒大豆の枝豆
の方が美味しいのでは?と思い立って、
やり始めた。
今では初秋の味覚の
一番手となるほどの
人気がある。

処が、これがまた難しい。種蒔きからして発芽状況が著しく悪い。
そこで行ったのが、予備のポット蒔きを並行して行うようになってからは、何とか
畝に空きが無く、育つようになってきた。
次に課題となったのが、例年7月10日~20日頃種蒔きを行うが、実が入る年と入らない年が交互にやってくる。
堆肥の量が多いと葉ばかり茂り、一向に実が育たない。畑によってやや異なるが、
通常の堆肥量の半分から1/3程度が丁度良いことが分かる。但し、焼き灰などは多目に施肥する。
これで栽培方法が分かったとしても、やはり、出来不出来に大きく差が出てくる。
つまりは、近年の気候変動が大きく影響しているということになる。
そうなると、最早、農業者の勘しかなくなる。
と言うことで、今年はどうやら当たり年のようだ。葉の茂り具合からみて、なんとかなりそうだと、ほっとしている。


{活きること」PART31

2019年8月  先行きの見えない社会経済に冷え込む消費マインド
 
大企業は販路を求めて世界進出を加速し、グローバル経済化が進み、国内では、社会構造が階層社会から富める者と貧しき者に分かれる階級社会へと変化しており、各国の国民・大衆のフラストレーションや不満が高まり始めている。
その不満を抑えるために、自由貿易を標榜しながらも政治は自国主義に偏り始めている。
各国の利害と民族主義の台頭、それに加えて国内の貧富の差の拡大により、国同士、国民同士の利害対立起こり始める。
冨を求めるのが当たり前の資本主義経済原理では当たり前のことではあるが、明らかに社会経済構造は不透明さを増し、政治への不信感、諦め、そして無関心が国民の間に拡がり始めている。
 
経済の陰りや政治への失望感が見え始め、先行き不透明な世相になって、各家庭では節約に走り始めている。日本では平和が長く続き、贅沢に慣れており、生活レベルを落とすことは難しくなってきている。
そんな中、先ず起きてくる現象は、生活レベルは維持しながらも食の支出を落とすことから始める。
わずか8年前の原発ショックの際には、一時的に食の安全に対する関心が高まり、少しでも健全な食を求めて動き始めた。
処が、その関心も薄らぎ、経済の先行きの不安が見え始めると、少しプレミュアムな健全な農産物へのニーズは急速に落ち込んでいる。明らかに消費マインドの冷え込みである。
消費者の多くは少しでも安い野菜を買い求めようとする。
如何に安全で栄養価があり、美味しくとも、そんな消費者にとっては、野菜は野菜でしかない。
となれば、健全で品質の高い農産物生産販売だけでは、それに共感してくれる消費者の数は減り続けることになる。今回の宅配料金の一斉値上げは、偶々、一つのきっかけに過ぎないのかもしれない。

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今年諦めかけていた茄子が努力の結果、何とか復活し始めている。
剪定作業を終えた茄子の畝の風景。

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葉が茂り過ぎると、太陽が当たらず、
風通しが悪くなり、ミツバチによる受粉
もし難くなる。

そこで小まめに
剪定・誘引作業を
行い続けることになる。
これがまた大変な
作業。根気と繊細さが要求される。


AIを駆使した農業経験も農業ノウハウが乏しくともできるであろう施設栽培
とは異なり、露地栽培・自然循環農業は、少なくとも10年以上の経験が
必要となり、そこで培われた技術と勘の世界である。
如何に、安全で、栄養価に富んだ、美味しい野菜を育てるか?に命を掛けて取り組む姿は、やはり美しいと思うのだが・・・・!


かと言って、自然循環農業、安全かつ品質の高い農産物生産のコンセプトを変えていこうとも思わない。
癌・アトピー・アレルギーなどの現代病に苦しんでいる方もおられる。
家族の健康を考えて食べるものに注意し、わざわざむかし野菜を取り続けてくれるお客様もおられる。
そんな方々からの様々なメッセージが送られてくる。
「いつも送られてくる箱を開けるのを楽しみにしている」「風邪を引かなくなった。虚弱体質が治った」「不妊症治療が辛かったです。むかし野菜のお陰で子供を授かりました」
「台風被害は無かったですか?畑は無事でしたか?無理しないでください。野菜はいつまでも待っています」「冷蔵庫が空です。むかし野菜で毎日が回っております」
「頑張ってください。この農業を残してください」などなどの励ましのお便りによって、私達は支えられている。
 
ここは、踏ん張り時です。一時、シャットアウトされていたホームページも
何とか回復してきた。
それに伴って、少しですが、お客様のお問い合わせのメールも届くように
なってきた。
若手スタッフの自立に腐心しなければならない。販売チャネル(販売方法や
販売先)を増やしていく工夫や努力もしなければならない。むかし野菜の
取組をより多くの消費者に知ってもらわねばならない。
体調は思わしくは無いが、自分で始めた事だ。最後まで活ききろうとしている。

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降り続く夏の長雨の中、出荷作業が終わった若い二人のスタッフにビーツの種蒔きを強行させた。
この二人は未だ20代前半。この後、長い農業者としての歴史が待っている
それだけに、責任の重さが農園主の方に乗し掛かる。
そして、むかし野菜の邑の将来は、かれらの未来は、如何に消費マインドが冷え込もうとも、全て全国の消費者の思いの強さに掛かっている。


農園日誌Ⅱー「活きること」PART30

2019.8.22(木曜日)晴れ後曇り、最高温度35度、最低温度27度

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      「有機野菜とは何?」「新たな市場を求めて」講習会開催

2019.8.21(水)佐伯文化会館にて、有機農産物の商品化、有機の里作りなどについての講習会を開催。
農園主を招聘したのは、「佐伯認定農業者の会」でしたが、そのバックには佐伯市
付いておりました。

佐伯市は、南郡6カ町村が合併し、養殖・水産加工の漁村と露天原木椎茸栽培などを行っている広域の山間地域から成り立っており、観光も、農業・漁業(水産加工)も振るわず、次なる地域経営資源を模索している。
日本中どこにでも見られる過疎が進行している典型的な地域である。

佐伯市長が宮崎の綾町のような有機の里にしたいとの思いから、今回の講習会がスタートしたようだ。
60名あまりの方々がお集まりいただいたが、農業者の方の多くは、これもまた、
唯我独尊、わが道を行くことが多い。
どうしても纏まりが無く、このままでは掛け声だけに終わってしまう。
講演の当初は、その気風が会場を覆い、どこか「聞いといて遣ろう」の雰囲気から始まった。
有機JASの話から始まり、高窒素栽培の問題点、抗生物質や薬品の多く含まれている配合飼料で肥育されている家畜の糞による土壌汚染へと進み、佳境の草木堆肥による低窒素栽培及び完熟野菜の話まで進んだ頃、ようやく、皆さんは聞く姿勢に変わって来始めた。
なにしろ、与えられた時間はわずか1時間半。これでは、障りの話で終わってしまう。

次に、話題を一気に変えて、農業経営に不可欠なマーケティングの方向へ舵を切る
みんなには見慣れないマーケティングマップ(消費者層の細分化)の説明に移ると
流石に興味が湧いてきたのか、全員が集中し始める。
なかには付いてこれず、あくびをする方もいましたが・・・

商品開発から差別化戦略、市場創造へと一気に飛び、消費者とのコミュニケーション戦略や戦術まで話を進め、ついには時間切れとなった。
多くの農業者はまるで怖いものをみるような、違った人種に接したような顔に変わっていた。
唯、質問の時間に移ると、農園主はいつの間にか先生に格上げされていたようだ。

この会での大きな収穫は、実は、以前にも当農園で行ったセミナーに参加して頂いていた40~50代の女性層の目が次第に光を帯びてきたようにキラキラと輝いてきたことであった。今すぐにでもやりたいとの思いが伝わってきた。

その後の懇親会に佐伯市長も出席し、「やあやーご苦労様でした」とのこと。
どこにでも居る市長の顔でした。
二時間の懇親会で、一時間半市長と対座し、その思いは十分に聞いた。
最後にこのように申し上げた。
「官公庁は、いつでも、ことが進行している最中、最後は必ず梯子を外します」
「今まで、7カ市町村の首長さんと地域再生のお話をさせて頂きましたが、いつもそれでした」
「貴方は、何年間市長を続けるおつもりですか?」と聞くと、「ことが成るまで、10年間は続けるつもりです」との回答を得られた。
その顔は市長の顔から、「社長の顔」に変わっていた。


「活きること」PART30

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                      農園直売所

2019.8.7  農園直売所開催と商品開発
 
 農業者が自立していくためには、農協を初めとした流通に依存した量産型・規格型農業では無く、農産物の品質を高め、少量多品種栽培により、消費者への直接販売を基本とした農業を確立していこうと始めた自然循環型農業であった。
高品質野菜販売を行うためには、大分市場は余りにも弱く、そして幼い。
最初は知人縁故を頼り、個別に宅配を行ってきたが、やがて、県外、特に関東市場にインターネット販売を行えるようになってからは、大都市を中心としたネット通販を主力に行ってきた。
唯、品質に頼った口コミによるネット販売の限界も密かに感じてはいた。
特に、農園の研修生も増え、圃場も拡がりを見せ始めた中では、どうしても地元の大分市場への展開は必要と感じていた。
丁度、その頃、「宅配料金の大幅な引き上げ」と「インターネットが使えない」時期が重なる外部環境の急変により、農園は顧客数のジリ貧、売上総額の減少の危機に陥っていた。
さらには、農園主も歳を重ね、体力の限界が見えて来ており、同時に、若い農業後継者への引き継ぎの時期でもあった。
但し、農業の自立とは、農業生産だけでは無く、農業経営も出来なければならない。
農園主は、このような状況の中、若い農人達に自立を促すために、しばらくは動くまいと決意していた。
ほぼ一年間農園主は動かず、手も打たなかった。
7~8年前から次の時代を担うであろう若い農人達を育ててきた。みな、他の農園に行ったら立派にやっていけるだけの能力は持ち、それなりに頑張っており、一人前なのかもしれない。
但し、いつまでも農園主が生産管理を行い、事業の方向性を示し、次に何をやれば良いかを示唆し続けることはできない。
目まぐるしく変化する気候に対応し、野菜を切らせず、生産し続け、また、他の流通には頼らず、自力で販路を確保し、みなで自立していくためには、何かが足らない。
 
それは、おそらくは、主体性の欠如であり、事業を背負おうとする気迫の弱さであり、臨機応変の危機対応能力の経験の無さであろう。単に事業推進の経験が無いだけではないと感じている。
彼らに一番足らないものは、克己心であり、反骨心ではなかろうか。
農園主はそれ故、対策を敢えて示さず、唯、待ち続けてきた。それは私にとって忍耐の塊でもあった。
私は、時代が違うと言われても、常に放置され、叩かれ続け、それでも、一人で悩み考え、途を切り開き闘ってきた世代の一人である。
この厳しい状況をスタッフ自らの力で乗り越え、この危機が彼らの成長を促してくれることを願うしか無い。皆で知恵を絞って、行動を起こし、もっと頑張れと言いたい。彼らの目の奥にその光が灯されることを祈る。

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とは言っても、彼らにこの難局に立ち向かえるだけの知恵も経験も即応力もない。
2019年初春、先ず指示したことは、農園直売所を開くことであった。
大分市全域にマーケットを求めるのであれば、本来は、日曜日オープンであったが、その準備も経験も出来ておらず、主婦である女性スタッフからは、土日は休みたいとの意向が出され、取り敢えず、近隣の消費者をターゲットにした水曜日開催とした。
チラシを配り、団地の公民館に告知広告を貼ってもらい、口コミを誘発した。
土日でないために、熟年主婦層の10数人の常連客ができたが、やはり、共働きの多い若い主婦層は取り込めず、拡がりは弱かった。
団地新聞に掲示し、告知広告を出したり、住宅及びリフォームの「ベツダイ」のキッチン展示場で料理体験会を定期開催したりの活動を行ってはいるが、その効果は薄い。
 
若いスタッフ達が主体となって、インスタグラムやフェイスブックへの投稿も行うようにした。
さらに、幾つかのネット市場への出店をやってみるのも良いだろう。
それなりの告知には役立っているが、大きな拡がりはまだまだ望めない。
 
次には、日曜日農園マルシェの開催を示唆した。今度はスタッフも納得したようだ。
健全で品質の高いややプレミュアムな価格の野菜に対する関心度が今一である大分市場では、野菜だけを目的にした購買活動は弱い。そこで、農園マルシェに手作りのおやつや中間食などの商品群を置くことによって、訪れるお客様を楽しませることにしようと考えた。
アレルギーにも対応できる自然栽培の農園で生産した穀類を使った加工品の商品開発を指示した。
 
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・野菜万頭
自然栽培で育てた古代もち麦と小麦のブレンド粉を皮にした野菜万頭はすでに多くの方からの支持を得ている。野菜の具も美味しいが、何より麦の味香りが噛むほどに伝わってくる。

・コロッケ
 じゃがいも・玉葱は豊富に揃う。玉葱・ニンニクを大量に炒め、豚肉を加えたじゃがいもコロッケ。
衣は自然栽培で育てた麦のブレンド粉でパンを焼き、パン粉を作る。これで小麦アレルギーの子供さん
も食べられるむかし懐かしいコロッケができる。リーズナブルな価格にしようとしている。

・ビスケット・ドーナツ・パウンドケーキなどの菓子類
 ブレンド粉に大豆粉を混ぜ、とうもろこし粉でサクサク感をアクセントにする。
 全て農園の粉で焼いたビスケットとなる。自然栽培で育てた粉は甘みが強
 く、砂糖はわずかにする。

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・弥富パン
 半全粒粉の小麦に全粒粉の古代もち麦で焼いたパン。ハイグルテン小麦粉
 は使用しておらず、アレルギーなどの現代病にも対応できる。従来のパン
 とは異なり、ずっしりとお腹に溜まり、食事パンとして考えた。

 ブレンド小麦粉と自家焙煎した大豆粉を使用した噛み応えのあるやせうま
 となる。

・石垣餅
 ブレンド小麦粉にさつまいもを練り込み蒸かしたおやつ

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ブレンド粉のお焼き(流し焼き)体験会
 クレープ状にして焼いた台に、あんこ・黒砂糖・黄な粉・野菜・ハム・
 チーズ・果物などをトッピングして家族で楽しむおやつ作りを体験。
 
以上に加えて、麦ご飯セット、麦茶、ブレンド小麦粉、蒸し大豆などの加工品を揃える。
 
おやつ、中間食、野菜、穀類、製粉、発酵漬物、醸造味噌などの商品ラインを拡充し、その原料全てを、
自然栽培を行っているグループ内で賄う。当農園で販売する全ての商品が自然栽培による商品群に揃えることによって、健全性を確保し、おそらくは、日本中、何処にも無い農園マルシェとなる。
何より訪れる消費者に、むかし健康であった時代の食生活を体感してもらい、「安心して食べられる」・「楽しんで買える」・「学べる」と言う農園コンセプトを作ろうとした。


農園日誌Ⅱー「活きること」PART29

2019.8.14(水曜日)雨後、暴風雨、最高温度31度、最低温度24度

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 努力の甲斐あって、ようやく復活し始めた茄子。
一時は、葉は黄色く変色し、害虫に喰われ、枝は細く、根は黄土色に変色し、白根や髭根は見られない。正しく瀕死の重症であった。
夏野菜に茄子が無い。これは異常事態である。
原因は実はよく分かってはいなかった。5~6月の成長期に渇水となり、全くと言って成長していなかった。その後の7月豪雨が降り続き、日照不足と根に土が詰まり、呼吸困難になっていた処までは分かっているだけである。

細く枯れ始めていた枝や葉っぱは落とし、新しい芽を吹かせる試みや堀り上げて、
新しい畝に植え替えるなどの手を尽くし、8月頃になってようやく青葉が出始め、
ついには、花が咲き始めていた。
4月定植した苗の内、約半分が生き残ってくれた。

8月14日、大型の台風10号が近づいている。直撃に近い。
果たして、夏野菜のどれだけが生き残ってくれるのか。
今日は、数日掛けて台風対策を行った後の締め作業を行う。
水曜日出荷を早々と終えて、皆を帰らせた。後は祈るしか無い・・・
携帯電話に避難警告が鳴っている。

「活きること」PART29

2019.4.21 春の農園体験会開催

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悪いことは重なるもので、今まで所属してきたヤフーのインターネット取引が終了するといった事態になった。急遽、新たな所属先を探し、佐藤自然農園のインターネット取引は継続したものの、ヤフーの残像が残り続け、佐藤自然農園とアクセスしても「インターネット取引は終了しました」の表示が出続け、結果として、消費者との繋がりが断ち切れてしまった。
ネット取引で消費者市場と繋がってきた農園としては、メクラ同然になってしまった。
今までは、取引中止の顧客より新規取引のお客様の方が上回っていたため、定期購入の消費者は漸増していたのだが、定期購入のお客様は減る一方の展開となった。
 
農園主はスタッフ全員を集めてこう切り出した。
「現状、農園のお客様は往事の半分となり、漸減し続けている。みんなはどうしたらよいと考えているのか?」と聞くと、スタッフは、「お客様は離れていっており、不安です」と・・・
私はこう切り返した。
「当農園の野菜や農産物加工品にお客様は信頼して頂いている。今まで貴方達はそんなお客様の大切さを真に肌で感じたことは無かったのでは無いか」
「離れているのでは無い。お止めになられたお客様達は、今回の送料大幅な引き上げに戸惑い、苦慮し、やむを得ず取引の中止を決断したに過ぎない。

「それでも私達の健全な野菜作りに共感して頂き、留まって頂いている定期購入のお客様にもっと感謝すべきです。同時にもっと自信と誇りを持ちなさい。貴方達は、消費者の皆様が作りたくとも作れない野菜をお客様(仲間達)に替わって生産しているのです」

「今までは、農園主が作り上げてきたむかし農法やそれを支持して頂くお客様の輪に乗っかっていただけです。これからは、貴方達自らが汗を掻き、頭を使い、このむかし野菜を少しでも多くの消費者に理解して頂き、広めて行く努力をすべきです」
 
と言うことで、その年の春、彼らが考えた方法で二週連続の農園体験会を開催することに決した。チラシを作成し、団地に配り、ホームページやインスタグラムで広報し、参加者の募集を募った。
今回は、今までの農園主主体の企画や実行をスタッフ達へと移し、極力手を出さないことにした。かれらももう自立して良い時期に来ている。
 
4.21.4.28の両日、天気にも恵まれ、一日当たり120名(子供さんがその半数)のお客様が集まり、種蒔き、収穫作業、昼食会と続き、大盛況の中で終わった。

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さぞやお客様が増えたであろうとお思いであろうが、集まった皆様は楽しかった、スタッフ達は忙しい忙しいで終わってしまった感があり、定期購入客も農園直販客も一向に増えていない。
これがイベント効果の実情であり、このような農園があることを知らしめるだけでしかない。
つまりは、消費者が実際に購買行動に移るには、もうしばらくの時間と消費者のさらなる理解が必要となる。
 
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おそらくは、今回のイベントに参加した消費者達は、子供を遊ばせる目的の農園体験会ではなかったか?の疑問がスタッフ達から上がった。その際、配ったインタビュー方式の回答には、「定期購入や農園直売に行ってみたい」・「健全な野菜に関心を持った」との反応が70%にも昇っていたのにも拘わらずである。その結果にスタッフ全員意気消沈となっている。
 
スタッフからは、このように農園主に言ってきた。
「お父さん、次回に行う体験会には、農園セミナーを加えてください」と。
 
 
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2019.6.16 & 7.14 健全な食を考える会開催
 
「農園では、未来へと残していきたい日本の先人達の叡智である自然循環農業、所謂むかし農法を消費者の皆様へご紹介し、生産者と一緒に健全な食を考えていく
ために、一年を通して、様々な農園体験会を催しております。その体験を通じ
て、「食の安全性や栄養価の豊かな農産物」への関心を持って頂きたいと願っ
ております。「食の安全性」が損なわれつつあるこの時代、ご家族の健康を守
るのは、貴方です。
ここで、学んだ知識や体感を是非、日常の食卓の中で活かして頂きたいと考え
ております。
子供さんも一緒に学んで、かつ体験するために、ご家族でのご参加をお願いし
ます。但、子供さんを遊ばせる目的でのご参加はご遠慮下さい。」
 
以上の趣旨で「農園セミナー」及び「料理体験会」を主体とした農園体験会を催した。
今回の参加者は、激減し、それぞれで10数家族の方々がお見えになられた。

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セミナーでは、堆肥と肥料の違い・高窒素栽培による硝酸態窒素(毒素)の懸念・畜糞主体の有機農業に潜む危険性・アメリカの二倍以上使われている日本の加工品や食品に含まれる食品添加物の怖さなどをご紹介した。
畜糞主体の栽培により(外国産主体の配合飼料には抗生物質ホルモン剤・薬品が多く含まれる)もたらされる土壌汚染は、微生物や放線菌の棲めない不毛の圃場を生み出していること、そこから生産される有機野菜は、健全な自然循環農産物とは大きく乖離し始めていることなどを詳細に語った。
かっての日本の農業者達は、草を刈り、葉っぱを集め、草木による堆肥を作り、土を微生物一杯の豊かな土壌に育ててきた。その土壌から産出される農産物は、栄養価に溢れ、美味しく、人の体を健全に導いてくれていたことに気がついて頂きたいとお伝えした。
料理体験会は、素材(味香り・旨み・食感)を活かした幾つかの料理を実際に体験してもらおうとする試みである。
毎日の家族の食事に携わる方にとって、料理人の様に手間を掛け、調理をするわけにはいかない。
この農園では、簡単に調理ができて、しかも美味しい料理を提案しようとしている。
さらには、穀類の粉などを使って、滋養豊かな美味しいおやつや中間食の提案も行った。
 
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例え少数でも良い。この農業体験会だけではなくあらゆる機会を通して、すこしでも多くの人達に伝え続ける努力が大切であることを、うちのスタッフ達へ分からせようとした。
 
2017年、KBC朝日放送によるテレビ放映効果で一時的に定期購入のお客様は一気に250余名増えて、500人を突破した。
おそらくは、1年以内で増加したお客様の2/3は止めていくだろう。結果として元からの定期購入のお客様250名と止めずに残る80名足らずのお客様の総計が300~330名になる。
ところが、2018年、宅配業者の料金一斉値上げ幅がその予想を大きく上回り、1年掛けて、さらに、100余名の方が脱落していった。
悪いことは重なるもので、それに追い打ちを掛けるように、ヤフーのインターネット契約の打ち切りがあり、約半年間、ネット市場との交信や情報発信はゼロになり、新規のお試しセットの申し出は全くと言って無くなった。これが定期購入される顧客ジリ貧の実態であった。

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農園日誌Ⅱー「活きること」ーPART28

2019.8.7.(水曜日)曇り、最高温度34度、最低温度25度

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台風一過、胡瓜などの棚が倒壊しており、今日は出荷日にも拘わらず、復旧作業に追われた。
唯、台風によりもたらされるのは被害だけでは無く、酷暑による乾燥した大地は、
充分に潤っていた。まだ幼い人参も葱も息を吹き返している。早速に除草をしたやった。

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これは九条葱。確か、6月下旬頃に定植したと思うのだが、以降、雨が降らず、カラカラに乾燥したため、一向に育っていなかった。
左奥に見えているのは、完全に消えかかっていた茄子の畝。これも水を好む野菜であり、この雨は救いの神であった。早速に除草と誘引作業を行った。
見れば、健気にも茄子が実を付け始めているではないか。
どうやら、夏の茄子はダメであったが、秋茄子には間に合いそう。


「活きること」 PART28

2019.2.18 彩り豊かな冬野菜達
 
去年、10年ぶりに秋らしい秋を迎え、お陰で野菜は順調に育ってくれた。
そのため、続く冬野菜、そして春野菜と出来映えも良く、生産量も増えた。
こんなに苦労せずに野菜が育つのも久しぶりで、なんだか拍子抜けするような豊潤な季節となった。
今まで、長らく野菜不足が恒常的に続いていたが、今度は一転して野菜が余り気味になっていった。
折角自然に恵まれたのだからと、こう言う時は、価格は据え置いて、量は1.3倍~1.5倍にして皆様にお届けするようにしている。

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この頃、実は農園では、大きな曲がり角に直面していた。
去年の秋口から、宅配業者が送料の一斉値上げに踏み切っていた。応じなければ宅配取引を切られても良いとの問答無用の対応であった。値上げ幅は、2倍と言う極端な引き上げを宅配業者全体で押し切ってきた。人件費高騰と働く人の確保が難しいとの理由であった。
その要因の多くは、大手通販会社であるアマゾンの存在にあった。格安で、あるいは、送料無料での配送サービスを強行してきており、それを受けてきたヤマトやサガワの体質に問題があったとみている。
そのしわ寄せが通常の物流に来たことが大きな要因であった。
ある程度正常な運賃体系にしておけばここまではひどくならなかったであろう。強者が弱者を飲み込んでも構わないと言った論理があるように思える。消費者もそれに迎合していったため、結果として、日本の物流費を必要以上に高騰させ、逆に日本の経済を、消費者を縛っていき、野菜に留まらず、全ての商品の価格が上昇に転じていく。
 
宅配業者二者との交渉の中で、何とか1.8倍程度の値上げに止め、急速に上がった送料の一部を、むかし野菜の邑や生産者にて負担することにした。
結果として、お客様には従来の1.5倍程度の引き上げに留めた。
 
但、この送料値上げは、当然お客様の消費マインドを直撃し、先ずはテレビ放映で新たに加わった200余名の新規のお客様から、徐々に定期購入者から脱落していった。
ショックだったのは、一年以上も取り続けて頂いていたお客様からの脱落組が出始めたことであった。
その理由をお聞きしてみると、「体が美味しいと言っているのも食べ続けることの楽しさもあるのですが、家計がそれを許してくれないのです」と。
「むかし野菜の価値をご理解して頂ける方に出会えたのに、残念です。また。取れるようになりましたら、よろしくお願いいたします。皆様のご健康をお祈りしております」と言わざるを得ない。

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農園主は思うのです。
「除草剤も使わず、化学物質を圃場に持ち込まず、手間と労力を掛けて草木堆肥によって何年も掛けて育てた土壌から生まれてくる美味しくて健全な野菜は、人の体を再生させ、健康体に近づく」
高い送料を掛けて送られてくるやや割高な農産物及びその加工品は、決して贅沢では無いのです。
有機農産物も含めてあらゆる食品に含まれている抗生物質ホルモン剤及び化学物質や添加物に囲まれた現代の食生活は、健康はお金では買えないし、自分で守るしか無いのです。
消費者の気持ちも分からないでは無いが、要はその方の価値観の持ち方ではないでしょうか。
とは言っても、家計が苦しいと言われる全国の消費者にご無理を強いるわけにも行かない。
健全な野菜や食作りに取り組んでおられる少しプレミュアムな価格の全国の生産農園は、一様に、苦境に立たされることになっております。
 
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手塩に掛けた3,000坪(一町歩)の畑には、今日も元気な野菜達が育っており、汗を流して働く6人の若者達がいる。
ようやく土作りが進んできた田圃から穀類畑に転換した3,000坪の畑には貴重な脱除草剤・脱農薬、草木堆肥で育った麦・古代麦・大豆・とうもろこしが育っている。
農園主としては、この理不尽な社会・経済の変化とそれに伴って、寛容さを無くしつつある消費者層に何とか対応策を講じなければならない。
新たな販売チャネルの構築に向かおうとしている。


農園日誌Ⅱー「活きること」ーPART27

2019.7.31(水曜日)晴れ、最高温度33度、最低温度26度

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                お休みに入った露地トマト

 7月末、あれだけ成り続けていたトマトがお休みに入ってしまった。
露地トマトは6月末頃から8月中旬まで、第一次の最盛期を迎える。
ところが、今年は6月中旬頃から7月末まで鈴なりになってきたため、突然にぱったりとトマトが止まってしまった。

梅雨明けと共にいきなりの酷暑の季節、乾季に入ったようで、こうなると流石に実を付けることは難しいようだ。
これからは剪定誘引作業を行い続ければ、9月初旬頃から10月一杯まで量は減っても実を付けてくれることを期待している。雨が待ち遠しい。

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これは、早稲の黒大豆。農園では、この時季、黒大豆の枝豆を育てる。
8月中旬頃から出荷が始まる。枝豆と言うと皆様は夏と思っておられるようだが、
実は、この時季、旬を迎える大豆はあまり美味しくないのです。

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これも黒大豆、晩生の大納言と言います。
くそ暑い夏の7月中旬頃種を蒔き、10月初旬頃から黒大豆の枝豆の出荷が始まり
11月初旬頃、やや柔らかく長めの豆に成長する。この時季のものを私はビーンズと言っており、サラダ・パスタ・炒め物・豆ごはんに使います。
11月末頃、丸い黒大豆となります。一つの大豆で三回楽しめることになります。
この大納言の黒大豆は珍味であり、農園の人気メニューの一つです。


「活きること」-PART27
穀類の商品開発-PART2―自然栽培による穀類を使った健全な食品開発
 
麦と同じように重要な穀類である大豆の自然栽培は、目まぐるしく変化する最近の気候では、生産が安定していない。
その種を蒔く時季が、梅雨時期と重なり、麦の収穫が終わる5月~6月初旬頃は雨も多く、草木堆肥を軽トラックで畑に撒く際、埋まり込んでしまったり、耕す際にも雨が重なり、思うように種蒔きが進まないことがある。
それがうまくいったとしても、種を蒔く時季に逆にいきなり乾期が襲ってきたりして、種が発芽しなかったり、育たなかったりするリスクもある。
さらには、この夏の時季は夏草が著しく旺盛な季節であり、除草剤を使わないため、大豆が草に負けて、しまうこともある。
このため、管理機(除草)で畝下の土を堀り揚げ、草の上に土掛けを施したり、草刈り機で草を払ったりせねばならないが、収量は大きく減じる事も多い。
このようにして、ようやく採れた大豆は慣行栽培(除草剤使用)の多くても2/3程度の収量にしかならない。
 
 このように苦労して採れた貴重な自然栽培の大豆は、トウミに掛けて殻を飛ばし、色彩選別機に掛けて、大まかに選別し、さらに目視による手の選別作業を行って、ようやく大豆となる。
まさしく、大豆となるまでの工程は手作業の連続である。
広大な農地で大型機械を使って大量生産を行う粗放農業の大豆とは、そもそも生産コストが比べ物にならない。これが日本の狭い農地を使った高集約型穀類生産の実態です。

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除草剤も使わず、農薬も使わず、化学肥料も使わない草木堆肥による自然栽培の穀類とは、その作業にどれだけの労力とリスクを掛けているのかを、果たしてどれだけの消費者が知っていることだろう。
その努力に対して支払う正当な価値(代金)をどれだけの人が認めてくれるのだろう。
日本の多くの農業者が穀類生産から撤退していったのはその理由からです。

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〇このようにして採れた貴重な大豆を農園では、主に味噌作りに使っているが、大豆そのものの美味しさを表現した商品開発を目指した。
 
「味噌」-原料;大豆、自然農米、天然塩のみ
農園の竈にて、お米を蒸し、3日掛かりで米麹を作る。
大豆を竈で蒸して、薬指と親指で潰れる程度に蒸し上げる。
蒸した大豆をミルで潰し、天然塩と米麹と大豆を合わせて味噌玉を作り、甕に押し付けるようにして漬け込む。重石を載せ、表面に虫除けや除菌のため塩を置く。およそ8~12か月間、熟成醗酵させて無添加醸造味噌が出来上がる。
 
この醸造味噌は、その原料からして化学物質や薬品は一切使われておらず、その意味でも、全国のどこにも存在しない味噌だと考えている。農園の加工品の中では、人気NO1です。
大手工場で製造されている味噌のほとんどは、短期間で製造できる化学合成味噌であり、このような本醸造の味噌は地域の小さな蔵元でしか存在していない。
 
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「黄な粉」
自家焙煎を行い、2~3段階でやや粗めに粉に引く。
黄な粉と言うより、大豆粉と言ったほうが正しいようです。少し甘味があり、何より香ばしい大豆の香りが漂う。
この黄な粉は、グループの田北さんが冬から初春頃に製造するお餅と一緒に食べてもらっていたが、農園で小麦作りが進み、今では、大分名物の「やせうま」を各ご家庭で、おやつとして作ってもらえるように、レシピを添えて皆様にお届けしている。
 
「蒸し大豆」
蒸し大豆は、味噌を作る際に、大豆をみなで食べている時、この美味しさをお客様に伝えられないかと考えて、味を付けていない蒸し大豆を商品とした。煮出すのとは異なり、栄養価も失わない。
一般の家庭では、中々、煮豆を作らない。水煮は缶詰で売られているが、あまり美味しいものではない。
まして、大豆を蒸すことはおそらくないであろう。
蒸し大豆は実に栄養価の高い植物たんぱく質であり、お砂糖を加えたり、そのまま煮豆にしたり、料理のトッピングに使ったり、みそ汁に入れたり、スープの浮き身にしたりと様々なバリエーションがある。
 
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            農園体験会の一場面

子供たちが自分たちで粉を捏ね、お湯にくぐらせ、ヤセウマを作っている。

〇小麦粉を使った商品開発 及び お客様に向けたレシピ開発
小麦粉、特に古代麦とのブレンド粉が、ある程度、量が確保できるようになり、本格的な小麦粉を使った料理のレシピ開発を進め、商品開発のバリエーションが広げられることになった。
思い描いたものは、パン・クッキー・ドーナツであり、農園主が子供の頃、食べていた様々なおやつであり、万頭であり、ガレットであり、クレープである。
この小麦粉の特徴は、何と言っても麦本来の味香りが出ており、グルテンは少ないが、古代餅麦の特徴が出ており、粘りがある。早速に様々な商品開発に挑むが、それぞれに、水の分量に難しさが出た。
 
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兎に角、重量感があり、存在感ありで、何より具も美味しいが皮の美味しさが際立つ。

「野菜万頭」
具は数種の旬菜に少量の豚肉。隠し味に乳酸発酵した古漬で旨味を添えて。皮は古代麦ブレンド粉。
最初に野菜の旨味が現れ、すぐに麦の香りが口いっぱいに広がる。全粒粉使用によりビタミン類豊富で食物繊維に溢れているため、ずっしりとお腹に溜まり、小さいが2ケも食すれば満足感を得られる。
小・中学生が一度に5~6ケ平らげてしまうのには驚かせられた。
 
「スコーン・クッキー」
スコーンは喉に閊えて、水無しでは食べ難いので私は嫌いでした。ところが、このブレンド粉で焼いたものは、そのまま食べられた。この古代麦は餅麦であり、もちもち感があるためではないか。
いずれもやはり腹持ちが良い。手作りジャムなどを添えて、これは大人達にも好評であった。
 
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これも体験会での一齣。子供たちが焼いたクレープ。形は悪いが、美味しかったのでしょう。次々と口に放り込む。残ったものは、今度はお母さんたちがきれいに始末してくれました。大人も美味しいのですね。

ブレンド小麦粉のクレープ」
私が子供の頃、隣のお母さんが焼いてくれた「流し焼き」が定番のおやつで、皆で遊んでいると、
「できたよ!」と言う声に、寄り集まって食べていた。その香ばしくて美味しかったことを、いまでも覚えている。
料理体験会の際、薄く焼いたクレープに黒砂糖を入れて、中に黄な粉を挟んで、くるくるっと巻いて食べた。あまりにも食べ過ぎて子供たちは昼御飯が進まなかった。お皿に30ケほど残っていた。
10人ほどのお母さんたちが折角の料理なので、皆さん腹いっぱい食べたはずなのに、終わってみたら、そのお皿には一つも残っていなかった。
このクレープはシンプルなだけに様々なバリエーションが作れる。あんこ・果物・ジャムなど・・
チーズ・ハム・卵や野菜を置いてオーブンで焼く包み焼(ガレット)もできる。
 
小麦を捏ねて伸ばし、湯がいて、黄な粉(砂糖・少量の塩を加える)をまぶして食べる。
歯ごたえがあり、もちもちとした食感があり、子供たちはみんな大好きです。これはだんご汁と並んで大分の郷土のおやつです。
 
「石垣餅」
さつまいもの時期になると、農園では必ず出てくるのがこの石垣餅です。
芋をサイコロ状に切って、小麦粉と混ぜて捏ねる。それを丸めて蒸し器に掛ける。
 
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パンらしきものとなりました。中力小麦と古代餅麦のブレンド粉ですから、グルテンが少なく、余り膨らみません。ところが、何も味付けしなくともそれだけで麦の香りと味の深さで食べてしまいます。パンとは、麦からできているのだな!と改めて実感する。

「パン」
強力粉が70%程度は入っていないと、パンとは呼べないのかもしれないが、中力粉麦と全粒粉古代麦の製粉で焼くと、外はカリっと、中はもちもちのパンができる。麦の味と香ばしい香りがする。
小麦アレルギーの子供さんにも使えると考えて、作ったもの。何人かのアレルギーをお持ちの子供さんに食してもらったが、アレルギー症状の発症は出なかった。
  
以上のうち、野菜万頭とパンは水加減の調整などが難しく、かつ、手間もかかるため、むかし野菜の邑で商品開発を行い、お客様へお出しすることに決まった。
その他は、レシピを付けてブレンド小麦を販売することにしている。

苦労して育てた自然栽培の穀類の味は農園主の予想をはるかに上回り、実に味わい深いものになりました。


農園日誌Ⅱー「活きること」PART27

2019.7.24(水曜日)曇り、最高温度31度、最低温度20度

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                雑草に覆われつつある穀類畑

 由布市挟間町古市の圃場(旧田圃)約4反も草木堆肥を撒き続けて5年目を迎えている。土はようやく団粒化し始めているものの、何しろ旧田んぼのため、常に雨の事を気にしなければならない。特に大豆を蒔く時季は、7月の梅雨時期と重なる。

この穀類畑は、除草剤を使わない。最も全ての圃場もそうであるが、このように広い面積の場合、どうしてもある程度粗放的な農業にならざるを得ない。
そうすると、いつも課題は草対策となる。簡単に「除草剤を撒いていないんだね」とは言って欲しくはない。
おそらくは、除草剤を使っていない穀類畑は世界でも無いのではないかと思ってしまうほど、大変な労苦を強いられる。

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 昨日、男子全員で約1反半の大豆畑の草刈りを行った、5人で半日を要した。
畝間を草刈り機で草を刈り取るのだが、犠牲者をなるべく少なくするために、慎重に草刈り機を畝間に入れる作業のため、兎に角時間が掛かる。
通常はいきなり畝間に管理機を入れるのだが、しつこく振る梅雨の雨のため、埋まり込んで使えない。そのため、先ずは草刈り機ということになってしまう。
残すところ、あと、4.5反もある。気が遠くなる作業を続けねばならない。

これが穀類の自然栽培なのです。


「活きること」PART27

2018.12.11   穀類の商品開発-PART
 
 大豆の収穫も終わり、小麦・裸麦・古代小麦などの麦類と合わせて穀類は一応出揃った。
とうもろこしは残念ながら芯喰い虫(我の幼虫)にやられ、今年度の収穫は5キロも無かった。残念ながら、トウモロコシの栽培は、必ず浸透性農薬が必要なようだ。
スタッフが言った。それなら、トウモロコシ栽培は残念すべきですと・・・
つまりは、今後とも浸透性農薬を使うことは無いということです。

※浸透性農薬
 ネオニコチノイドなどの分解しない農薬であり、野菜に浸透していき、それを食べた害虫が死ぬ、と言った農薬の事を総称して浸透性農薬と言う。
現在、日本で使われている農薬の推定70%を占めている。

穀類の実験栽培も、穀類の圃場の土育ても一段落し、来年度からは、本格的な量産体制に入ろうとしていた。今年度終わり頃からは、それを見据えた穀類の商品開発を進めようとしていた。

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何故今、穀類なのかと言うと、
お米は日本人の主食である。唯、近年は三度の食事にお米を食する家庭は減ってきており、パスタや麺類そしてパンを食べる習慣がより強くなってくる。その原料はいずれも麦である。
そうなると、野菜に合わせて食べる食事は穀類及びその加工品へと必然的にシフトしていくことになる
また、近年、三度の食事が必ず食べられているかというと、疑問が出る。
そこで考えられる食事は、代用食、若しくは中間食、さらにはおやつ感覚の食事と言うことになる。
 
それらの食生活の変化に対応して、「如何に健康で健全な食」を、消費者に提供できるかをむかし野菜の邑では考えようとしている。但、野菜を10数年作り続けて、いつも何かが足りないと感じていた。
日本人の主食であるお米は、仲間である平野さんが徹底した自然農米をすでに生産しており、むかし野菜でも販売していた。
日本人の昔からの食生活の中に、お米ほど多くは無いが、むかしのお百姓さんは、米は年貢として五公五民として取り立てられていた。そのため、生きるために、喰うために、麦・稗・粟などを畑で栽培して米と混ぜたり、団子や餅にして食べていた。その多くは、全粒、若しくは全粒粉で食べられていた。なるほど、むかしの農家は健康な食生活をしていたのでは無いか?と考えた。
白米は脱穀すると、麦は製麦してしまうと、ビタミン類やミネラル類がかなりな部分消失してしまう。
始めて植えた麦の穂が黄金色に染まる麦畑を眺めていると、何故か涙が出ていた。
これが大地の中で生かされていると言う事か?生命の営みを感じてしまう。
 
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以前から、完全無添加な加工品であり、醗酵食品である「醸造味噌・乳酸発酵の漬物」は随分と製造してきた実績がある。
今回は、草木堆肥で育てた圃場で、除草剤や農薬を使用せず、自然栽培の穀類を育て、その原料のみを使った新たな商品開発を行おうと考えていた。
大量流通市場の急速な伸展に伴い、食の簡便化・効率化・規格化が進み過ぎて、現在人は、本当に美味しい、あるいは、栄養価の摂れる食べ方を見失いつつあるのではないか?
そこで、考えた開発のヒントは、「古きを尋ねよ」であった。

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○むかしから農家では、麦を焙煎してヤカンで沸かして一晩寝かせて麦茶を作っていた、なかでも美味しいのが、裸麦の麦茶であった。滋養豊かな麦の味香りと旨みをじっくりと引き出す事が出来る。

「麦茶」―原料裸麦
この原料の多くは、六条大麦などの大麦である。市販の麦茶はペットボトルで販売されているものも多いが、かなり焦がして砕きパックに入れて簡単に水出しできるように設定されているものも多い。
当農園では、むかしながらの風味のある麦茶の作り方にこだわった。
やかん、若しくは鍋で焙煎した麦を煮出し、一晩寝かせてじっくりと麦の味香りを引き出す方法を選択した。スタッフ達で飲んでみた。苦味ではなく、鼻にいきなり、焙煎した麦の香りが飛び込んできた。
さらにふくよかな甘い味や香りがその後を追ってきた。「旨い!」と感じた。
これなら、冷たく冷やして飲む夏場だけでは無く、秋冬も暖かい麦茶が美味しく味わえる。
やかんに残された麦も捨てるのはもったいなく、口に含んでみた。薄く塩を振ったら「麦のリゾット」であった。
 
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○草木堆肥で数年以上、土を育てた圃場でできる裸麦と日本固有の交配させていない古代麦(一粒餅麦)を一定の割合で混ぜたら味香り豊かな麦ご飯が炊けるのでは無いかと考えた。
 この古代麦は、品種改良されていない餅麦の系統で、ご飯に混ぜる雑穀として食べられていた。
 
「麦ご飯セット」―原料、半精麦した裸麦と全粒の古代麦
最初に取り組んだのは、古代麦はその強い味香りと粘りの特性を活かすため全粒は決めていたが、食べやすくするため裸麦をどの程度精麦すべきか?どの比率でブレンドするかと言うことであった。
ご飯と一緒に炊いてみて驚いた。今まで食べていたご飯と違っていた。
ご飯に旨みが強く感じられ、何より驚いたのが、その香りであった。子供の頃に健康に良いからと言われて食べさせられた麦ご飯とは全くの別物であった。暖かいときと比べて冷めたときも麦の嫌な臭いはせず、むしろ冷えた時の方がより味香りが強いような気がする。
歯にさわるやや硬めの古代麦のプチプチ感も面白く、アクセントになっている。
 
市場では、五穀米や雑穀米などの、ご飯に加えるブレンドされた雑穀が健康に良いなどと言われ、出回っている。唯、味も香りも乏しく何より旨みが無い。
これはおそらくは、ミネラル不足や化学肥料施肥(勿論除草剤もそれに加わると思われる)による弊害であり、何より、土を育てていないことがこの味香りの決定的な差として現れている。
 
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○日本での小麦は、高温多湿と四季のある気候風土では、そのほとんどが中力小麦である。
 グルテン(タンパク質)の含有が少なく、パン等には不向きであり、粘りがある特性は、うどん・団子などに適しており、ほおとう・流し焼き(クレープのようなもの)・石垣餅(さつまいもを練り込み蒸して作る)・やせうま(湯がいて黄な粉と絡めて食べる)などの食文化があった。
ちなみに、麦をハイグルテン(高タンパク)に持って行くには、化学肥料などの強い高窒素肥料を施せば、ある程度のグルテン使用の小麦は出来る。唯、当農園は高窒素栽培は理念に反しており、土作りに数年を掛ける途を選択している。
 そんな食文化は次第に廃れ、今では、日本の小麦(中力粉)を生産する農家も減り、道の駅等で、地粉としてささやかに売られているだけである。
兎も角、小麦は製粉し、料理のレシピを付けて、古くて新たな食文化を作り
出すしか無いと考え、商品開発を進めようとした。
 
「小麦粉」―半分精麦した中力粉 & 古代麦の全粒粉のブレンド
小麦粉は、そのグルテン含有量によって薄力粉・中力粉・強力粉に分かれる。日本では、このうち中力粉が栽培されている。他は日本の気候風土に合い難いからです。
一般的には、薄力粉はクッキーなどに、強力粉はパンに、中力粉は麺類へ使われる。最もパンなどは、強力粉だけでは難しく、他の小麦粉をブレンドして使われている。
麦には食物繊維・ビタミン・ミネラルが多く含まれており、健康食品と言われているが、その多くの栄養素は製麦する前の皮や胚芽のほうにあり、白くなった胚乳には極端に減ってしまう。
栄養素を逃がすまいとして、全て全粒粉にすると、ごわごわとし、重たい感じになり、食べ難くなる。
粉にする場合に、この比率をどうするかの結論を出さねばならなかった。

イメージ 8               向かって左が「弥富餅麦」

弥富餅麦は、欧州のスペルト小麦とは異なり、純粋に日本の古代小麦である。
おそらくは、日本固有の原生種と思われる。
この全粒粉を日本の中力小麦の粉とブレンドしたものが、当農園の小麦粉。
栽培する契機となったのが、お客様からの要望「小麦アレルギーを持つ子供さんの悲しい顔」でした。

農園日誌Ⅱー「活きること」PART26

2019.7.17(水)曇り、時折雨、最高温度30度、最低温度20度

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           梅雨の中休み、胡麻の花が可憐に咲く

 誰が言い出したのか?「胡麻を植えたら!」 そう言えば、今まで胡麻など植えたことは無かった。いつの間にか種を買ってきたものだから、仕方なく、空き畝に種を蒔いた。
子供の頃は、何処の畑にも胡麻はあった。残暑厳しいとき、ござに干された胡麻の枝を叩いて種(実)を落とし、トウミに掛けてゴミなどを取り除き、何しろ余りにも小さな実なものだから、かなり面倒な作業をしていたような記憶が残っている。
この花を見ていると「あー!こんなきれいな花だったな」とどこか懐かしさを覚えた。

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毎年チャレンジしているとうもろこし。毎年芯喰い虫にやられている。
それでも懲りずに今度は小さな畑に種を蒔いた。
何十本かはやられているが、今年は、比較的被害が少ない。
この分だと、粉類の試験的商品開発には使えるだけの収量はありそうだ。


「活きること」PART26
2018.9.2  処女地の開墾作業
 
 熊本から料理専門高校を卒業後、19歳の若さで単身、農業の研修生として佐藤自然農園で自然栽培農業を学ぶことになった小原君。早いもので、早、3年目を迎えた。
二年間の農業研修を終え、新規就農を目指して、彼の畑を持つことになった。
大分市野田の10番の畑と併せて、近接の由布市挟間町古市の畑を借り受けるに当たり、ビニールトンネルの残骸を撤去することから始めねばならない。農業とは先ずは、開墾作業からとなる。
むかし野菜の邑スタッフ6人で、散乱したビニール・パイプ・プラスチック・コンクリートの杭などを撤去した。その廃材処分などの費用は、小原君にはお金も資産も無いため、むかし野菜の邑にて負担した。
所謂、出世払いとなる。こうして、順繰りに農人を育てて行くことになる。

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2018.12.9  畑作り(土を育てる)
ここは、以前は苺栽培に使われており、数年間は放置されていた農地であり、黒ビニールに覆われていたため、雑草はそんなに生い茂っているわけではなかったが、その分、土は硬化している。
むしろ雑草に覆われていたほうが自然に近い環境となり、微生物層はできていくのだが、残念ながら、一から土作り・微生物層を育てて行く必要がある。
数回耕した後、みんなで草木堆肥及び牡蠣殻・草木灰などを多めに振り、最初に育てる作物は、穀類となる。麦と大豆を二毛作し、年間2回の草木堆肥施肥となり、先ずは土を育てていかねばならない。
野菜栽培の年間4回の施肥と異なり、野菜を育てられるまで、土が出来て行くには、少なくとも4年は覚悟しなければならないだろう。草が繁茂した放棄地と比べて、微生物層が出来ていない。その代わりと言っては可笑しいが、草の種子があまり落ちていないため、除草の手間は少なくて済む。
 
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およそ軽トラック6杯分の草木堆肥・焼き灰・蛎殻・苦土石灰が振られた

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見た目は見違えるようにきれいな圃場となったが・・・

 
2019.1.17   麦踏みと収穫
 
12月に小麦の種を蒔き、何とか麦踏みの段階まで育ってきた。
草木堆肥2:放牧牛の牛糞1を混ぜて通常より多めに堆肥を振ったため、発育はまずまずではあった。
唯、やはり力強さは今一のようだ。
その後、6月初旬、借り入れの季節を迎え、背丈は処女地にしては高く育っているものの、やはり、茎は細く、根張りも弱く、収量も3/4程度となった。
7月初旬、遅い梅雨入りを控えて、年間二毛作の一つ、大豆の種蒔きを行った。こちらのほうは、発芽状況も頗る良く、意外と良い大豆が採れそうな予感がしている。
 
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むかし野菜の邑では、このように、処女地は先ずは、土が微生物層で耕され、団粒構造化するまでは、
麦・大豆・とうもろこしなどの穀類を植え、4~5年経過したら、次は南瓜や馬鈴薯を育て、さらに土作りを進め、団粒構造化が最低15センチの深さまで行ったら、初めて葉野菜などの種を蒔く。
草木堆肥を使った団粒化は一年で3~5センチ程度の深さまでしか育たないので、3年若しくは、4年経過しないと、むかし野菜の生産基準に満たない。研修生たちは、最低3年を待たないと野菜作りができない。最も畜糞等の肥料を多投すれば、すぐにでも野菜は育つが、味香り薄く、甘み無く、歯切れは悪く、むかし野菜の野菜の基準である「栄養価高く美味しい」とはならない。
その間、穀類だけでは生活基盤が保てず、そのために共同生産・共同加工・共同出荷の「結い」の仕組みがあり、グループ全員で支えることにしており、野菜作りで先行している先輩たちがむかし野菜の邑を通して、後進の面倒を見ることになる。その最大の農園が佐藤自然農園であり、会社の基幹農園に位置している。

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三年(3年未満は赤ラベル級)を経過したら、野菜作りが本格化していき、「銀ラベル級」の野菜となり、主には葉野菜・じゃがいも・玉葱・ブロッコリーなどの比較的根の浅い作物の生産が中心となる。
次の関門は5年。5年以上の草木堆肥歴の圃場から採れる野菜は「金ラベル級」となり、大根・蕪類オクラ・キャベツなどの野菜が中心となる。
特筆すべきは、人参である。人参は根が深く土壌の出来栄えが、即、味香りに出る。
人参を植える圃場は、原則、草木堆肥歴10年以上経過した畑となる。
こうなると、その土はプラチナ級の土となっている。
 
このようにして、むかし野菜は定期購入のお客様の信用を得ている。
同時に、むかし野菜の邑に属する研修生たちは、およそ10年を掛けて野菜作りのノウハウを学び、様々な販売及び加工の実践を重ね、農業経営の経験を積み、ようやく一人前の独立農園主となっていく。

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